2017/9/5-8 朝日連峰
山岳愛好会雷鳥
朝日連峰縦走計画書
作成者:川瀬
■日程 2017/9/5(火)-8(金)(予備日1日含む)
■山域 朝日連峰
■在京本部設置要請日時 2017/9/8 18:00
■捜索要請日時 2017/9/9 9:00
■メンバー 10名
CL川瀬 SL菅沼 吉田 小倉 児玉 鈴木 花井 杉山 村田 秀島
■集合
9/5(火)7:15鶴岡駅前②乗り場
(鶴岡駅改札外にニューデイズミニ(営業時間5:30〜20:15)があるので朝食は調達できると思います。他にも徒歩10分以内にコンビニがいくつかあるようです。)
■交通
□行き
・庄内交通路線バス
鶴岡駅前7:32→朝日庁舎8:07(770円)
・落合ハイヤー
朝日庁舎→泡滝ダム(小型10,000円ジャンボ16,000/円台)約1時間半
□帰り
・朝日タクシー
朝日鉱泉→山形駅(小型13,800円ジャンボ21,800円/台)1時間50分
・山形から鈍行の場合
山形13:56/16:31ー新宿22:15/23:50
(18きっぷを用意してあるので一人2,370円です。)
・山形から新幹線の場合
山形17:05/18:04/19:31/20:43(終)ー大宮19:23/20:23/21:59/23:03ー東京19:48/20:48/22:48/23:28
(希望者の分は19:31発4枚で手配してあります。各自の値段は後ほど連絡します。)
■行程
〈1日目〉
泡滝ダムー1:15ー七ツ滝沢橋ー1:45ー大鳥小屋
(大鳥小屋泊)
計 3時間
〈2日目〉
大鳥小屋ー3:00ーオツボ峰ー0:40ー以東岳ー2:10ー狐穴小屋ー0:35ー北寒江山ー0:20ー寒江山ー1:45ー竜門山
(竜門小屋泊)
計 8時間30分
〈3日目〉
竜門山ー1:10ー西朝日岳ー1:30ー大朝日小屋ー0:15ー大朝日岳ー2:20ー長命水ー0:50ー二俣ー1:40ー朝日鉱泉
計 7時間45分
■エスケープルート
以東岳付近まで:大鳥小屋に一時避難し泡滝ダムへ(以東岳ー2:30ー大鳥小屋ー2:30ー泡滝ダム)
以東岳付近から西朝日岳まで:狐穴小屋、竜門小屋に一時避難し日暮沢小屋へ(以東岳ー2:10ー狐穴小屋ー2:40ー竜門小屋ー3:10ー日暮沢小屋)
西朝日岳以降:そのまま進む
・泡滝ダムから朝日庁舎もしくは鶴岡駅までタクシー(行きの交通と逆ルート)。または、大鳥登山口で下車し、路線バス(庄内交通)登山口6:33ー鶴岡駅前7:47、1,400円
・日暮沢小屋から左沢駅までタクシー約1時間、約11,000円
日暮沢小屋では電波が通じにくいようなので、それまでに連絡がつかなければ根子バス停まで歩いて行ってタクシーを呼びます。(時間が合えばバスに乗る。西川町路線バス大井沢6:50/7:20/13:15道の駅にしかわで寒河江駅線に接続。)
すぐに下界との連絡が必要な場合は電波の通じる大朝日岳まで進むことも検討します。
■小屋
・大鳥小屋:素泊まり1,500円/人、100人収容、0235-55-2233
・大鳥小屋キャンプ場:500円/人、0235-55-2452
・以東小屋:使用不可、水場有り
・狐穴小屋:素泊まり1,500円/人、54人収容、0237-76-2416
・竜門小屋:素泊まりのみ1,500円/人、50人収容、0237-76-2416
・日暮沢小屋:素泊まりのみ、50人収容、0237-76-2416
・大朝日小屋:素泊まりのみ1,500円/人、100人収容、0237-62-2111
※全て水場有り。トイレは泡滝ダムと各小屋にあります。
■地図
2.5万分の1:大鳥池、朝日岳(、相模山、羽前葉山)
山と高原地図:9「朝日連峰」
■交通機関連絡先
・庄内交通高速バス:0234-33-7255(予約、購入、空席照会は0235-24-7600(高速バス予約センター鶴岡、9:00〜19:00))
・庄内交通路線バス:0235-22-2608(鶴岡営業所)
(庄内交通 http://shonaikotsu.jp/sp/ )
・落合ハイヤー:0235-53-2121
・朝日タクシー:0237-62-6088
(有限会社朝日タクシー http://yamagata-asahitaxi.co.jp/smarts/index/ )
・西川町路線バス(月山観光タクシー):0237-74-2310
*以東岳・大朝日岳は電波が通じるようです。
■遭難対策費
400円×10人 計4,000円
■備考
NHKラジオ第一(山形)540kHz/(鶴岡)1,368kHz
NHKラジオ第二(山形)1,521kHz/(鶴岡)1,035kHz
9/5日の入(鶴岡):18:06
9/6日の出(鶴岡):5:13
雨天時判断:前日9/4(月)12時までに連絡
寒河江警察署 0237-83-0110
庄内警察署 0234-45-0110
鶴岡警察署 0235-25-0110
朝日鉱泉ナチュラリストの家:日帰り入浴500円(12:00〜20:00)、食事・喫茶有り(11:00〜16:00)※温泉、食事ともに平日は事前予約が必要です。090-7664-5880(現地衛星電話)、0237-67-3589(連絡先自宅)
山岳愛好会雷鳥
夏合宿 朝日連峰縦走山行記録(作成:川瀬)
□日程 2017/9/5(火)-7(木)
□メンバー(オーダー順)
CL川瀬 鈴木 児玉 小倉 花井 村田 秀島 杉山 吉田 SL菅沼
□天気
1日目:晴れ 2日目:雨のち曇り 3日目:曇りのち雨
□記録
*9/5(1日目)
7:15 集合
7:35 バス
8:15 朝日庁舎
9:00泡滝ダム着
9:35 泡滝ダム発
10:23-30 小休止
10:40 一つ目の吊り橋
11:00 七つ滝沢橋
11:48-55 二つ目の水場
12:18 大鳥小屋
13:16 小屋
13:36 三角池
13:53 小屋
・集合から泡滝ダム
前泊組が鶴岡駅についたところ、夜行バス組はすでに到着していた。5時半頃に到着していたようだった。バスからタクシーに乗り継ぐ方が安くなるとハイヤー会社から言われたのでその通りにしたが、面倒だし、時間がもったいないので、駅から送迎してもらえば良かったと思った。タクシーの運転手さんは山形弁でおしゃべりな方だった。泡滝ダムには簡易トイレがあった。
・泡滝ダムから大鳥小屋
前日までの少人数でのハイクのスピードに慣れてしまったせいか、2時間半以上の行程で2回しか休憩しなかった。夜行バスでよく眠れなかったメンバーもいたので余計疲れさせてしまった。休憩箇所を予め決めておくべきだったと反省。この日は気温が高くずっと樹林帯を歩いたので、行動中は暑かったが、大鳥池が見えると清々しい気持ちになり、暑さが吹き飛んだ。
・三角池
早く着いてしまったのでコースタイム片道30分の三角池へみんなで行った。木のトンネルをくぐっているようで、道がぬかるんでいるところがたくさんあった。池にはトンボがたくさんいて、捕まえたり写真を撮ったりした。また、秀島君に教えてもらいながら、草笛の練習もした。
時間がかなり余ったので、ハイヤーをもう少し前に呼べば、狐穴小屋に宿泊することもできたと思う。
・大鳥小屋
広くて綺麗で二階部分を貸し切れた。偶然管理人さんにお会いできたので、使い方を教えてもらった。なるべくザックはござに持ち込まず、寝るスペースも固まって使用してほしいが、宿泊客が少なそうなので広々使って良いとのこと。板を敷けば調理も室内でできた。
電波が繋がらないのでラジオを聞いて天気図を書いた。電波が繋がらない、ラジオも聞きにくいという環境は初めてだった。菅沼君に教わりながらなんとか書き上げる。二日目は曇りで雨も降る可能性が高そうだった。
*9/6(2日目)
4:43 大鳥小屋
5:26-35 1200m付近
6:07-17 小休止
6:30 三角峰
7:06-15 小休止
8:22 以東岳
8:35-9:20 以東小屋
10:17-30 小休止
11:27-46 狐穴小屋
12:12 北寒江山
12:40-53 寒江山
13:45 竜門小屋
・大鳥小屋から以東岳
朝小屋を出ると雨が降っていた。4時半出発の予定だったが、もう少し明るくなってから出ようと、小屋で雨宿りをしていると雨が弱まってきた。雨具を着て出発。
雨は少し強くなり、風も出てきて寒かった。以東岳では電波がつながるらしいので、以東小屋(入れない)でこの後の行程の作戦会議をすることになった。天気予報は雨のち曇りと示していた。私の、このまま進みたい欲が出てしまっていたので、この先この天気のまま稜線を歩き続けることに不安があるメンバーがいれば引き返そうと38期がフォローしてくれた。冷静に公平に考えなければならないなと思った。そのうち雨が止み、晴れとまではいかないがガスが晴れて稜線が綺麗に見えるくらいにまでなった。行程通り進むという決定をして、以東岳山頂で集合写真を撮って出発した。
・以東岳から竜門小屋
以東岳を出ると、この後通るであろう狐穴小屋や竜門小屋が見えた。白い砂利がいくつも盛り上がってできた道があり、ルートが分かりにくかったが、赤い目印が正しい道を教えてくれた。池塘も所々に見られ、きれいで癒された。
11:00頃、中先峰2回下った辺りで、みんなで地形図を使って現在地確認をした。声をかけてくれた菅沼君は、ちゃんと地形図を持ってきていて読むことができるかどうかを確かめたかったらしい。
以東小屋で冷えてトイレに行きたくなったメンバーが多数おり、狐穴小屋のトイレをお借りした。三方境を通って北寒江山、寒江山へ。森林限界にゆるめのアップダウンで気持ちの良い道だった。寒江山から竜門小屋までは、地図で見た感じよりも以外と早く着いた気がした。
・竜門小屋
大鳥小屋よりは狭いが、やはり二階を貸し切れた。この日もラジオを聞き、今度は鈴木さんが天気図を書いてくれた。これまでの天気予報通り、三日目は雨らしい。大朝日の山頂へ行かず、また稜線を戻って日暮沢へ行くことも考えたが、大朝日を越えればすぐ樹林帯へ入るのでそのまま行こうということになった。
管理人さんも一階に泊まっていて、売れ残ったからと鴨ロースを無料でくれた。
*9/7(3日目)
4:09 竜門小屋
4:26 竜門山
4:47-57 1752mの手前の平地
5:39-50 西朝日
6:38-45 中岳
7:13-37 大朝日岳山頂小屋
7:52-8:10 山頂
9:08-15 6合目1,369m付近
9:53-10:00 長命水
10:57-11:10 二俣
12:48 二つ目の吊り橋
13:28 三つ目の吊り橋
13:40 朝日鉱泉
14:40-15:20 りんご温泉
16:00ごろ山形駅着
・竜門小屋から大朝日岳まで
出発時は少し晴れ間も見えており、西朝日までの稜線上で、本当は大朝日岳山頂から朝日が昇るところを見たかったねなど言いながら日の出を拝んだ。西朝日岳山頂を少し行くと霧が濃くなり雨が降り始めたので雨具を着た。雨が降ることはわかっていたので、雨具の下だけ履いて小屋を出ていたので少し楽だった。大朝日岳山頂小屋に着く頃には小雨とガスで山頂が見えないほどになっていた。小屋に宿泊していた方に、朝は山頂が綺麗に見えたのに残念だね、次はここに泊まりなよと励ましてもらった。その方は平岩山に行くという。晴れの大朝日とともにいつか平岩さんと行ってみたいところである。山頂は生憎のガスで景色は良くなかった。遠くに何かが見えて感動しているポーズをしながら集合写真を撮った。電波がつながるため、予約していたタクシー会社に電話して、下山予定時刻を伝えた。
・大朝日岳から朝日鉱泉
雨はますます強くなっていた。すぐに樹林帯に入るがそれでも雨で濡れ、長命水についた頃には疲れが見えるメンバーもいた。その先の沢沿いの道は、ほとんどがぬかるんでおり、道が狭くなっているところも多くあったので非常に歩きにくかった。大人数の上に雨と川の音で先頭の声が聞こえないのできちんと前の人から後ろの人へ指示を伝えるようにと話した。二俣付近で渡渉するところがあるのだが、橋は通行できず、岩を伝っていこうとすると川が増水しているため足を水につけてしまった。もっと深く水に足を入れてしまったメンバーもいたようだった。エスケープルートを決める際、川沿いの道を避けて通るルートを考えなかったことを大いに反省した。そのあと、前のような増水箇所を渡ることが二回と、吊橋を三本渡った。最初の吊橋には改修工事終了間際に到着し、少し待ってから作業員に渡って良いと言われて渡った。隊の後ろの方の人たちは、作業員にこの吊橋を最初に渡るパーティーだねと言われたらしい。良い思い出である。最後の吊橋を全員が渡りきった時には、この土砂降りの中、全員無事に帰ってこられた安堵感しかなかった。
・朝日鉱泉から山形駅まで
タクシーは既に来ており、電話したのに待ってもらってしまった。とても親切な方々で、ご厚意で駅までの道の途中にあるりんご温泉に寄っていただき、30分もメーターを止めていただいた。鈍行で帰宅する人たちは当初温泉はあきらめていたようだったが、みんな電車に乗る前にお風呂に入ることができた。駅に着き、鈍行組と仙台へ向かう組を見送った後、そばを食べて女子は新幹線で帰路についた。
□反省
・もっと早い時間に駅からハイヤーを出してもらえば良かった。
・次にどこで休憩するのかを決めて、メンバーに伝えるようにする。
・ザックカバーの防水を山行前に確認する。
・沢沿いの道を通る予定なら、雨が降った時を想定して、尾根を下るルートを通ることを考えておく。エスケープルートは、すぐ下界に降りられる安全な道ということを意識するだけでなく、あらゆる事態を想定して設定しなければならない。
□その他
・本当に電波は以東岳山頂と大朝日岳山頂でしか通じなかった。ラジオを持って行っていて良かった。
・泡滝ダムから登る場合、登山届は大鳥小屋を管理している朝日屋に提出する。タクシーで向かう時に途中で通るので運転手に伝えておくと良い。
・以東小屋は9月末に再建されたそう。小屋は冬期間はしまっているところもある。
以下は1年生の秀島君、花井君、鈴木さんが書いてくれた山行記です。
[1日目](秀島)
私は雨男である。今も雨空の見える食堂で記録を書いている。
朝日連峰合宿は始まる前から雨が心配されていたし、実際に二日目からは大いに雨が降った。その事に勝手に責任を感じているのだが、私が記録を担当するのは一日目。きれいに晴れた登山だ。大いに草が生える。
私の合宿は長い長いバス移動から始まった。バスタ新宿で大荷物を背に集まり夜行バスに乗り込む。衝撃だったのは、杉山氏の荷物の多さと重さである。その殆どが水だというから呆笑した。これから行くのは水場が豊富な山域で、日照り続きならまだしもこれから雨が降るという中で水を10Lである。後々、トムラウシ合宿での水不足を経験したからだという背景を知り私の中にも理解が生まれたが、この時はひたすらに笑った。
そこからの夜行バス移動が厳しかった、つらかった。端的に言って眠れないのである。熟睡を勝ち取った強者も居たが、私にとっては苦しい時間が続いた。頭の置き場所が無いのだ。椅子の傾きが足りない、頭のクッションが足りない、横幅が足りない……。
さて、ようやく登山である。
この日はとにかく暑かった。日光は強く風は弱い。特に展望の良い地点も無い。歩くごとに汗が滴り、大量に飲んだ水がそのまま流れたかのよう。杉山氏の背負う水の存在も、私から節水と言う考えを奪っていた。
そんな中でたまに吹く、沢の空気を乗せた風が涼しかった。冷えた水が採れる水場が、心の底からありがたかった。水流をまたがる橋が最高だった。自然の打ち水が生み出すひんやりとした空気と、見た目の清涼さ、音の心地よさが癒してくれた。
熱盛ィッッ!
——失礼しました。『熱盛』と、出てしまいました。
昼前には小屋に着いた。あまりに早く着きすぎて、やることに困った。とりあえず暫しの間、小屋の前のテーブルで談笑。東京喰種を勧められたことを妙に覚えている。戦闘描写は今一つだがストーリーが良いらしい。
話すばかりでは元気が有り余ってしまう人々が連れたって、近くの三角池へと降りた。その道中で幾度となく叫ばれたのが、上記の「熱盛」である。蒸し暑さと、ぬかるんで盛り上がった土に向け、ストレスが溜まったのか叫び続ける者ども数人。私もその一人として全力で大声を上げた。大いに熱盛である。
辿り着いた池ではトンボと草花が在った。少し池を眺めたら、トンボを捕まえる。或いは細長い葉を千切り草笛を吹く。皆、手を動かさずには居られないようだった。私は専ら草笛に執心していたが、児玉氏はトンボ捕獲において光る才能を魅せてくれた。フィールド科学専修の吉田氏は苦戦していた。
帰りは合唱大会になった。COSMOSの三部合唱が即席で聴けるとは思わなかった。各人の楽しそうな歌声はどれも心地よかったが、ベストシンガーは何と言っても、『いざ起て戦人よ』を美しく歌い上げた杉山氏。彼は二日目以降も、雨にも負けず風にも負けず歌い続け、我々に力を与えてくれた。中島みゆきメドレーは圧巻だった。
(ここに写真がありましたが、メーリスでは省略します。(川瀬))
大鳥池と、畔に佇む菅沼・吉田両氏
(左からの順)
こちらは少人数での行動だったが、大鳥池の周辺でもフィールド科学をおこなった。蛇の抜け殻の発見・回収である。吉田氏が、上の写真で座る足元、池の水面へと向かう崖の途中に抜け殻を見つけ、必死で回収を行った。少し間違えれば、死した蛇ともども大鳥の如く飛び込みを披露することになる緊張感の中、杉山氏と協力して目的を達した。
手に入れたのは二匹の遺骸。一つは短いながらも頭から尾の先まで繋がった一品。もう一つは、途中で途切れているが驚くべき長さを誇る威容。どちらも、鱗の持つ力強さと抜け殻特有の透明感・神聖さが美しく、感動を覚えた。
ところで、菅沼氏だったか吉田氏だったか忘れたが、「寝袋の中に入れて○○さんを驚かそう」という話をしていた気がする。実際には誰を驚かすこともせずに小屋で休んでいた女性陣に披露し、好いリアクションを得て終わりだった。
小屋に入ってからのイベントは、体操教室と料理。
体操教室について、私は「皆さん凄いなぁ」以外の感想を持たない。バレエや体操の経験者たちが圧倒的な体幹の強さを見せる中に、筋トレ族が食い込んでいるのが面白かった。小学生並みの感想で申し訳ない。
夕食はちらし寿司だった。この料理を山で作るとき、出来を最も左右するのは炊飯である。或いはそれは、焦りや拙速さとの闘いかもしれない。
「始めチョロチョロ中パッパ♪赤子泣いても蓋取るな♪♪」という唄が有る。残念ながら前半は——少なくとも山では——適用されない。水と米を鍋に入れて暫くしたら、始めから強火で沸騰まで持っていき、そこからは最弱火で余計な水分を飛ばす。重要なのは唄も炊飯も後半の部分で、弱火にしてから焦げた様な香りがするまで蓋を取ってはいけない。いけないのだが、人と言う生き物は「開けてはいけない」と言われた蓋を開けたくなる本能を持ち合わせている。されど、何ぞ起こらむも、開けるべからず。「ちょっと中を確認」ではないのだ、鈴木氏よ。
皆の辛抱強さのおかげで、ご飯は美しく美味く出来上がった。多少水分が多かったけれども、ちらし寿司との相性は良く、幸せな食事だった。
そして、夜。多くの者の寝静まった後、明かりの落ちた山奥の小屋で、何やら濁った液体を混ぜ続ける影が。
お分かり頂けただろうか。ただ一人によって続けられる”料理”、それは「ココア」である。行うは杉山氏である。本日の記録だけでも何度登場して頂いただろうか。
彼曰く、「ココアの素は水だと溶けにくい」が「この為に水を沸かすほどではない」。そして「ペットボトルでは本当に溶けないが、コッフェルで混ぜれば溶ける」ので、写真のような料理風景となったらしい。問題は「一回で作れる量が少ない」こと。陽が落ちても作り続ける羽目になった理由はこれだった。
作り途中の様子は笑いや恐怖を誘うが、出来上がったココアはとても美味しかった。二日目以降の記録でも言及されているだろうか。厳しい環境の登山で心を癒やすのは口にする物であったりする。粉ミルクでしっかりとベースのできたココアは、山で自作できる食べ物・飲み物の新しい可能性を感じた。例えばシリアルフレークと粉ミルクを一つにボトリングすれば、水だけで一食を作れるかもしれない。
朝日連峰合宿一日目の活動は以上である。炎天下に特徴の薄い山道を登り、雨への不安を抱えながら眠りについて、二日目へと移っていった。そちらについては他の方が綴っているだろう。
私の不慣れな文章を、ここまで読んで下さったあなたに感謝を。
(文責:秀島)
[2日目](花井)
*天候 雨時々曇り
朝食(パスタ)を食べていざ出発。…と思いきや雨が強くなってきたので一旦待機。することもないので、怪談を始めた。朝に怪談をするのは初めての体験だったが、周りはまだ暗いためか十分怖かった。おすすめはしない。雨足が弱まったのを見計らっていざ出発。雨の山行は萎える。三時間弱くらいで以東小屋に到着。雨が心配なので以東小屋にて引き返すか進むかの会議。長時間の議論の末、進むことに。以東小屋は閉鎖中だったので、すでに何人かの膀胱がピンチに。39期の杉山くんの歌をBGMに孤穴小屋を目指す。途中休憩での彼のカイジのモノマネは目を見張るものがあった。機会があれば是非みてほしい。孤穴小屋にてトイレ休憩。雨は強まったり弱まったり。竜門小屋を目指して再び出発。38期菅沼さんが夏休みの給料を費やして買ったカメラを心配する様子を見て、同期吉田さんが一言。「菅沼の夏休みの給料なんざ俺には1円の価値もねえ」と。染みるなあ。竜門小屋には予定より少し早めに到着した。私が食当だったので、休みを挟んでから料理開始。初めて山で米を炊いたが、上手に炊けたのでニンマリ。小屋の出入りをしていたら、管理人さんが合鴨ロースを無料でくれた。超うまい。翌日の山行を憂いながらの就寝。小屋泊最高。
[3日目](鈴木)
前日の疲れのせいか、ぐっすり眠ることができた。腹を満たし出発。気温が高く歩きやすい。徐々に周囲が明るくなる。二日目朝は樹林帯を歩いていたが、最終日は主に稜線上を歩くため、日の出を見ることができるそうだ。雲が薄く広がっており、太陽を見ることは叶わなかったが、空のグラデーションがとても美しかった。各自撮影し西朝日岳へと歩を進める。
昨日同様、相変わらず杉山・秀島コンビは元気に歌っている。西朝日岳の休憩で聞いたところ、杉山くんは歌うだけでなく劇場版カイジのラストシーンを1人4役で再現していたそうだ(今後もネタのレパートリーが増えることを楽しみにしています)。その後も吉田先輩の口笛(これがかなり上手い!)やメンバーの歌声を聞きながら朝日岳を目指す。賑やかでとても楽しかった。
大朝日小屋手前、金玉水(雪渓が残っていた)あたりから雲行きが怪しくなり、小屋に着くと本格的に雨が降り始める。黙々と歩いているといつの間にか大朝日岳山頂に到着していた。霧が立ち込め展望は望めない。集合写真を撮って早々に引き上げる。
一時間後、六合目付近から雨脚が強くなる。樹林帯のため雨が遮られ、道も歩きやすかったのは不幸中の幸いだった。2つ目の橋(丁度建設真最中。おそらく私達が初の利用者!)に差し掛かった頃にはゲリラ豪雨レベルに天候が悪化。渡渉の際には増水していたため、登山靴が浸水することは必至、酷い場合には下半身全体が水に浸かってしまった。
悪天候の中歩くのは気が滅入り、体力も奪われた。やっとのことで朝日鉱泉に到着し、タクシーに乗り込み山形駅に向かう。ドライバーさんのご厚意で、温泉に立ち寄らせていただくことになった。やはり東北の方は親切だ。登山後の風呂と風呂上がりに飲む牛乳は格別だった。まさに疲れた体に染み渡るといった感じだ。
山形駅に着くと、時間のない者から各自解散となった。私を含め新幹線組(+菅沼先輩)は、定番の蕎麦を食べたりお土産を買ったりしてのんびり過ごす。車内では駅弁やさくらんぼのお酒、だだちゃ豆アイスを交換し合った。小旅行のようで良い。たわいもない話で盛り上がっていると、いつの間にか下車駅に着いていた。天候には恵まれなかったが、笑い声の絶えない楽しい合宿であった。