2015/6/11 小川谷廊下

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
小川谷廊下遡行計画書 Ver. 1.0
作成:丸山

■日程 2015年6月11日 日帰り
(午後から雨の場合本間沢へ、午前から雨の場合中止;前日20:00までに判断)

■山域 西丹沢

■メンバー
CL丸山,SL久光,迫野

■集合・交通
戸塚駅西口モリフルーツ前に6:30(迫野)
セブンイレブン門沢橋店に7:30頃(久光)
東名高速を経て8:30頃穴ノ平橋着予定

■行程
穴ノ平橋-10-入渓点-230-東沢出合-60-穴ノ平橋(計300=5:00)
http://yahoo.jp/rzW4oH
※時間があれば東沢を遡行・下降

■エスケープルート
右岸の中の沢径路に詰める
特に、罠場沢向かいの作業路、ヒエ畑沢、大デッチ沢などはエスケープしやすい。

■地図
2.5万分の1地形図「中川」
山と高原地図「丹沢」

■遡行図
「東京起点沢登りルート120」p.104-105
「丹沢の谷110ルート」p.192-193
ほか多数あり

■備考
・日没(山北町)18:59

■管轄警察署
松田警察署0465-82-0110

小川谷廊下遡行記録
作成者:丸山
■日程 2015/06/11(木)

■山域 西丹沢

■天候 薄曇り

■メンバー・オーダー(計3人、敬称略)
CL丸山,迫野,SL久光

■総評
小川谷廊下:2級? 小川谷東沢序盤:1級下
小川谷廊下は、超楽しい、美しい、つまらないところや辛いところが無い、と3拍子
揃った沢で、確かに丹沢一の秀渓と評する人が多いのも頷ける。一般に2級とされる
が、人気沢で残置や情報が多いため、本来難しいところも易しくなっており、本当に
2級とするのが適切かどうかは疑問。
小川谷東沢は、小川谷廊下とは雰囲気が異なり穏やかで、ナメの美しい沢。この沢だ
けでも、マスキ嵐沢などよりはいい沢だと感じた。技術的に難しいところは皆無。倒
木が多少邪魔。
心配していた天気も結局問題なく、私がこれまでに関東近郊で行った沢登りの中で、
最も楽しめ、充実したものとなった。東沢の意外な美しさにも触れることができ、大
満足である。

■行程
以下の文章中で、「2年前」とは2013年7月27日の小川谷遡行のことである。
滝のFナンバーは下記のブログに、落差は東京起点沢登りルート120に拠った。
(http://15771327.at.webry.info/201505/article_1.html)

8:43 西丹沢県民の森駐車場着
平日にしては大きな渋滞には巻き込まれずよかった。ここまでの道は、一部未舗装部
分や落石があるが、一般車で問題ない。

9:07 駐車場発
24分も出発準備にかかっているなんてかかりすぎな気もする。
最初、林道沿いにケルンが積んである場所から下ろうとしたが、穴ノ平沢の堰堤上に
出てしまいそうだったので引き返す。さらに林道を下ると、2年前にも見た小川谷方
面へと続く踏み跡を見つけ、それを下降。極めてスムーズに入渓点へ降りることがで
きた。

9:25-9:36 入渓点
入渓点で、丸山と迫野はウェットスーツを着た。

9:45 F1 3m
すぐに最初の滝。滝壷に梯子が落ちていたが、これは5月27日にはF2の右側に架かっ
ていたものらしい。いくらF2が登りにくいからとはいえ、沢に梯子まで残置するのは
やりすぎではないかという気がする。F1自体は右から登れば簡単で、全員フリーで越
える。

9:50 F2 5m
右側に鐙がかかっていて登れるが、このような残置が無かったら非常に難しいだろ
う。鐙を利用しても多少バランスを要するので、お助け紐使用。

10:00 F3 6m
丸山が左からフリーで越えたが、選んだルートがあまりよくなかったか2年前の印象
ほど簡単でもなかったので、後続はメインロープで確保。フリクションノットか中間
結びかを決めていなかったが、上下が見通せたので事無きを得た。

10:20-10:30 F4 2段7m
丸山が水線沿いにフリーで越え、後続をお助け紐で確保。お助け紐が水流で流されて
取りづらいところへ流れてしまい、やや手間取る。水流は強いがホールドはしっかり
しており難しくはない。
この先も小滝が連続し楽しい。滑り台もできる。

10:54 4m滝
丸山は水線を直登したが結構難しかったし、かなり濡れるので後続には右を巻いても
らった。しかし、巻きも思ったより簡単ではなかったようで、久光さんがお助け紐を
出していた。
この先、罠場沢出合対岸には、前情報通り非常に立派な作業路がある。エスケープ
ルートとして有効。

11:05 F5 2条3m
右からでも左からでも好きなルートで登れる。この先の廊下状のゴルジュはとても美
しい。

11:10-11:40 F6 6m
2年前にこの滝上のゴルジュの巻きで佐々木さんが落ちかけた要注意ポイント。残置
スリングが2つかかっていて、難しいが直登出来るらしいので丸山が取りついてみる
が、出来そうもなく釜にドボン。大人しく巻くことにして、右の岩を登るが、意外と
滑りやすく登りにくいのでお助け紐使用。危険なF6上のゴルジュの巻きは避け、滝上
すぐの場所に見つけた残置ボルトを利用してゴルジュへと懸垂下降。実際には、クラ
イムダウンもできそうな感じ。ゴルジュの通過は特に難しくないし、楽しい。これに
より危険箇所は無事通過。

11:48 F7 3m
裏をくぐれる滝ということなので、折角なのでくぐって右壁を登った。簡単。

11:55 F8 ツルツルの大岩 6m
小川谷名物。残置ロープを使ってゴボウで登った。本当にツルツルで、残置が無かっ
たらこのルートでは登れそうにない。

12:13 F9 4m
水流左が階段状で登りやすかった。体のすぐ右で水量の多い滝が落ち大迫力。
この周辺のゴルジュも非常に美しい。1つだけどう見ても直登できない滝があり、左
を小さく巻く。

12:27-12:58 F10石棚2段20m
石棚前衛7mの滝は容易に直登し、昼食休憩、記念撮影、滝行などをした。

12:59-13:23 石棚の巻き
リード久光、ビレイ・セカンド迫野、ラスト丸山。迫野が笛のコールを間違えた以外
は順調で、速かった。4月の鳥屋待の時に比べたらだいぶ成長した気がする。登攀自
体は簡単。巻いた後、さらにその先のゴルジュを巻くルートもあるが(2年前はこち
ら)、巻きは事故が起きやすい場面であるし、ゴルジュに下りた方が楽しそうだった
ので、クライムダウンでゴルジュに下りた。

13:26-13:44 石棚上のゴルジュ
釜を備えた樋状ナメ滝が2つもあり、滑ってくれと言っているようなもの。よく滑る
中を突っ張って登ったり、上から滑ったりするのは物凄く爽快で楽しい。全員して滑
り台をする。2年前はこんな楽しい場所を巻いていたなんて。
ゴルジュを過ぎてからも、美しい小滝やナメ、深い釜などがあり、滑ったり飛び込ん
だりして遊びまくる。特に、13:45の写真のスラブは超ツルツルで、何度も滑り落ち
た末、やっと直登できた。ここはラバーソールだと簡単に登れるらしい。

14:07-14:13 F11 4m
この滝は泳がなければ取りつけない滝で、丸山・迫野は直登、久光さんは左巻き。倒
木がいいところにあり、足がかりにして登れるが、水流強くやや難しい。と思ってい
たら、迫野もフリーで登ってきたので感心。
この先も小滝が連続し滑り台などをみんなで楽しむ。

14:43-15:15 F12 8m樋状
小川谷最後のこの滝は、2年前には巻いた滝で、今回は直登しようと意気込んでい
た。リード丸山、ビレイ・ラスト久光、セカンド迫野。右から取りついて残置スリン
グまで直登し、そこからさらに上を目指したがよいホールドが無いので少し降り、残
置からA0で左の水流方向へトラバース。ここがバランスを要し難しかった。その先は
水流沿いに登るが、ホールドは十分にあり難しくない。滝上にはよい支点が無いの
で、仕方なく残置ボルト1つでビレイ。上からビレイされていることもあってか、後
続は問題なく登った。
この滝のすぐ上には、これも有名な壊れた石積み堰堤がある。昭和30年代に壊れたも
のらしいが、かつて重機を使わずにこれほどの構造物をつくったことに感嘆。

15:35 東沢出合
時間がまだあるので東沢へ入ってみた。緩やかで平和な沢で、ナメやナメ滝が多く癒
される。難しいところはない。

15:56 引き返し開始
樋状8mの滝を登ったところで、その先は暫く単調そうだったし、時間も時間だったの
で引き返す。

16:22-16:35 仲の沢径路入口
径路の入り口を見つけるのに少し彷徨ったが、無事2年前と同じ場所を見つける。そ
こで休憩し、迫野と丸山はウェットスーツを脱ぐ。
ワサビ田を経て踏み跡不明瞭となったが、適当に登るとすぐに径路に出た。仲の沢径
路はところどころ崩壊しかけているものの、危険箇所にはロープがある現役の径路で
あり、傾斜も緩やかで全体的には歩きやすい。ただ、滑落したら大事故につながる場
所は多いので、注意は必要。

17:30 仲の沢林道
ここから2分ほどで車に着いたが、圏外のため下山連絡は出来なかった。

■見つけたもの
・シカ:入渓点を探しながら林道を歩いている時に遭遇。鳴き声も多く聞こえた。
・カジカガエル
・小鹿の骨:迫野が持ち帰りたがっていたが、まだ序盤だったので時間進行の不安が
あり諦めてもらった。
・60cmスリング:新しくてまだ使えそうなのが落ちていたので頂いた。
・石版:F4上にある昭和51年に18歳で亡くなった女性の記念碑。達筆で読めない。
・魚影:本流には魚は見当たらなかったが、東沢で見かけた。

■感想・備考など
・今回、特に危険を感じるような場面は無かった。昨年6月から現役生CLによる沢遡
行が再開されたわけだが、ほぼ1年経ち、ようやく小川谷廊下を問題なく遡行できる
くらいのレベルになり、達成感を感じた。
・6月の平日だったためだろうが、超人気沢なのに他の遡行者に会わず、自分たちだ
けで楽しむことができ、非常に良かった。
・迫野の登攀能力は顕著に向上している気がする。その調子で。
・心配していた天気は問題なかった。日頃の行いが良かったということにしておこ
う。
・水量は多少多かったように思うが、特に難しくはなく、むしろ滝の迫力が増してい
てよかった。
・水量が多く冷たそうなのでウェットスーツを着て遡行してみたが、非常に快適。い
くらでも滝の直登に挑戦できるし、滑り台しても寒くない。これなら、涼しい時期で
も問題なく水量多い沢の遡行が出来そう。多少動きにくくなる面もあるが、よほど難
しい滝の登攀などが無ければ、問題になるほどでもない。ただ、嵩張るという問題は
どうしようもない。
・ヤマビルは少なく、遡行時は見かけなかった。が、帰りの車の中で丸山の手に付い
ていた。被害は無し。
・石棚上のゴルジュの樋状ナメ滝を登っていて失敗して滑り落ちた時に、丸山は眼鏡
を滝壷に落とした。滝壷が浅く、ゴーグルも持っていたのですぐに拾えたが、注意不
足であった。川名さんの二の舞にはなりたくない。
・7/1-9/30は、仲の沢林道へ車で入れなるので注意。6月だと穴の平橋まで車で入れ
便利。
・我々の入渓2日前の6/9に、小川谷廊下で落石による死亡事故があったが、この場所
はF6上のゴルジュと思われる。この事故は滑落で骨折した人を介抱していた人に落石
が直撃したものだが、この場所は高巻きで滑落が起きやすく、かつ真新しく大きな落
石と岩が剥離した跡があったため。このような事故を防ぐためには、怪我人を介抱す
るときや休憩するときなど、長時間留まるときには、周囲を確認して危険が無いかど
うか確認することが大切である。

■反省とコメント
・F4とF5の間の4m滝で直登と巻きに分かれたのは、予想よりも合流が先で、お互いが
見えなくなったので良くなかった。
・F6上の懸垂下降の準備に手間取った。ロープがキンクしないようなロープ捌きを身
につけたい。
・おにぎり片手に仲ノ沢径路のような不安定な道を歩くのは止めて欲しい。
・笛は、自分が登りきったらではなく、後続が登る準備が出来たら吹くものです。