2015/10/9-10 白毛門沢

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
白毛門沢遡行計画書 ver.1.0 作成者 川名

■日程 2015/10/09-10 前夜泊日帰り
■山域 谷川連峰 利根川水系 湯檜曽川 白毛門沢
■在京本部設置要請日時 10/10 21:00
■捜索要請日時 10/11 12:00
■メンバー 2人
CL川名 SL遠藤

■交通
行き 上野17:31ー高崎線前橋行ー19:25高崎19:28ー20:32水上20:42ー20:51土合
遅れた場合 上野21:05ー22:17籠原22:19ー湘南新宿ラインー22:51高崎23:03ー24:06水上(駅寝)08:24ー08:33土合
帰り 土合駅12:30/15:34/18:19(最終)

■行程 遡行6:00、登山道2:40
土合駅ー0:15ー東黒沢橋ー1:00ー白毛門沢出合ー2:30ータラタラのセンー1:00ー二俣ー1:30ー白毛門ー2:25ー土合駅

■エスケープルート
タラタラのセンまで:引き返す
タラタラのセンから:そのまま進む

■地図
2.5万分の1 「茂倉岳」
エアリア 「谷川岳」

■遭対費 100円

■備考
日の入: 前橋10/10 17:16
日の出: 前橋10/11 05:46
沼田警察署: 0278-22-0110

白毛門沢遡行記録 文責:川名

■日程・天候 2015年10月10日(土) 晴
■山域 谷川連峰 利根川水系 湯檜曽川 白毛門沢
■メンバー CL川名 SL遠藤
■行程
土合駅5:40ー5:55入渓点6:10ー6:30ハナゲの滝下部ー6:47白毛門沢出合ー7:50タラタラのセン巻き始めー
8:17 20m大ナメ滝下ー8:39大岩ー8:53休憩9:11ー9:15 1180m二俣ー9:26 1240m二俣ー9:17 1:1二俣ー10:10休憩10:20ー10:39白毛門山頂11:36ー12:06松ノ木沢ノ頭ー13:15東黒沢橋13:46ー13:58土合駅

 谷川連峰に向かうのは2年振り、2回目のことである。バリエーションを志向するものとしてはもっと頻繁に通わなければと思う。高崎駅の駅ビル1Fのフードコートで夕飯を済ませ、終電で土合駅へ。連休前の金曜日だからか、車内にはやはり登山者が多い。土合駅で降りた後は、他の登山者より先にいい場所を確保するため、少し急いで階段を登る。待合室の確保に成功しこれで安眠できると思っていたのだが、後から車で来た人たちが入ってくる度に起こされることになり、煩わしかった。少し寒くはなるが、階段へ続く通路の方が、このようなことがないという意味では快適かもしれない。
 朝、駅から出ると標高のせいか中々冷える。沢での寒さを心配するが、歩いているうちに体も温まってきて、白毛門登山口駐車場に着。紅葉の時期ということもあり、多くの車が停まっているが、駐車場は非常に広く余裕がある。駐車場の先で別れる踏み跡を右に入り、駅寝に使ったシュラフやらを木の影に隠して、堰堤の先から入渓 (土合駅にはコインロッカーはない)。ちなみに、白毛門登山口には登山届のポストがあるので、車で来る場合でもわざわざ土合駅で出す必要などはない。
 しばらくの荒れたゴーロ歩きを終えると、早速スラブのナメが現れ始める。開けた沢の中には朝日も差してきて気持ちが良い。景色を楽しんでいるとあっさりとハナゲの滝に到る。かなり水量は少ないようだが、そのスケールの大きさからして素晴らしい滝であり、しばしの写真撮影タイム。右岸には明瞭な踏み跡のある巻道が付いているが、水量が少ないということもあって水線左側を登って行く。途中傾斜が強くなってきたところから水流を横切って右側を登ったが、落口間際のトラバースが中々厳しく緊張した。ずっと左側を進む方が正解だと思う。ハナゲの滝の先でもきれいな釜とナメ滝が続き、開けた沢なので前方には紅葉に染まった稜線も見えて展望が楽しめるのも良い。
 白毛門沢出合ではどちらの沢もナメ滝で出合う。東黒沢を偵察しに行くと、あちらもまだまだナメ滝が続いて綺麗そうだ。是非ナルミズ沢に行く際に東黒沢も遡行してみたいものである。白毛門沢に入った後の、倒木のかかる5m滝では濡れたくないので右岸を巻く。その先は登れる小滝、ナメ滝が多く続いて楽しめるが、倒木が多いのが少し気になる。2段11mはほぼ巻きといえるレベルで右側を登った。簡単だったので確保なし。
 次の6m滝は左壁を登ろうとするが、すこし悪かったので右岸から高巻きをする。踏み跡を辿って行くといつまでも沢に降りられず、嫌だなーと思っていたら、開けたところから大滝が見える。どうやらタラタラのセンの巻道に合流し、かなりの大高巻きをしてしまったらしい。この後2つの枝沢を横切ってさらに巻道を進む。雪に圧された下向きの灌木が大量にあるのでそれらが絶好のホールドになり、巻道そのものは危険ではない。しかし、そのまま巻道を進むうちに大ナメ滝の中ほどの高さまで来ていることが判明。このままでは大ナメ滝まで巻いてしまいそうなので、引き返して沢へ降りる道を探す。最後は踏み跡を外れ数mほど下って行くと大ナメ滝の真下に出た。正しい巻き道であればタラタラのセンの直上に出るようなので、これでもまだ間違えていたのだろう。
 20m大ナメ滝は下部が4mほどの立った滝になっていて、奥には通称「三平岩」の大岩も見える。スリップしてしまうと最後にこの4mの滝を落下することになり、危険なので滑落厳禁。4m滝を右から巻き、その後も水線の右側をたどっていく。簡単ということはなく、ここの登りも中々気を使う。適宜途中に出てくる窪みや左岸の灌木で体を安定させ、遠藤をお助けひもで確保しつつ登っていく。一番最後に水線左側に渡って登り切った。左右どちらも登れるらしいが、左側を登る場合は草付きを頼りに登ることになるのだろうか。メインロープで後続を確保する場合には途中で支点を取りづらいので苦労すると思う。
 三平岩は思っていたよりも巨大で迫力がある。この時期には髪もグラデーションがかかっていておしゃれ。大ナメ滝を登り切ったところから後ろを振り返ると、手前には紅葉に染まる木々、遠くには天神平も見えて景色が良い。前を見れば紅葉の白毛門稜線とジジ岩、ババ岩も見えてこちらもGood。これまで大高巻き、大ナメ滝の登攀と、緊張の続く箇所が続いたので、その先で今日始めての休憩を取って気分を落ち着ける。
 1180mの二俣を左に入り、その後のほぼ三俣と呼べるほど連続する2回の二俣ではいずれも右に進む。この辺まで来ると水量はかなり減ってしまうが、沢床が赤くナメがまだまだ続くので、スケールは小さいものの赤木沢を髣髴とさせる。後にもう一つ二俣が出てきて、どちらを進むか迷ったが左を選択し、これが正解。右の沢は「水流のある左岸の枝沢」で、水を汲むならここで汲むのが良い。後はスラブの詰めを登って行くのだが、傾斜が非常に強く歩くというよりは登攀に近い。困難な箇所は全く無いのだが、滑落厳禁で500m近い標高差を登らなければならないので、体力的・精神的に疲れ、途中で休憩を挟む。グズグズの斜面を登る詰めよりは楽しめるのだが、なかなかしんどい。振り返った時の紅葉の絶景に癒やされながら、岩場の登攀を終えて笹の踏み跡に入ると、すぐに白毛門山頂にドンピシャで出る。
 白毛門山頂で沢装備を解除しつつ大休憩。ここには初めて来たが、その光景に感動した。川名がはしゃいで写真を撮りまくっていると遠藤が風に吹かれて寒そうにしていたので、出発。12時の電車を諦めたため時間が余っており、結局1時間近くも山頂にたむろしていた。白毛門の下りは余った時間と膝へのダメージを考慮してゆっくりと下る。岩場を過ぎて樹林帯に入り、木々の間から見える大滝はタラタラのセンであった。次回来るときは大高巻きをせず、せめてタラタラのセンを下から見ようと決意。東黒沢橋に着いた時でも電車の時刻まで2時間以上余っている。ゆっくり下ったつもりなのだが、それでもコースタイムの85%くらいでは歩いていたようだ。ここで汚れた沢装備を洗い、隠しておいた装備を回収する。駐車場を通った時には10人ほどのキャニオニングのツアーパーティーと出会った。出発が早かったから行きでは出会わなかったが、遅い場合には遭遇することになるだろう。我々以外の沢登りのパーティーも二人組を二つ見かけたので、やはり人気のある沢のようだ。土合駅に戻り、1時間半電車を待ってから帰宅の途に着いた。

■総評
・高巻き、スラブのナメ滝でのルーファイが、自分にはまだまだ未熟であると感じた。今回は無事に遡行することができたが、中々危うい遡行であったと言わざるをえないだろう。
・白毛門沢のグレードは1級上とされているが、その割にはかなり辛く感じた。自分がスラブの沢に慣れていないというのもあるのかもしれないが、2級下か2級くらいのグレードが与えられていても不思議ではないと思う。ナメ滝でのルーファイや詰めをミスると致命的な状況になりうるという危険性もある。ネットの記録によると、詰めで左に進みジジ岩、ババ岩の間のスラブに入ると、2級上のグレードになるらしい。
・計画書を流した段階では初心者も受け入れるつもりだったが、行ってみて初心者を連れてこなくてよかったと思った。落ちてはいけないが確保が難しいところが多いので、個々の登攀力が十分でないと苦労すると思う。また、初心者連れのパーティーでは多くの滝を巻くことになると思うので、登攀の楽しさは薄れてしまうだろう。
・『東京起点沢登りルート120』の遡行図は滝を省略しすぎていて分かりづらい。『上信越の谷105ルート』の方が正確だと思う。また、今回メインローブを出していないということもあるかもしれないが、『120』の方は遡行時間も長すぎる気がする。
・上半身が濡れることはほとんど無く、寒い思いをすることなく遡行できた。いつも沢では寒がってばかりの遠藤も今回は寒くなかったと言っていた。紅葉が非常に美しく、雪渓に悩まされることもないので、この時期の遡行は快適。一方で、暑い時期であればウォータースライダーや泳いで遊んだり、積極的にシャワークライムをすることも出来る。いずれの時期に遡行しても楽しめるだろう。
・沢の渓相は明るく、スラブのナメ滝が非常に綺麗な所。登れる滝が多く、源頭部の詰めも体力があればずっと簡単な登攀を楽しめるので、実力が十分であればおすすめできる沢である。