2001/10/13-14 大黒茂谷

大黒茂谷溯行記録

期日:2001.10.13〜14
メンバー:L.安河内貫(記)、荒木紀之、神田光子

(記述の滝などは「東京周辺の沢(新版)」に基づく)

10/13 晴

11:12 奥多摩 −(タクシー)−三条新橋
13:45  泉水谷入渓
14:25  幕営地

 朝目が覚めるととてつもなく快晴。天気にはいつも恵まれる。
 新宿駅では高木が見送りに来てくれた。この時間ともなるとホリデー快速はガラガラで快適。そして速い。今回のメンバーは沢登り12ヶ月ぶりの人と17ヶ月ぶりの人。大丈夫かなぁ。車内で神田さんにプルージックなどを憶えてもらったのが後で役に立った。奥多摩駅から三条新橋までのタクシー代は8000円ちょっと。

 三条新橋からは泉水谷を見下ろす林道をてくてく歩いていく。小室川谷が見えていてなつかしい。機会があればまた行ってみたい。

 左手に大黒茂谷を見てから少し進むとはっきりした踏み跡があり、泉水谷に降りられる。溯行準備をしていると、山のほうからキノコ取りのおじさんが降りてきて、食べられるキノコを一つ教えてくれた。

 大黒茂谷出合の釜は飛び込んで遊べそうだが今回はさすがにヒヨる。
 なんでもないゴーロ登りだが、大きな岩の乗越では身長差がモロに出るようで神田さんが何度も苦戦を強いられる。
 5m滝はシャワークライム。寒。この滝を過ぎてしばらく行くと右岸がひらけて台地上にいいテン場がある。北側斜面で日当たりが悪いせいか焚き木はやや湿りがちだったが量はかなり豊富にある。時間は早かったが腹が減っていたので早速火を起こす。そして各自が持ってきた芋やらチーズやらウィンナーやらを焼いては食う。お酒もたくさんある。

 絶対余ると思っていた酒が全て空いたときは、もう12時になっていた。8時間も飲み食いし続けていたことになる。


10/14 晴

7:50 出発
11:40 1470m二俣
14:40 稜線

 大黒茂谷は大菩薩の北側斜面にあるため天気がよくても日陰になり朝は寒い。冷たい水の中を歩くと足がジーンと痛み沢の季節が終わっていくのを体で感じる。
 しかし黄緑の森や苔むした岩に豊かに水が流れる様がいい感じだ。

 立派な堰堤は右から越え、慎重に下る。
 しばらく歩くと小ゴルジュ入り口の釜を持った2m滝。荒木は泳いで取り付きツッパリで越えた。神田さんも泳いで取り付くまではよかったがどうしても登れず結局安河内と右から巻いた。無駄に寒い思いをさせてしまった。
 2m滝を巻いて一度河床に降り次の5m滝は左から小さく巻いて最後の5m滝はたしか直登した。

 単調なゴーロ歩きの後の50mナメ床は泥岩に凝灰岩層を無数に挟む、茶色と白の縞模様で楽しい。

 3m幅広は問題なく、次の2m、10mは直登は無理。溯行図だと10mの手前に降りているが、左からまとめて小さく巻く。これは簡単。
 で、さらに次の10mだが、下から見ると一見簡単そうに見え、荒木がど真ん中を登っていくが、少し難しそうなので安河内はその右側に取り付いてみる。
 が、落ち口に着いた、と思いきやそこはぬるりとしたナメ滝。ほんの2m程だがホールドはほとんど皆無で、クライムダウンももはや難しい。困ったなと思って左を見ると、荒木も同様にハマっている。尚も登ろうとした荒木がスリップして落ちそうになる。これはやばい。滝の傾斜は緩めなので、落ちても死にはしないが足を怪我したりはするかもしれない。
 爪先だけのスタンスに立ちこみ腰の位置にある指一本のホールドでバランスを取り、もう一方の足のフリクションを信じて体重を移しながら腕を伸ばしてガバに飛びつく。心臓バクバク。
 今までのクライミングで最も緊張した。反省。よい子は絶対に真似をしてはいけません。でも、アドレナリン大放出でハイテンション。
 お助け紐で荒木を救出し、神田さんは確保し核心部はゴボウで登ってもらった。
 本当は左から登るのかと思うが、確認はしてない。

 沢が開けて日も当たるようになり、倒木がうるさいものの明るい雰囲気になる。
 登るにつれてだんだん紅葉も進んできた。

 突然現れる大滝 12m(2段)は見事。水流から離れた左岸から登る。難しくないが落ちると大変なので一応ザイルを出す。2段目の落ち口から確保できるがあまりいい支点はない。
 次の12m、10mもお助け紐を使いつつ直登。20m(2段?)は右の溝から登ったが1段目の最後が少し難しいのでザイル使用。このあたりの大きな滝の直登はそれまでの溯行と違う雰囲気で楽しい。ちょうど太陽が正面にあり手をかざしながらルートを探す。
 溯行図の枝沢の位置が少しおかしい。

 小滝群を越えて右の支流に入り、ついに水が涸れた。ガレを登っていくと地図でも確認できるが右から入る枝沢があり、そっちのほうが深く切れ込んでいるためうっかりすると引き込まれそう。左のほうが藪っぽいが開けていて本流。最後は背の低い笹の中の踏み跡から稜線へ。

 充実した溯行だった。しかし、安河内以外の二人は大菩薩峠に行ったことが無いというので、時間を無視して大菩薩峠に向かう。
 大菩薩嶺で荒木が隠し持っていたビールを干した。ほろ酔い気分で峠までの道から見下ろす斜面は意外にも赤や黄色にすっかり色づいていて、思わぬ副産物にご機嫌。日光よりよかったんじゃん?なんて。夕焼け空に甲斐駒ヶ岳が幻想的。・・・夕焼け。
 大菩薩峠から小走りで下山するも上日川峠でTime Out。タクシーに来てもらい塩山へ。タクシーから見下ろした夜景がきれいだった。
 大月からあずさで東京に帰り、神田さんはその日のうちに大阪へ戻った。

 大変充実した2日間だった。丹沢や奥多摩の小さい沢に飽きた人は是非行ってみてほしい。ちなみにあの辺の「1級」よりは難しい。今回は初心者がいたためゆっくりだったが、溯行図の「3時間半」よりは時間がかかると思ったほうがよいだろう。