2016/6/12 大常木谷遡行・竜喰谷下降
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
大常木谷遡行・竜喰谷下降計画書
作成者:丸山
■日程 6/12(日)(荒天の場合中止)
■山域 奥多摩
■捜索要請日時 2016/6/13 10:00
■メンバー(計2名)
CL丸山 SL迫野
■交通
周辺で前泊後、丸山の自宅車で大常木谷下降点まで
■行程
大常木谷下降点-30-大常木谷出合-60-千苦の滝-150-御岳沢出合-30-会所小屋跡
-120?-竜喰谷遡行終了点-165(遡行の場合)-竜喰谷出合-90?-大常木谷下降点
(計7:15+3:30?)
http://yahoo.jp/frrTnx
※コースタイムは奥多摩・大菩薩・高尾の谷123に拠ったが、不明部は予定時間を
「?」付きで記した。
※4時半頃入山予定
※シナノキノタル着時刻が12時を過ぎる場合はシナノキノタルから竜喰谷に下降
※竜喰谷出合着時刻が16時を過ぎる場合は車道経由で下山
■エスケープルート
千苦の滝まで:引き返す
竜喰谷遡行終了点まで:大常木林道で下山
竜喰谷出合まで:引き返すか右岸を詰めて大常木林道で下山、またはそのまま進む
大常木谷下降点まで:そのまま進むか,右岸を詰めて車道に出る
■地図・遡行図
2万5千分1地形図「柳沢峠」「雁坂峠」
山と高原地図「大菩薩嶺」「雲取山・両神山」
大常木谷遡行図:http://blogs.yahoo.co.jp/well_ksandw/9261059.html
竜喰谷遡行図:東京起点沢登りルート120 p.151
一之瀬川本流遡行図:東京起点沢登りルート120 p.147
大常木林道:http://nakayamayu.web.fc2.com/record/2007/07ootsuneki/
遡行図は他にもいろいろなものがある。
■遭難対策費
100円×2人
計200円
■備考
日の出(丹波山6/12)4:28
日の入(丹波山6/12)19:02
上野原警察署 0554-63-0110
日下部警察署 0553-22-0110
大常木谷遡行・竜喰谷下降記録
作成者:丸山
■日程 2016/6/12(日)
■山域 奥多摩
■天候 晴れのち曇り
■メンバー・オーダー(計2人、敬称略)
CL丸山(35)、SL迫野(34)
■総評
行動時間が11時間半に及ぶ長丁場だったが,その分充実したものだった.多摩川流域でも最も美しいと言われる2つの谷を遡下降できて大満足である.まだ大して暑くもない時期だが,ウエットスーツを着込むことで夏を先取りしたような遊び方ができて楽しかった.
■GPSログ
http://yahoo.jp/gXnmQL
ヤマレコ版:http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-896890.html
■時間
5:13駐車場出発
5:24 一之瀬川本流下降開始
5:43 大常木谷出合
6:33-7:20 千苦の滝
8:22-8:32 不動の滝
8:38 カンバ谷出合
9:16 大常木林道歩行開始
9:57 シナノキノタル
11:00 沢下降開始
11:05 竜喰谷下降開始
12:44-13:37 曲り滝
14:52 竜喰谷出合
16:27 一之瀬川本流下降終了
16:41 駐車場着
■行動記録(敬称略)
前夜,一之瀬林道の入り口に近い,廃道となっている旧国道で泊.
4時半入山の予定で4時に起床するが,寝起きの悪い迫野を行動開始させるのに時間がかかり,テントを畳んで車で移動し始めたのが既に4時半.それから数分で駐車スペースに着き,入渓準備をしているうちに5時を過ぎ,結局出発したのは5時12分.どうやら,入山の1時間前には起床すべきであったようである.
一之瀬川本流までは小尾根を下降するが,踏跡・マーキングともにしっかりとあり,迷うことはない.もしここで迷うような人は入渓しない方が無難であろう.一之瀬川本流に着くと,流石に水量が多いが,特に難所も見所もなく,大常木谷出合まで下降できる.
大常木谷は思ったより水量が少なくしょぼい感じで,なんか微妙だなーと思いながら適当に遡行すると,5×8m滝が現れゴルジュへ突入する.この滝は倒木を利用して釜を越えれば,傾斜は緩いので登攀は簡単.この滝の側壁にあるという奇岩はよく分からなかった.
少しして現れる五間ノ滝は,水量と大きな釜に圧倒されて一見難しいような気がするが,近づいてみるとガバガバで3級-程度.2人ともフリーで右を直登.
なかなかいい雰囲気のゴルジュをしばらく進むと,いよいよ核心の千苦ノ滝.落差が30m近くあってハング気味なので,なかなかの威容を誇っている.通常は右を巻くが,左壁を登れる(5級以上)という情報もあったので,下見の後リード丸山,ビレイ迫野で取りつく.しかし確かに難しく,30分程度格闘していろいろ試したが登れず.残置ハーケンやボルト,スリングなどがあるが,ハーケンもボルトもかなり錆びていたり曲がっていたりして,あまり信用できないので,残置を利用したA0やA1も試みたものの,気が進まなかった.結局通常通り右を巻くが,この巻き道は踏跡がはっきりしており,残置ロープもあるので難しくはない.とはいえ,死亡事故発生現場ということで,それなりに緊張感をもって通過する.ウェブ上では,随分大巻きしている記録が散見されるが,実際には素直に踏跡を辿れば千苦の滝のすぐ上に出ることができる.
暫く割合単調な部分を歩くと,山女魚淵が現れ,2つ目のゴルジュが始まる.山女魚淵は泳いで突破.流れは殆ど無く容易.その後も雰囲気のいいゴルジュや小滝を越えていくと,早川淵があり,ここも泳いで突破する.その先また少し単調になるが,程なくして釜や小滝が現れ,適当に越えると不動滝が見える.不動滝は下段を左から直登し(3級),上段も左から直登した(3級+).上段はややバランスを要したので,後続の迫野をお助け紐で確保した.なお上段には残置ハーケンと終了点があったので,自信がなければロープを出して登る方が良い.
その後は綺麗なナメ滝が続き,問題なく越えると,カンバ谷出合.ここから先は会所小屋跡まで単調ということなので,どうせ大常木林道に出るのならとショートカットすることにして,カンバ谷へ入る.カンバ谷は7m程度の滝(3級-)が1つあるだけで,それ以外は特に何もない.標高1200m附近の二俣を右に入り,詰めると,大常木林道に出た.詰めはそれほど急ではないが,そこそこ疲れる.
大常木林道はよくできた道で,一部の崩壊箇所を除き,非常に歩きやすい.崩壊箇所もそれほど危険ではない.また周囲の広葉樹林も綺麗で,癒される.さらに途中にはコケの非常に綺麗な場所もあるなど,なかなか良い道であった.
大常木林道から竜喰谷への入渓でもショートカットを図り,井戸沢の2本手前の沢から竜喰谷に入る.この支沢は滝などはなくスムーズに竜喰谷へと合流した.
竜喰谷の水は冷たく綺麗で,昼間になって明るくなってきたこともあり,風景が美しく感じられる.曲り滝までは美しく楽しいところと単調な川原歩きとが交互に現れ,小滝がいくつもあるが,どれも問題なく巻いたりクライムダウンしたり飛び降りたりして下れる.曲り滝はこの沢の核心であり,懸垂下降の後トップロープで迫野,丸山の順で右壁を登攀してみたが,3級+程度で確かに面白い.この滝には残置ハーケンが4つあった.なお,曲り滝あたりまで来ると沢の水は緑がかってあまり綺麗ではなくなる.
その後10m末広がりのナメ滝をクライムダウン,下駄小屋の滝は右岸を巻き気味にクライムダウン,精錬場の滝は右岸を巻いて下降.なお,精錬場の滝の正しい巻きは左岸であって,右岸はやや下りにくかった.さらに4mCS状は飛び込み,幅広5mはクライムダウンし,竜喰谷出合に着く.
竜喰谷出合にある竜喰谷出合滝10mは吹割の滝に似た非常に見応えのある滝で,気に入った.すこし下流側へ左岸を進んでから滝壺に飛び降りて,さらに下降を続ける.小滝では飛び込んだり,淵で流されて進んだりするのが楽しい.一か所激流となっている小滝と釜があったので,一之瀬川本流下部ゴルジュ遡行をイメージして逆らって泳いでみたが,一定以上は到底進めず,泳ぎ遡行の厳しさを実感した.
いくらか進むとナイアガラNo.2と呼ばれる4m大ナメ滝があり,これは非常に美しい.この滝だけでもこの沢を下ってきた甲斐があったというもの.簡単だが登っても楽しめる.その後は単調な川原歩きを随分と続き,楽しさから忘れていた疲れがどっと出てくる.とはいえ仕方なく沢下降を続けると,朝下ってきた小尾根の登り口を見つけ,朝の逆に登れば,駐車スペースであった.
■予定時間との比較
矢印の左が予定、右が実際
大常木谷下降点-30→30-大常木谷出合-60→50-千苦の滝-150→125-御岳沢出合→カンバ谷出合-150?→142-沢下降開始点-165(遡行の場合)→232-竜喰谷出合-90?→109-大常木谷下降点
部分的にショートカットしたり,滝登攀で時間を使ったりしたが,竜喰谷以外はほぼコースタイム通りだった.奥多摩大菩薩高尾の谷123の竜喰谷のコースタイムは厳しめだと思う.実際,東京起点沢登りルート120のコースタイムは380分となっており,2倍以上もある.この2つの中間が妥当であろう.
■見つけたもの
・ニホンザル:アプローチで一之瀬林道を走行中に見た.
・ヒメオオクワガタ♀:大常木林道歩行中に弱っていたものを迫野が見つけた.初見だったので嬉しい.
・タゴガエル:実際には姿は見ておらず,鳴き声を聞いただけ.先月ネバタゴガエルの鳴き声を聞いたばかりだったので,両種の鳴き声の違いが良く分かった.
・サワグルミ?の大木:大常木谷の早川淵上流にて.遡行図にも出ている大木で,確かにでかい.
・エゾハルゼミ?:竜喰谷で,今年初めてのセミを見た.とはいえ春のセミらしい.
・笹の花:数十年に一度しか咲かないと言われ(齋藤 2014),滅多に見かけないもの.笹はイネ科であり,確かに他のイネ科植物の花と似ていた.笹は一度開花すると枯れるとされるが,周辺にも涸れた笹薮が多かったので,この周辺の笹は近年一斉に開花期を迎えているのかもしれない.
※引用文献
齋藤基生,2014. ササの開花と結実. 名古屋学芸大学 教養・学際編・研究紀要, (10):63-72
■感想・備考など
・疲れた.11時間半行動しっぱなしは辛い.体力に自信がない人にはお勧めできないルート.とはいえ,今(年齢・季節的に)しかできないような行程をやり遂げたことで,充実感で一杯である.今年の沢登りの中で最も充実していた.
・水量は竜喰谷の方が大常木谷よりも多かった.水は両谷ともに下流部はそれほど綺麗ではなく,上流へ行くにつれて綺麗に,そして冷たくなる.
・竜喰谷は曲り滝までが核心だと感じられたので,大常木谷とつなげる場合,時間や体力に余裕がなければ,シナノキノタルから下駄小屋沢を下降して曲り滝の下流に入り,曲り滝だけ登攀してから下降するのがいいかもしれない.
・取りついた滝に登れなかった経験は初めてで,ちょっと悔しいが,いい経験となった.
・ヤマビルはもちろん無し.
・この時期にこれらの沢を楽しみたいならウエットスーツは必要.なければ水が冷たくて凍えるだろう.ウエットありでも,動いてないと寒く感じる.
・山中では全く人とは出会わなかった.
・このルートならロープは30m一本で十分である。
■反省
・予定より入山が遅くなった.
■コメント
・荷物の防水化はもっとしっかりやりましょう.
・真夏には丹波川本流・一之瀬川本流下部ゴルジュの遡行をしてみたいと思っています.
■沢の評価
【奥多摩】
多摩川系一之瀬川・大常木谷 160612カンバ谷出合まで遡行[raicho 11900]
2級,綺麗2,登攀2,珍奇2,辛苦1,推奨2
深く立派なゴルジュが続き,一見の価値がある.カンバ谷出合までは単調な部分が少なく,ナメや大滝,小滝に瀞など変化に富む沢登りができるお薦めの沢.
多摩川系一之瀬川・竜喰谷 160612下降[raicho 11900]
2級下,綺麗2,登攀2,珍奇1,辛苦1,推奨2
水量の多い沢で,豪快な滝をいくつも直登できるのが良いが,単調な場面もやや目立つ.ナメや小滝も場所によっては美しいし,へつりも楽しめる.ゴルジュはないので,滝の巻きは簡単.核心部は曲り滝まで.
多摩川系・一之瀬川本流上半部 160612竜喰谷出合~大常木谷出合を下降[raicho 11900]
1級,綺麗2,登攀0,珍奇2,辛苦1,推奨1
奥多摩ではごく少ない本流型の沢登りができるところで,ナイアガラNo.2といわれる滝から竜喰谷出合までの間は小滝も多く楽しいが,大常木谷出合からナイアガラNo.2までは単調である.ただ,川原が広く,そこを歩くのは楽なのでそれほど苦にはならない.