2002/5/4-6 旭ノ川中ノ川

大峰山系  旭ノ川中ノ川 遡行記録


[日程] 平成14年5月3日(金)〜6日(月) 出合1泊・山中2泊

[メンバー] L.深畑(記,OB), SL.高田(OB)、山口(OB)、安河内(M2)

[計画]
夏に手応えのある大きな沢を遡行するには、この時期から沢に行きレベルアップを図っておかないと、後の日程が苦しくなる。私も学生時代ほど暇ではないのだ。そこで2年前の東ノ川に続き、GWに紀伊半島の沢へ行くことにした。

元々は泳ぐ沢に行くつもりだったのだが、高田が寒いと主張、むしろ滝登りがメインと思われる、大峰山系の中ノ川を目指した。


[行程]
5/3(金) 集合740:::東京830発===1123新大阪==(道頓堀で昼食)==1730中ノ川への林道入口先(幕営)

4日の天気予報が悪かった。そのため5日・6日の両日で遡行しようとの意見もあったが、渋滞に掴まらないよう6日はなるべく早く降りたいとのこと。そこで、4日も少しは遡行して、5日中に縦走路に出ようということになった。結果的には、4日も遡行したことに助けられた。

予備日はデフォルトで使用することとなった訳だが、その連絡を在京の藤森にし忘れてしまう。幕営地点は携帯など入る筈もない山奥。失敗した。

旭貯水池より先の林道は、切れ落ちている所もあり暗くなってからではあまり通りたくない。この日は移動だけなのに東京発等の時間が早いのはそのため。

5/4(土) 曇 ときどき 小雨
起床530:::幕営地700---730中ノ川出合800---1000地獄滝上---1200十字峡---1340モジケ小屋---1430ヒジキ滝上(幕営)

吊橋で本流を渡り、その先で中ノ川に降りる。降り口は悪く、残置ロープに全面的に頼る。この沢は釣り人が大勢入っているようだ。
中ノ川は水量としてはかなりしょぼい。中村成勝氏の本で水勢に★★が付いていたので期待していたのだが、これでは渡渉の練習には全くならない。

河原をしばらくいくと5m滝。左壁を登る。簡単。普通は右壁を登りたくなるのだが、そうすると登った後で困る。

次は地獄滝40m。ガイドは右を、二つあった記録は左を巻いている。全体の感じから、左は果てしなく上に追い上げられそうだったので、右から行くことにする。けれども、取り付きが登れない。二度にわたる投げ縄で支点を作り、何とか太い木の上に這い上がる。木にしがみ付いて登ったので、腕が傷だらけになってしまった。5m滝で我々が追い抜いた単独行の男性は、ここで引き返していった。

太い木の少し先でザイルを出し後続をビレーする。ここで安河内落下。かなり見事に落ちたらしい。ビレー地点から先は突然立派な踏み跡になっていて、左上へ続いている。落口近くからまた道が悪くなったので、ザイルを出してルンゼをトラバース。さらに懸垂下降して沢床に戻った。計3回ザイルを使用し、1時間強の巻き。

ほどなく極楽滝40m。すっきりとした美しい滝で、直登は絶望的に思えるが、右岸のブッシュから岩塔の上へ至り、滝身の左上を登ることができる。簡単だが、高度があるのでザイルは必須。落口には残置ハーケン一本あり。もう一つ打ち足してアンカーとする。直後の3段12m滝は、ラストで登ってきた山口のリードで巻いた。見た目より難しく、最後のトラバースは少々嫌らしい。なかなか疲れる沢だ。

そして、本日最後の難関、牛鬼滝のゴルジュ。暑い時期に熟達者ならば泳いで突破できるらしいが、今日は二つとも条件が満たされていない。今度は、今まで後ろでぬくぬくとしていた高田を先頭にして高巻く。トラロープに全面的に頼って登り、適当にトラバースしてゴルジュを巻き終えた辺りから懸垂して沢床に戻る。トラロープが残置されてなかったら、ここの登りはかなり厳しい。

あとはいくつか小滝をこなすとモジケ沢小屋。しかし、連休中とあって他にも人かいたのでもう少し先まで行く。小屋の手前にはいくつもあった幕営適地が見つからず、結局ヒジキ滝まできてしまう。この滝は、高田のセンスで左から小さく巻けた。その先に、屋根付き、平坦、水はけ良好のベスト・ポイントがあり、そこで決定。ただし、どんなに絶好のロケーションと思っても、きちんと整地すべきという教訓を、その晩我々は噛みしめた。

いつものように焚火して、その晩は安河内のマーボ春雨を食べた。


5/5(日) 曇
起床530:::幕営地730---800ツナウチ谷---1000ササモト谷---1100黒ナメ八丁1120---1310三俣1325---1630七面山1645---1820楊子ヶ宿後(幕営)

夜間寒かったため起床直後にお茶を湧かしたりしていたら、7:00発の予定が7:30になってしまった。

この日はさらにハードな一日だった。まずは、すぐにナメ滝4mが出てくるが、釜が深くこの天気では取り付けない。左から巻く。以降、数多くの滝が出てくるが、右からもしくは左から、時には小さく、時には大きく巻いた。あまりにも数が多過ぎて、その詳細はいちいち覚えていない。巻きは概ね易しい。しかし、安河内にトップをやらせると、何故だかいつも難しい方へ難しい方へと行ってしまっていた。大いに勉強になったことでしょう。

F12:6m廊下状で手こずった。腿まで水につかって廊下を越えたものの、ここも釜があって行手を阻まれる。山口が非常に苦労して右壁をへつり右から巻くことに成功したが、釜にドボンとなる確率は極めて高く、その上の滝も巻く必要がありそうだったので、左から巻くことにする。高田に少し見てもらったが、小さく巻くのは難しくて断念。再び廊下を戻って、左のルンゼから巻いたが、予想以上の大高巻きとなった。ルンゼの登りは見た目ほど容易ではない上、落石注意。さらに、ルンゼを渡るためにザイルまで出すはめに。たとえ釜に落ちても山口のように右壁からトライするのだった。但し、この高巻きも踏み跡あり。

黒滝40mは圧巻の眺めである。周囲の大岩壁と相俟って荘厳な雰囲気さえ漂う。
黒滝の巻きは、左の小尾根から取り付いて左に周り込むような感じで尾根の上に登り、ジャスト・ポイントで落口まで降りられる。落口は穏やかなナメとなっていて、直後にあれ程の大滝があるとは想像し難い。

黒ナメ八丁も越えると、谷は傾斜を増してガレが多くなる。今晩は水のない稜線に泊まるため、水汲み後各自2〜3kgも重くなる。予想よりも水が早く消えてしまい水を汲むために少し戻ることになった。

午後1時過ぎ三俣に到着。まあまあだろう。コースタイムの1.5倍でこなすのがやっとという感じではあるが、あとは詰めだけだ。長目のシュリンゲ等を残して装備解除する。

しかしその先で、幅の狭まった谷に巨岩が挟まり完全に針路を塞がれてしまった。偵察した高田によるとちょっと登れそうになくしばし退却。右岸の尾根は脆い岩が多くて悪そうなため、左岸の小尾根に上がる。この小尾根を登っていけば、そのまま直登か、右のルンゼを絡むか、左の本流に戻るか、どれか一つは活路が開けるだろうと考えた。もはや稜線は、そう遠くない筈だ。カラビナやシュリンゲをザックから再び取り出す。まずは、シュリンゲで簡易に確保して小さいルンゼを渡り、そこから疎林の急斜面をほぼザイル一杯登ってピッチを切る。セカンドで登った山口が偵察に行き、この先に岩塔があるが右からかわせるだろうとの報告を持ってくる。もはや3時過ぎ。もう一はまりしたら、ビバークだ。

さて、岩塔の基部は良く踏まれているが、山口が言った右からのルートはちょっと危ない。かといって、左の本流の沢床を見通せばガレガレである。少し左から岩塔を直登しようかと思ったが、登った先ではまったら、これはかなり厄介だ。

もうちょっと左奥まで行って、沢を良く見てみたら、なんだもう源頭ではないか。遠くからはガレガレで遡行不能に見えた沢床もそれほど悪くない。これにて一件落着。とは言え慎重に沢身に戻り、落石等気を付けながら小滝を越える。すぐ左が尾根となるが、折角なので最後まで忠実に沢を詰めて遡行完了。最後は草原状で心がなごむ。鹿もなごんでいるようで、糞がいっぱい。

ここからは草原状の斜面の登りだが、みんな疲れているので山頂がなかなか近付かない。七面山山頂に着いたところでみんなと握手。

ここからは大峰の主稜線に出れば良い。道が悪いとガイドにあったが、テープが鈴なりで、踏み跡もはっきりしている。しかし、そのまま鈴なりのテープとはっきりした踏み跡に導かれて七面山西峰から七面山東峰へ。縦走路はどこ?
時刻は5時を回った。ここまで来てれば気は楽だが、明日のことも心配だ。来た道を戻ってもらった高田が細い踏み跡を発見し、そこから緩やかな尾根道を辿って主稜線へ出る。あまり展望もきかず風も強いがいい気分だ。しかし、それ以上に疲れている。何とか日没直前に、楊子ヶ宿跡まで下ってテントを立てた。その僅か先に、綺麗な避難小屋が建っているのに気付いたのは翌朝歩き始めてからのこと。

この日の晩は、深畑が持ってきたマーボ春雨を食った。3日続けてマーボよりは大分ましか。

5/6(月) 晴れ
起床400:::幕営地515---740釈迦ヶ岳800---930林道945---1030車に拾われる===1130夢の湯1310===1600新大阪

何ということもない縦走路である。ただし、昨日までの疲れもあって、コースタイムで歩くのが精一杯だった。大台ケ原や尾鷲沖の海が見えた。

林道を遅れて一人で歩いていた高田に親切な方が声を掛けてくれた。高田が我々まで追い付いたところで、ヒッチハイカー交代。じきに山口車が迎えにきてくれた。

温泉は普通。しし汁定食とかいうのをそこで食べた。渋滞にも掴まらず、午後4時、新大阪に無事着いた。


[総評]
それなりに面倒な滝の巻きが、兎に角次から次へと山のように出てくる沢である。暖かい季節であれば、泳いで取り付きいくつかの滝の巻きは省略できるだろうが、それでも非常に多いことに変わりはない。それらの巻きは、大抵は易しく命の危険も殆どないが、正解を外すとその限りではないだろう。まともな判断力を持った人間が一人しかいないと、この沢は危険である。今回は3人もいたので、かなり余裕を持って遡行できた。

水量は多くない。井戸沢など奥秩父の有名どころと同程度である。中村成勝氏の本で水勢・泳ぎに共に二つ星が付いている理由は良く分からない。そもそも流域面積が知れているので、水勢が強い筈がない。

釣り人が沢山入っているようで、巻き道の踏み跡ははっきりしていて、トラロープも多くかかっている。しかし、黒滝より先は、踏み跡は薄くなる。

ガイドでは極めてあっさり書かれているが、かなり手強い沢である。命の危険は低いものの、こなすべきポイントが非常に多く、それなりの技倆に達してから行くのが良いだろう。小室川谷を2ランク位難しくした感じか。グレードとしては3級上はあるだろう。