2017/10/21 ジロト沢左俣遡行
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
ジロト沢左俣遡行計画書
作成者:丸山
■日程 10/21(土)前泊日帰り 悪天の場合延期(前日14時までに判断)
■山域 越後
■在京本部設置要請日時 2017/10/21 20:00
■捜索要請日時 2017/10/22 10:00
■メンバー(計4名)
CL丸山 SL久光 迫野 木口
■集合・アプローチ
10/20 19:40 北野 隆文堂前(迫野)
20:00 セブンイレブン横田基地前店(木口)
21:30 坂戸駅北口(久光)
で合流し、丸山車で林道終点へ(2時間半程度)
■行程
林道終点-90-二俣-90-略奪点-60-展望台-30-雨量計小屋-90-林道終点
(計6:00)
※コースタイムは沢登り銘渓62選による
※時間と体力に余裕があれば,右俣や、より上流を探索する
■エスケープルート
多段150mまで:引き返す
それ以降:そのまま進む
■地図・遡行図
2万5千分1地形図「六日町」
山と高原地図「越後三山」
遡行図:「沢登り銘渓62選」P79
■遭難対策費
100円×4人
計400円
■備考
日の入(10/21)17:01
南魚沼警察署 025-770-0110
ジロト沢左俣遡行記録
作成者:丸山智朗
■日程 2017/10/21(土)
■山域 越後
■天候 曇り
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
CL丸山(35)、木口(39)、迫野(35)、SL久光(34)
※時々入れ替わりあり
■総評
筆舌に尽くしがたく、大変すばらしい山行であった。錦秋の中、日本有数の大滝を見て、巨大なスラブ滝を登り、地形の神秘を感じ、楽しく藪を漕
いで、360度の絶景を堪能する、こんな適度な困難さと見目好さを兼ね備えた山行、そうそうできるものではない。まさに今年度の集大成として相
応しい山行であった。
■GPSログ
https://yahoo.jp/q4jW8j4
■時間
6:50 林道終点発
9:14 二俣
9:20-11:45 左俣大滝150m
12:12 略奪点
12:17-13:20 60m滝
14:10 遡行終了
14:25 展望台
15:05-15:10 雨量観測所
16:48 ジロト沢沿いに戻る
17:20 林道終点着
■コースタイムとの比較
林道終点-90→144-二俣-90→178-略奪点-60→133-展望台-30→40-雨量計小屋-90→130-林道終点
全体的に時間がかかっているが、特にロープを出す滝の登攀で時間がかかっている。人数のせいもあるが、登攀力とロープの使い方について改善す
べきである(後述)。
■行動記録(敬称略)
・就寝まで
17:45頃自宅発、一般道で19:40北野隆文堂前に着くが電車の遅れにより迫野が4分遅刻、路駐しにくい場所だけにやめて欲しい。20時過ぎに拝島のセブンイレブンで木口とも合流し、けちなCLの趣向に合わせて吉野家定期券を使って吉野家で夕食。その後坂戸駅近くのベルクで翌日の朝食・行動食を購入してから坂戸駅北口ロータリーへ行ったが、21時半過ぎにもかかわらず混んでいて車が停めにくい。久光とも合流して坂戸西インターから関越道に乗り、燃費を気にして80-90km/h程度で走行しながら一路北へ。小雨の中、翌日の天気を気にして3時間ごとに更新のSCWを確認、一喜一憂した。順調に進んで、清水峠を越えて新潟県に入ると、路面が乾いており、本当に新潟は降ってないようであった。翌日にちょっと期待が持てる。
それから何の気なしに塩沢石打インターを出たところ、料金3000円と表示され、あれっと思うと、深夜割引の適用になるように0時以降に出るのを忘れていた。1000円近く無駄金を払ってしまいショック。0時近くともなると田舎道はガラガラで、高速とそれほど変わらないようなスピードで芋川沿いの林道へ向かう。念のため翌朝にSCWを確認してから入渓することにしていたので、電波の入る場所で就寝したかったが、林道沿いに田圃が多く、適地がない。結局圏外まで行ってしまい、橋の手前の空き地で0:30頃就寝。この空き地は利用しやすい水路があり、歯磨きなどもできて良かった。
・出発まで
6時起床予定にしていたが丸山が5:40頃に起床し既に明るかったので、他も起こして行動開始。寝袋やテントをたたんでいると、林道を奥へと向かう練馬ナンバー車が。沢屋っぽい。車に乗ってからとりあえず圏内に入り、予報を確認すると、昨晩の予報より良くなっていて、雨は殆ど降らなそうである。気をよくして林道終点へ行くと、先程の練馬ナンバー車が入渓準備をしていて、聞けば行先は同じであった。車は他にもう1台あり、計3台。まだまだ駐車可能。朝食をとって着替えて入渓準備し、出発。
・二俣まで
林道終点から見えている大きい堰堤は、まるで公園のような擬木の階段を使って楽々右巻き。その先もピンクテープのある径路が続き、タキ沢との
出合を経てジロト沢に入渓。40分程度は滝もあまりなく、比較的単調な河原歩きをこなす。しかし、岩が滑りやすく歩きにくい。それからは小滝が出始め、4m、2条2m、ナメを快適に越える。次の3m滝は左壁と右岸の境界を登るのが楽そうだが、つまらなそうなので中央(迫野以外)や水線(迫野)を登ったら、そこそこ難しく結構面白かった。遡行図には「つの字」という変な形容のされた滝がこの辺にあるはずだが、よく分からないうちに通過し、樋状6mを水線や右壁から登った。続いての5m滝は木口が水線、他は左岸をへつって登った。沢はしばらく河原状となり、まるで小川のようだが、左岸からはAルンゼやBルンゼが流入しており、スラブ状の岩壁は大迫力。その平穏さを急に破って現れる4m樋状滝は、明らかに直登不可で、左岸からも登れるらしいが、簡単に右岸を巻く。その先もいくつか美しくない小滝があるが、いず
れも巻き気味に登れる。この辺りから見えてくる布晒ノ滝は、後述するように日本有数の滝であり、まさに圧巻。見頃となっている周囲の紅葉と相まって、筆舌に尽くしがたい素晴らしさである。布晒ノ滝が近づいてくると、程なくして二俣。
・左俣150m大滝
左俣に入るとすぐに大滝。既に先行パーティが上部まで登っていた。右左岸どちらも登れるらしいが、より易しそうな左岸に取り付くことに決め、まずはロープ無しで登り始める。快調に登っていくが、少し登ったところで木口がロープを求めたので、45mロープを出し、丸山がノーピンで登って灌木でピッチをきる。1人ずつ登攀し、次のピッチは全員フリー登攀。続いて水流を横断し、再び45mロープを出して丸山がノーピンでリード(3ピッチ目)。3番の迫野に30mロープを持ってきてもらい、時間短縮のためラストの久光が3ピッチ目を登っている間に丸山が4ピッチ目をリード。最終の4ピッチ目はやや難しく、中間支点を灌木で3か所取った。この4ピッチ目の登攀に1時間以上かかった。この滝、振り返れば絶景であり、登攀の待ち時間中までも幸福感に浸れる素晴らしい滝であった。
・略奪点まで
大滝を越えると左俣は水流の細い薄汚い沢になる。小滝がいくつか現れるが、いずれも難しくなく直登または巻ける。最後の8m滝を右壁で登ると、略奪点の両側が見渡せる超絶景。いつの間にか、布晒ノ滝の下部も眼下になっているが、上部が見えないのは残念。ゆっくり景色を楽しみでもしたいところだが、時間に余裕はないので、略奪点に懸かる多段60m滝に取り掛かる。
・終了点まで
60m滝は下部がやや厄介そうに見えたので45mロープを出し、ノーピンで登って灌木でピッチをきる。1人ずつ全員登るのを待ってから、上部を全員フリーで登った。丸山以外は最上部を右岸の灌木帯に逃げたが、丸山は左岸側へ行き水線を直登した。この滝も本当に景色の良すぎる滝であった。その上の20m滝は右岸を巻いたが、灌木が多く見通しがきかないし登りにくい。久光は巻き上がりすぎてしまい、沢筋に戻るのに時間がかかった。この辺りで、急にガスが現れ、隣の稜線が閉ざされてしまい、稜線に上がっても景色が見られないのかとテンションが下がった。が、久光が苦労している間にまた消え、ガスとは俄なものであると実感。我々の行いが良いからであろう。20m滝の上はナメと小滝・小釜が続き、癒し風な渓相だが、実際には岩が滑りやすく、直登できない滝も多いので、それほど易しくはない。モンキークライムや巻きのための小薮漕ぎを繰り返し、進んでいく。やがてこの沢最後の名所である突っ張りの釜(釜というより瀞?)が現れ、蝉の渓谷での経験から突っ張りを嫌がる木口を含め、全員で楽しんだが、誰も落ちなかった。その先もナメ滝と小釜が続く沢を楽しく登り、尾根が近くなったところで脱渓。
・雨量観測所まで
脱渓して藪漕ぎすること50歩程で詰めは終わり、尾根に出る。この上なく短くてありがたい。尾根上からは、反対側の下津川側の渓谷が良く見え、ジロト沢側とは全く違った景色で美しい。尾根は藪で、沢遡行が急に藪山行になったかのようであった。紅葉の中、誰もいない開けた稜線を歩くのは楽しく、これまでに藪に興味のなかった木口や迫野も藪漕ぎが気に入ったようであった。尾根を下ること約10分で展望台(という名のただの岩)に着いた。ここは360度の展望の利く素晴らしいところで、ついつい写真を撮りすぎてしまう。白いスラブに紅葉が映えるさまを見て、本当に今日来てよかったと感じる。展望台の先は少し下ると、登りである。雪で寝気味の灌木藪の中登るのは結構大変であり、藪漕ぎの大変さも思い知る。この辺りで、横を見ると布晒ノ滝を今度は上から遠望することができ、またその高さに感心するばかりである。辛い登りをこなして下り始めると、灌木の高さが高くなって見通しがきかなくなり、つまらない藪になってくるが、漸く観測所が見えてきて、最後の一頑張り。結局観測所まで、ところどころに薄い踏み跡はあったものの、本格的な藪漕ぎを強いられた。
・下山
雨量観測所からの尾根筋は、極めて歩きやすい道で、秘密の話をしたりもしながら快調に下る。これは良いと思ってそのまま道に従って尾根を外れるが、なぜかこの道は尾根を外れた途端に悪くなる。フィックスロープを使った急下降や崩れかけたトラバース路、迷いやすい谷筋との交点が連続し、非常に歩きにくい道である。木口はフィックスロープがほどけて道の下に落ちたり滑って肩を打ったり、丸山は1.5mくらい滑落したり、迫野や久光も足を滑らせて尻もちをついたりと、大変な下山であった。この道は雨量観測所への作業路を兼ねているようだが、仕事道としてはまったく危険すぎると感じるばかりである。それでも、無いよりは全然ありがたいのだが。道を下るとジロト沢の下部に出る。遡行時には分岐に気付かなかったようなところに出てきた。遡行時よりも、川沿いにある径路を利用して沢沿いに下降するが、17時を過ぎ、暗くなる。途中でヘッドライトを出し、最初の堰堤を越える径路に入って、漸く下山。10時間半の長い山行であった。
・解散まで
暗くなっていると片付けもしにくいが、頑張って急ぎ、さっさと車に乗り、林道も猛スピードで下って久光が在京に連絡。復路は結局高速代をケチってすべて下道で帰った(車の都合により全て丸山が運転)が、車内で話が弾んだおかげで眠くもならず、楽しく帰ることができた。それにしても関東は今日1日雨だったらしく、新潟まで行った甲斐があったというものである。
■日没後下山の原因の考察と対策
・(特に久光の)登攀力不足
登攀力不足により滝登攀に時間がかかっており、1時間近いロスがあった。ジムに通って登攀力を鍛えるべきである。
・コースタイムの短さ
参考にした銘渓62選に載っているコースタイムは6時間と短かったが、ウェブ上の記録を見ると7-11時間くらいかかるのが一般的であり、本を最も参考にしたのは良くなかった。出版体になっているから信用するのではなく、多くの記録を読んで予定時間を設定することが大切である。
・行動開始の遅さ
上記のようにコースタイムが短かったため、前泊の遅さもあり、無理して早出しなくても大丈夫だろうと思っていた。長い沢では、明るくなると同時に出発するようにしたい。今回は1時間以上早く出発することもできたはずである。
・時間配分の不徹底
途中でこれまでにかかった時間とこれからかかりそうな時間を十分に検討せず、何となく程度の急ぎ足でずっと進んでいた。結果問題なかったが、さらに30分遅れていた場合はまずかったので、もっと考えておくべきであった。
・写真の撮りすぎ
あまりに沢が素晴らしかったので(特に迫野が)写真撮影に時間をかけていた。これにより10分以上のロスはあったと考えられ、時間が厳しいときは隊を遅らせるような撮影は控えるべきである。
・ロープの使い方
簡単な滝でも落ちたら大変なことになる今回の沢の性質上、簡単な滝でもロープを出す機会が多かったが、ロープを使うと1人ずつの登攀になるため、時間がかかる。比較的簡単な登攀で終了点もしっかりしているような時なら、複数人が同時にアッセンダーで登ることを検討しても良いかもしれない。
・人数の多さ
人数が多いほど時間がかかるのは自明であり、難しい沢へ行くときは人数を絞った方がいい。
■その他の反省
・前泊山行時は高速を24時以降に出て深夜割引の適用を忘れないようにすべし。
・下山路が難路の時はフェルト底靴での下山は控えたほうがいいかもしれないと感じたが、今回の場合は悪い下山路の後に沢歩きがあったので履き
替えるわけにもいかず、ラバーシューズでも買ったほうがいいのかもしれない。
■コメント・感想
・共装のテント「エスパース」に砂が随分入っていた。共装を使って返すときは、次に使う人のために綺麗にしてから返してください。
・谷川、上越、越後あたりには素晴らしい沢が本当に多い。皆さん是非行きましょう。ただ、今回のようにそれなりに難しいところが多いので、他で練習しておく必要がある。
■備考
・布晒ノ滝は落差が260-300m程度とされ、マイナーではあるが、常に水のある滝としては日本でベスト3に入る高瀑である。一般的なベスト3(公称値)は、称名滝350m、羽衣の滝270m、中の滝250m。いずれも段瀑であり、この値はどこまでを1つの滝ととらえるかで変わってしまうため、細かく比較しても意味はないが、布晒ノ滝が日本を代表する滝であることは間違いない。
・銘渓62選ではジロト沢は初級の沢となっているが、明らかに初級ではなく中級の沢である。初級を信じていく人が遭難事故を起こさないといいが・・・。同書では沢の難易度が初・中・上級の三段階評価となっているが、3段階評価は1段階でもずれると大きな違いになってしまうので、1級下~6級上まで18段階くらいで評価して欲しいものである。
■沢の評価
今後はメーリスに流さず,ドライブ上のファイルを随時更新していくこととする。
https://drive.google.com/open?id=0B7TlBNjdUv9kRnExcGNnbERhdk0