2015/10/24 金山沢右俣
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
金山沢右俣遡行計画書 ver.1.0 作成者 川名
■日程 2015/10/24(土) 前夜泊日帰り
■山域 両神山 中津川流域 神流川 金山沢
■在京本部設置要請日時 10/24 21:00
■捜索要請日時 10/25 14:00
■メンバー 2人
CL川名 SL遠藤
■交通
行き 川名の自宅車で。
荻窪駅で遠藤をピックアップ後、落合橋で車中泊
帰り 落合橋から車で。
■行程 遡行2:30、登山道2:50
落合橋ー2:30ー稜線(大笹西1650)ー0:30ー剣ヶ峰ー0:30ー東岳ー0:40ー西岳ー0:40ー八丁峠ー0:30ー落合橋
■エスケープルート
遡行中: 引き返すかそのまま進む
稜線上: そのまま進む
■地形図
2.5万分の1 「両神山」
エアリア 「雲取山・両神山」
■遭対費 100円
■備考
日の入: 埼玉10/24 16:56
日の出: 埼玉10/24 05:55
小鹿野警察署: 0494-75-0110
道の駅両神温泉薬師の湯: \600
道の駅大滝温泉遊湯館: \700
両神山金山沢右俣遡行記録 文責:川名
■日程・天候 2015年10月24日(土) 晴
■山域 両神山 中津川流域 神流川 金山沢
■メンバー CL川名 SL遠藤
■行程
*遡行図は
http://blogs.yahoo.co.jp/ryokami3/GALLERY/show_image_v2.html?id=http%3A%2F%2Fblogs.c.yimg.jp%2Fres%2Fblog-87-d5%2Fryokami3%2Ffolder%2F140755%2F64%2F56447364%2Fimg_0%3F1231432879&i=1
を参考にした。
『東京周辺の沢』の遡行図は役に立たないらしいが、こちらは結構正確に書かれている。
落合橋6:50ー7:13 1220m二俣ー7:25 7m右壁8:02ー8:07大岩ー8:25 1360m二俣ー8:35休憩8:52ー9:14 1550m二俣ー9:38大笹10:00ー10:12剣ヶ峰10:20ー10:45東岳ー11:28西岳11:46ー12:20八丁峠12:24ー12:50落合橋
前夜、荻窪駅で遠藤をピックアップ。ペーパードライバーの運転のため、色々とトラブルがあったりしたが、なんとか無事に落合橋に着いた。八丁トンネル登山口でトイレを済まし、登山届を出してから向かったが、登山届のポストは落合橋にもあった。八丁トンネル登山口には前夜の段階で車は1台、落合橋では我々の1台のみだった。
車中泊をして翌朝、車は計3台に増えていたが、沢へ向かうパーティーは我々のみ。上落合橋の脇から入渓し、涸れた八丁沢を下降して金山沢出合に着く。水量はかなり少なく、細い水の流れと、その周囲一面は落ち葉が溜まっている。紅葉も終わりかけだが、まだまだ見あげれば楽しめる程度には木々の色づきも残っている。所々ゴーロが出てくるものの、基本的にはずっとナメが続く渓相である。ここまでナメだらけの沢は流石に初めて。遡行図に書かれている滝も、全てが少し傾斜がきつくなるナメ滝なので、現地で見てもはっきりと一つの滝とは認識できない。傾斜は緩いのでそれほど緊張することもなく進んでいくことが出来る。
この先、1230mあたりで沢の向きが地形図とは異なりやや西を向いていて、地形図との違いにやや戸惑った。しかし、あらかじめネットの記録で見慣れていた7mナメ滝(2001年の雷鳥の記録では8mナメ滝(逆層))が先に見えたので、正しい沢に入っていることを確認し、先に進む。この7m滝が難しいことは予め知っていたので、さくっと右を巻こうと思っていたのだが、なかなか右にトラバースするいい場所が見つけられず、結局左壁を登るはめになった。溜まった落ち葉を下に落としてホールドを探しつつ、少し登るとハーケンを発見。セルフビレイを取ってその場でロープを結び、改めて登り直す。結局、ハーケンは全部で3つあったが、一番上は曲がっていてカラビナが通らず、効いていそうなのは一番下のやつだけ。ガバがなく、足も細かいホールドかフリクションを頼りに登るしかなく、かなり難しかったが、なんとか落ちずに登り切ることが出来た。これまで直登した滝の最高グレードは大山川のIII+なので比較はできないが、IVくらいはあるのではないかと思う。
この後は120mの大ナメ滝だが、これ以前にもずっとナメが続いてきたので改めての感慨はない。先程に比べればかなり簡単な登攀であり、楽しみつつ登って行く。このナメが終わるとあとはゴーロ続き。途中で休憩をはさみつつ、詰める沢を見逃さないように歩いて行く。最後に、1683と大笹の間のコルに詰める右の枝沢に入ったが、この枝沢はゴルジュ状で所々小滝の登攀があり、中々大変。楽に詰めたいと思うのであれば大笹に詰めたほうが良いだろう。登攀が物足りないのであればこちらの枝沢にはいっても良いが、それほど登っていて楽しいと思える沢でもない。稜線に出た後は大笹まで行き、沢装備の解除。その後も岩場が続くのでヘルメットは着用したままにした。
この先剣ヶ峰までは人も疎らでさくさくと進む。途中の廃道への入口にはロープが張ってあったような気がする。剣ヶ峰の直前、鎖場でもなく、特に危険という訳ではない所ですれ違い待機していたら、遠藤が足を踏み外して滑落しかけた。しかし、滑り始めた時に近くにあった木を掴んでなんとか止まった。すぐに止まれたのでせいぜい1m強の距離の滑落であったが、もし近くに木がなかったら結構な大事故になっていた可能性のある、危うい事態だった。これで気を引き締めたのか、以降はトラブルもなく進む。剣ヶ峰山頂は狭い山頂で、晴れ続きだったせいか空も霞んでいるので、そこそこに展望を楽しんだらせかせかと出発。
以降の鎖場ではすれ違い待ちで結構時間を食ったが、メンバーは2人だけなのでそれなりに軽快に進む。休憩を含めてもコースタイムと同じくらいのペースだったか。遠藤が去年ここを歩いた時には、鎖を使わなければ通過できない箇所があったそうだが、今回歩いている限りではそのような箇所はなかった。通過する方向で難易度が変わったのか、遠藤の登攀力が増したのか、どちらが原因かは分からないが、それほど難しい鎖場ではない。なお、遠藤によると剣ヶ峰→八丁峠の方が下りで鎖場を使うことになるので、より難しかったそうだ。
八丁峠より先は傾斜が緩くかなり歩きやすい登山道が続く。最後は八丁沢の右岸に道が付いていて、八丁沢を眺めながら降りていく。こちらもナメが続くきれいな沢だが、金山沢より早く水が涸れてしまっているようだ。落合橋に至り下山。このころには落合橋の駐車場は一杯になっていた。計8台が停まっていたが、詰めて停めれば10台強は入りそう。
落合橋では携帯(docomo)が通じないので、車で降りつつ電波を探す。八丁トンネル登山口でも電波は通じない。なお、こちらの駐車場も一杯になっていた。車で向かう場合は前夜発の方が良いだろう。結局山道を走っている間は電波が通じず、温泉(両神温泉薬師の湯)に入る前になって下山の連絡をした。
■総評
・ペーパードライバー2人で運転する状況になったので、山行よりも運転のほうが核心だった(道が悪いというわけではない)。
・白毛門沢では上半身が濡れることがなかったが、今回は膝より上が濡れることがなかった。沢を選べば、本当に雪が積もらないかぎり沢登りが続けられそうである。
・基本的には緩い傾斜のナメが続き容易だが、逆層の7mが唯一難しい。この一箇所のせいで、難易度は1級上に上がると思う。白毛門沢と違って、滑っても重大事故にはなりづらいと思うので、初心者がスラブ登攀を練習できる沢である。個人的には7mの直登が緊張したが、落ちずに登り切ることが出来、満足の行く登攀が出来た。
・紅葉がほぼ終わりかけの時期であり、沢床一杯に落葉が絨毯のように敷き詰められ、水流のある僅かな部分のナメが顕になっていた。個人の感性によると思うが、私としては落ち葉の少ない新緑の季節や、水の多い時の方が綺麗なのではないかと思う。遠藤は白毛門沢のほうが良かったとボヤいていた。そりゃあ谷川の沢と比べられるとねえ…。沢を初めた頃はシダクラ沢でも文句を言わなかったのに、贅沢になったものである。
・ナメの続く美しい沢、そして両神山の一般登山道では最も面白い、鎖場の連続する剣ヶ峰ー八丁峠間を一度に楽しめる、お得な山行であった。両神山に一般登山道のみで登ろうとすると、日帰りでは行きづらく、前夜泊でも日没ギリギリの時間になっての下山となってしまうことが多く、計画が難しいところがある。沢をルートに取ることが出来れば、計画の幅も広がりよりその山域を楽しむことが出来る、と沢の勧誘をしておく。
・危険な所を過ぎた後で、気が緩んだ時に事故が起きるというのはよく聞く話だが、今回の遠藤の踏み外しで初めて実体験した。遠藤本人も滑落してしまったことにショックを受けていたようである。遠藤は山行歴も長く、単独行で槍穂の縦走が出来るくらいなので、歩行技術に問題があるというわけではないのだが、それでも気を抜けば何でもない所で落ちることがある。気を緩めるのは本当に安全な場所で、ということを徹底して登る必要がある。