2018/4/7 石津窪遡行・伝名沢鈴川下降・三郎ノ岩道窪遡行
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
石津窪遡行・伝名沢鈴川下降・三郎ノ岩道窪遡行計画書 ver. 1.0
作成者:丸山
■日程 4/7(土)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 奥多摩
■在京本部設置要請日時 2018/4/7 20:00
■捜索要請日時 2018/4/8 10:00
■メンバー(計4名)
CL丸山 SL木口 迫野 久光
■集合・交通
ココス南町田店駐車場に6:10(迫野)
北野駅北西の隆文堂前に6:45(久光、木口)
丸山車で盆堀林道へ(60分程度)
■行程(予定時間)
8:00 駐車スペース発
8:10 石津窪入渓
9:45 石津窪大滝上
10:15 石津窪二俣
10:40 石津窪山東のコル
12:40 伝名沢鈴川下降終了
13:00 三郎ノ岩道窪大滝下
15:00 同大滝上
15:35 連瀑帯出口
16:05 仕事道
16:35 伝名沢出合
17:00 駐車スペース帰着
(計9:00)
(https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-520355.html)
※時間や体力に余裕がない場合は三郎ノ岩道窪遡行をせずに帰る。
■エスケープルート
石津窪大滝まで:引き返す
コルまで:左岸尾根上の仕事道で下山するか、稜線上の登山道で下山
伝名沢鈴川:稜線上の登山道で下山するか、伝名沢林道で下山
三郎ノ岩道窪大滝まで:引き返して伝名沢沿いを下る
それ以降:そのまま進む
■地図・遡行図
2万5千分1地形図「五日市」
山と高原地図「奥多摩」
石津窪:東京起点沢登りルート120 p.21
伝名沢鈴川:遡行図なし
三郎ノ岩道窪:東京起点沢登りルート120 p.19
■共同装備
ツェルト(チャーリー)
救急箱(苺)
8.6mm×30mロープ
8.6mm×45mロープ
お助け紐
ハーケン・カム
ハンマー(ロカ)
ハンマー(チコ)
アッセンダー
■遭難対策費
100円×4人
計400円
■備考
日の入(4/7)18:10
五日市警察署 042-595-0110
石津窪遡行・伝名沢鈴川下降・三郎ノ岩道窪遡行記録
作成者:丸山
■日程 2018/4/7(土)
■山域 奥多摩
■天候 曇り時々晴れのち雨
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
CL丸山 SL木口 久光 迫野
■総評
2つの大滝や、登り応えのある小滝を沢山登ることができ、シーズン2回目としては非常に充実した山行であった。水をかぶることもなく、この時期の山行としてはベストに近かったと思う。
■ヤマレコ記録
(https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1422211.html)
■時間
7:30 盆堀林道駐車スペース着
7:45 出発
8:01 石津窪入渓
9:18-10:00 石津窪大滝
10:18 石津窪二俣
10:49 石津窪山東のコル
12:53 伝名沢鈴川下降終了
13:12-15:27 三郎ノ岩道窪大滝
16:05 連瀑帯出口(詰め始め)
16:35 仕事道に出る
17:16 伝名沢出合
17:34 駐車スペース帰着
■行動記録(敬称略)
※遡行図は東京起点120を使用、滝の落差は同資料に基づく。
・駐車スペースまで
盆堀川流域は、奥多摩の沢登りフィールドの中でも最も近く、五日市の市街を通り抜けてからすぐだった。盆堀林道は全面舗装で走りやすい。予定より早く到着し、千ヶ沢林道の分岐付近に駐車。
・石津窪入渓まで
千ヶ沢林道は一般車輌通行止。封鎖は簡易だが、落石の多い林道なので、封鎖されていなくても普通車では通行できなそうである。歩行には問題なく、石津窪が見えるところまで着く。林道から出合に降りる踏み跡がしっかりと付いており、遡行装備を整えてから入渓。
・2連4m滝まで
入渓してしばらくは特に何もない貧相な沢だが、右から支流が入るとすぐに4m滝。これを容易に登ってすぐに、深い釜をもつ4m滝。冗談のつもりで丸山が「泳げるよ!」と言うと、「ウェットスーツ着てきて良かった~」と言って本当に泳ごうとする木口。荷物を丸山に預けると、本当に桜の花びら浮く釜へ飛び込んでしまった。呆気にとられる3人。う~ん、これが4月7日に奥多摩で見られる光景なのだろうか、信じがたい。木口はそのまま水線を直登しようとしたが、難しく、水から上がって荷物を受け取ってから、右壁を登った。3人もそれに続く。
・大滝手前まで
いくつかの小滝を問題なく越え、現れた10m滝は右壁を直登。次の8×10mは丸山が水線左、木口が右スラブ、久光が左壁、迫野が水線右と、様々な登り方ができた。右スラブはやや厳しく、木口にのみお助け紐使用。すぐ上の6m滝は、右壁にあからさまな残置ロープがかかっている。できれば使いたくないので丸山はフリー登攀を試みたが、ぐらつくホールドを信用することはできず、A0して残置ロープの右から登った。その後木口と迫野はお助け紐使用の下、残置の左をフリー登攀(Ⅳ?)。ここは、残置がない場合難所となろう。
・大滝25m
今日の1つめのメインディッシュ。45mロープを出して、丸山のリードで右から登る。残置ハーケンが豊富にあり、5カ所ほどで中間支点をとって登った。岩も乾いており、ホールドも適度にあって登りやすい(Ⅲ+)。滝登りの練習にいい滝だと感じた。
・石津窪遡行終了まで
大滝の上は滝もまばらになり、3m滝と7m滝(Ⅲ)を容易に越えると、二俣。二俣先の5m滝は遡行図では巻きが案内されているが、都合の良い倒木があり直登できた(Ⅲ+)。そこから先は何もなく、両岸植林地となっている緩やかな沢を遡っていく。水が消えてから少しすると傾斜が多少急になるが、詰めとしては楽な方で、生えている山椒の新芽を摘まみながら、コルへと出る。
・伝名沢鈴川下降(伝名沢林道まで)
コルで少し休憩してから北側へ下り始めたが、地形図通り、詰めあげた斜面よりは急である。谷筋の右岸に獣道のような僅かな平場を発見し、それを辿っていくと、沢床に倒木が少なくなった辺りで都合良く沢床に降りることができた。そこから少しで水が出始めたが、2~4mほどの容易な小滝や10m程度の小ナメが出るばかりで、特に何もない。結局そのまま伝名沢林道に出てしまった。暗渠になっていてこの林道をくぐることはできない。
・伝名沢鈴川下降(出合まで)
伝名沢林道は現役ばりばりの林道で、近くには作業車や索道も見える。開けているここで少し休憩して、鈴川左岸斜面より鈴川に再入渓。落石の多発する嫌な斜面だった。その後も容易な小滝しかない沢が続いたが、暫くして沢中に廃車体が出現。すぐ先には大きい滝が見え、クライムダウンは不可能。数少ない過去の記録ではこの廃車を支点にして懸垂下降したとのことなので、それを真似することにして、45mロープで懸垂下降。この滅多にない状況に興奮して写真を撮りまくる迫野。降りてみるとこの滝はなかなか美形の13m滝だが、登るのは難しそう。13m滝のすぐ下では右岸より支流が流入していたが、これも滝となっており、この辺り、滝が多くて良い。その後すぐに2m石積み堰堤が現れ、容易に下ると、水が伏流してまた堰堤。この堰堤はコンクリートの高いもの(約7m)で、左岸から巻き下ろうかと考えていると、左岸側にも伏流があった。遡行図に書くためにGPSを確認すると、何とここが出合だった。水流がないとわかりにくい。
・三郎ノ岩道窪3mCS滝まで
伝名沢を少し遡行すると水が現れ、すぐに石積み堰堤(4m)。これは右の凹角から直登。迫野のみ中央から直登したが、途中詰まったので念のためお助け紐使用。堰堤の上は再び伏流となり、そのまま左岸から三郎ノ岩道窪が水流を伴って出合ってきた。最初のCS3mは左壁を登ったが、それほど易しくもない(Ⅲ+)。滝上に残置ハーケン&スリングがあったが、懸垂下降用と推測された。
・三郎ノ岩道窪大滝
今日のメインディッシュ2つめ。いかにも悪そうに立ちはだかる。秋川流域最難と言われる滝で、ハンマーやハーケンの準備もしっかりして、緊張感を持って丸山が右からとりつく。石津窪大滝とは違ってぬるぬるの逆層で、しかも落ち葉も積もっているので登りにくい。慎重に、落ち葉を払いのけながら登っていくと、落ち葉の下から残置ハーケンが出てきて、効きを確かめてから1つめの支点をとる。その後もシビアな登攀が続き、残置もないのでハーケンを打つが、効きは微妙。それでも気休めにはなるので支点とし、登攀を続ける。さらにもう1本ハーケンを打ち、そこからすぐで残置ハーケン発見。ほっとしてまた支点をとり、最後までシビアな登攀を続けて下段終了。セカンドの木口はハーケンを回収しながら登ろうとしたが、慣れない作業のためハーケンを落とし、迫野や久光が滝下で探すことになった(その後、見つかった)。迫野や久光も問題なく登ってきて、下段は終了。悪条件のため慎重さを要求され、時間はかかったが、それほど難しくはなかったかもしれない(Ⅳ)。上段も丸山がリード。左壁が簡単そうに見えて、取りついたが、上部は立っていて難しい。岩が乾いているのが救い。途中立木で1カ所支点をとて、丸山はそのまま登ったが、セカンドの迫野は苦労し、落ち葉を懸命に払いのけた結果見つけた残置ハーケンにヌンチャクをかけてA0。木口はフリーで登ったが、久光もA0。フリーでの登攀グレードとしては上段の方が高いかもしれない(Ⅳ+)。結局この大滝に2時間以上かかり、遡行図を見て2時間もかからないだろうと思っていたのが本当にかかってしまった。
・遡行終了まで
大滝すぐ上の小滝は右から巻いたが、下からの見た目よりは難しい。その後少しして連瀑帯に入り、ここの滝は左右の壁を簡単に登れるとのことだったが、そうでもない。Ⅲ+~Ⅳ-程度の手応えのある滝もいくつか含まれていて、面白いが、初級者を連れてくるべきではない。連瀑帯最後の5m滝は、丸山が水線から左壁を登ったが、やや難しく(Ⅳ)、他3人は右壁を登った。水線には残置ハーケンもあったため、ロープを出して登る人もいるようである。その後樋状小滝を容易に越えると、急に藪っぽい沢となったので、終了とする。
・下山
左岸の伐採後の斜面を詰め始めたが、茨を含む灌木帯であり、非常に登りにくいので、近くに見えた植林地へ向かう。植林地内を登っていくと、少し開けたところに出て、目指す仕事道のある尾根も見えてきたので、ここで丸山と迫野は履き替え。そのまま植林地をトラバース気味に進んでいくと、仕事道に出た。ここで先頭を交代し、木口にバリエーション尾根を進む練習をしてもらうことに。しかし仕事道というのは使われなくなると急に不明瞭になるもので、結構わかりにくい。結局道を見失い、尾根をひたすら辿っていくが、急傾斜部もあって面倒である。夕闇も迫っているので急ぎ目で進んでいくと、最終的にちょうど伝名沢と盆堀川本流が合流しているところへ出た。これらを渡渉すると、盆堀林道。
・盆堀林道
林道に出たあたりで急に雨が強く降ってきて、沢では木口以外濡れなかったのに林道で濡れる。テンションが下がりながらも、満足感を伴って林道を足早に進み、車に戻った。
■備考・感想
・石津窪にはアズマヒキガエルが非常に多く、包接しているものも多数見られ、迫野や久光は喜んで写真を撮っていたが、木口は気持ち悪がっていた。特に小滝登攀中に上から落ちてきて、自分も落ちそうになったとか。石津窪終了後、どうせほかの2沢でも同じくらいいるだろうと思っていたら、他の沢では全く見つからなかったのは意外だった。
・伝名沢鈴川は記録の少ないマイナー沢で、今回遡行図を描こうと意気込んでいたが、残念ながら遡行価値は殆どなかった。
・沢の伏流部に出合がある場合、見逃しやすいということを実感した。今後注意する必要がある。
・ハーケンを打って、回収して登るという訓練ができたのは良かった。
・三郎ノ岩道窪は見た目より難しい滝ばかりで、初級者には向かない沢であると感じた。石津窪はそれより易しく、初級者のレベルアップにちょうどいいかもしれない。
・ヤマビルなし。まだ相模川の北には進出していないはず。
・人との遭遇なし。この時期には比較的人気のある沢のはずだが、沢なんてそんなものか。
・鈴川の沢名については、宮内(1944)は「ヤニラ沢」としているが、東京瓦斯山岳会(1940)に従い「鈴川」とした。
■コメント
・フリー登攀に拘りすぎて時間をかけるのはやめましょう。