2016/6/26 雷木沢遡行・水晶沢下降・モロクボ沢下降
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
雷木沢遡行・水晶沢下降・モロクボ沢下降計画書
作成者:丸山
■日程 6/26(日)(荒天の場合中止)
■山域 西丹沢
■捜索要請日時 2016/6/27 10:00
■メンバー(計3名)
CL丸山 SL遠藤 山本
■交通
新松田駅周辺に7時に集合し,丸山車で用木沢出合へ(40分程度)
■行程
用木沢出合-15-雷木沢出合-60-F3大滝-120-雷木沢右岸尾根-60(水晶沢右俣経由)-
水晶沢二俣-30-水晶沢出合-15-堰堤-60-モロクボ沢大滝-30-用木沢出合
(計6:30)
http://yahoo.jp/ZudvSD
※コースタイムは設定されていないので,予定時間を記した。
※時間と体力に余裕があれば,雷木沢・水晶沢の支流にある滝の探勝および,モロ
クボ沢大滝のトップロープでの登攀を試みる
■エスケープルート
雷木沢F3まで:引き返す
雷木沢右岸尾根まで:引き返すか,雷木沢右岸尾根または左岸尾根に上がって尾根
から下山
水晶沢:そのまま進むか,雷木沢右岸尾根に上がって尾根から下山
モロクボ沢:そのまま進む
■地図・遡行図
2万5千分1地形図「中川」
山と高原地図「丹沢」
雷木沢遡行図:http://homepage3.nifty.com/achkun/naka/moro/kami11.htm
水晶沢・モロクボ沢遡行図:
http://homepage3.nifty.com/achkun/naka/moro/sui.htm
(水晶沢右俣を下降予定だが,右俣の遡行図は見つからず)
■遭難対策費
100円×3人
計300円
■備考
日の入(山北6/26)19:04
松田警察署 0465-82-0110
雷木沢遡行・水晶沢下降・モロクボ沢下降記録
作成者:丸山
■日程 2016/6/26(日)
■山域 西丹沢
■天候 晴れ時々曇り
■メンバー・オーダー(計3人、敬称略)
CL丸山(35)、山本(37)、SL遠藤(35)
■総評
綺麗で見応えもあり、適度に長く、適度な登り応えがあり、充実した山行であった。
■GPSログ
http://yahoo.jp/zXgC1d
■時間
7:47 駐車地点出発
8:05 雷木沢出合
9:39 雷木沢F3下
12:45-12:55 雷木沢右岸尾根
13:51 水晶沢右俣下降終了
14:15 水晶沢二俣
14:51 水晶沢出合
15:03 石積堰堤
16:10 モロクボ沢大滝下降終了
16:25-16:44 沢装備解除
17:05 駐車地点着
■行程
ほぼ予定通りの時間に新松田駅近くに着くと、2人が待っていて、スムーズに西丹沢へと向かう。渋滞もなく7時半くらいには用木沢出合の駐車スペースに着いたが、驚いたことに既に10台以上駐車していて満車。仕方がないので少し引き返し、適当な場所に駐車(近隣の土地所有者の迷惑になる可能性があるため、一般公開前提の本記録には詳しく書かない)。
さっさと出発して雷木沢の方へ向かうと、沢屋が7人程度いる。同じ雷木沢を目指していたら嫌だなあと思いつつ抜かして、白石沢を橋で渡る。少し歩くと今度はモロクボ沢に架かるやまびこ橋があるが、これは渡らずにモロクボ沢左岸に続く踏み跡を進む。すると、噂通りの貧弱な支流があり、これが雷木沢。そのまま雷木沢の左岸に踏み跡が続いているので、それを辿ると堰堤があり、きちんと「雷木沢」と書いてある。踏み跡を辿って左岸から巻き、少し進むとそろそろ水に入らないと進みにくくなってきたので、ここで入渓準備。結構ゆっくり入渓準備したが、後ろから誰も来ないので、どうやら他パーティとの同時遡行にはならなくて済みそうだと一安心。
入渓準備を済ませると、少しだけナメを歩いて、次の堰堤を右岸から巻く。そこからは綺麗なナメ小滝が続き、早速好感の持てる渓相。程なくしてF1(10m)下に着く。
F1は巻く記録も多いが、結構面倒らしく、直登用の残置もあるので、リード丸山、ビレイ遠藤で登る。左壁から取り付いて少し登ると残置ハーケンが2つあり、そのうち1つにはA1用のスリングがかかっている。ここで支点を取る。スリングを使わないで登るのは厳しいので、スリングに足を掛けてA1で登ると、この滝の核心部は終わり。あとは少し登ってから水流を横断して右壁に移り、さらに少しの登りで落ち口。3級+A1。立木で支点を取り、遠藤に登高器で登ってもらい(A1箇所で苦労していた)、最後に山本が登った。
F1すぐ上の小滝を難なく登ると、すぐにF2(15m)。丸山リードで水線直登を試みたが、最初が難しいし水流が激しいので諦め、右壁をフリーで登る(3級)。岩が脆くてちょっと厄介。山本、遠藤はお助け紐で確保。F2すぐ上の小滝(上段とする人もいる)も難なく登ると、5分ほどで見事なF3(25m)が眼前に。
F3は右から高巻く記録も左から高巻く記録もあったが、落ち口付近まで右岸の斜面を登り、トラバース気味に落ち口へ抜ければ高巻きしなくても済むのではないかと思えたため、とりあえず右岸斜面を登る。登ってから立木でセルフビレイを取って落ち口へ抜けるルートを確認してみると、何とか行けそう。ということで遠藤にビレイしてもらい、トラバースする。物凄く高度感があって恐ろしいが、ホールドは多少あり、何とか抜けた(3級+)。落ち口の上にある立木で支点を取ってロープを固定し、遠藤が2番手でトラバースに挑む。しかしホールドが見つからないようで、詰まっているうちに乗っていた足場が崩れ落ち、滑落。ちゃんと確保されていたので怪我もなく登り返したが、戦意喪失したようなので、遠藤と山本はもう少し大きく巻くことに。とはいえ、懸念したほどの大きな高巻きにはならず、ちょうど丸山が支点を取った立木のあたりへ至った。そこから水流に戻り、F3の通過は完了。
F3の上はこれまでの連瀑とは一転して落ち着いた渓相になるが、適度にナメがありいい感じ。途中右岸から顕著な支流を2本合わせ(1本目に少しだけは入ってみたが、本流同様ナメはあるものの、特筆するようなものは無かった;2本目は出合に倒木があり入る気にならなかった)、しばらくするとF4(2段4m+8m)。下段の樋状滝は簡単に突っ張りで上がれるが、上段のスラブ滝は見た目からして簡単ではなさそう。丸山は水流左から細かいホールドとフリクションを使って登ったが、結構バランスを要する(4級)。遠藤は迷わず右のぐずぐず斜面を登り、山本は丸山のお助け紐による確保で水流左を登ろうとしたが、難しいため諦めて、遠藤と同じく右斜面を登る。
F4の上にはすぐF5(10m)がある。巻きは簡単そうだが、せっかくなのでロープを出し、リード丸山、ビレイ遠藤で登る。途中、ちょうどいいところに残置ハーケンが1つあり、そこで支点を取って中間のバンドへ上がる。中間のバンドからさらに水線を直登しようとしたが、やや難しく、ハーケン打ちも試みたが入らないので、右壁を登った。この滝は3級+。ここでも立木で支点を取り、セカンド遠藤、ラスト山本で登った。
ここより上流にはもう目立った見所は無く、この沢のシンボルツリーと言われる株立ち状のサワグルミの大木や、3m平板上のナメ滝を過ぎれば、水はもうほとんどなくなり、詰めの様相。適当なところで左の尾根に乗り、詰め上げていくが、グズグズの泥々で登りづらい。何とか雷木沢右岸尾根に辿り着いた時には、汗だくになっていた。
少し休憩して、水晶沢の下降に入る。雷木沢の詰め同様グズグズの泥々だが、下りなので楽。とはいえ、さっき登ってきた分をすぐに下るのは何だか損した気がするので、尾根を貫くトンネルでもあればいいのに。結構下っても水はなかなか現れず、いくら下っても水が無かった石棚沢を引き合いに出して雑談。そのうちに漸く水が出てきて小滝もあるが、いずれもそれほど難しくなくクライムダウンしたり巻き下ったりできる。雷木沢と同程度に綺麗なナメはあるものの、大した見所もないうちに水晶沢二俣に懸かる右俣F1(7m)上に着く。ここのクライムダウンは難しそうなので、二俣から少し左俣を遡ろうと思っていたこともあり、左俣の上流の方へトラバースする。やや高度感があり、足場もあまりよくなかったが、問題はなく通過。
左俣の遡上を始めると、程なくして3段20mナメ滝が見える。確かに末広がりで美しいナメ滝であり、ここで休憩とし、丸山と山本はこの滝を登って降りながら、写真を撮るなどして楽しむ。十分にこの美しい滝を楽しんだ後は、左俣を下降して二俣へ向かうが、二俣すぐ上のナメが噂通り素晴らしい。右俣に懸かるF1とも相まって、この辺りの景観はなかなかのものである。
二俣から下るとすぐに4m壁状滝。クライムダウンは難しそうなので懸垂下降。丸山は下降後左壁を登ってみたが、1箇所バランスを要し、3級+程度。その先多少のナメとゴーロを経て、キメ岸沢出合。
キメ岸沢には出合のすぐ近くに滝が2つあるとのことだったので、まずはF1の15m2条ナメ滝を登る(2級)。するとすぐに、F2の12mCSがあった。水量は少ないが、綺麗な一枚岩の滝で、登るのは難しそうである。キメ岸沢への寄り道はこれくらいにして、水晶沢の下降を続けると、すぐにモロクボ沢へ出た。
モロクボ沢はゴーロが続くので、淡々と10分程下ると、連瀑帯の始まりとなる石積堰堤がある。これを左岸から巻くと、いよいよ楽しい連瀑帯。4セット位ある小滝と釜をクライムダウンしたり滑ったり泳いだりして存分に楽しむ。この辺りの小滝は登りの場合簡単すぎるが、下りならば適度に頭を使うので楽しい。遠藤は1箇所失敗して滑り落ち、腰を打っていたが。
楽しいところは短く、モロクボ沢大滝の落ち口へ着く。もともと大滝のトップロープ登攀を考えてはいたが、いい支点が取れそうにないし、時間も思ったより遅くなっていたので、ここは普通に懸垂下降することにして、立木にロープをセットするが、笹藪と絡まって手間取る。ここの懸垂下降は、ハングした岩で空中懸垂になる割に、藪の中の下降なので爽快感が無いという、微妙なものだった。とはいえ、空中懸垂の訓練にはなったはず。下降して見る大滝は圧巻。
大滝を下降してしまえば、もうモロクボ沢は終わったようなもので、ゴーロしかないので、川原を歩いて楽をしながら、ひたすら下る。もう水へ入る必要は無かろうと思った堰堤の上で沢装備を解除し、モロクボ沢入渓者の多さを物語るはっきりした踏み跡を辿ると、白石キャンプ場跡地に到着。ここからは舗装路を淡々と歩き、車の減った用木沢出合を経て、駐車地点に着いた。
■予定時間との比較
矢印の左が予定、右が実際
駐車地点-15→18-雷木沢出合-60→94-F3大滝-120→186-雷木沢右岸尾根-60→80-水晶沢二俣-30→36-水晶沢出合-15→12-堰堤-60→67-モロクボ沢大滝下-30→55-駐車地点
(計6:30→9:18)
■見つけたもの
・セミ:今回も多分エゾハルゼミ
・カエル:たぶんタゴガエル
・ヤマメ:モロクボ沢には一昨年同様多い
・キノコ:いろいろあったが美味しそうなのは無かった
■感想・備考など
・雷木沢はマイナー沢だが、見応えのある滝と適度な登り応えのある滝、美しいナメを併せ持ついい沢だった。
・高巻きした記録しか見当たらない雷木沢F3を高巻かずに突破できたのは嬉しかったが、遠藤が足場を崩してしまったので、今後はより難易度が上がってしまっただろう。なおF3については、中盤まで水線を直登し、途中から右岸斜面の立木で支点を取りながら登り、落ち口へ向かいトラバースすれば、直登に近い登り方が出来るであろう。
・水晶沢は下部に見どころが集中しており、詰めは辛そう。
・モロクボ沢には複数パーティが入っていたようであり、中には水鉄砲を持ち込もうとしているパーティも見かけた。
・モロクボ沢の小滝&釜群は、相変わらず素晴らしい。
・ヤマビルは見かけなかった。
・雷木沢の詰めと、水晶沢の下降で水が出てくるまでが意外と長かった。
・水晶沢左俣は3段20mナメ滝より上にはそれほど見所が無いそうなので、水晶沢はもうこれで満喫したことにする。
・最近は2級くらいの沢がちょうどいい難易度と感じる。
■反省
・笛の合図や登高器の使用方法などをもっとしっかり説明してから滝を登るべきだった。
・遠藤がF1を登攀している時に丸山が不注意で落石を起こし、危険だったので、もっと気を付けるべきだった。
・F3の落ち口トラバースでは、ロープをフィックスしたほうがより滑落距離が小さかったと考えられるので、その方が良かった。また、遠藤はフリクションヒッチで進もうとしたが、片手をその移動に使いながら進めるほど簡単ではなかったので、その点ではトップロープの中間エイトか、フィックスして環付カラビナをロープに通して進む方が良かった。
・水晶沢左俣へのトラバースは、やや高度感があり、足場も良くなかったので、お助け紐かロープを出したほうが良かった。
・モロクボ沢大滝の懸垂下降後、ロープの動きを確認しておくべきだった。
・モロクボ沢大滝の懸垂下降の準備に時間がかかった。笹藪と絡まることの無いようにすべきだった。
■コメント
・登攀能力をもう少し高めましょう。
・沢でのiPhone使用は危なっかしいですね。
・懸垂下降時は出来るだけ下ってから下降器を外しましょう。
■沢の評価
【西丹沢】
酒匂川系中川川モロクボ沢・雷木沢 160626遡行[raicho 11930]
2級,綺麗2,登攀2,珍奇1,辛苦1+,推奨2
書籍に紹介されたことは無くマイナーな沢だが、登り応えのある滝や美しいナメ、優雅な大滝などを併せ持つ佳渓。水量は少なく、詰めがグズグズ泥々でやや辛いのが玉に瑕。
酒匂川系中川川モロクボ沢・水晶沢 160626右俣下降[raicho 11930]
1級,綺麗2,登攀0+,珍奇1,辛苦1+,推奨1+
右俣・左俣ともに下部に見所が集中し、上部は単調で水量も少なく、詰めは辛そうである。左俣の3段20mナメ滝は美しく必見なので、右俣へ行く場合でも左俣へ少し入ってみるのが良い。
酒匂川系中川川・モロクボ沢 160626水晶沢出合から下降[raicho 11930]、140621遡行[raicho 10905]
1級,綺麗2+,登攀0+,珍奇1+,辛苦1,推奨2
水が多く綺麗で、大滝や釜もあり、泳いで楽しめる丹沢では数少ない沢。滝場以外は冗長な感じがするので、適当な枝沢へ入る方が楽しいであろう。ヤマメが沢山いたので、釣りも楽しめるかもしれない。 詰めは入る枝沢次第。