2016/3/20 御前山

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
御前山 日帰りハイク計画書(Ver 1.3)
作成者:朝倉
■日程 3月20日(日)
※予備日なし 悪天中止
■山域 奥多摩
■捜索要請日時 2016/3/21 09:00
■メンバー(計3人)
CL 朝倉  SL 吉川  松本
■集合
3/20 06:46 新宿駅 11番線発
ホリデー快速おくたま1号 最後車両
■交通
行き
新宿駅0646-(JRホリデー快速おくたま1号)-奥多摩駅0821
奥多摩駅0835-(西東京バス奥10系統)-奥多摩湖バス停0850
計 2時間4分 1,430円
※遅刻の場合(下記より早く奥多摩駅に行ってもバスがない)
新宿駅0700-(JRホリデー快速おくたま3号)-奥多摩駅0916
奥多摩駅0930-(西東京バス奥09系統)-奥多摩湖バス停0945
計 2時間1分 1,430円
帰り
奥多摩駅1535-(JR青梅線)-青梅駅1615
青梅駅1619-(JR青梅線)-立川駅1647
立川駅1653-(JR中央線快速)-新宿駅1728
計 1時間53分 1,080円
※奥多摩湖バス停からのバス発車時刻(エスケープした場合)
1622, 1724, 1823, 1857, 1928, 2018
■行程
奥多摩湖バス停-1:30-サス沢山-1:15-惣岳山-0:20-御前山-0:55-鞘口山-0:30-鋸山-1:10-愛宕山-0:20-奥多摩駅
計 6:00
■エスケープルート
御前山山頂まで:引き返す
御前山山頂以降:そのまま進む
■地図
1:25,000 奥多摩湖
山と高原地図23 奥多摩
■遭難対策費
100円×3人
■備考
□日没
17:52 頃
□日の出
5:43 頃
□警察
青梅警察署
〒198-0032
東京都青梅市野上町4丁目6番地の3
TEL 0428-22-0110
□タクシー会社
リーガルキャブ。
TEL 042-550-2712

御前山 日帰りハイク記録
作成:朝倉
■日程 3月20日(日)
■山域 奥多摩
■天候 晴時々曇
■メンバーとオーダー(計3人,敬称略)
SL吉川-松本-CL朝倉
■タイムスタンプ
09:13 登山口
10:05 サス沢山
11:27 御前山 到着
12:05 御前山 出発
13:10 道間違いに気付く
14:03 境橋近くの集落
15:13 奥多摩駅
■山行記録
雷鳥の山行に遅刻したことは(まだ)ないはずだが,基本的には朝が苦手なので,寝坊しないかどうかを心配していた.目覚ましを十分早めの時間に計9個セットしていたこともあって無事起床には成功した.ただ,昨晩の就寝時間が考えていたよりも遅くなったため,若干睡眠不足の感が否めず,その点は問題だった.山行の前夜にサーバの設定を弄るものではないと学んだ.
6:46発のホリデー快速おくたま1号に,発車15分ほど前に乗り込んだ.列車が入線したのと同じ方向に進むものとばかり思って最後車両に乗り込んだが,実際には真逆に発車したので座ったまま腰を抜かした.せっかく座ってゆっくり睡眠不足分を取り返そうと思ったのに,とんだ失態であった.すべて自分が悪いのが余計腹立たしかったが,過ぎてしまったことは仕方がないので駅に停まる毎に最後車両を目指して全力ダッシュするということを繰り返した.おかげで登り始める前からいい運動になってしまった.
2駅ほどのホームを駆け抜け最後車両にたどり着くと,幸いそこにはまだいくらかの空席があったため腰を落ち着けてうつらうつらしていた.そうした状態のまま,立川駅で吉川くん,青梅駅で松本さんと合流し,無事予定通りメンバーが揃った.8:21に奥多摩駅に到着し,一瞬のトイレ休憩を経てバス停に移動した.このバスも予定通り8:35奥多摩駅発の西東京バス奥10系統に乗ることができ,何の問題もなく奥多摩湖バス停に降り立つことができた.
バスを降りると,一同その場で登山靴の紐締めやスパッツの装着といった登山準備を行い,9時ちょうど頃に登山口へ向かって歩き始めた.奥多摩駅に降りたときは少し肌寒さを感じていたのだが,日差しが強くなり始めていたこともあり,この頃には既に歩き始めるとむしろ暑く感じるのではないかという予感がしていた.
登山口付近には野鳥撮影のために集まったとみられる人だかりがあり,ざっと30人ほどが藪に向かってカメラを向けているという状況であった.我々も何がいるのだろうかと藪の方を覗きこんだが,結局具体的に何を撮影していたのかはよくわからなかった.日帰りにしては少々長めの歩行時間ということもあるので,そこで時間を使うことはせず,すぐにわきを抜けて登山道へと進んだ.
登山道に差し掛かって最初の20分ほどの行程は事前の情報通り非常に急な勾配で,メンバー全員の息をあがらせた.少し勾配が緩んだところで,服装の調節と軽い水分補給を行った.その先も断続的に急な勾配が現れたが,最初に比べればいくぶん楽な登山道であったのでサス沢山のピークまでは休憩を入れずに歩き,そこで最初の一本を入れた.ここまでで勾配が “非常に急” といえるのは始めの部分だけであったが,いずれにせよ新歓には向かないだろうかなどという話をメンバーとしていた.
サス沢山以降,御前山までの行程も地形的にはそれまでと似たような感じであったように思う.御前山のピークが近づくにつれ,左右の斜面の日影部分には雪が散見されるようになったが,登山道上には雪はまったく見られなかった.一部雪解けのために泥濘んでいる部分があったが,想像していたよりはいくぶんマシであった.とはいえ,スパッツを持って行くべきとの判断は妥当だったと言えるだろう.
このように残雪がまったく問題にならなかったこともあって,コースタイムよりは少し早いペースで御前山のピークに到達することができた.山頂には10人ほどが既に休憩しており,それなりに混み合っていたが,唯一空いていたベンチに席を確保して松本さんが持ってきて下さったガスバーナーと私が持参した水およびコッヘルを用いてインスタントのコーンスープを作って温まった.150mL の目分量を誤ったため少し薄めのスープにはなったが,あたたまることはできたので十分幸せであった.下山開始前にヘッドとカートを私が受け取り,この時点で松本さんはめでたく今回の山行に参加した主目的を達成されたようだ.
さて,ここまでは特に大きな問題もなかったわけだが,下山開始後の行程はそうはいかなかった.正午過ぎに御前山を出発する際,私は確かに「この先は分岐が多いようなので注意しましょう」という趣旨のことをメンバーに通達したと記憶しているが,言った私自身を含めメンバー全員がこれを甘く見ていた.すなわち「分岐は多いが横にそれず “まっすぐ” 歩けば予定通り鋸山を経るコースを辿れる」などと考えていたのが仇となったのである.確かに,地図(地理院地図,エアリアマップの双方)上では予定のコースがまっすぐに伸びており,その他の分岐は少し角度を付けて伸びているように見えた.しかし,我々が実際に “まっすぐ” 歩いた(この点はメンバー3人全員の見解が一致している)結果辿ったのは,予定のコースからは大きく北に逸れた道であった.
このあたりの顛末は,もう少し詳細に記述しておく必要があるだろう.御前山のピークを出て10分足らずで避難小屋に到着した.地図をよく見ると,そもそもこの避難小屋を通りかかること自体がおかしいのだが,距離が近いこともあって本来のコース上にあるようにも見え,実際現地にいるときはそのような認識でいたためにこの時点で間違いに気付くことができなかった.また,避難小屋の前後から「奥多摩駅方面」の標識が多数見られたことも,奥多摩駅への下山を目指していた我々が方向を疑わなかった一因であったように思う.いずれにせよ,頼りにすべきは地図とコンパスであったのに,直感的な道の曲がり方や標識を信用したのがよくなかったのは言うまでもない.地図上では我々が下ってしまった道はかなり鋭く右に折れないかぎりは入れないはずのところであったので,地図に記載のない直線的な道が生じてしまっていたのではないかと推測している.詳細は後述するが,結局今回の山行では分岐地点に戻ることをしなかったので,どこが間違いの発端だったのかは未だにわからないが,途中でいくつか見かけた右に “折れる” 道が今回進むべきルートだったのだろう.
ところで,一度道を間違えてからも,道の所々に立っている地図が見覚えのない地名だらけであったこと(あろうことか我々はこれを「地図が不正確なのでは」と片付けていた)やエアリア等にまったく記載がなかったのにも関わらず小さな小屋のようなものがたくさんあること(これらの小屋は自然体験用施設の一部とみられる)など,今思えばおかしいと思うべき要素が色々あった.にも関わらず,上述の不確かな根拠から我々はきちんとした検証をすることなく,30〜40分歩き続けてしまった.ここで,タイムスタンプ上で間違いに気付くまでに1時間以上経っているが,歩いたのは30〜40分としているのは松本さんが手洗いを探していたため,小屋を見つける度に手洗いがないか周囲を確認していたからである.
ともかく,間違いに気付いた段階で今まで下ってきた道を引き返すか,このまま今の道を進み続けるかの討議をした.30分以上,それもそこそこ急な勾配を下ってきてしまっていたため,これを引き返して登るとなると分岐地点に戻るまでに1時間程度時間がかかると見込まれ,それを元に奥多摩駅への到着時間を計算すると17時近くなることから,戻るという選択肢には皆消極的であった.一方で,この時点で現在地の推定はできており,そこからバスの通りへ至る道が存在することは地図上で確認できていたので,そのまま下り切るという選択肢を選ぶことは十分可能だと考えた.ただ.そのルートを通ることは計画段階では一切想定していなかったので,どのぐらいの時間がかかるのか下調べも不十分であり,どちらをとるかはかなり迷った.討議に10分ほどの時間を費やしたが,メンバーの疲労具合と明るい時間に人里まで戻ることができる確率を考えて,我々はそのまま下る案を採用した.これは,その時点でそれ以上に事態を悪化させないために取れる手段として最良と思われるものを選んだ結果であり,また今振り返ってみても妥当な判断であったように思う.
再び下りはじめるとほどなくして舗装された道とぶつかった.登山道は元々これを横切って突き進むように整備されていたようだが(地図上の記載もそうであった)その道は倒木があるとのことで閉鎖され,舗装道を歩くようにとの但し書きがされていた.地図も確認し,その舗装道を歩けば目的の位置に下山できることがわかったので,そこからは登山道は使わずひたすら舗装道を下って行った.途中,重機を用いた工事作業を行っている箇所があり,一瞬通過不能かと思って焦ったが,工事の従事者が一旦作業を中断して我々を通してくれた.その他は一瞬予報にない雨がぱらついたことを除けば特に問題を生じることなく,1時間ほどで境橋のバス停近くの集落に到達した.
このあたりで下りの勾配もだいぶ緩くなったので,スパッツを外し,歩きやすいよう登山靴の靴紐を緩めた.平地に戻る頃に登山靴の靴紐を緩めるのは一般的なことと認識しているが,今回に関してはこのことが新たな個人的災難を生んだ.上述の集落から境橋のバス停に向かう途中,右足の靴の蝶結びの輪が左足の内側のフックの1つに引っかかり,私は一瞬バランスを崩した.何とか体勢を立て直し,転倒は免れたのだが,フックに過大な力がかかったためにこれが靴から外れてしまった.破損の具合をみるに修復は困難であり,登山靴の買い替えは必至のようだった.平地に下りてからの破損で今日の帰路には特に影響を及ぼさなかったのは不幸中の幸いだが,実に嫌なことが続く山行だと思わずにはいられなかった.
集落から30分ほど歩くと境橋のバス停であったが,生憎次のバスまでには30分程度時間があり,奥多摩駅までの歩行時間も30分程度であることがわかっていたので,自分の足で歩くことを選択した.結局,奥多摩駅の直前の信号を待っているときにバスに抜かれたので,駅についたのはほぼ同時刻であった.
自分たちの判断ミスによるところが大きいとはいえ,災難続きの山行で悪いことばかりで終わるのもなんだということで,最後に奥多摩駅近くの土産屋でわさび味アイスを3人で買い賞味した.わさびとアイスという一風変わった組み合わせだが,わさびの香りとアイスの相性は絶妙で美味だった.味はわずかに甘いといった具合だが,ところどころわさびの辛味をピリッと感じる部分があり,今回の山行の微妙な危うさを象徴しているようでもあった.
■反省点
今回が初 CL であったこともあるが,それにしてもあまりに色々と不手際があったので,大いに反省し,1つ1つきちんと改善していかなければならない.
・山行計画書は平日でないと大学当局に受理してもらえないということに土曜日の朝に気付いたため,メールの送信は行ったものの担当者が当該計画書を確認するのは山行翌日の月曜日になるものと思われ,結果的に事後報告のような形になってしまった.直前の変更を行うということもあり得るので兼ね合いがなかなか難しいが,以後は山行計画書はなるべく早めに提出するように心がけ,特に週末に山行を行う場合には金曜の夕方までに提出を行う必要があることは肝に銘じておく必要がある.
・今回の山行は部会のない時期のものであったためということもあるが,共同装備の確保に関する検討および打ち合わせが不十分で直前に少し慌ただしい思いをした.今後はもっと計画的に確保するようにしたい.
・メンバーの乗車駅についての情報収集が当日になってしまった点も対応が遅かったように思う.今回はたまたま速やかに連絡がついたため問題とならなかったが,遅刻者の有無などを迅速に把握するためにも,こうした情報は事前にきちんと収集しておくべきであった.
・分岐が多く,道迷いが発生しやすいという情報は事前に得ており,そのことを自分の地形図にも書き込んでおいたにも関わらず,方向の確認が十分でなく,予定のコースを外れていることに30分も経ってから気付いたのは明らかな大失態であった.
・道の途中に設置されていた地図板の表示と自分の記憶していた道が一致していないことを不審に思いつつも,奥多摩駅方面との標識があるから大丈夫と過信して地図とコンパスによる確認しなかったのは本当に大きな問題であった.
・私が寝不足の状態にあったことは既に山行記録中で触れたが,聞いたところによると他の2人のメンバーも睡眠時間がいくらか不足していたようであった.このようにメンバー全員が軽い寝不足状態であったことも判断を鈍らせる要因となった可能性がある.さらに3人とも程度の差こそはあれ花粉症の症状があり,これは致し方のないことであるが集中力を低下させるのに十分な要因とはなっただろうと思われる.山に登るにあたっては行程中での怪我に注意するだけでなく事前の体調管理も当然しっかり行わなければならない.どんなに注意していても病気を完全に避けるのは難しいが,少なくとも寝不足は人為的なミスであるし,健康意識をもっと高く持つべきであったといえる.
・今回のミスは技量不足というよりは,むしろ低山の日帰りハイクであるという慢心から方向の確認を怠ったことを原因として生じたものであった.幸い今回は大事に至らなかったが,場所が場所であれば遭難という事態に発展しかねない危険事象であり,山に入るときの心構えを根本から改めねばならないと深く反省している.
■総括
今回は結果的に,計画書に記載のない予定外のルートを用いて下山するという,まったく好ましからざる事態を引き起こしてしまった.その要因は既に挙げたように様々なことが考えられるが,究極的には方向確認・体調管理・山に対する畏怖の念という登山者には “当たり前” に求められる心がけが不足していたことがその根本にあったように思う.かれこれ10年以上も山に登ってきて,これだけ初歩的なことが身についていないというのは我ながら情けないと思うが,一方でこれまでこうしたことを頭ではわかっていても実際に大きなミスを犯したことがなかったために身に沁みていなかったのではないかとも思った.今回は幸いにして大事に至ることなく下山することができたので,これをいい教訓にして今後は心がけを新たに山と付き合っていこうと思う.