2001/9/2 クドレ沢左俣左沢・海沢

奥多摩・クドレ沢左俣左沢遡行 〜 海沢右俣(仮称)下降  山行記録

[日程] 平成13年9月2日(日)
[メンバー] L. 深畑(OB,記)、SL.安河内(M1)、西井(M2)、田中、土松(1年)
[天候] 曇 時々 晴
[行程] 新宿622==武蔵五日市=(タクシー)=神戸岩840−−クドレ沢出合900−−1120徳兵衛滝1220−−1335稜線1345−−1450海沢大滝1610−−1645林道1655−−1800奥多摩

 9/1の土曜日は久々に青空が広がった。翌日曜の予報はいまいちだが、目の前の天気が良いと、つい沢に行きたくなる。しかし、そんなサルのような頭でも、小川谷廊下など泳ぎまくりの沢を避けるだけの知恵は残っていた。中根さんから、けっこう面白かった、と聞いた話を不意に思い出し奥多摩・クドレ沢とやらに行くことにする。夜、帰宅して地図を広げてみると、クドレ沢を詰め上がるとそこは海沢の源頭ではないか。下降路は海沢に採ろうと肚の中で決める。メンバーは、やっぱりこの日の陽気に誘われて沢に行きたくなった西井・安河内と、明日のテストの不安を胸に抱えつつも果敢にやってきた一年生の田中と土松。前日の午後から動き出してこれだけ集まるとは素晴らしい。

[クドレ沢遡行]
 適当なバスがなかったのでタクシーで神戸岩へ。橋の上から赤井沢本流を見ると奥に何やら良さげなゴルジュが。早速、入渓準備をして少々のビビる気持ちを抑え、いざそのゴルジュへ。次々と釜が現れ、水線通しの完全突破はかなり手応えがある。「このゴルジュだけでも来た甲斐があった」と安河内。私も、ここが今回の核心か、と思ったりしたが、この先いくつも核心が現れることになる。

 一旦、林道に上がって本来の入渓点へ。意外と水量が豊富で、2段5mの滝などシャワークライムしまくりで楽しい。「東京周辺の沢」の新版で新たに採録された沢にはロクなものがない(シンナソー、丹沢大滝沢など)と安河内が言っていたが、認識を改めるに十分であったろう。

 けれどもその後、ボサや倒木が多くなり、やっぱりしょぼ沢かといった気分になる。右俣を分けてもしばらくは一向に改善しない。しかし、ふとナメ滝が現れたかと思うと見事な連瀑帯へ。初めの7m滝は楽しいシャワークライム。一年生二人はザイルで確保。いくつか小滝を越えると徳兵衛滝25m。これは立派。左の岩稜から高巻く。ザイル使用が原則か。なお、徳兵衛滝手前の小滝は、本流、枝沢(中岩沢)ともに難しい。その後も適度に手応えがある小滝が連続する。一年生にはやや難しい場面もあり、安河内の7mm×8mが大活躍。ひたすら登ると、ほどなく稜線。

 あんまり期待していなかったこともあってか、意表を突いて良い沢だった。けれども、クドレ沢は楽しかったのだが、実はあんまり良く覚えていない。その後の、海沢の強烈な印象にかき消されてしまった。

[海沢下降]
 稜線に着いたのが1時半。田中と土松は明日の試験が気になるようだったが、この場所に、この時刻、この装備で、メンバーに西井と安河内となったらもう沢を下るしかない。私もこれまで中根さんとは山ほど一緒に行っているのだ。距離的にも最短の下山路。二俣まで下って探勝路さえ見つければ、あとはどうとでもなる。

 まず目の前の沢へ下る。1019標高点の東の沢。多少足場が悪くシュリンゲで簡易に懸垂したりして沢床へ。美しくはないが歩行は可能。とことこと下って行く。ようやく水が出始めたと思ったら、奥に石垣らしきものが。そこへ行ってみてビックリ仰天、こんな山奥なのに、沢筋が立派な石垣に囲まれた一面のワサビ田になっている。こんな所までワサビの栽培にくるとは気合いの入ったおばちゃんだ(おじちゃんかも知れないが)と皆で感心する。石垣の上などに付けられた踏跡を我々は敬愛を込めて"おばちゃん道"と呼んだ。

 しばらく下ると平和なワサビ田が切れ、いきなり大連瀑帯。さすが海沢。我々は"おばちゃん道"を利用して巻き降りる。懸垂一本ではとても届かないところで、もしも"おばちゃん道"がなかったらかなり苦労するところだった。

 さらにしばらく下ると二俣。恋ノ岐みたいに駆け下っている訳でもないのに時間的に意外なほど早い。私も安河内もそれぞれ二年前に海沢を遡行したが、"上部は平凡なので"というガイドの記述をそのまま信じ、中流部で遡行を打ち切り探勝路へ戻ってしまっていた。けれども、水量は豊富で小さいながら釜も次々と現れ、なかなかの渓相だ。途中、残置シュリンゲや倒木を利用してクライム・ダウンする場面もあった。

 なかなか平凡な河原にならないうちに、大きな滝の上に出た。下は見えない。懸垂するにも距離が足りなそう。途中まで懸垂して偵察しようかとも思ったが、そんなことして水流に流されでもしたら危ないところだった。右岸はハングした岩場なので左岸から巻くしかない。西井が何も言わずに登っていったがいつまで経っても合図をよこさないのでしびれを切らして我々も登り始める。小尾根の上に出て右下をみやると、大きな滝だ。40〜50mはあろうか。自分の足下を見ても殆ど絶壁。左に目を転じてもこの尾根の下流側は一様に非常な急斜面となっている。西井は尾根をどんどん上へと登っていくが、上へいくら登ったところで展望が開けるものではない。まずはセオリー通りなるべく下から攻めようと言って西井を呼び戻したが、彼が言うように、「とても行けそうにない」。けれど、上に登っても何時間かかるか全く見当のつかない大大大高巻きだ。ここに至ってはまったことを自覚。一年生は試験勉強の心配をしていたけれど、そもそも試験を受けられないぞ。一体、海沢探勝路はどこ?

 ふと足下を見ると、朽ちたワイヤーロープが転がっている。はてな?。よく見ると、殆ど絶壁のような急斜面に一条の踏み跡がついている。良く踏まれてはいるが古いもののようで、一部崩壊していて極めて危険。けれども、まずはそこを行ってみる。しばらくいくとルンゼに出合い、踏跡は完全に消滅するが、一段下の立木から懸垂すれば、多少は傾斜が緩くなった斜面まで降りれそうだ。たとえ足場が悪くとも、そこからもう一回懸垂すれば沢床へ降りられる。

 時刻は3時半近い。後続を呼ぶがなかなか降りてこないので、しびれを切らしてザイルだけラストの西井から渡してもらう。その際、ザイルがサラダどころか完全なスパゲッティーに。安河内と二人して懸命にザイルをほぐすが、こういう作業ほどはまっていることを実感するものはない。

 トップでまず私が降りる。奥の水面を見ると、再びゴルジュっぽい様相が漂っている。懸垂が全員終わるのが4時頃。大滝に出会うまでにもうワン・ポイントあったら日が暮れてしまう。ほとんど運頼みの世界。セカンドの安河内が降りるのを待って、下へ偵察に行く。落石起こりまくりのガレ場だが、下ることはできる。しばらく下っていくと、そこに立派な遊歩道が。さらには、「大滝」の看板。???。え、何それ。

 大滝の上にある、二年前に安河内がはまった滝はどこ?。平凡な河原は?。探勝路はいつ横切ったの?
 疑問は尽きないが、何はともあれ良かった。これで明るいうちに降りられる。大滝を観賞しつつ休憩。もう十分満足したので、沢から離れて探勝路を下る。三つ釜では格好の飛び込み台があったので、ここで大飛び込み大会、といきたかったのだが参加したのは私と安河内のみ。絶対、後で後悔すると思うのだがなあ。西井や土松などは、下までてれてれ降りていって水際でパチャパチャ遊んでいる。そんなんで楽しいのか、君らは。

 林道でサンダルに履き替え奥多摩駅へ向かう。土松の手の平を返したような裏切りにあって田中も一緒に温泉へ。もえぎの湯はまたも満杯だったので、駅近くの旅館の風呂に入る。その後、一年生は試験勉強をすると言って夕飯も食べずに帰っていった。精算では私が二度にわたる計算間違いをしていたことが判明。まあ一年生に手厚く渡ったから良しとしよう。さらには、650円の生ビールと950円のカツカレーを食べて、一人頭1700円という西井氏の計算に、他の二人も疑問に思わず。立川駅では電車のホームを間違えそうになるおまけ付き。みんなサルのような頭になってしまった。


[総評]
 日帰りで、これ程までに充実した沢登りはかつてなかった。東京近郊の沢登りに対する概念が広がった。沢の下降と繋げるのがポイントだ。けれども、今回の例でも分かる通り、相応の実力とメンバーが要る。

 大滝の巻きは、一般的には私の採った方法で正解だが、探勝路があるという特殊条件下では、西井の見つけた踏跡の方が良かった。さらに彼は、探勝路が沢を横切ったのにも気付いていたそうで、西井とうまくコミュニケーションが取れてなかったことがリーダーとしての最大の反省点か。

 記憶から薄れてしまったクドレ沢だが、なかなか面白い。最上部はちょいムズの滝が多く、しかも直登以外にはルートが取りにくい。難易度としては石津窪程度か?。2級という評価はやや甘いと思うが、1級上は十分にある。