2016/7/3 川乗谷逆川遡行
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
川乗谷逆川遡行計画書
作成者:丸山
■日程 2016/7/3(日)
■山域 奥多摩
■捜索要請日時 7/4 10:00
■メンバー (計3人)
CL丸山 SL迫野 谷口
■交通
丸山車で川乗林道へ入り,適当な場所へ駐車(前泊)
川乗林道へ車で入れない場合,倉沢谷へ転進.
■行程
逆川下降点-5-川乗谷-120-大乢沢出合-45-二俣-40-登山道-60?-百尋滝-240?-下降終了
(計3:30+5:00?)
コースタイムは奥多摩大菩薩高尾の谷123ルートによる.
※気が向いたら川乗谷下降は途中で切り上げ,川乗鍾乳洞を探検
□転進の場合
倉沢橋-50-魚留橋-140-茅尻沢出合-30?-魚留橋-120(遡行の場合)-マイモーズの悪場上-50?-マイモーズの悪場下-30?-倉沢橋
(計5:10+1:50?)
http://yahoo.jp/pDsJyD
※余裕があれば,茅尻沢出合より上も少し遡行して引き返す
※気が向いたら,倉沢鍾乳洞を覗いてみる
■エスケープルート
ウスバ林道まで:引き返すか,そのまま進んでウスバ林道で下山
登山道まで:引き返してウスバ林道で下山するか,そのまま進む
百尋滝まで:そのまま進んで登山道と林道で下山
百尋滝から:附近の登山道か林道に出て下山
□転進の場合
地蔵橋まで:引き返す
塩地谷:引き返すか,そのまま進んで林道で下山
魚留橋まで:そのまま進んで林道で下山
倉沢本谷:倉沢林道に出て下山
■地図
2万5千分1地形図「武蔵日原」
山と高原地図 「奥多摩」
■遭難対策費
100円×3人
計300円
■備考
日の出(奥多摩7/3)4:32
日の入(奥多摩7/3)19:05
青梅警察署 0428-22-0110
川乗谷逆川遡行・本流下降記録
作成者:丸山
■日程 2016/7/3(日)
■山域 奥多摩
■天候 晴れ時々曇り
■メンバー・オーダー(計3人、敬称略)
CL丸山(35),谷口(37),SL迫野(35)
※オーダーは時々変更した
■総評
ウスバ林道での道外しにより時間・体力的にかなりのロスをしてしまったが,逆川と川乗谷本流はそれぞれ違った楽しみのある沢であり,十分満足できる1日を過ごすことができた.
■GPSログ
http://yahoo.jp/H4w-kF
■時間
7:42 逆川下降点
7:46 川乗谷本流
7:50 逆川出合
9:45-48 大乢沢出合
10:32-11:09 10m滝・ウスバ林道
11:33 二俣
11:38-12:08 左俣25m滝
12:38 ウスバ林道
13:07-11 ウスバ尾根下部
13:40-43 ウスバ乗越
14:08 足毛岩の肩
14:56-15:02 百尋滝
15:19 火打石谷出合
15:55-58 7m滝
16:08-25 長滝
16:38-54 直滝
17:18-30 細倉橋下流スライダー
17:38 逆川下降点
■行動記録(敬称略)
※使用した遡行図は東京起点120ルートのもの.
前夜のうちに川乗林道の逆川下降点まで入り,テント泊.
夜が遅かったこともあって6時40分に起床し,テントを片づけて入渓準備.
起床後1時間で例のカーブミラーのところから入山して,明瞭な踏跡を辿ると,4分ほどで川乗谷本流へ出る.少し遡ると大きめの釜があり,いきなりへつりを強いられるが,問題なく越え,すぐに逆川出合.早速腰くらいまでの入水となる釜を越えると,すぐに序盤の核心である2段3+7m滝.下段3mは全員フリーで容易に越え,上段7mは丸山がフリーで右壁を登った後,後続をお助け紐で確保.3級+程度.残置中間支点は見つからず,終了点だけは残置がある.
その先,前評判通りしばらくゴーロが続くが,登り方次第では楽しめるような小滝もあり,それほど飽きることはない.また,このような巨岩のゴーロは少しだけだが台高のシオカラ谷に似ているような気がした.ゴーロの途中にあった樋状5m程度の滝は突っ張りで登るのが楽しい.丸山は登った後滑り下りてみたが,あまり滑り心地はよくない.
程なくして沢は再びゴルジュになり,いくつかの小滝を問題なく越えると,大釜のある2m滝.ここは3年前に丸山は巻いたが,CLだった宮崎さんがへつって越え,感心したところだったので,今回は自分がへつってみたが,途中で失敗しドボン.結局泳いで登る.滝自体は容易.谷口は左から巻き,迫野は最初から泳いで登った.このあたりの渓相はよく,ナメや苔がなかなかいい雰囲気を醸し出している.このゴルジュ最後の4m滝は残置スリングがあり,これを掴めば簡単に登れそうだが,丸山と迫野はあえて使わないで登り,谷口は使って登った.高さがないので危険はないが,残置を使わない場合そこそこ難しく,4級程度.
ここを越えると沢は再び単調になるが,すぐに次のゴルジュになる.このゴルジュは短く,小滝もすべて易しいのですぐに通り抜ける.遡行図によればこの辺で木橋の架かる径路が沢を横断するはずだが,荒廃したようで見当たらない.もともとこのような状況を予想し,この径路をエスケープルートに設定することは避けていたが,正しかったようである.容易な小滝をいくつか越えると大乢沢出合.大乢沢に5m程度の滝があったので丸山と迫野は登ってみたが,3級程度で不安なく登れる.登った後はすぐに右岸を巻き下れる.
さらに小滝をいくつか越えると,3段10m滝.下2段は簡単なので全員フリーで上がり,樋状の上段では谷口にお助け紐を出した.水根沢の半円の滝よりはやや易しく,3級.直後の4m滝は遡行図では巻くことになっているが,水流右側から直登.3級+程度だが,難しいのは下部だけなので,全員フリーで登った.
また少し単調になるが,10分ちょっとで中盤の核心10m滝.やたらとハイテンションな迫野が初リードに挑戦することになり,ロープワークを少し教えた後,リード迫野,ビレイ丸山で登る.残置ハーケンが3つあり,確実に中間支点をとっていた.迫野が立ち木で終了点を作った後,セカンドの丸山はアッセンダーを使って登り,最後に谷口がトップロープで登った.高度感はあるが難しいところはなく3級.
滝の上ではすぐにウスバ林道の木橋が横切るが,これをくぐって進む.小滝をいくつか越え,8m滝.丸山と迫野は右壁をフリーで登り,谷口はお助け紐で確保.3級.
左俣に入って小滝を越えながら少し進むと,最後の核心25m滝.25mもなさそうに見えるのはともかくとして,沢で登攀する滝としてはなかなかのものである.リード丸山,ビレイ迫野で登ったが,残置支点は信用度の低いもの1つしか見つからず,実質フリーに近い.とはいえ3級程度で難しくないので躊躇なく登り,落ち口近くの都合のいい立ち木で終了点をとって,セカンド迫野,ラスト谷口も登った.
これで逆川の見所は終了なので,詰めも面倒だからと遡行図通りウスバ林道に下ることにした.多少のザレを経るが,特に問題もなく二十数分でウスバ林道の木橋に戻り,予定通りウスバ林道を西に進む.が,これが悪夢の始まりだった.ウスバ林道はウスバ乗越に向けて徐々に登っていくはずの道だが,なぜか登らない.不安になってGPSを見ながら進んだが,進む方角は間違っていないので進み続けると,ウスバ尾根の,ウスバ乗越よりも150m程度下へ出てしまった.どうやらウスバ林道を途中で外して作業道に入ったようである.仕方なくウスバ尾根を150m急登しようとするが,上り坂の苦手な迫野が疲労し,ペースが極端に落ちる.しばらくしてようやくウスバ乗越に着いて安堵したが,通行止めになっている通り,ウスバ林道は廃道だった.ウスバ乗越から足毛岩の肩までのウスバ林道もひどく荒れ,ところどころ崩壊したり,藪がかかったりしており歩きづらい.なんとか足毛岩の肩に着くと,整備された登山道で,そのありがたさを実感した.あとはひたすら登山道を歩き,百尋滝に着いたので,丸山と迫野はオーバーヒートした体を滝行して冷ました.
どうやら迫野の疲労の原因はオーバーヒートによるところが大きかったようで,冷ますと調子も良くなったようだったので,予定通り川乗谷本流の下降に入る.百尋滝下流ではいきなり水が伏流して無くなり,石棚沢を思い出して嫌な気持になるが,それは杞憂で,少し下るとすぐにまた水が出てきた.この辺りは,絶壁が谷の右岸にありスケールの大きい景色で好ましい.少々下ると谷はゴルジュになり,スライダーの楽しい小滝をいくつか滑ったり,クライムダウンする.大きな釜も多く,泳ぎ下るのも楽しい.火打石谷が途中で左から合流する.しばらくして7m滝があり,クライムダウンは難しそうだが,滝壺が大きいので,丸山は途中まで降りて飛び込み,安全を確認後,迫野と谷口は滑り降りた.斜度70°くらいでほぼ垂直なので結構怖い.
時々沢を横切る登山道を無視してそのまま沢下降を続けると,15m長滝の上に至った.斜度60°ほどありかなり怖いがスライダーもできそう.とはいえ今回は覚悟ができていないので巻き下ることにすると,トラロープがダブルで残置されていた.新しいもののようなので,これを利用して懸垂下降.
この先単調になり,近くにある登山道を少し進んだが,すぐに面白そうな滝場が出てきたので,また沢へ戻る.スライダーを交えて進むと今度は7m直滝があり,これはクライムダウンも滑り降りもできそうではなく,飛び込みもやや怖いので,懸垂下降.途中空中懸垂になり,慣れない谷口はロープが振られて危なかった.
また少し平凡な沢になるが,林道の細倉橋をくぐって進むと,下降の面倒なゴーロ状の小滝が出現.時間もだいぶ遅くなり,だんだん面倒になってきたので林道に出て巻いた.すると,そのすぐ下流に,キャニオニングのツアーコースになっていると思われる快適そうなスライダーがあったので,これを滑ってから終わりにすることにした.このスライダーは本当に素晴らしいスライダーで,怖くない程度のスリルがあり,距離も結構長い.丸山と迫野が滑ったが,体の冷えていた谷口は悩んだ末このスライダーを次回のお楽しみとすることにした.
素晴らしい〆に満足して,もう沢下降はやめ,林道を歩いて車に戻った.車に戻ってから惨事が判明するわけだが後述.
■予定時間との比較
矢印の左が予定(奥多摩大菩薩高尾の谷123のコースタイム)、右が実際
逆川下降点-5→4-川乗谷-120→119-大乢沢出合-45→105-二俣-40→65-ウスバ林道-60?→138-百尋滝-240?→156-下降終了点
大乢沢出合まではいいペースだったが,そこから遅れだしたようだ.今回は迫野に初リードをさせたため,10m滝でやや時間がかかったのは事実だが,二俣まで45分というのは厳しすぎる.ウスバ林道に乗ってから沢下降に入るまでは,道外しにより大きく遅れたため参考にならない.このタイムロスの結果,沢下降にかけられる時間は短くなり,本来聖滝まで下降したかったができなかった.とはいえ,渓相が良かったので聖滝まで下降しなくても満足はできた.
■見つけたもの
・カワネズミ:2段3+7m滝の下にて.珍しくまじまじと見られたが写真は撮れず残念.
・アズマヒキガエル:各所にて
・タゴガエル:25m滝上にて
・ヤマメ?:逆川では魚影は見られなかったが,本流の魚影は濃かった.たぶんヤマメ.
・鹿角:ウスバ林道の少し上流に1本落ちていた.
・キイチゴ類:ウスバ尾根の急登時にあった唯一の癒し要素.迫野が食べて美味しかったとのこと.
■感想・備考など
・水は川乗谷本流より逆川の方が茶色がかってやや汚れている.理由はよく分からない.
・川乗谷本流は無名の沢で,聖滝などの下流部を除き殆ど記録がないが,キャニオニングツアーが開催されていることからも分かるように,渓相はなかなか良い.もっと遡行者が入ってもいいところだと思う.
・逆川は,1級上としては大滝もあり,楽しめる沢.
・ウスバ林道は廃道で荒れており,しかも作業道に入り込むリスクもあるので,物好きでなければ絶対に西側へは入らない方が良い.恐らく,左俣を詰めて登山道に出た方が良い.
・迫野が初めて滝をリードで登ったので,いい経験となったはず.今後もやって,慣れてほしい.
・ヤマビルはもちろん無し.
・川乗谷本流はウエットスーツがあった方がいい.
・登山道や百尋滝にはそこそこ人がいたが,沢では人に会わなかった..
・今回のルートならロープは30m一本で十分。
・スライド式のジップロックには防水性が無いようで,谷口は2重ジップロックで守ったつもりだったiPhoneと財布を水没させ,iPhoneを故障させた.データも直近数か月分消えたようで,ご愁傷様.
・25m滝の直登は中間支点も乏しいので,1級上の沢としては厳しい方である.自信がなければやめた方がいい.
・細倉橋下流のスライダーは今までで最も滑り心地のいいスライダーだった.樋状で横に逸れる心配もないし,水量も多いし,釜も大きく深いし,水も綺麗だし,恐怖感もない.お勧め.興奮しすぎて写真を撮り忘れた.
■反省
・迫野が厚すぎるウェットスーツを着ていて,オーバーヒートして熱中症気味になり,疲労していたので,ウェットスーツは本当に必要なときにのみ着ているべきである.今回では,泳ぎの頻発する川乗谷本流でのみ着るべきであり,他の部分ではザックにしまっておけばよかった.脱着が面倒だからと言って横着してはならない.
・谷口の空中懸垂に対するサポートが十分でなかったため,危険を招いた.
・ウスバ林道が登らずにおかしいと思った時点や,明らかにウスバ乗越に向かっていないと分かった時点で作業道の下降をやめていれば,150mも急登をしなくて済んだ.ウスバ林道が迷いやすいという情報,あるいは間違って入りかねない作業道があるという情報をあらかじめ調べておくべきだった.GPSで現在地を確認できたのが救いだった.水平径路では地図とコンパスによる現在地の把握は難しいであろう.
■コメント
・荷物の防水化はもっとしっかりやりましょう.谷口ほどではないものの,全員に多少の水濡れ被害が発生.
・川乗谷本流はいいところだったので,今回行けなかった聖滝を含め,再訪したい.長滝を滑ってみるのもいいかもしれない.
■沢の評価
【奥多摩】
多摩川系日原川・川乗谷逆川 160703左俣大滝上まで遡行[raicho 11943],130721ウスバ林道まで遡行[raicho 10405]
1級上、綺麗1+、登攀2、珍奇0+、辛苦0+、推奨2
適度に登りごたえがある滝が続き、へつりが楽しめる釜もある良い沢。水はあまり綺麗ではない。詰めが無いのはいい。
多摩川系日原川・川乗谷本流 160703百尋滝から細倉橋下流スライダーまで下降[raicho 11943]
1級上,綺麗2,登攀1,珍奇2+,辛苦0,推奨2
水量の多い沢で,泳げる釜が多数.スライダー状の滝が多いので,下降の方が楽しめるかもしれない.長滝や百尋滝など,見応えのある滝も複数ある.