2017/5/21 板ヶ沢下降・三階滝沢遡行・中ノ沢遡行

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
板ヶ沢下降・三階滝沢遡行・中ノ沢遡行計画書 
作成者:丸山
■日程 5/21(日)予備日なし
■山域 西伊豆
■在京本部設置要請日時 2017/5/21 20:00
■捜索要請日時 2017/5/22 10:00
■メンバー(計3名)
CL 丸山 SL 山本 谷口

■集合
6:15戸塚駅西口モリフルーツ脇

■アプローチ
丸山車で大滝林道周辺へ(片道約120㎞、途中西湘バイパス利用・片道180円)

■行程
9時頃入山予定
大滝林道入口-30-山伏の滝下-90-板ヶ沢合流点-15-大滝(10)-15-板ヶ沢合流点-120-三階滝沢遡行終了-60-中ノ沢遡行開始-120-中ノ沢遡行終了-10-大滝林道入口
(計7:50)
17時頃下山予定
https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-368984.html
※コースタイムはないので想定時間
※三階滝沢沿いの廃遊歩道の状況次第では、三階滝沢遡行後中ノ沢へ入るために廃遊歩道を用いる
※適宜廃鉱山の探索を行う

■エスケープルート
沢沿いの廃遊歩道・林道を使用して県道へ出るか、大滝ランド跡地へ下る

■地図・遡行図
2万5千分1地形図「土肥」
山と高原地図「伊豆」
遡行図
http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/110326zunakanosawa.html
http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/110402zuitagasawa.html

■遭難対策費
100円×3人
計300円

■備考
日の入(5/21) 18:46
松崎警察署0558-42-0110

板ヶ沢下降・三階滝沢遡行・中ノ沢遡行記録
作成者:丸山
■日程 2017/05/21(日)
■山域 西伊豆
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計3人、敬称略)
SL山本 谷口 CL丸山
オーダーは時々交替した

■総評
1日で3つの沢を遡行または下降し、さらに鉱山跡の探索と大滝の観光も行うという大
変欲張ったコースだったが、好天夏日という5月としては最高の沢日和の下、全体を
通して期待以上に良い沢を歩くことができ、非常に充実した1日となった。

■GPSログ
http://yahoo.jp/MMsvqN

■時間
9:22 大滝林道入口発
9:43-54 山伏の滝・坑道探索
11:34 板ヶ沢下降終了
11:50-54 大滝
12:08-12:19 林道終点で休憩
12:28-12:47 鉱山跡探索
14:04-07 三階滝
15:12-18 三階滝沢歩道・中沢歩道分岐で休憩
15:29 中ノ沢入渓
16:38 中ノ沢遡行終了
16:42 大滝林道入口着

■行動記録(敬称略)
※滝の名称は下記のウェブサイトに拠った。ただし、このサイトでは、滝や沢の地図
上での位置は間違っている。
http://takizi.daa.jp/home-1/home-2/shi-02/shi02-top.html
※遡行図は下記を使用
http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/110402zuitagasawa.html
http://www.sawakaze.sakura.ne.jp/110326zunakanosawa.html

・大滝林道
2つある九十九折れをショートカットして歩こうとしたが、1つめはショートカット先
で法面があり、結局面倒だった。もう1つは傾斜も緩く簡単にショートカットできた
が、入るべき中道歩道の入り口が九十九折れの部分に見つかったので、ショートカッ
トの意味がなく、林道を少し引き返す羽目になった。ショートカットしてそのまま通
り過ぎていたら中道歩道の入り口を見逃していたので、危なかった。
・中道歩道
大滝林道上に中道歩道入口を示す立札があり、それに従って林道を外れると、いきな
り小さい沢の渡渉を強いられる。その先も踏跡は薄く、経験者でないと迷いそうであ
る。ところどころ石垣も見られ、結構しっかりした道だったようである。なお、地形
図の破線路とはだいぶ道の位置がずれているので留意する必要がある。山伏の滝の先
は、地形図通りなら宇久須方面へ通じているようだが、ほとんど使われていない道の
ようであることから、現在歩ける状態かどうかは不明である。
・山伏の滝
10m以上はある滝で、ハングしており登れそうにない。滝の左側には坑道跡があり、
入って見たところ、数十m先で木の支保工ごと落盤しており、その先への進入はしな
かった。坑道内にはなんだか分からないが細かい針状の結晶もあり、いかにもそれら
しい。コウモリやゲジなどは意外と見かけず。
・板ヶ沢二俣まで
山伏の滝の先は小滝や小ナメがあり、第一印象は悪くない。暫くして現れる遡行図の
2段6m滝(ウェブサイトのF4)を容易にクライムダウンすると、急にゴルジュ状に
なって深い釜を持つ5m滝の上。これを半分ほどクライムダウンして右岸の岩に乗って
から、小さく巻くと、CS2m滝の下に出る。降りてから丸山はこのCS2m滝を登ってみた
が、容易であった。続く2m滝も容易に下ると、二俣。右俣は倒木が多く、見た感じ遡
行意欲を削がれる。
・小滝
二俣を過ぎると少しナメがあって、すぐに小滝(←滝の名称)5mがある。巻こうかとも
思ったが山本がクライムダウンしたそうなのでクライムダウンし、滝壺に立てかかっ
ている倒木に乗って、深い滝壺を越えた。小滝の先には林道があり、くぐる。
・堰堤
8mくらいの堰堤に出合い、飛び込みも危険なので右岸の林道で巻いた。次に現れるは
ずの冷水の滝を見るため、再び林道から沢筋へ下った。
・冷水の滝
遡行図には左側の乾いた岩を登って巻くように書かれていたため、右岸から巻くこと
にしたが、意外と悪く、面倒であった。巻き終わって滝を下から見ると、周囲の岸壁
も含めてなかなかの迫力。
・F3(4mナメ滝)
結構綺麗。下降は楽。
・F2(2段10m)
この滝の上段はクライムダウンできず、左岸から大きく高巻くことにする。結構大変
だが、うっすら踏跡はある。しかしいつまでも踏跡を追っているとなかなか下降して
いかないので、沢へ降りるため植林地を無理やり下る。
・巨岩のゴーロ
F2の下は巨岩のゴーロ帯で、水量も多く、スケールの大きい沢に来たような気分にな
る。ゴーロの間を縫って下降するのは結構難しく、少しは面白いが、長くするもので
はない。このゴーロ帯は、左岸の植林地を歩くと巻ける(谷口はそうしていた)。
・林道
ゴーロ帯を抜けるとすぐに、下側から登ってくる林道(名称不明)に出合い、大滝を
目指してこの林道を下る。林道の脇には伊豆天城鉱山の鉄道車輌が打ち捨てられてい
たり、林道が一部陥没していたり、洗い越しがあったりと、意外と歩いていて飽きな
かった。
・大滝歩道
よく整備された観光地となっており、不安なく歩ける。大滝は落差50mと書いてある
が、実際にはそんなにある訳がなく、30m程度か。大滝の登攀は非常に難しそうだ
が、多少の可能性を感じなくもなかった。
・板ヶ沢・三階滝沢合流点
両門の滝状となっており、結構いい景観である。
・三方滝まで
三階滝沢を少し遡ると右側に小滝、その奥に三方滝が見える。小滝を快適にシャワー
クライムして着く三方滝の下は、広い滑床で、特徴的な形で迫力もある三方滝と合わ
せ、優れた景色である。三方滝は登れそうにない。
・鉱山跡
三方滝を巻くために板ヶ沢を少し遡行すると、やばそうな橋、廃屋、そしてレールが
入っていく坑道が見える。まずは坑道の探索から。坑道にはレールや枕木が残ってお
り、廃モノ好きとしてはそそられる。ところどころに横穴があるが、これは石英脈に
そって掘った跡のようであり、いかにも金銀鉱山らしい。レールは只管まっすぐに続
いているが、山本が怖いらしく携帯で音楽をかけながら歩いていた。相変わらずこの
穴にもコウモリやゲジは居らず、せいぜいカマドウマがいた程度。途中でレールはな
くなるが、それでもまっすぐ進み続けると、402.5Mと書いてあって行き止まりになっ
た。どうやら402.5m歩いてきたようである。写真を撮ってから、せっせと引き返して
穴を出る。次は廃屋を探索するために、レールと単管、腐りかけた木材で作られた橋
を渡ったが、山本と谷口は渡らずに待っていた。確かに、単管製の橋脚が浮いている
など、明らかに怪しい橋ではある。廃屋の中には古そうな鉱山関係のもののほか、新
しいペットボトルもあり、雑然としている。立っていた標柱から察すると、この施設
が使われていたのは30年ほど前までのようであり、廃鉱山としては比較的新しい部類
である。
・三方滝上まで
廃鉱山探索を終え、残置ロープに従って斜面を少し登ると、「三階滝沢歩道」という
標柱を見つけた。三方滝を巻くためにはここを右に進み、旧態をよくとどめている道
を歩くと、無事に三方滝の上へと導かれる。
・三階滝沢F1
下段は5m程度のナメ滝だがよく滑るしホールドも少ないので難しい。谷口だけ直登し
た。丸山と山本は三階滝沢歩道として作られた巻き道を歩き、スライダーで楽しん
だ。
・F2
10mほどある綺麗なナメ滝で、登れない。三階滝沢歩道を歩いて巻く。スライダーも
できそうだが、滝壺がやや狭いのでやめておく。この上流はナメが広がり美しい。
・F3-F10
どの滝も2級~3級+程度の難易度で、経験者ならロープ不要で直登できる。次々滝が
現れるので非常に楽しい。F7はゴルジュ状で、登り心地がいい。F10はスライダー可
能。釜が大きい滝もあるが、へつれば泳ぐ必要はない。
・三階滝まで
F10を越えると急に開けたゴーロ状の沢になり、明るい。三階滝までに3m程度の小滝
が1つあるが、岩が脆く、立っているので直登は難しく、巻いた。三階滝は柱状節理
の側壁が面白いが、思ったよりは小さい滝であった。水が無ければ登れそう。
・三階滝沢歩道
三階滝沢沿いには三階滝沢歩道がそれなりに残っているようだったので、この歩道を
下降して中ノ沢へ向かうことにした。三階滝から適当に右岸斜面を歩いていくと、途
中で歩道を見つけた。道標があるので間違いはない。しかしここで安心したのもつか
の間、やはりこの歩道は完全に廃道であり、歩道上に捨てられた間伐木や、目印もな
い渡渉点などに悩まされた。次に行く人のために書いておくと、三階滝沢歩道は1箇
所だけ沢の左岸を歩く部分があり、また、歩道沿いの木には白ペンキで目印があるこ
とが多い。大変歩きにくい歩道であり、沢下降をした場合と所要時間は大して変わら
なかったかもしれない。
・中沢歩道
中ノ沢の下部はつまらなさそうなゴーロなので、沢沿いに続く中沢歩道を上流へ向か
う。悪くはない歩道である。途中、上へ向かえと矢印が書いてある木があるが、これ
を無視して沢沿いに進むと、炭焼き窯を3基ほど見て道は消え、沢に降りざるを得な
くなる。
・中ノ沢F1
沢に降りるとすぐに滝があり、これがF1。10m以上ある滝で、頑張れば登れそうでは
あるが、残置支点はないし、ハーケンを打つのも面倒なので巻くことにする。これが
意外と悪い高巻きで、残置ロープはあるものの、ぼろぼろの斜面を登ったり、高度感
のあるトラバースを強いられたりする。これがこの沢の核心。中沢歩道の矢印に従え
ば、もう少しましな高巻きが出来そうである。
・くの字ナメ滝7m
ちょっと滑りやすいが、流心を直登できる。
・F2-F6
いずれも3級~3級+程度で楽しく直登できる。初心者同伴ならロープやお助け紐を出
す場面は多そうである。
・F7(6m)
小さい滝だが、ハングしており登れそうにない。これも左岸から巻くが、滝の規模の
割に大高巻きになり面倒である。
・F8,F9
これらも3級~3級+程度で楽しく直登。ただ、F9直登中に谷口が乗ったスタンスが崩
れ、谷口ごと落下した(70cm程度)。低い場所だから大したことはなかったが、軽い
打撲と擦り傷を負ったらしい。脆い岩を登るときは十分注意する必要があることを再
認識した。F9登攀後山本はすぐに斜面を登って県道へ上がったが、丸山と谷口は県道
と同じ高さになるまで沢を登り、トラバース気味に県道に乗った。その後数分で大滝
林道入口へ。

■備考
・山中で出会った人は、大滝を見物に来ていた女性1名のみ。大滝歩道入口までは車
で来られる模様。
・伊豆天城鉱山は、他にも坑道が沢山あるらしいし、それぞれに名前もついているら
しいが、今回入った坑道の名称は不明である。

■コメント・感想
・マイナーな伊豆半島の沢がこれほど優れているとは思わなかった。伊豆半島は沢の
フィールドとしては殆ど未開であるが、他にもこのような沢があるかもしれず、
ちょっと探してみたい。
・地図をポケットに入れると腰まで水に入ったときに浮いて流れ去ってしまうのでや
めましょう。
・山本や谷口にロープを使う練習をしてもらおうかと思っていたが、だらだらしてい
るうちに中ノ沢遡行まで終わってしまった。
・山本や谷口はかなり沢慣れしてきているので、そろそろ沢CLに挑戦してみて欲し
い。

■沢の評価
【西伊豆】
仁科川系大滝川板ヶ沢左俣 170521山伏の滝から下降 [raicho 12293]
1級上、水量多、綺麗1+、登攀1+、珍奇2+、辛苦0+、推奨2
巨岩のゴーロや廃坑道があり、なかなか面白い沢ではあるが、堰堤の存在や直登でき
る滝の少なさなどから、他の2支流に比べると遡行価値が低い。詰めや面倒な巻きが
ないのはプラスポイント。水量は多く、泳ぎを交えた遡行も楽しめそうである。

仁科川系大滝川三階滝沢 170521三階滝まで遡行 [raicho 12293]
1級、水量多、綺麗2+、登攀2、珍奇2+、辛苦0、推奨3
綺麗なナメ滝や立派な三方滝、滑り台として遊べる滝、雰囲気あるゴルジュ状の滝な
ど、数々の面白い滝が楽しめるだけでなく、鉱山跡まで見られ、詰めも全くないとい
う素晴らしい沢。ところどころ廃歩道があるのは、気になる人もいるかもしれない
が、そのおかげで難しい滝も簡単に巻け、初心者向きの沢として非常にお薦めでき
る。水量は多いので、夏が良い。

仁科川系大滝川中ノ沢 170521県道まで遡行[raicho 12293]
1級上、水量中、綺麗2、登攀2+、珍奇2+、辛苦0+、推奨2+
適度な難易度で直登できる滝が多数あるのが魅力的だが、渓相の美しさでは三階滝沢
には及ばない。巻くのが面倒な滝が2つあるが、三階滝沢と同じく鉱山跡を見られ、
詰めもないというのは好ましい。水量は他の2支流より少ないが、滝を直登するには
シャワークライミングが必須であり、夏がお薦め。