2002/5/6 女郎小屋沢
玄倉川女郎小屋沢遡行記録
文責21期佐藤
○期日 2002/5/6 朝発日帰り
○メンバー L佐藤(4)、 荒木、 高木、 曽根(2)
○行程
6:31新宿発小田急〜7:55新松田8:05〜(タクシー\7220)〜8:35車止めゲート〜9:05山北町看板〜9:10女郎小屋沢出合
女郎小屋沢出合(入渓)9:30F1 15m (ザイル)10:00〜11:104m大岩上部 休憩11:22〜11:40F36m 13:15〜14:30野猿の滝上部 15:00女郎小屋乗越 16:05小川谷廊下 壊れた堰堤(遡行終了)17:05〜17:15
林道18:00〜19:10玄倉バス停 19:40〜(タクシー\6500)〜8:05新松田
○詳細
林道歩き、遡行自体の長さを予想して最初からタクシーに乗った。(後で功を奏した)タクシーは小川谷林道分岐から更に少し入ったところまで入れる。天気は快晴、林道からは女郎小屋乗越、切れ込みの深い沢自体、枝沢まで良く見えた。沢に下りる山北町看板は分かりやすく、踏み後も明瞭。伏流した玄倉川を渡って女郎小屋沢出合いにたつ。出合いはしょぼく水は少ない。水や岩が綺麗なのは西丹沢ならでは。遡行開始。
しばらくすると雰囲気が変わってきてしっとり落ちついたいい感じになってくる。丹沢にしてはもちろん、西丹にしても上品な印象だ。なんというか、上流階級のおばあさまといった感じか。
小滝や小釜が連続し、つっぱったり濡れたりしながら楽しく登る。フリクションは良く、岩はやや脆いところもある。
・F1 15mは、見た目には簡単そうで、遡行図にも「簡単」とあった。この沢の核心部はF36mでⅢ+。ならば余裕であろうと巻かずにザイルを出す。 ビレイ佐藤、リード荒木。荒木・曽根・高木は右側を中間まで登り、水流と合流して直上するルート。下から6m、9m、10m、12mにハーケンあり。10m・12mには残置テープがかかっており、10m以外に中間を取った。
で、ビレイをしていると荒木がなかなか苦戦している。9mから上は見るからにシャワークライムでちっとも動きが無い。(※)なんとか上がって高木、曽根がプルージックで続く。二人とも同じように苦戦している。A0もあった。 ラストで登って分かったことだが、下5mからシャワークライムで傾斜は見た目から想像できるよりきつい。しかも岩は侵食されて丸く、不安なところが多い。手も足も不安定なホールドで、9mから上は水で視界が無くなった。最上部の中間を回収してもらっておいたので、水流沿いガチンコは避けて左側を登った。左手のガバがバックリ取れて焦ったりしたが(※※)水流がない分トップロープならこちらの方が楽だったろう。
私見だが、総合的に去年の新茅の大棚よりも難しかったと思う。
この後はなんていうことも無い小滝が続き、ゴルジュに入る前に日当たりの良いところで休憩。荒木さん光合成中。
・ゴルジュ最後の8m滝
階段状で簡単だが高度感があるので佐藤がフリーで上った後ザイルを出す。水流中は避けたがそっちも簡単そう。巻き道は無い。
いい感じのナメが続き、快適。
・F2 5m滝鎖あり
鎖は無かった。シャワークライムかつホールドが細かくて難しい。佐藤が取り付いたが立ち込めなくてクライムダウン。荒木突撃&突破(※)、お助け紐で確保し、全員のぼる。(※※)
4mのルンゼはズルズルで悪い。
・F3 6m
時間があまり無いのと日和っていたのとで、遡行図に「巻き道は無さそうだ」との記述に気付かず巻きを考える。結果、巻き道を探しに行ってもらった高木がハマって追っかけた佐藤とともに、シュリンゲを4本ほど残置しつつ泣きべそでクライムダウン(※※)。 その間に荒木が6m滝の中間、ヒトツきりのハーケンにシュリンゲをかけ、何とか登れそうな状態にした。 荒木リード(※)、高木ビレイ。シャワークライム。ハーケンの高さのホールドに立ってしまえば後は簡単だが下部は突っ張りに根性がいる。小柄な高木は大変だったろう。ヌンチャク一本残置。上部にはろくな支点が取れず、やばそうな岩を二つ使っていた。
・野猿の滝
傾斜も緩く簡単だが、ヌメっているところも多く、ところどころの一歩が難しい。3段目は荒木がお助けを出し、4段目は右のルンゼを突っ張りで登った。ここから先は水が涸れる。
最後のゴルジュに入っていくが、これが初めて見るような狭さ。手を広げれば両壁に届き、壁の高さは10m以上。こういうところで増水されたら死ぬしかない。岩は相当脆い。
・6CS
左の階段状をへつるように佐藤以外の三人が登る。ハーケンあり。佐藤はへつれず、CSの真下から残置シュリンゲとお助けで登った。(※※)
・CS
下部のルンゼ状がすごく脆い。岩の下から出るのだが、冒険気分で面白かった。
ここから乗越までは完全に物凄く脆いルンゼをツッパリ気味でズルズル登った。結構大変である。
乗越がこれまた初めて見る小ささである。幅60cmほどのルンゼのてっぺんから反対側に、同じようなルンゼが続いている。木に懸垂下降用と思われる残置シュリンゲあり。荒木がフリーで下ってはまる。下部に落ち葉がたまっていてそう怖そうでも無いが、荒木以外は懸垂下降。といっても支点の木とシュリンゲが頼りないので一本追加、出来るだけ荷重をかけないように下った。落石あり。結局砂まみれになったザイルは摩擦が大きくてシュリンゲから抜けず、荒木が回収に上り返した(笑)
東沢までの下降は快適。東沢には巻き道に赤テープもあり、分かりやすく簡単。枝沢だらけで読図が楽しい。
そのうち小川谷廊下本流に合流した。カメラマンの単独行の方に出会う。
小川谷の下山路は荒れていると聞いていたので登攀具はつけたまま、荒木と曽根がスニーかーに履き替えただけで下山開始。時々崩壊しており怖いが、赤テープばりばりで全体的にはエアリアに載っていいほど快適(実際載っているらしい)。まだ気を抜くなと声を掛け合いつつ林道に出、そのまま暗くなっていく道を歩いた。玄倉に着く前に携帯が通じたので在京連絡、タクシー呼び出しをして、終バス17:41がとっくに行ってしまったバス停で一息ついた。
そのまま庄やの打ち上げに直行したのは言うまでも無い。
※・・・荒木さんが死にそうと思った時
※※・・・自分が死にそうと思った時
○総評
雰囲気や景色、日当たりは相当良い。ただしシャワークライムがほとんどで、水の少なさを舐めてかかれない。水が温かければ滝はもう少し簡単だっただろうが、それでも「快適」とか「Ⅲ+」は嘘である。突っ張りをやたら使って登った。細かい所も多く、登攀初心者には薦めない。
下部はフリクション良好で岩も脆くは無いが、上部に行くにつれて加速度的に滑り易くボロボロになっていく。読図は終始簡単。ニュウでも行ける。
岩壁に薄く土が付いているだけなので巻きは困難。傾斜も急で、落ちたら死ぬ。よって巻き道はF1にしか存在せず、F3上部に確実な支点は無いので撤退するならF3以前しかない。F2には鎖が付いていたらしい支点(鉄の棒みたいなやつ)が二つあるのでおそらく懸垂可能。
東沢の下降も結構時間を取られるので、時間は余裕を持っていったほうが良い。
○反省
反省が死ぬほどある事をもっとも反省すべき。
・F1に安易に取り付いたこと
荒木さん(逆川ではへろへろだった)・曽根(沢3回目)・高木さん(シーズン1回目)が予想以上に良く登ってくれたので事なきを得たが、全員相当怖い思いをしたと思う。傾斜とホールドの様子をもっと観察するべきだった。シャワークライムになる事も予想がついたはず。普段は「遡行図なんて当てにならん」と言っているくせに、この時都合のいい情報を当てにして偉い目にあってしまったのは馬鹿としか言いようが無い。
・F3を勢いで巻こうとしてハマったこと
時間を気にして(今度は遡行図をよく読んでなかった)、左岸を巻こうとした。樹林帯かと思っていたがザレに細い木や草が生えているだけで、巻きは不可能&危険すぎる。トップを行った高木さんがセルフビレイを手放し、クライムダウン出来なくなってそれを助けに追っかけた。私は事前に、上りすぎるな・セルフを外すなと言うべきだったし、高木さんは気付くべきだった。
・F3あたりから精神的に萎えていた事
リーダーとしてはおそらく初めてプチハマったので、リーダーの癖に精神的余裕を無くして周りにも気を配らず、自分でいっぱいいっぱいだった。高木さんや荒木さんの明るさや、曽根の無表情(辛い顔されるとこっちも辛い)には救われた。メンタル面の弱さと自分の今までの奢りを痛感した。
・トップの荒木さんにおんぶに抱っこだった。
滝のトップはもちろん、ルンゼ登りもみな荒木さんにまかせっきりで、本人には聞いていないが、前日逆川の駄目っぷりから考えて、結構大変だったのではないだろうか。すいません。
・事前にビバークについてあまり考えなかった
ビバークするかもと思って初めて気付いた。好天続きのはずだったので焚き火で一晩しのげただろうが、ツェルトなしは良くなかった。ツェルトを持っていかないならメタくらいあったほうが良かったかも。
・情報収集が甘い
ネットでつかまる記録は少なくてロクなものがなく、そのまま来てしまった。情報が少ないときは警戒すべきだった。
ロクでもない記録↓
「シャワーが楽しかった」→視界見えないほどのシャワー?
「下降しようとして違う沢を下った」→知るかい
「滝はそれなりに難しい」→どれなりなんだ。確かに難しかったけど
・曽根、荷物重すぎ
なぜか彼のザックは水+砂付きザイル入りの私のザックと同じくらい重かった。本が入っていたらしい。温泉セットデポった意味がないではないか。本人は余裕そうだったので結果オーライだが、軽量化せずにばてて事故ったらただの馬鹿である。以後気をつけてほしい。
・反省まとめ
今回は精神的にも肉体的にも、メンバーに本当に助けられた。
やはり一人で沢登りは出来ないのだ。