2017/7/1-2 鳳凰三山
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
鳳凰三山縦走山行計画書
作成 木下
□日程 7月1日(土)・2日(日) 一泊二日・予備日なし
□山域 南アルプス
□在京本部設置要請日時 2017/7/2 1800
□捜索要請日時 2017/7/3 0900
□メンバ(計7名)
CL木下 SL川瀬 五島 平岩 菅沼 村田 木口
□集合
7月1日 高尾駅0706発甲府行き 後から2両目(2号車)車内
※途中乗車や特急利用での合流の場合、CL木下までご連絡ください。
□交通
※乗車駅によって、甲府までの営業キロがギリギリ100kmに満たない場合や隣駅まででも運賃が変わらない場合には、中央線竜王駅または身延線金手駅までの切符を購入されることを勧めます。
・竜王までの切符:バスを竜王で下車したとき電車賃が(従って交通費総額も)最も安くなる。但し途中下車できないため、食事などのために甲府で再び下車する場合は竜王甲府間の切符を別途購入する必要があり、甲府までの切符と変わりない。
・金手までの切符:竜王で乗車する場合は竜王甲府間の切符が別途必要になる。東京近郊区間外の身延線を含むことで西荻窪以西での途中下車が可能なため、例えば石和温泉で降りることができ、自由度が高い。
■行き
○JR中央線
新宿0622→立川0648→0705高尾0706→0838甲府
新宿から JR2270円(学割1810円)
・新宿発のJR線で高尾着は上記列車が最も早い為、高尾に早く着いておきたい場合は京王線を利用する
新宿0550→0635高尾0706→0838甲府
新宿0553~0608発は高尾0704着のため乗換え不可能
京王360円+JR1490円(計1850円)
・特急利用の場合
新宿0700(/0718)→立川0721(/0739)→0828(/0903)甲府
新宿から 2270円(学割1810円)+1340円
立川から 1940円(ギリギリ学割不可)+930円
・高尾着が遅れた場合
高尾0711→0748大月0756-(Sあずさ1号)→0828甲府
高尾0726→0844塩山0849-(あずさ51号)→0903甲府
いづれも+510円
○山梨交通南アルプス登山バス
甲府駅(南口1番)0905→夜叉神峠登山口1017 1420円+協力金100円
■帰り
○山梨交通南アルプス登山バス
広河原1100/1300/1400/1500/1600/1640
→竜王 1240/1435/1540/1640/1740/1815
→甲府駅1255/1450/1555/1655/1755/1830
竜王まで1790円 甲府駅まで1950円 +協力金100円
○JR中央線
竜王発====/1342/1441/====/1517/====/1619/====/1703/1753/1814
→甲府着====/1347/直通/====/直通/====/1622/====/1708/1757/1819
甲府発1316/1352/1446/1456/1538/1559/1648/1653/1730/1808/1837/・/2207
→新宿着1543/1622/1714/1750/1804/1837/1855/1931/2005/2030/2053/・/0040
竜王→甲府は190円
・終電は高尾から京王線を利用すると新宿に早く着く
甲府2207発→新宿0025着
・特急時刻
甲府発1312/1329/・/1503/1525/・/1610/1632/1702/・/1805/1833/1856/・/2109
→立川着1418/1441/・/1611/1638/・/1725/1740/1809/・/1912/1943/2012/・/2214
→新宿着1441/1504/・/1634/1707/・/1751/1806/1834/・/1936/2007/2035/・/2237
■エスケープ時
・山梨交通南アルプス登山バス
夜叉神峠登山口1011/1141/1341/1441/1541/1641/1721
→甲府駅1125/1255/1450/1555/1655/1755/1830
・タクシー
夜叉神峠登山口→竜王駅 所要約50分 8500円程度
御座石温泉→穴山駅/韮崎駅 所要約30分/約40分 5500円程度/7500円程度
■交通連絡先
・山梨交通南アルプス登山バス 055-223-0821
・韮崎タクシー 0120-69-2235 0551-22-2235
・須玉三共タクシー 0120-37-2328 0551-42-2328
・第一交通山梨エリア 055-224-1100(甲府) 055-276-2128(甲斐市)
□行程
■20日
夜叉神峠登山口1030
→夜叉神峠1130
→苺平1420
→辻山1440・1455
→苺平1510
→南御室小屋1540
[歩行計4時間55分]
※夜叉神峠・苺平間は、過去の記録などを参考にして、昭文社コースタイム(4時間)の約7割で算出しています。
※辻山往復は適宜カットします(小屋に16時までの到着を目指します)。
■21日
南御室小屋0500
→薬師岳0630・0650
→観音岳0735・0750
→地蔵岳オベリスク0900・0920
→白鳳峠1050
→白鳳峠入口1250
→広河原1305
[歩行計7時間10分]
□エスケープ
・薬師岳~観音岳の鞍部まで:(南御室小屋に一時避難し)夜叉神峠へ
・それ以降:広河原へ 又は 鳳凰小屋に一時避難し御座石温泉へ(鳳凰小屋から3時間30分)
□山小屋
・夜叉神峠小屋
角田英司055-288-2402
水場往復30分
○南御室小屋
090-3406-3404
テント500円/人 素泊まり4500円/人
水場あり
・薬師岳小屋 !!秋まで休業中!!
090-5561-1242
小林0551-22-6682
水場なし
・鳳凰小屋
0551-27-2018
テント800円/人 素泊まり4000円/人
水場あり
・広河原山荘
090-2677-0828
テント500円/人 素泊まり5200円/人
水場あり
・御座石温泉
細田都子0551-27-2018
水場あり 温泉は高く評判悪い
・青木鉱泉
現地090-8595-6142
水場あり 温泉は高い
□日帰り温泉等
・広河原山荘
コインシャワー3分300円
・名取温泉
竜王駅から徒歩10分
入浴・サウナ500円 入浴・休憩700円
055-276-4126
・喜久乃湯温泉
甲府駅から徒歩13分
入浴・サウナ400円 石鹸類有料(銭湯価格) 休憩室有料?
055-252-6123
・かんぽの宿石和
石和温泉駅から徒歩7分
15時まで820円(休憩可) 15時から520円(休憩所なし)
055-262-3755
□地図
■2万5千図 「夜叉神峠」「鳳凰山」
■山と高原地図 「41(42)北岳・甲斐駒」
□遭難対策費
200円/人*7人
計1400円
□日没日出
7/2日没(甲府):1906
7/3日出(甲府):0434
□ラジオ周波数
■NHKラジオ第一:甲府927kHz/東京594kHz
■NHKラジオ第二:甲府1602kHz/東京693kHz
■NHK FM:甲府85.6MHz/東京82.5MHz
□警察署電話番号
山梨県警 南アルプス警察署 055-282-0110
韮崎警察署 0551-22-0110 (東側)
北杜警察署 0551-32-0110 (北側)
鳳凰三山縦走 中止の報告と記録
木下 作成
鳳凰三山縦走は7月1-2日の予定で出発したが、1日朝甲府到着時点で中止を決めた。これは皆様に正当に評価・批判され、少しでも今後の参考としてもらうために、また後に自分で読返して反省するために、中止の経緯を書き記したものである。併せて、主に甲府到着以後のパーティの大まかな行動記録も付す。
□日程 7月1日(土)
□天候 雨ノチ曇
□メンバ(計7名)
CL木下 SL川瀬 五島 平岩 菅沼 村田 木口
□気象状況と判断と反省
天候不良が十分に予想された状況で決行し、当日集合してから中止したことについて、それならば前日に中止すべきであったとか、行って行けない天気ではなかったはずだから決行したのなら間際で中止するのは臆病に過ぎ、つまり判断基準がブレているだろうという批判は尤もなことだ。その時々何に因ってどう判断したのか、その結果どうであったのかを出来る限り明らかに記す。
■前日(6月30日)時点での予報と判断
梅雨時なので予報確度は低く、天気予報は発表元によってまちまちだったものの、概ね、甲府・韮崎あたりの天気は土曜は雨のち曇、日曜は曇ということだった。地球気の解説資料では西日本・東日本で短時間強雨や落雷・強風に注意が喚起されていたが、これは東海・北陸・北関東までを含むもので、山梨県においてどこまでを想定するのが妥当だったのかはわからない。予想天気図では、30日に北陸から北関東にかかっていた前線が段々と北上し、2日には東北付近で分断されて関東は高気圧の下に入る様子だった。
山行を中止するか決行するか。もし自分一人の計画だったら、こんな面倒な天気で山に行くことはない。先輩と組んだパーティなら行ってみただろう。それならば後輩の命を預かったパーティで決行するのは無責任だということは、その時も思うことがあった。ただ、昨年秋にも雨で中止した鳳凰三山をまた何もせず逃すのは如何にも惜しいとか、今年はこれが自分にとって唯一の夏山になるはずだからとかいう邪念が無いではなかったし、それ以上に、1・2年生にとって夏山前のこの山行は小さからぬ意味を持っているとも考えていた。新歓合宿が実施できなかった今年度、重い荷を背負って歩くことにも、食当を実演することにも、そして雨の中の山歩きを経験することにも、非常な意義があるはずだ。従って、天候が予報より悪化しても2日のうちに幕営地からエスケープすることは可能であるという判断の上で、行程が樹林帯の中に収まる1日目は多少の降雨があっても構わないと考え、予定通り実施することに決めた。
これには、今まで自分の企画した山行は晴ればかりで、天候不良が予想される場合には早々に中止しようとしていた態度に対して、雨の中でも粘ってみて山中で安全側の判断をしてもよいだろうという、自身に対する実験的な意味もあった。ただしこれは、上の「1・2年生のために」ということと両立しうるファクタではなかったかもしれない。一方が確実であれば他方で冒険することも出来るけれども、不確定要素が二つ(頑張って雨中を歩くことと、雨中を歩きながら判断する練習をすること)あることに無理があるとも言える。
なお、天候不良を承知で出発したくせに途中で引返すということは雷鳥で初めてCLをつとめた武川岳山行(2014年11月)でもあって、その際は決断の態度がはっきりしないから不満が残ったという批判をメンバから頂いた。これに対して今回はあらかじめ、「2日目の天候を信じて決行するが1日目の天候が想定より悪い場合は当日中止する」と通告した上での集合だったので、多少よかったのではないかと思う。しかしそれにしても、当日の判断基準をもっと明確にするとか、中止後の行動を検討しておくといったことも出来たはずだ。
■当日の状況・予報・判断
7月1日になると予報が少し悪化した。前線は30日から2日にかけて殆ど停滞したままで、南から湿気が供給される関東甲信の特に山沿いではまとまった雨の続く可能性が高かった。また気象庁の予報では甲府の1日の天気に「ところによって夕方落雷」といったような文言が追加されていた。
前日に実施を決めた時点で以後の判断は集合以降に持越されたので、ひとまず高尾発の列車に全員乗込んだ。東京を出る時には雨が降っていて、中央線に乗っている間も山には濃い霧がかかていた。雨は場所と時間によって変化し、止んで景色が明るくなることもあればギリギリ歩くのが辛くないだろうという程度まで強く降ることもあった。甲府到着時が一番強く、カッパを着れば歩けるがかなり不快だろう程度だった。車内で菅沼くんに見せてもらった雨雲レーダの予想は、この後数時間にやや強い雨雲がかかることを示していた。「初日に雨でも実施」と決めていたのだし、パーティとしてそれなりの準備をしているつもりだったから、これだけなら、特に不安だというメンバのいない限りメンバの不満を聞きながらも出発しただろうと思う。しかし決定打は甲府到着前に出ていた。
甲府まで20-30分という頃、在京責任者の位高さんにメンバのザックとカッパの色をメール報告しようと一人一人訊ねていたところ、村田くんの雨具が山カッパでないことが判った。ウィンドブレーカのジャケットとコンビニやスーパで売っているような半透明のヴィニルのレインコートしか持っておらず、自分のカッパと交換してみたらといま考えても、この装備であの雨の中を歩くのは私も不安である。これだけ雨の予想される山でも山用の丈夫なカッパがあればこそ行かれるという判断をしていたのだし、逆にたとえ100円ショップのポンチョでも殆ど雨の心配のない山行なら問題にならないが、カッパなしに雨のアルプスを歩く決断は出来なかった。雨の中を頑張るのは気合の問題であっても、雨や汗に濡れて健康を害するのは気合で解決できるものではないから。甲府到着時点で奇跡的に快晴にでもならない限り、中止することにした。結局甲府ではこの数時間で一番強い雨だったので、中止には皆納得してくれたようだった。
これは装備を揃えていなかった本人の問題ではなく、装備を揃えさせていなかった(必要性をきちんと説いていなかった)上級生の、また基本的な個人装備にまで注意出来なかった山行リーダの、責任である。今考えれば、靴はどのようなものを履いているのか(メーカ、素材、使用年数と手入れの状況、ハイカットかミッドか、など)にも注意しなくてはいけなかった。新入生は人数が多すぎる新歓ハイクの終わったあと、初夏のうちに複数の山行を経験する中で上級生がその装備に気を配るべきで、新歓活動に関わっていない者がいきなり新入生を率いてアルプスに行くことにも無理があったといえる。これは2年前の五竜岳山行(2015年8月)でも反省したはずのことであるが、こちらから1年生に声をかけたその時とは異なり、夏山前のこの時期に参加を希望してくれた1年生を断れるかと言われると辛いものがある。2年生にもっと積極的に協力してもらうほかないだろう。更に「経験者」も様々だから、雷鳥の基準に適うように上級生がケアしていかなくてはいけない。もし雨具を使う機会のないまま夏山合宿に入っていたら、どうなっていたか知れない。新入生諸君においては「雷鳥を始める人へ」を熟読されたい。「一に登山靴、二にカッパ」と何かの資料に書かれていないとしたら、書き足されることを望む。
判断に悩んでいたリーダとしては、甲府で一番強い雨が降っていたことと装備の問題とで、すんなりと中止にできたのはむしろホッとした気分だったが、それで安心するくらいなら前日に中止すればよかったじゃないかと、自分でも思うし、客観的にも正しい批判であるように思う。(後述のように午後から翌日にかけて天気は悪くなかったので)現場に行って中止したことでいくらか諦めが付いたこと、代わりに遊びながら帰ってきた一日の旅はそれなりに楽しかっただろうこと、夏山前に個人装備の問題が顕在化したことは、結果オーライではある。交通費数千円と丸一日の代わりに多少なりとも何か収穫があったと、パーティの皆様に思っていただけていれば、優柔不断なリーダとしてこれ以上慰めれることはない。
■その後の実際の天候
その後下界で過ごしている間に雨が強まることも雷を確認することもなかった。11時まで甲府にいた間、雨はかなり弱くなり、多少の強弱はあったが弱い時には傘をささなくてもいられるくらいだった。石和温泉に着いた昼前には殆ど止んでいて、遅めの昼食をとっていた14時頃には雲の間から青空が見られた。夕方勝沼を散策する間もかなり蒸暑い曇ではあったが雨の気配はなく、谷を抜ける風が涼しかった。翌2日は東京にいる限り、晴に近い曇で雨はなかった。
□記録
雨の中、折畳傘をさして駅に向かい、電車に揺られながらどうしたものだろうかと考えていた。八王子や高尾で、奥秩父へ行くのか八ヶ岳か、同じような大きなザックを背負った大学生が何組かいたので、しかも中にはパッキングのヘタクソな連中もいたので、決行の判断も大きく間違ったものではないなと心を慰めつつ。金峯瑞牆なら問題なく行けたのだろうが、アルプス入門の鳳凰三山とはいえどもこちらは分が悪い。
高尾には皆きちんと集合してくれて、ロングシートの埋まった車内で女性陣は元気に喋っていた。雨の強弱はどこまで振れるものなのか、山の上の様子はどうであるか、窓の外を睨みながらいつか自分はウトウトとしていた。甲府に近づいて車内も随分空いてきた頃、上述のように中止の腹はもう固まっていた。果して甲府は雨であった。3年前の鹿島槍や瑞牆ほどではない。今後雨がどうなるかはわからないが、遠藤さんならどうしたって決行したろう。しかしそれもメンバと装備があっての話だ。最上級生は経験豊富な遠藤さんでなく私だし、夏山未経験者もいるし、装備も不十分ときたら、計画書に付した「当日中止の可能性もある」という曖昧な言い訳は、このためにこそあったようなものだった。駅南口のバス停をちらっと見てみると、やはり何組かの物好きなパーティがあった。準備さえしていれば行くのも間違いではないということだろう。
街の大きそうな北口に移動。駅前広場に屋台やステージが建っていて、じきに何かの催しが始まるようだった。こちらは後で寄ることにして、道を渡ったところ、学生らしき若者たちが並んでいる建物に向かうと、県立図書館が9時に開館するらしかった。山梨県民は勉強熱心だ。日本山岳写真協会山梨支部の写真展が催されるということで、我々も数分待って入ることにした。誰でも入れる図書館の中の、入口近くのギャラリィ・スペースだった。美しい山の写真は、山行の行方に悩ませていた心を落着かせる御馳走で、私は随分と満足した。しかし他のメンバは山への欲求不満を一層強くしたようだった。こんど8月末から9月初旬に、上野の都美術館でもっと大きな展覧会があり、皇太子殿下も特別出展なさるとのことであった。
写真を見ても10分そこそこしかつぶせなかったので、もう少し図書館内に留まることにした。東大の新図書館計画にうっすらと関わっている私としてはとても興味深い、雰囲気のよい明るい図書館だった。天井の高い2階建ての館内に壁と天井の区切られた部屋がいくつか不規則に配置されていて、多目的ホール、交流ルーム、座席指定制のサイレントルームなどに分けられており、一部には中二階のような格好でガラス張りの大きな自習スペースが乗っかっていた。
図書館を出て一旦駅に戻り、いつもの「駅寝広場」に荷物をデポした。天気のせいか時間のせいか、段ボールを敷いてカップ酒を並べて寝ているオッチャンや、物陰に隠れて煙草をやっているオッチャンなどがいて、寝心地よい雰囲気ではなかった。
しばしウダウダした後、10時になって例の屋台街が開店する時刻だったのでその間を通りながら、「藤村記念館」に向かった。催しにあわせてかウォーキングツアーのような団体が先着して混んでいた。記念館の中に新聞の取材が入っていて、我々の女性数名が捕まったらしかった。石和温泉のかんぽの宿で入浴できる10時半が近づいてきたので駅に戻ったのだが、ここで初めて時刻表を見てみると、次の普通列車は11時過ぎだった。こんどは駅寝広場で読書などして時間を潰した。この間に女性陣の何人かはまた別の新聞記者に捕まった。おそらく山の格好をしたお客が欲しかったのだろうが、天気のせいでほとんどおらず、しかも朝の遅い時間ではブラブラしている登山客などいようはずもなく、そこへ大きなザックを背負った若い女の子が現れたものだから、格好のターゲットというところなのだろう。
11時09分の列車で2駅移動して石和温泉へ。かんぽの宿の入浴は15時までは大広間が使える代わりに820円とやや高い。食堂を併設していて、ランチとセットで1500円または2100円というものもあった。1500円の方はマグロ丼、天丼、天ざるそば、天ざるうどんから選べる。他に店を探すのも手間なのでここで昼食もとることにして、4人がこの1500円セットを、3人は入浴単品を選んだ。3人は皆ほうとうを注文するつもりのようだった。風呂は水道水のジェット風呂と、温泉の内風呂、露天風呂の三つ。循環式で、湯に匂いやヌメリはなく、温泉らしさはあまり感じられなかった。山を歩いた後ならもっと気持ち良いだろうと思うが、それでも殆ど貸切の風呂でゆったりとくつろいだ。露天風呂に入っても雨は全くなかった。
13時半が食堂のラストオーダということだったので、11時半過ぎに入浴して1時間強たったころ、もしかしたら女性達を待たせてしまったかもしれないと思いながら、ギリギリまで入っているのが明らかな菅沼くんを残して上がったのだが、いくら待っても誰も出てくる気配がなかった。仕方がないから中庭に出て、餌を求めて寄ってくるカルガモの親子や飢えた鯉たちを見たり、ソファでだらだらたりしていたのだが、埒があかないので、少し後に上がってきた村田くんと二人で、L.O.の15分前頃に食堂に入った。注文もしてしまおうという頃になってやっと女性達がやって来て、全員の注文が終わった頃に菅沼くんも揃った。天丼は海老が二尾のった豪華なもので、風呂とセットで1500円なら随分とお得だった。食堂閉店の14時にちょうど食べ終り、大広間に移って少しウトウトした後、駅へ戻った。
14時53分の列車でこんどは勝沼ぶどう郷へ。山行中止の連絡を見た金丸君がわざわざ、観光するなら「ぶどうの丘」がよいだろうと教えてくれたのだ。駅から谷を挟んだ向かい側がその「丘」で、北側に弧を描く「尾根」に沿って20分ばかり歩いた。せっかく風呂に入った後にかなり蒸暑かったが、ぶどう畑と古い民家の残る里の細くカーヴした道を歩くのは愉しかった。丘の上の一番手前の建物がワインの売店になっていて、地下(丘の中)のワインカーヴでは1100円で試飲し放題らしいが、飲みに行くメンバはいなかった(半数は未成年である!)。2・3年生は使われなかった食材とシュラフを持って宅飲みに行くらしく、その手土産を物色していた。村田くんも信玄餅などを買ったようだ。木口さんはお酒を見ていても退屈そうだった。売店から反対側、敷地の奥に出てみると、宿泊施設や温泉施設、バーベキュー・サイトがあった。展望をウリにしている温泉は610円で、軽食コーナも併設している。「恋人の聖地®」にも「選定されている」らしい。
16時23分の列車によい時刻だったので丘を下りて、今度は谷をまっすぐに横断して駅に向かうことにした。しかし谷の中は殆どぶどう畑で、作業道以外の道はだいたい丘をトラバースする方向についているので、かなり回込まなければならなかった。畑の間を縫い、立派な石垣の上に立つ家を眺めながら、早足で坂道を上がった。幸いに列車の方が少し遅れていて、あまり急ぐ必要はなかったらしい。駅の上は風が通って涼しかった。
メンバがそれぞれに大きな期待をかけていた山行を潰したことや1年生を含む大人数のパーティであったことは万全でなかったにせよ、普段中央線の山に行くたびに心惹かれていた街に下りて散策できたのは悪いことではなかった。鳳凰を歩けるのはいつになるやら。有名山を歩くのに慌てる必要はないから、ぼちぼち行けばよいだろう。
□反省
山行の決断に関わることは既に書いたので、下界での行動に関して一つ。
周りの人にただついていくというのではなく、もっと主体的に行動すること、広い視野をもって行動することが重要だ。山では大丈夫なのだろうが、山に入らなかったからといって気が緩み過ぎてはいけない。実際的には少なくとも大きな荷物を持って大人数でいるという点で普通の下界人以上の気配りが求められているに違いない訳だし、雷鳥の名を背負って活動している限りはどこにいようともその名に、「東京大学・お茶の水女子大学公認サークル」の看板に相応しくあらねばならぬと思う。格好からして「自分らは山ヤです」ということは否応なくアピールしているのであるから。
具体的に言うのもおろかだし、自分にはそれが出来ているとも皆それが出来ていないとも言うつもりはないが、周りの人の動きや振舞いを読んで自分の行動や声量を調整するとか、パーティとしての意思が決まったなら誰かが動き出すのを待たないでも歩きはじめるとか、お喋りだけに興じないで各々でも情報を集めて判断するとかいったことである。