2018/4/22 神之川大谷沢右俣

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
神之川大谷沢遡行計画書 ver. 1.1
作成者:丸山

■日程 4/22(日)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 裏丹沢
■在京本部設置要請日時 2018/4/22 20:00
■捜索要請日時 2018/4/23 10:00
■メンバー(計3名)
 CL丸山 SL谷口 ○吉田

■集合・交通
 6:40にファミリーマート西橋本2丁目店集合、丸山車で神ノ川ヒュッテ付近へ(60分程度)

■行程(予定時間)
  8:00 出発
  8:15 大谷沢出合
  9:30 790m2段7m滝
 11:20 1040m三俣
 13:00 大室山
 16:00 下山
 (計8:00)
 ※下山ルートは大岩沢下降または平石沢左俣下降とし、どちらにするかは稜線上で在京に連絡する。
 (https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-527821.html)

■エスケープルート
 大谷沢:引き返すか、右岸尾根に詰めるか、950m附近で横断する水平路で日蔭沢新道へ
 稜線登山道:日蔭沢新道で下山
 大岩沢:1000m附近及び900m附近で横断する水平路で日蔭沢新道へ出るか、そのまま進む
 平石沢左俣:750m附近で横断する水平路で下山するか、そのまま進む

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「大室山」
 大谷沢:丹沢の谷200ルート p.147 など
 大岩沢:遡行図なし
 平石沢:丹沢の谷200ルート p.145 など
 その他:丹沢写真館地図
 (http://www.ne.jp/asahi/ando/tanzawa/4-Hiking_2/90-Zare_kuroiwa/map_90.html)

■共同装備
 ツェルト(チャーリー)
 救急箱(苺)
 8.6mm×30mロープ
 お助け紐
 ハーケン・カム
 ハンマー(ロカ)
 ハンマー(チコ)
 アッセンダー

■遭難対策費
 100円×3人
 計300円

■備考
 日の入(4/22)18:23
 津久井警察署042-780-0110
 ※本計画書では、大岩沢は大谷沢の別名ではなく、左岸支流を指す。

神之川大谷沢右俣遡行記録
作成者:丸山智朗

■日程 2018/4/22(日)
■山域 裏丹沢
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
 CL丸山(35),吉田(38)、SL谷口(37)

■総評
 大谷沢は前半シャワークライミング、後半涸棚登りと特徴があり悪くない沢だったが、標高差が900mもあるためなかなか大変であった。大室山は登頂感のある山だった。山頂から道を間違え、時間的制約で途中からの沢下降を試みたら、入渓に失敗して沢下降ができず、尾根を1000m近くも下ったのは不完全燃焼であった。

■ヤマレコ記録
 (https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1437844.html)

■時間
  7:30頃 日陰沢橋手前駐車スペース着
  7:45頃 出発
  8:04 大谷沢出合
  9:02-9:55 790m2段7m滝
 11:12-11:23 水平経路横断地点(950m附近)で休憩
 11:39 1040m三俣
 13:22-42 大室山
 13:53 間違いに気づいて引き返し
 14:10 引き返し終了、正規ルートへ
 14:37 日陰沢新道へ入る
 14:48 日陰沢新道を離れる
 15:25-37 水平径路を探す
 16:14 舗装路に出る
 16:22 駐車スペース帰着

■ルート・周辺概況
 ※本記録では、大岩沢は大谷沢の別名ではなく、左岸支流を指す。
 ※遡行図は丹沢の谷200を使用、滝の落差・表記は同資料に基づく。
 ・日陰沢橋手前右側の駐車スペースは無料だが、その先の駐車スペースは神之川ヒュッテに300円支払え、と書いてある
 ・神之川林道は日陰沢橋先のゲートで鍵付ゲートがあり一般車通行止
 ・ゲート手前に綺麗な無料トイレあり
 ・大谷沢出合は分かりやすく、うっかり通り過ぎる可能性は低い
 ・沢に入ってすぐの堰堤は全て右から越えられるが、ザレているものもある
 ・序盤の3条5m、3段5mは楽しくシャワークライムできる(Ⅲ程度)
 ・2段8mは岩が非常に脆いので注意(Ⅲ)。この沢は脆い滝が少なくないが、特に脆い。
 ・次の5mは左右ともに直登可(Ⅲ)
 ・2段7mは釜深い上、ドシャワーとなるので高巻きを選択。トラバース気味に右壁を登る(Ⅲ・残置無)と支流大岩沢(水殆ど無し)に入る。そこから落ち口にトラバースするための残置もあるが、古くて心許ないため大岩沢の涸棚を1つ登り、大谷沢方面へトラバースしてから立木で13m懸垂下降。
 ・その先6m滝は流心右を快適に登れる(Ⅲ)
 ・次の流心スラブ状5mは、右岸をトラバース気味に登る(Ⅲ+)。残置ハーケンが4つもあり安心。
 ・950m附近で横断する径路は、梯子が右岸側にあり、注意していれば見逃さないだろう
 ・1040m三俣の右俣は伏流しているが、少し進むと少量ながら水流が出てくる。それもすぐに消える
 ・右俣は、噂通り10個前後の4-8m程度の涸棚(Ⅱ~Ⅲ)が続く
 ・詰めていくと植生保護柵があるが、沿って登っていけば登山道に出る
 ・大室山山頂は眺望よくない
 ・大室山山頂は、分かりにくいが四叉路となっているので注意
 ・大室山から日陰沢新道分岐までの間に、眺望が開けるところがある
 ・日陰沢新道は普通の道だが、途中で外れて地形図記載の破線路に入ると、暫くしてザレ気味の植林地となり非常に歩きづらい
 ・平石沢を750m附近で横切る径路(下記記載)は、尾根側からは見当たらなかった。
 (http://igaiga-50arashi.at.webry.info/201607/article_1.html?pc=on)

■行動記録(敬称略)
 ・入渓まで
  ひとまず遡行装備は着けずに、べらべらと与太話をしながら日蔭沢沿いの林道を歩いていくと、なんだか焼け爛れたような「○谷沢」という標柱を見つけ、沢側を見ると、確かに大きい沢が出合っている。なんともわかりやすい入渓点でありがたい。そのまま堰堤を4つ、右から越えて、ここで遡行装備を身に着ける。吉田は今回、新たに購入したウェットスーツを試すということでもってきていたが、サイズがやや小さいようで、着るのに苦労して汗だくになっていた。丸山も念のため、1mmのウェットを着用。
 ・2連7m滝手前まで
  堰堤の上から沢はいきなりゴルジュ状となり、滝が連続する。最初の2つは快適に(谷口は冷たかっただろうが)シャワークライミング。続く2段8mは丸山が水流左を登ろうとしたが、あまりに岩が脆いので不安を覚え、右岸壁を登った。谷口・吉田は左壁を直登。続く5m滝は丸山・吉田が右壁を、谷口が水流左を直登。どちらも難しくはないが、左には古いワイヤーロープが遥か頭上から垂れており、邪魔である。その後もいかにもゴルジュらしい景観を楽しみながら進んでいくと、2段7m。
 ・2段7m滝
  この滝はこの沢の核心ということで、登ろうかとも考えたが、水が多いのでやめる。一応ロープを出して丸山リードで左岸壁(大岩沢F1?)を登り(Ⅲ)、残置ハーケン・スリングを終了点として、ロープを固定。セカンドで吉田が登ろうとしたが、まさかの落下。巻き気味の登攀だったので沢側に落ち、グラウンドはしなかったものの宙づりになって復帰が厳しい。それでも何とか復帰し、登り切ったが、本当にロープを出しておいて良かった。谷口は無問題で登攀。しかしこの滝の巻きは終わっておらず、この残置支点からトラバースして落ち口へ行くための残置ロープがあるが、非常に不安感を覚えるものであるため、使いたくない。そこで大岩沢の次の涸棚を登り、そこから懸垂下降で大谷沢へと戻った。フォールや懸垂下降などいろいろあり、滝1つに時間が随分かかってしまった。
 ・7m滝まで
  その先も小滝がいくつかあるがいずれも難しくなく、お助けも必要としないで流心スラブ状5mに着く。ここは残置が誘っている左壁をトラバースすることにして、丸山がリード。残置ハーケン4つを中間支点として安心感を持って登った(Ⅲ+)。終了点は残置ハーケン1つと打ち足したハーケン1つ(回収済み)で流動分散とし、吉田、谷口も登った。この先濡れるところもなさそうなのでウェットスーツはここで脱ぐ。連瀑帯最後の7m滝は右壁を容易に直登(Ⅲ-)。
 ・大室山山頂まで
  7m滝の上で多少のナメを見てからは、暫くのゴーロ。途中休憩をはさみながらどんどん登り、三俣に着く。ここでは予定通り右俣を選び、進んでいくと確かに涸棚が連続していて楽しめる。特に吉田はこういうのが好きだと言っていた。しかし、水がないのに日光がさんさんと降り注ぐため暑い。ペースはあまり上がらず、予定より少し遅れて山頂に到着。計画書では大岩沢を下るか平石沢を下るか決めていなかったが、大岩沢がほぼ完全な涸沢であることは分かっていたので、平石沢に決めて在京の木口に連絡した。
 ・道間違い
  大室山山頂で少し長めに休憩した後、下り始める。山頂から東を見て右方面へ下ればいいと思っていたので、右の道へ入り、広くてきれいな林の尾根を気持ちよく下っていたが、吉田から道を間違えていないかとの指摘が入る。そこでコンパスを確認してみると、確かに北へ向かっているではないか。慌ててスマホでGPSを確認すると、久保・大渡方面へ下っていた。それほど下っていないところで気づいて幸いである。どうやら大室山山頂からは地形図に掲載されていない大室指・椿方面へ下る道もあって四叉路となっており、ただ右の道を選んだだけでは駄目だったようである(もっと右の道が正解)。ということで、引き返して山頂近くまで戻り、30分近いロス。
 ・下山まで
  大室山山頂は展望がきかなかったが、下山途中では開けるところがあり、そこそこ景色が良い。神之川流域が見通せるところでは、流域最大の伊勢沢大滝(45m)が見え、早く行って登ってみたいものだと思う。登山道だけに下降スピードは順調だったが、既にあちこちでタイムロスをしてきておりあまり時間に余裕はないので、平石沢は途中から下降することにして、1130m附近で日蔭沢新道を離れて地形図に破線記載のある尾根へ移る。この尾根、最初はふかふかの土斜面で下りやすいが、だんだんと歩きにくくなり、しまいにはザレ気味になってしまう。平石沢へとトラバースできる水平路は760m附近でこの尾根に乗っているようだったので、その付近で径路を探したが、見つからない。結局沢下降は諦めて、そのまま尾根を下ることにしたが、非常に歩きにくい尾根であるため、南側の沢へ逃げた。この沢はガレゴーロだけの沢だったが、ザレ尾根よりは歩きやすく、そのままこの沢を下っていくと日蔭沢新道に出合った。そのまま日蔭沢新道で下山。


■備考・感想
 ・大谷沢は前半はシャワークライミングのある夏向きの沢、後半は南に開けて涸棚が続く冬向きの沢で、どの時期に行くかが悩ましい。夏は前半だけ登って径路で終わりにする半日沢、冬は径路から始める初心者沢としてもいいかもしれない。
 ・前半部も、ウェットスーツがぜひ欲しいほど濡れるわけでもない。
 ・ウェットスーツは試着して購入することをお薦めする。
 ・ヤマビルなし。神之川流域でも伊勢沢などは侵略されているらしいので、ここも時間の問題であろう。
 ・大室山山頂で単独の男性登山者と出会った。人との遭遇はそれだけ。
 ・大室山は高い。神奈川県境では最高峰らしい。
 ・尾根をフェルト底で1000mも下ったのは、安全上もフェルトの寿命上も良くなかった。

■反省
 ・巻き気味の滝を登るときのロープやアッセンダー等の使い方について、もう少し勉強しておく必要がある。
 ・大室山山頂が四叉路になっていることを予習しておかなかったのが失敗の原因であった。登山道だからと言ってなめないことが大事。
 ・作業径路を当てにしすぎないほうが良い。
■コメント
 ・ラストで登る人は、中間者が登っている間に末端にエイトノットを結んでおきましょう。