2018/4/30 地獄棚沢左俣遡行・沖箱根沢
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
地獄棚沢左俣遡行・沖箱根沢下降計画書ver. 1.0
作成者:丸山
■日程 4/30(月)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 西丹沢
■在京本部設置要請日時 2018/4/30 20:00
■捜索要請日時 2018/5/1 10:00
■メンバー(計3名)
CL丸山 SL山本 ○谷口
■集合・交通
7:02に渋沢駅北口ロータリー集合、丸山車で大滝沢林道駐車スペースへ(50分程度)
■行程(予定時間)
8:00 出発
8:10 マスキ嵐沢出合
8:35 地獄棚沢出合
9:05 雨棚往復終了
11:00 地獄棚上
12:00 二俣
13:30 遡行終了
14:30 中流部20m滝
16:00 沖箱根沢出合
16:30 帰着
(計8:30)
※地獄棚の巻き方は現地で判断する
(https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-531422.html)
■エスケープルート
地獄棚まで:引き返す
地獄棚沢:右岸尾根に詰めて下るか、830m付近で横断する作業径路で下る
沖箱根沢:そのまま進む
■地図・遡行図
2万5千分1地形図「中川」
地獄棚沢:丹沢の谷200ルート p.241 など
沖箱根沢:丹沢の谷200ルート p.239 など
山と高原地図「丹沢」
■共同装備
ツェルト(チャーリー)
救急箱(苺)
8.6mm×45mロープ
8.6mm×30mロープ
お助け紐
ハーケン・カム
ハンマー(ロカ)
ハンマー(チコ)
アッセンダー
■遭難対策費
100円×3人
計300円
■備考
日の入(4/30)18:30
松田警察署0465-82-0110
地獄棚沢左俣遡行・沖箱根沢下降記録
作成者:丸山
■日程 2018/4/30(月)
■山域 西丹沢
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計3人、敬称略)
CL丸山 SL山本 谷口
■総評
美しくコンパクトな地獄棚沢・沖箱根沢を好天の下楽しめ、非常に良い山行であった。特に地獄棚沢の地獄棚~二俣間は登れる小滝が連続しており素晴らしかった。最後の滝で滑落が起こったが、幸い大した怪我もなかった。今後一層気を引き締めるきっかけとしていきたい。
■ヤマレコ記録
(https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1445926.html)
■時間(括弧内は計画時の予定)
8:07(8:00) 出発
8:22(8:10) マスキ嵐沢出合
8:46 (8:35) 地獄棚沢出合
9:21 (9:05) 雨棚往復終了
10:15 (11:00) 地獄棚上
11:20(12:00) 二俣
11:58(13:30) 遡行終了(詰め終わり)
11:58-12:17 尾根上で休憩
12:55-13:40(14:30) 中流部20m滝
14:59(16:00) 沖箱根沢出合
15:22(16:30) 帰着
■ルート・周辺概況
※遡行図は丹沢の谷200を使用、滝の落差・表記は同資料に基づく。
・大滝沢林道の路面状況は悪く、特に登山道入り口手前の坂道が酷くてスリップ気味になる。2輪駆動車での登りはぎりぎりであり、今後さらに荒れてくると考えれば、ここの通行は今後控えたほうが良い。この場合、大滝沢林道に入ってすぐの広くなっている部分に駐車すれば良い。
・登山道入り口付近の駐車スペースは4台程度、大滝沢林道途中の広い部分も同程度駐車可能と思われる。
・雨棚手前の崖棚の釜が深くなっており、へつりがやや難しい。崖棚自体は容易(Ⅲ-)。
・雨棚には残置が多くあり、それほど古くないものもあったため、最近も登られているのかもしれない。
・地獄棚の左岸巻きはそれほど難しくなく、これを理由に2級上とするほどのものではない。
・地獄棚上から連続する小滝はいずれも快適に直登できる(Ⅲ程度)。
・左俣の滝はいずれも易しい(Ⅲ-以下)。
・左俣の、滝が全て終わった辺りに噴水状の湧水があり神秘的。
・870m変形三俣で2番目に左から入る谷に入ると、特に何もないが、沖箱根沢下降には都合がいい。ただし詰め始めはザレており厳しい。
・沖箱根沢790m二俣を目指して尾根を下ると、ロープも出さずに沢へと下れる。
・沖箱根沢中流部20m滝(F4)を滝上から懸垂下降する場合、少なくとも45m以上のロープが欲しい。できれば60mまたは、ロープの連結。この滝は、右隅から小さく巻けるらしい。
・沖箱根沢下部の20m(階段状)滝(F3)は、直登がやや難しい(Ⅳ)。
・その下の5m滝(F2)は水流右を直登できる(難しい)らしいが挑戦せず。
・その下の15m滝(F1)も直登できる(難しい)らしいが挑戦せず。
・いずれの滝も、懸垂下降の支点となる立ち木はしっかりとある。
■行動記録(敬称略)
・地獄棚沢出合まで
今回は駐車スペースで沢装備を整え、登山道を歩くこと15分でマスキ嵐沢出合に着き、踏み跡をたどって大滝沢へ。単調な川原歩きをしていくと、少々で堰堤があり、残置ロープに頼って右から巻く。すぐに沖箱根沢出合があり、帰りはここに出てくることを認識。さらに川原歩きを続けていくと、少しナメが出てきて、圧巻の地獄棚が眼前に迫る。
・雨棚往復
地獄棚を十分鑑賞した後、大滝沢へ入って雨棚を見に行く。途中に4m崖棚があり、以前は滝壺が浅くて苦労しなかったが、今回は深くなっており、へつりがやや難しかった。滝自体は以前より容易に感じたが、自分の登攀力が上がったのか、地形が変わって容易になったのかは分からない。崖棚を越えると右岸から水流の細い70m滝が入り、その先に雨棚がある。雨棚も相変わらず見ごたえがある。沢山の残置が目についたので、様子を見るために丸山と山本が途中まで上がってみたが、降りるのに少々苦労した。復路、途中の崖棚はクライムダウンしたが、特に問題なし。
・地獄棚左岸巻き
この沢の核心。緊張感を持って取り組む。まずは大滝沢のナメ滝上から左に斜上し、ここから直上というところで45mロープを出す。丸山がリードし、立ち木で数か所支点を取りながら上がる。木を支えにして登れるのでそれほど難しくはない。ロープが屈曲すると重くなるので、できるだけ直上し、左へ向かうバンドが見えたのでそこからトラバースしていくと、都合よく落ち口の5mくらい上に出た。ここの立ち木を終了点とし、山本、谷口の順で上がった。山本が上がった時点でATCガイドの使い方を山本に教え、ロープを張る。しかし、暫くするとまた弛んだので、またロープを引く。これが3度ほど続いたため、まだ笛を吹いていないのに登り始めているのではないかと思い、山本にビレイを開始させ、笛を吹く。谷口はそのままスムーズに登ってきたが、やはり笛が吹かれる前に登り始めていたとのこと。絶対にやめてほしい。巻きにかかった時間は1時間に満たず、コースタイム2時間と書いてあっただけに拍子抜けであった。
・二俣まで
地獄棚の上は、二俣まで快適な小滝が連続し、素晴らしい渓相。いずれもフリーで上がれる。途中の10m程度の滝で、山本のリード練習のため30mロープを出した。Ⅲ-程度のシャワークライムであり登攀は全く問題ないものの、ロープワークがまったく覚束なかった。練習しましょう。
・遡行終了まで
二俣を左に入ると、水量は半減。ナメが続き、小滝も少しあるのでそれほど退屈することもなく進んでいくと、沢床近い岩盤の割れ目から、噴水状の湧水が出ている。ウェブ上で写真を見たことはあったが、実際に見ると感動。写真を撮って、少し飲んだ後、塞いでみようとして遊ぶ。870m変形三俣では、沖箱根沢に近い中俣を選択し、何もない沢をいくらか遡ってから、適当なところで終了する。
・沖箱根沢入渓まで
右岸斜面はいかにもザレているが、これ以上沢を登りたくもないので詰め始める。落石対策としてトラバース気味に登っていくと、立ち木も出てきて普通の斜面となる。そのままトラバース気味に尾根を目指していくと、ちょうど好都合なところで分水界の尾根に出た。読図とGPSで現在地確認後、休憩。休憩後、遡行図で何もない沖箱根沢上流部を嫌って、790m二俣を目指して尾根を下る。この尾根は最初、両側に植生保護柵があり、圧迫感があって不思議な感じである。そのまま進んでいってもこの尾根は歩きやすく、ロープも出さずに沢へ降りることができた。
・沖箱根沢20m滝(F4)まで
ちょうどナメが始まるあたりから入渓できたようで、遡行図にある4段ナメ滝をはじめ、ナメが続く。気を良くして下っていくと、20m滝。ここで練習のため山本が懸垂下降のロープ(45m)のセットをするが、ロープが絡まってうまくいかず、30分程度かかる。また、ロープが滝の最下部までは届いていなかったため、途中からクライムダウンとなったが、これが上から見えたより悪く、ロープを連結したほうが良かった。この20m滝はスラブ状の一枚岩で、水流の形も良く、なかなかの美瀑であった。
・沖箱根沢F2まで
F4の下は、ずっとナメが続いており非常に快適。体感的にはすぐに、20m滝(F3)の上に着く。なかなか立派なナメ滝である。クライムダウンはやや厳しそうなので、ここも山本が45mロープをセットして懸垂下降。その後丸山と谷口はこの滝を登ってみたが、最上部がやや厳しくⅣ程度。そのに山本が5m滝(F2)に30mロープをセットし懸垂下降。この滝は登りも難しそうである。
・沖箱根沢F1
F2を最初に下った山本が、この滝を巻き下れると言うので、先に下ってもらう。この時点で時間は余っていたので、最後にF1をトップロープで登攀練習することにして、丸山がロープをセットしていると、「バン!」と何かが落ちる音がする。落石でもあったのかと思うと、最初に降りていた山本が「滑落です!」と言う。谷口がこんなに大きな音を立てて落ちたならただ事ではないと思い、慌てて様子を見に行くと、ひとまず動けるようで、一安心。しかし、滑落が起こった斜面が悪く、簡単には近づけない。滑落が起こったばかりの危険な斜面でもあるため、念のため懸垂下降。谷口は擦り傷を数か所作っていたが、ヘルメットとザックに守られて殆ど怪我がなかったようで、良かった。傷口を沢水でしっかり洗い、もうF1の登攀はやめることにして、下山。
・駐車スペースまで
特に何事もなく駐車スペースまで下山したが、谷口は臆病風に吹かれて妙なところで怖がっていて、普段との違いが面白かった。笑いごとにできるのも、運が良かったおかげである。
■備考・感想
・地獄棚沢は、短くコンパクトな中に大滝もナメも連瀑もあり、飽きさせない秀渓。大滝沢流域の中では最も遡行価値が高い。
・沖箱根沢は、出合附近の連瀑の後、途中までは美しいナメが続き癒されるが、F4以降に殆ど何もないので、遡行の場合、そこで引き返した方がいいかもしれない。
・花崗岩の沢はフェルト底との相性が非常に悪い。ラバーソールの沢靴が欲しくなった。
・両沢ともにあまり濡れないので、春や秋にちょうどいい。特に沖箱根沢は濡れない。
・ヤマビルなし。小川谷廊下は数年前に陥落したが、中川川流域での目撃例はまだ聞かない。しかし、時間の問題であろう。
・下山中に登山道入り口手前で単独の男性登山者と出会った。山中での人との遭遇はそれだけで、GW中で天気も良いのに寂しいものである。しかし、同日に「丹沢の谷200」著者の後藤さんが地獄棚沢を登っていたらしい。ニアミスだったが、お会いしてみたかった。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1445926.html
・沖箱根沢F1&F2、雨棚、地獄棚あたりを登りに、またこの辺へ来てみたい気もする。
■反省(沖箱根沢F1以外)
・途中までの偵察とはいえ、大きい滝をフリーで登らないほうがいい。
・登攀開始点から終了点が見通せないような滝の場合、登攀開始時にも笛を吹いたほうがいい。
■コメント
・笛を聞く前に登り始めないように。
・小滝を登るとき、わざわざ難しいかつ危険なところを登らないように。
・懸垂下降が終わって笛を吹くのは、落石が来ない場所へ行ってからにしましょう。
・ATCを落とさないように。
・ロープワークは御殿下で練習しましょう。
・もうすぐCLやるような人は、沢靴とヘルメットとハーネス・ATC・カラビナ・スリングくらい買いましょう。