2016/8/20 米子沢遡行・三クラ沢下降

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
米子沢遡行・三クラ沢下降計画書 
作成者:丸山
■日程 2016/8/20(土)
■山域 巻機山
■在京本部設置要請日時 8/20 21:00
■捜索要請日時 8/21 10:00
■メンバー (計2人)
CL丸山 SL迫野
■交通
丸山車で桜沢駐車場附近へ行き前泊
■行程
桜坂駐車場-60-ナメ沢出合-60-栂ノ沢出合-120-大ナメ帯-60-二俣-20-避難小屋-90?-三クラ沢出合-30-ヌクビ沢-90-桜沢駐車場
(計7:20+1:30?)
※コースタイムは東京起点沢登りルート120,山と高原地図などを参考にした. 
■エスケープルート
米子沢:引き返すか,井戸尾根に詰める
三クラ沢:井戸尾根に詰めるか,そのまま進む
ヌクビ沢以降:そのまま進む
■地図
2万5千分1地形図「巻機山」
山と高原地図「越後三山」
米子沢遡行図:東京起点120ルート p.283
三クラ沢遡行図:http://sonosoranoshitade.web.fc2.com/sonosoranoshitade6/page030.htm
■遭難対策費
100円×2人
計200円
■備考
日の出(8/23)5:08
日の入(8/23)18:26
南魚沼警察署025-770-0110

米子沢遡行・三クラ沢左俣下降記録
作成者:丸山
■日程 2016/8/20(土)
■山域 巻機山
■天候 曇り時々雨
■メンバー・オーダー(計2人、敬称略)
CL丸山(35),SL迫野(35)
■総評
関東で沢登りをする人の多くが憧れる米子沢を遡行するとともに,記録皆無な三クラ沢左俣を下降でき,非常に充実した山行であった。終盤の割引沢で丸山が滑落し,重大事故一歩手前だったが,内出血とともにメガネを紛失する程度で済み,いい教訓となった。
■GPSログ
http://yahoo.jp/eJXNYJ
■時間
5:45 駐車地発
5:58 米子沢入渓
10:40 登山道
10:43 三クラ沢左俣下降開始
12:48 三クラ沢二俣
13:25 三クラ沢出合
14:02 ヌクビ沢出合
14:30-15:40 アイガメの滝上段
16:50 割引沢下降終了
17:26 駐車地着
■行動記録(敬称略)
桜坂駐車場手前の空き地でテント泊し,翌朝起きたが,早朝から桜坂駐車場に向かう車は多く,今日も巻機山は盛況のようである。準備を済ませて米子沢へ向かう。入渓地点には看板があり非常に分かりやすい。入渓すると,噂通り水のないゴーロ。この間,人気沢だけあって数パーティと抜きつ抜かれつする。
30分以上たってからようやく小滝が現れ始めると,美渓としての米子沢の始まり。綺麗な小滝をいくつか容易に越えていくと,ゴルジュとなる。このゴルジュは右岸の巻道を使って巻くのが一般的だが,最初の滝は直登できそうだったので取りついてみると,それほど難しくもなく直登できた。続く10m滝は直登できそうにもなかったので左岸の草付を登ったが,やや脆いので迫野にはロープを出すことにした。しかし,上まで登ってしまったため,下までロープを投げようとしても途中の草木に引っかかってうまくいかず,時間がかかった。
2つ目の滝を登った場所から沢床に下りるための捨て縄もあったが,懸垂下降してまでまた沢床に下りるのも面倒なので,そのまま左岸からゴルジュを巻いた。右岸ほど明瞭な踏み跡ではないのだろうが,多少の踏み跡があり,特に危険はなく巻くことができる。
ここから先は特に一般的でない登り方をすることはなかったし,この沢は遡行記録が極めて多い沢なので,細かくは述べないが,丸山と迫野というメンバーにおいては,特にメインロープを必要とするようなところはなく,部分的にお助け紐を使用する程度であった。お助け紐を使うためのセルフビレイとしてハーケンを打ってから回収するということは行ったが,それはいい経験となった。直登がやや難しそうに見える小滝には,分かりやすい巻道がある。時折雨が降ってくることはあったが,増水が懸念されるほどではなく,順調に標高を上げていく。
暫くの後,米子沢最大の見せ場である大ナメ帯に至る。曇った空ではあるものの,確かに非常に美しい景観であり,何度でも登りたくなる沢というのも理解できる気がする。人気沢ではあるが,ちょうどこの辺りでは先行パーティも後行パーティも見えないのが良かった。
大ナメ帯が終わると,沢は次第に傾斜が緩く,平凡になっていくが,周囲は灌木・草原なので,開放感は相変わらずである。最後は,水流が殆ど無いが,軽くマーキングのある枝沢へ入ると,殆ど詰めも無く避難小屋近くの登山道に出た。ここは,マーキングを見逃してそのまま本流を進んでしまわないよう注意が必要かもしれない。尤も,そのまま進んだとしても時間をロスするだけだろうが。
出てきた登山道からほんの一登りで,避難小屋に着く。今日はここから三クラ沢左俣を下降する予定なので,避難小屋の裏に回り込んで下降を開始しようとするが,いきなりの激笹藪である。これも何かの機会だと思って笹藪に突っ込んで行くと,しばらくして崩壊地があり,そのあたりから少しずつ沢形がはっきりしてくる。途中から水も出てくるが,特に下りにくいところも見所も無く,そのまま右俣と合流。合流直前の滝だけ,やや下りにくかったが,頑張って巻き気味にクライムダウンした。
合流してからは10m程度ある小滝や広めのナメも出てきて目を楽しませてくれるが,相変わらず下りやすく,問題なくヌクビ沢に出る。ここからは登山道のはずだが,どう見てもただの沢である。ふり返って行者の滝を見ても,これが登山道であるとは到底思えない。10分ほどで,巨大な滑床が現れ,これがヌクビ沢の名所である布干岩。一面の花崗岩で,なかなかの迫力であり,一見の価値あり。これを直登するのが登山道であるとは信じられないが,マーキングもある。
布干岩を下りるとしばらくはゴーロが続き,そのまま割引沢に合流。ところどころ登山道を利用したら楽であった。10分ほどでまた渓相が良くなり,美しい花崗岩の沢床に小滝や釜・滑が続く景観となる。いい渓相にうきうきして進んでアイガメの滝上段の上に出たが,ここで重大ミス。丸山が滝上にある2m程の小滝を滑り降りようとしたところ,滝上で止まらずそのまま滝下に12m滑落。ヤバいと思った瞬間にはもう遅く,大怪我は覚悟したが,滝が比較的ナメていて,しかも深い滝壷に落ちたため,意外と大丈夫であった。意識ははっきりしていたので,滝壷を泳いで滝壷の脇に上がる。上で見ていた迫野が心配しているだろうと考え,大丈夫のサインを送ってから落ち着いてみると,どうやら眼鏡を落としたのと,左手を打ったようで親指の付け根が痛い。とはいえ,我慢できないほどでもないので,打撲ですんだようである。安全にゆっくり降りてくる迫野を待って,ゴーグルを使って眼鏡の捜索を開始。6m程の深さでそれほど広くもない滝壷なので,きっと見つかるだろうと思っていたが,4回ほど潜っても見つからず,冷えてしまったので諦め,下ることにする。
流石に戦意が喪失したし,目も良く見えず,左手も痛いので,沢下降は止めて,迫野を先頭にして比較的安全で容易な登山道を主に進む。相変わらず美しい渓相が続いているのに沢下降できず,くっきりと見ることができないのを残念に思いながらも,着実に下る。一か所,沢を離れるところでやや迷ったが,深入りはせずに引き返したため問題なし。最後はゴーロになった沢を離れて登山道を進み,30分ほどで桜坂駐車場に着いた。

■反省
・メインロープを出す際は,下から引いて登らないと,上から投げようとしても厳しい場合があることを留意すべし(特に藪斜面の登攀)。
・失敗すると事故になる可能性の高い所では,「多分大丈夫」で行動しないようにすべし。
・眼鏡の紛失を避けるためには,水量の大小や泳ぎの有無にかかわらず,眼鏡バンドを使用すべし。
■感想・備考など
・滑落した滝が割合ナメた滝であり,滝壺も深かったため幸運であった。滑る姿勢のまま落ちたので,落ち方もよかったのだろう。
・何度潜水してもメガネが見つからなかったのは納得できない。水もあんなに澄んでいたのに。
・失くしたのが8000円もしない安い眼鏡でよかった。
・手の内出血や痛みは,4日程度でなくなった。当日は気付かなかったが,翌日風呂に入ると右太腿の内出血に気付いた。これも数日で消えた。
・土曜日だったこともあり,米子沢には10パーティ前後入っていたように思われ,その人気ぶりを物語っている。割引沢では,沢中泊する予定の1パーティと出会ったのみであった。
・初級者同伴でもロープは30m一本で十分と思われる。
・2日連続でハードな沢遡下降をやると非常に疲れる。こんなことはやめた方がいい。 
・ヤマビルはもちろん無し.
・メガネをなくして視界がぼやけた後は,迫野に先頭を任せた。ありがとう。
・割引沢の下降が中途半端になってしまったのは残念。
・記録のない沢の下降は,たいていの場合つまらない。とはいえ,フロンティア精神が満たされる。
■沢の評価
【巻機山】
信濃川系登川米子沢 160820遡行
2級下、綺麗3、登攀2、珍奇2、辛苦1、推奨3
人気があり過ぎ,人が多すぎるのが問題だが,開放的で広大なナメと適度な小滝がある美しく楽しい沢。水も綺麗だし,詰めが楽なのもよい。可能であれば,平日に行くことをお薦めする。

信濃川系登川割引沢三クラ沢左俣 160819割引沢まで下降
1級上?、綺麗3、登攀2?、珍奇2、辛苦2、推奨2
割引沢下部・ヌクビ沢下部は白く美しい花崗岩の沢床が続き,非常に美しく魅力的である。三クラ沢下部は,小滝があるもののそれほど遡行価値はない。左俣に入ると水は少なくなり,特に見所はない上,藪はひどい笹藪なので,他の支流を詰める方がよさそうである。