2017/12/9 高宕川遡行・右俣下降・間滝観瀑

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
高宕川本流遡行・右俣下降・間滝観瀑計画書
作成者:丸山
■日程 12/9(土)(荒天の場合中止,前日までに判断)
■山域 房総
■在京本部設置要請日時 2017/12/9 19:00
■捜索要請日時 2017/12/9 10:00
■メンバー(計3名)
CL丸山 SL朝倉 久光

■集合・交通
小島新田駅周辺に6:38に集合し,入渓点付近まで丸山の自宅車で
(100分程度)
アクアライン片道640円

■行程(予定時間)
8:20 駐車場着
8:35 出発
11:00 尾根の乗っ越し
12:30 帰着
(計3:55)
https://yahoo.jp/OIljFU
※時間が余るので、沢装備はそのままで間滝を観瀑する予定
13:00 駐車・出発
14:30 間滝
16:00 帰着
(計3:00)

■エスケープルート
尾根を乗っ越すまで:引き返す
それ以降:そのまま進む
間滝観瀑:引き返す

■地図
2万5千分1地形図「鬼泪山」
※遡行図なし

■遭難対策費
100円×3人
計300円

■備考
日の入(12/9)16:29
富津警察署 0439-66-0110

高宕川遡行・右俣下降・間滝観瀑記録
作成者:丸山
■日程 2017/12/9(土)
■山域 房総
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計3人、敬称略)
高宕川:SL朝倉 久光 CL丸山
間滝:CL丸山 久光 SL朝倉
■総評
前々から気になっていたT秘境(高宕川)と間滝(まのたき)、この2つを1日で楽しむことができ、高宕川は期待した程度に、間滝は期待以上に良かったので、充実した山行であった。滑落して教訓まで得るというおまけがついたが、今後に活かしていきたい。

■ヤマレコ記録
高宕川 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1333462.html
間滝 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1333465.html

■時間
6:43 小島新田駅付近発
8:24 隧道前駐車スペース着
8:40 出発
9:00-9:10 急駟(きゅうし)滝
10:47 引き返し地点
10:53 左岸枝沢へ入る
11:13-11:21 鞍部
12:28急駟滝下
12:40 駐車スペース帰着
~~車移動~~
13:11 間滝へ出発
13:42 沢床へ降りる
14:05-14:18 間滝(まのたき)
14:37 沢歩き終了
15:06 帰着

■行動記録(敬称略)
・隧道前駐車スペースまで
T秘境を紹介するどのウェブサイトを見ても、隧道前駐車スペースへの道は狭いと書いてあるが、まあ軽自動車なら余裕だろうと思い、隧道前まで車で行く。確かに狭く、途中から未舗装になり、最後には陥没した部分に木を埋めて応急処置してあるところまで現れ、少々ビビるが、無事駐車スペース(1台分)に到着、幸い空いている。Uターン余地を残して駐車。なお、隧道を車で通り抜けることもできるが、その先にはぬかるみがあって転回不能なので、バックで引き返す羽目になること請け合いである。
・急駟滝まで
屏風状の岩壁に、いかにも「穿ちました」感全開で開口している隧道を抜けて振り返ると、こちら側は岩壁となっておらず、あまり見栄えがしない。この林道はだんだんと下ってそのまま川に突入し、そこから遡行開始。房総らしい立派な側壁と広いナメがお出迎え。一方、左岸上方には手前の道が無い廃隧道があるが、これは林道の崩落により前後の道が無くなったもののようであった。程なくして黒滝が現れ、右岸にはステップが切ってあるが、直登も容易。右岸から合流してくる旧流路を見送って歩くこと少々で、急駟滝(27m)。四段の滝で、下三段は傾斜も緩く容易だが、最上段は傾斜がきつく、いくら滑りにくい砂岩とはいえ、高度感もあり厳しい。左岸に残置ロープがあったため、それに頼って登った。この残置がない場合、直登は厳しい滝となるかもしれない。滝を登りきると、川廻しには付き物の隧道を潜る。
・左岸枝沢へ入るまで
先に書くと、急駟滝から先は殆ど遡行価値がない。あったものは、出てきた順に、しょぼい枝沢に切られたステップ(丸山「こんなところにも道が」久光「猟師道か?」)、意外と大きな淵(久光「木口さんならこういうところで泳ぐよ」朝倉「水無川でも…」)、取水施設(現役?)、相変わらず立派な側壁、それなりに美しい青空・紅葉・黄葉・緑葉・白い側壁のコントラスト、面白い模様の河床の岩盤、少々のナメ、断層(久光「地質屋が欲しい」)、硫黄泉(久光「温泉法上の温泉だね」朝倉「溜めて温めれば…」)などである。房総の沢は蛇行が激しく、地図読みが難しいことを前提に、比較的真剣に地図を見ながら遡行したが、蛇行が多い分それぞれの地点に特徴があり、丁寧に読図すれば思ったほど難しくないことが分かった。無事に目的の枝沢を発見し、さらに本流を遡行して次とその次に入る枝沢まで確認してダメ押ししてから、枝沢へ入る。
・左岸枝沢
この枝沢の出合は小滝になっていて、朝倉と久光は左岸(Ⅲ)、丸山は右岸(人工ステップ有)を登った。その先は廊下状のナメが少しあり、程なくして水も涸れて、詰め。さほど急ではなく目的の鞍部に詰め上げることができた。詰めの最中ですら雑談が捗るような詰め。
・右俣左沢下降
鞍部で数分休憩後、じっとしているとすぐ冷えてくるので下降開始。鞍部の反対側も詰め上げた斜面同様与しやすい斜面で、容易に沢床へと降り立つ。少し歩くと水が出てきて、そこから暫くはナメの優占する歩きやすい沢が続くが、何か堰堤上のような緩い沢になったと思うと、巨岩帯出現。どうやら巨岩帯に堰き止められて堰堤上状の地形となっていたらしい。こんな巨岩帯が房総のこんな小沢にあるとは予想外で、通過には少し苦労させられるものの、何もないよりは良かった。巨岩帯を抜け、2m程度の広いナメ滝を下り、ちょっと上越の大スラブを思い起こさせる側壁を見て程なく、急駟滝の下に戻って本流に合流。
・帰着まで
朝も通った、高宕川で最も遡行価値のあるところを再度歩き、駐車場に戻る。最初と最後が良かったので印象としては悪くないとは、久光の談。

・途中の車移動
鹿野山林道を通ったが、全面舗装で何の問題もなく通行可能だった。
・沢床に降りるまで
駐車したところから間滝へ行く道は廃道だと読んでいたので、適当な平場を見つけて藪に突っ込んだが、思ったより酷い藪だったので、数分進んでから上部にあるとされる状態の良い道を目指すと、すぐにその道に出て、あとは快適。設置意図の不明な謎の案内板もあるので、それに従って尾根を下っていく。最後に少しルートをミスして急斜面を下る羽目になったが、無事沢床へ降りる。
・恩田川遡行
最初は浅いゴルジュだが、遡行するにつれてだんだんと深いゴルジュとなり、見応えが出てくる。ゴルジュ内には小滝もあり、濡れないように突っ張りで登るのは結構面白い。
・間滝(まのたき)
その深いゴルジュのどん詰まりにあるのがこの間滝。日本には無数の滝があるが、こんなにも圧迫感のある滝はまずないであろう。10m+5mの2段滝とされるが、まさに井戸底のような滝壺からは下段しか見えない。右岸には残置スリングが垂れ下がって誘っており、これを登ると上段も見えそうだったので、少し登ってみることにしたが、泥々で悪い。残置スリングや鉄杭(?)に頼って5mほど登ったところで上段が見え、写真には収めたが、懸垂下降するためにはより上にある木まで登る必要がある。そこまで登ろうとしたが、ここで何らかの原因(覚えていない)により滑落。次の瞬間には滝下の瀞場に落ちていたが、幸い外傷は無し。泥々のびしょ濡れになってしまった上、ちょっと腰は痛いが、落とした眼鏡を久光に拾ってもらい、平常心を取り戻して帰途につく。
・駐車スペースまで
恩田川は下降するのも問題無し。ただし、遡行時と違い水が濁っているので、深いところを避けるのがちょっと難しくなる。正規ルートであれば尾根への取り付きも易しく、急な尾根も立ち木を掴みながら手も使って登れるのでそれほど大変ではない。復路では、行きに見つけておいたもともと通る予定だった廃道を通り、正しい入口をちゃんと確認することができた。
・復路の車
早く下山したおかげか、いつも房総へ行くたびに嵌るアクラライン渋滞に巻き込まれず、良かった。

■備考・感想
・またしてもシーズン一番の寒さとなった日に沢へ来てしまった。確かに水は冷たいものの、滝登攀もなく、待ち時間もなかったのでそれほど寒いということはなかった。やはり冬でも楽しめるのは房総である。
・ヤマビルなし。この辺りにはまだヤマビルは侵入していないとされるが、いつまでもつやら。
・魚影なし。サワガニはいた。
・高宕川は、静かで危険箇所もないため、雑談の捗りようが半端じゃなかった。沢としては異例。
・高宕川は、いわゆるT秘境である急駟滝までが見どころ。それより上流へ遡行しても遡行価値は低いので、沢登りの対象というよりは、所要時間1時間程度で、ふくらはぎ位まで水に浸かる観光地と考えた方が良いかもしれない。
・急駟滝は、房総に数多くある川廻し滝の中でも最も高い落差(27m)をもつものであると思われる。明治時代に牧場造成のために行われた川廻しによるとされる。人為と自然の融合による美瀑。駟という漢字は「四頭立ての馬車やその馬」という意味だそうだが、牧場に馬でもいたのだろうか? 四段の滝であることから、四に関係のある格好良さそうな漢字を使っただけかもしれない。
・間滝下流の恩田川は、強烈なゴルジュ。房総にこんな奇観があるのかという感じで、一見の価値あり。
・今回のように見どころが限られている沢の場合、途中移動を挟んで1日2か所巡るのが効率的で良い。

■反省
・見に来ただけの滝に色気を出して登ろうとするのは、当然準備不足となるためやめるべきであった。
・A0用残置が多い場所は、その分だけそこが登りにくいということであり、慎重になるべきであった。

■雑感
・房総の沢の魅力は広い滑床と高い側壁である。そのため、スケールが小さくなる源流部は魅力に欠ける。そのため、今後は房総では中流部が面白そうな沢を探していきたい。