2014/8/2-4 赤木沢遡行・北ア縦走
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
赤木沢遡行・北ア縦走山行計画書 メンバー・在京用 ver2.0 作成者 川名
■日程
赤木沢遡行のみ:8/1(金) - 8/4(月) 山中2泊3日(予備日1日)
赤木沢遡行+北ア縦走:8/1(金) - 8/7(木) 山中5泊6日(予備日2日)
■山域 北アルプス
■在京責任者 成毛
■在京本部設置要請日時
赤木沢遡行のみ:8/5(火) 21:00
赤木沢遡行+北ア縦走:8/9(土) 21:00
■捜索要請日時
赤木沢遡行のみ:8/6(火) 11:00
赤木沢遡行+北ア縦走:8/10(土) 12:00
■メンバー
CL川名 SL久光 ・土松
8/2(土)-8/4(月) 川名 久光 土松
8/4(月)-8/7(木) 川名 久光
■集合
8/2(土)5:30 ビジネスホテル立山前
■交通
行き
川名・久光
8/1(金)青春18切符利用で富山駅へ。富山駅周辺のカラオケで5:00まで宿泊。
土松
8/1(金)東京発の夜行バスで富山駅に8/2(土)5:00着
5:40-7:00 富山駅ータクシー(富山地鉄タクシー)ー折立 \17000? 予約済み
帰り
赤木沢遡行のみ:折立-富山駅 10:20/12:10/14:00 - 12:20/14:10/16:00 \3500
北ア縦走:山のホテル前-松本駅 11:35/13:35 - 13:30/15:30 \2880
■行程
1日目(5:20(10:10))
富山駅ー折立ー2:00ー三角点ー1:30ー五光岩ベンチー1:30ー太郎平小屋ー0:20ー薬師峠キャンプ場
(天気と体調によっては薬師岳をピストン 4:50
薬師峠(荷物デポ)ー1:50ー薬師岳山荘ー1:00ー薬師岳ー0:40ー薬師岳山荘ー1:20ー薬師峠)
2日目(9:35)薬師峠キャンプ場(荷物デポ)ー1:15ー薬師沢左俣出合ー1:00ー薬師沢出合ー1:30ー赤木沢出合ー2:00ー二俣ー1:30ー稜線ー0:50ー北ノ俣岳ー1:10ー太郎平小屋ー0:20ー薬師峠
3日目(11:35(11:55)) (薬師岳カットの場合6:45(7:05))
薬師峠(荷物デポ)ー1:50ー薬師岳山荘ー1:00ー薬師岳ー0:40ー薬師岳山荘ー1:20ー薬師峠ー0:20ー太郎平小屋ー1:55ー北ノ俣岳ー0:30ー赤木岳ー2:20ー黒部五郎岳ー1:40(稜線コース2:00)ー黒部五郎キャンプ場
赤木沢のみ:太郎平小屋ー1:00ー五光岩ベンチー1:00ー三角点ー1:10ー折立
*赤木沢のみの隊とは出発時or太郎平小屋で別れる。
*薬師岳カットの場合、天候の様子によっては三俣蓮華キャンプ場まで進む。
*早発を心がけること
4日目(9:05)
黒部五郎キャンプ場ー1:40ー分岐ー0:50ー三俣蓮華キャンプ場(荷物デポ)ー1:30ー鷲羽岳ー1:00ーワリモ北分岐ー0:50ー水晶小屋ー0:40ー水晶岳ー0:30ー水晶小屋ー0:40ーワリモ北分岐ー0:40ー黒部源流分岐ー0:45ー三俣蓮華キャンプ場
5日目(8:30)
三俣蓮華キャンプ場ー1:00ー三俣蓮華岳ー0:55ー分岐ー0:25ー双六岳ー0:45ー双六小屋ー1:10ー弓折分岐ー0:40ー大ノマ乗越ー1:30ー秩父平ー1:00ー抜戸岳ー1:05?ー笠ヶ岳山荘
6日目(7:00)
笠ヶ岳山荘-0:10?ー笠ヶ岳ー2:10ー雷鳥岩ー2:10ー水場ー2:30ー中尾高原口
*温泉:ひがくの湯 \700 新穂高の湯 シャワー等はなしの露天風呂のみ。無料
■エスケープルート
一般登山道
黒部五郎キャンプ場まで:折立へ
黒部五郎キャンプ場ー秩父平:小池新道で新穂高温泉へ
秩父平ー笠ヶ岳山荘:笠新道で新穂高温泉へ
槍ヶ岳山荘ー:そのまま進む
赤木沢
薬師沢小屋へ引き返すか、そのまま進む。
■地図
2.5万分の1 「笠ヶ岳」「三俣蓮華岳」「薬師岳」「有峰湖」
エアリア 「36 剣・立山」「37 槍ヶ岳・穂高岳」
■共同装備
救急箱(有紗):久光
テント(ゴアライト):久光
ポール: 土松→川名
ペグ: 川名
鍋(小型): 川名
カート*5: 土松→久光
ヘッド*2: 川名
おたま: 川名
しゃもじ: 川名
ロープ(8.6*30m): 川名
ラジオ: 川名
■個人装備
□ザック □ザックカバー □登山靴 □替え靴ひも □ヘッドランプ □予備電池□雨具 □防寒具 □着替え □地図 □コンパス □水 □ゴミ袋 □筆記用具□計画書 □トイレットペーパー □ライター □非常食 □行動食 □常備薬 □学生証 □保険証 □現金 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む)□新聞紙 □軍手 □帽子 □コッヘル □武器 □ナイフ □シュラフ □銀マット □風呂セット
(□サンダル)
沢装備
□沢足袋 □ヘルメット □ハーネス □スリング(60cm*2, 120cm*2) □カラビナ(2)□環付カラビナ(2) □確保器・下降器 □笛
■遭対費
600円
■備考
日の出: 富山8/3 4:58
日の入: 富山8/3 18:56
NHKラジオ第二: 富山1035Hz 松本1512Hz
赤木沢遡行・薬師岳山行記録 文責:川名
*発着時刻は記録が判明している場合のみ記載
■日程 2014年8月2-4日
■山域 北アルプス 黒部川源流域
■メンバー 土松・CL川名・SL久光
■行程
■0日目
北アルプスへのアクセスは遠い。しかもそれが富山側からとなれば一層のもので、終電で行くことにしても昼過ぎには東京を出なければならない。各駅停車の進みは遅く、新潟県に着く頃には既に日が落ちていた。おまけに、乗り換えの時間に夕飯を食べようとすれば花火大会なのかお祭りなのか、どの店も混んでいて入れずパン屋のテイクアウトで済ませることになり、さらには事故で電車が大幅に遅延する。なんとか富山駅には辿り着いたが、時刻は既に深夜2時になっていた。今後の天気予報も雨と良いことがほとんどない。駅近くのカラオケに行き、わずかばかりの仮眠をとる。
■1日目
□天候 晴れのち曇り
□行程
折立ー太郎平ー薬師峠キャンプ場
眠気を押して起床し、夜行バスで富山駅に着いた土松さんと合流する。こちらはあまり良い睡眠は取れなかったが、土松さんは夜行バスが意外にも快適だったのでよく眠れたそうだ。富山駅から満員の折立行きバスに乗って登山口へ。実は、前日まではバスの予約が取れずにタクシーで行くことになっていたのだが、悪天予報のためかキャンセルが出た所になんとか滑り込めたのだ。天気が悪いということに思いがけず助けられたが、人気のルートでは早めに予約を取らなければならない。反省。
折立で出発準備。駐車場はほとんど埋まっていたと思う。エアリアではここに水場マークがあるが、現地の水道には「飲めません」の文字。久光はここで水を汲もうと思っていたらしく、仕方なく飲料用ではない水を飲むことになる。始めから汲んで持ってくればいいのに。折立から太郎平への道はいたって快適。テクテクと歩いてやがて森林限界を越えると、有峰湖の展望が良い。また、ここからは富山平野も見れる。少し曇りがちなのが残念だが、いい景色だ。草原が広がる所まで登ると登山道が非常に幅広になり、整備もかなり行き届いている。傾斜もゆるくなるので、歩いていても苦痛ではない。北アルプスのルートに詳しいわけではないが、北アルプスの稜線に上がる径路としてはロープウェイを除けば一番楽なのではないかと思う。
のんきに歩いているうちに太郎平小屋に着く。ここには山岳警備隊が常駐していて、ここで登山届を提出できる。また、この稜線まで来ると東面の見晴が良くなり、かなり良い展望が得られる。黒部川を挟んで水晶・鷲羽が見事だし、雲ノ平の高原らしい地形もよく分かる。槍ヶ岳もわずかに見えて良いものだ。展望を楽しんだ後は薬師峠キャンプ場へ。ここは太郎平小屋が管理しているが、受付やトイレ・水場はテン場のすぐ近くにあり、テン場もかなり広いので快適。15時ぐらいになるとバイトの学生らしきスタッフが先輩にからかわれながら受付などのアナウンスをしていた。ビールの販売もここでやるらしい。小屋まで片道10分強はかかるので、ここで全て済むというのはありがたい。翌日の天気予報は良くはないが、増水して遡行不可能になるほどではないだろうと期待して、就寝。後半の行程が川名・久光の二人だけになることを考慮してテントは2-3人用ゴアライトにしたが、さすがに男3人ではかなり窮屈だった。
■2日目
□天候 晴れのち曇り
□行程
薬師峠キャンプ場ー薬師沢出合6:40ー7:55赤木沢出合ー9:15大滝ー11:15登山道11:45ー12:14北ノ俣岳ー13:37太郎平小屋ー13:50薬師峠キャンプ場
アラームが鳴らなかったためやや遅れての起床。薬師沢出合までの道を急いで進む。木道のため朝露で滑りやすいが、道そのものは悪くない。薬師沢出合に着き、薬師沢小屋前のベンチを借りて沢装備の準備。寒そうなので雨具のズボンも着る。他のパーティーが一組先に出発したのを追う形で、いよいよ遡行が始まる。黒部川はかなりの沢幅があるのに水深が腿近くまである箇所があり、さらに水流も速いのでどこでも渡渉できるわけではない。これまでに行った沢とは比べようもないスケールの大きさだ。適当に渡渉を繰り返して進むうちに先行パーティーを追い越す。この後は他のパーティーに会うことはなかった。中には腰近くまで浸かるところもあるので体が冷えるが、この頃はまだ晴れていて日向を進めば回復する。
しばらく進むと3mくらいの滝が出てくる。ここは通常左岸から巻くらしいが、残置スリングにつられて右岸をへつって越える。ここが中々バランスが必要だったが、なんとか全員越えることが出来た。下はかなり深い釜なので落ちても怪我はしないだろうが、泳ぎが上手くなければ水流によっては溺れる可能性もあるので、初心者連れであれば巻くのが賢明だろう。岩質のせいか釜は深い緑色になっていて、底が見えずに恐ろしくもあるがそれがまた美しい。この先しばらくするとミニナイアガラの滝と呼ばれる沢幅一杯の小滝があるが、高さは数十cmほどしかないしょぼさなので、ナイアガラの滝の名前を借りるのが申し訳なくなるレベルである。
ミニナイアガラの滝の後はすぐに赤木沢出合になる。出合は深い淵になっていて、このころには大分空も曇ってきたので巻いて進む。その先にはナメが広がり、その美しさにしばしの写真撮影タイム。青空でないのが残念だが、それでもその美しさは一級である。沢床は赤っぽいがヌメっているわけではなく非常に快適なところだ。この後出てくる滝もスケールが大きいのに容易に越えられるので楽しめる。深い釜を持つ10m滝は、かつての2001年の雷鳥の記録ではシャワークライムで突破したらしいが、大人しく左岸を巻く。巻きの最中にもお花畑の中を歩くことが出来る。全くもってなんと贅沢なことか!この後もいくつかの滝を越え、大滝に至る。ここはもちろん直登できないので、左岸のリッジを巻く。今回ロープを出すとしたらここだろうと思い、土松さんにトップをお願いするが、人がよく入っているためか巻道は良いので、フリーで通過。
この先、もうあまり釜は出て来ないだろうというところまで進むと、名残惜しさで泳いで楽しむ。しかし、川名が泳いだ際にメガネを釜の中に落としてしまう。防水カメラで釜の中を撮ったり、頭まで潜ったりして落としたメガネを捜索するが、水の色が濃く中々見つけられない。そうこうするうちに雪解け水の非常に冷たい沢水に体温を奪われて、意気消沈。メガネはあきらめて先に進む。ちなみに、後日写真を確認しているとメガネが写っていた(現地で気付けていれば!)。
水を汲んだ後はいよいよ詰めに入る。踏み跡がはっきりしているわけではないので、雪渓を避けるようにルートを取る。このあたりはお花畑が広がっていて非常に美しいのだが、その中を踏み荒らして進むのが心苦しい。しばらくで登山道につき、沢装備を解除。この頃には周囲はガスに覆われてしまい、展望がないのが残念だったが、この辺りの登山道はお花畑や池塘の中を通っているのでそれらが楽しめる。帰路は快適な道を飛ばして薬師峠キャンプ場へ。土松さんにおごってもらったビールを片手に、沢の素晴らしさを語らって就寝。
■3日目
□天候 雨のち晴れ
□行程
薬師峠キャンプ場ー薬師岳山荘ー5:26薬師岳ー薬師岳山荘5:59ー薬師峠キャンプ場ー太郎平小屋ー12:00折立
今後の行程は北アルプスの縦走となるので、早朝テントを出発するときに土松さんとはお別れに。川名と久光は日の出前に薬師峠を出発して薬師岳をピストンする。しかし、ヘッドライトの明かりのみを頼りにガスの中を進むのには難儀する。道が枯れ沢沿いについていて、しかもところどころ雪渓も出てくるので道が非常にわかりにくい。雪渓が出てきて別の道や赤テープを探し、正しい道を二人で検討するが、そうこうしている内に後ろから来た人が迷わず雪渓の上を進んだりしている。ちなみに、正しい道は雪渓の外にあったので、あの人も迷っているのだろう。森林限界を超えると雨風が強くなり、顔に当たる雨が痛い。しかもペンキの印も見つけにくく、やっとの思いで薬師岳山荘にたどり着く。これまでの困難を踏まえ、ここで日の出を待ち、歩きやすくなってから出発する。道に迷うことはないものの、雨風は弱まっていないのであまり楽しめない。途中の避難小屋は全く役に立たないような大きさで、むしろ避難小屋の碑ではないのかと思うほどだ。やっとの思いで薬師岳に着いたものの、物陰でしばしの休憩をとるだけであまり感慨はない。
速く雨風を避けたいのですぐに出発。森林帯の中へと急いで進む。悪天の中でも少しは良いことがあるのか、途中では雷鳥が1羽姿を見せてくれた。川名は雷鳥を見るのはこれが初めてなので感激。噂に聞いていたとおり登山者が居てもほとんど気にせずに平然と振舞っている。ハイマツに隠れるまでずっと観察していたが、体型は結構ずんぐりと太っている気がする。低温に適応して太ったのだろうか。それでも可愛らしさがあるのが大したものだ。下りでもハイマツとガレた枯れ沢の中では道がわかりにくい。しかもこのころには雨のせいで枯れ沢が水流のある沢になっていて、相まって不快な道だ。薬師峠キャンプ場についた頃には大分雨は弱まっていたが、これだけで既に疲れてしまった。
テントの中には既に土松さんの姿はなく、もう折立に向けて出発してしまったようだ。川名と久光は今後の天気の情報を仕入れるためにしばらくここで休憩する。というのも、この日の行程は長い上にほとんど森林限界上の稜線を歩くので、悪天の中ではかなりの困難を強いられるためである。太郎平小屋にも行き、ここで提供されるヤマテンの天気予報も見る。どうやら、今後ずっと天気は良くないようだ。大きく崩れるというわけではないがほとんど雨でしかも下り坂らしい。これでは今後山を歩いてもほとんど楽しめないだろうし、今日の薬師岳でも大分意気消沈していたため、あと3日の行程を残して下山を決意。土松さんの後を追う。
太郎平を越えて高度を下げていくと、ガスが晴れる。どうやら高所のみが雨雲に覆われているようで、途中からの道は乾いていた。こうなってくると下山するのがバカバカしいが、天気が良いのは低いところのみ、と自分に言い聞かせて下山。バスに間に合うように急ぐが、予備日も含めればあと5日分の食料と沢装備が入ったザックは重く辛い。なんとかバスに駆け込んで富山駅へ下山。
■総評
・折立行きのバスは早めに予約を取らないと埋まる可能性があります。
・赤木沢は、奥多摩や丹沢の沢とは比べようもなく非常に美しい。遠方にあるのが難点だが、ルートをうまく取れば登攀具やロープは必要ないくらい簡単な場所なので、沢をやっている人は是非一度行くべきだと思う。釜ノ沢より簡単という評価にも同意。薬師峠キャンプ場を早発すれば、1泊2日の行程で折立まで降りられるだろう。
・黒部川奥の廊下は語られることが少ないが、この部分も中々面白い。登攀的な楽しさはないが、そのスケールの大きさはさすが黒部川といったところである。いつか上ノ廊下にも行ってみたいものだ。
・沢ではメガネは落とさないようにバンドを付けるなどの工夫をしたほうが良い。特に泳ぎが見込まれる沢では。
・空が明るくなる前に、しかもガスの中で行動するのはかなり難しい。通い慣れている場所でもなければそのような条件で行動するのは控えたほうが良いと思う。