2018/5/3 内鹿野谷遡行・水越谷下降
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
内鹿野谷遡行・水越谷下降計画書 ver. 1.1
作成者:丸山
■日程 5/3(木)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 南紀
■在京本部設置要請日時 2018/5/3 20:00
■捜索要請日時 2018/5/4 10:00
■メンバー(計4名)
CL丸山 SL木口 ○迫野 ○久光
■交通
丸山車で内鹿野谷探勝路入口付近へ行き、前泊
■行程(予定時間)
7:00 出発
7:50 出合滝
8:50 一ツ落の滝
9:50 520m二俣
10:50 稜線
11:10 水越谷下降開始
13:10 水越谷下降終了
15:00 帰着
(計8:00)
(https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-526701.html)
※谷の増水が酷い場合、出発を少し遅らせる
■エスケープルート
一ツ落の滝まで:引き返す
栂ノ戸滝周辺:引き返すか、木馬道で口高田へ
二俣まで:木馬道で口高田へ
左俣:引き返して木馬道で口高田へ下山するか、稜線上の林道へ
稜線:林道へ出るか、笹地尾根から木馬道を経て口高田へ
水越谷:引き返して林道へ出るか、そのまま進む
それ以降:そのまま進む
■地図・遡行図
2万5千分1地形図「新宮」
内鹿野谷:関西起点沢登りルート100 p.177
水越谷:遡行図なし
■共同装備
ツェルト(チャーリー)
救急箱(苺)
8.6mm×30mロープ
8.6mm×45mロープ
お助け紐
ハーケン・カム
ハンマー(ロカ)
ハンマー(チコ)
アッセンダー
■遭難対策費
100円×4人
計400円
■備考
日の出(5/2)5:07
日の入(5/2)18:41
新宮警察署 0735-21-0110
内鹿野谷左俣遡行・水越谷下降記録
作成者:丸山
■日程 2018/5/3(木)
■山域 南紀
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
CL丸山 SL木口 久光 迫野
■総評
前夜に大雨が降って遡行が危ぶまれたが、行ってみれば大丈夫で、むしろ迫力ある滝が見られて良かった。滝見も登攀もナメも楽しめる沢で、皆の
高評価も頷ける。水越谷を下るという新たな下山ルートも開発でき、その点も含めて非常に充実した山行であった。
■ヤマレコ記録
(https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1457736.html)
■時間(括弧内は計画時の予定)
7:33(7:00) 出発
8:20-8:53(7:50) 出合滝
9:38-10:28(8:50) 一ツ落の滝
11:43(9:50) 520m二俣
13:30(10:50) 稜線
13:40(11:10) 水越谷下降開始
16:59(13:10) 水越谷下降終了
18:07(15:00) 帰着
■ルート・周辺概況
※遡行図は関西起点100を使用、滝の落差・表記は同資料に基づく。
・前夜に大雨が降ったが、山行に悪影響は無かった。
・駐車スペースの水車小屋にはトイレもあり、準備にちょうどいい。
・出合滝までの探勝路は非常によく整備されている。途中には泳ぎでの突破が楽しめそうな淵がある。
・出合滝は、左岸に巻き道が2本あり、小さく巻こうとすると滝のすぐ上に出るが、そこからの徒渉が厳しく、結局大巻きになった。最初から大きめに巻く方の道を選んだ方が速い。
・「その空の下で」の弘田氏が直登した10m滝の直登は難しい。巻きは容易。
・一ツ落の滝の巻きが核心。左岸巻きが一般的だが、大きく巻き過ぎないように注意が必要。
・滝場が終わってから左俣のナメが始まるまでの平凡区間が長いので、木馬道(きんまみち)で巻いた方が速くて良い。
・左俣上部の連続するナメ滝にはやや難しいもの(Ⅳ-)も含まれるので要注意。
・詰めは植林地となり、それほど大変ではない。
・詰め上がった尾根には林道が通じており極めて歩きやすい。
・水越谷の下降は急傾斜な直線状ガレゴルジュから始まり、その後長いゴーロが続くが、杣道がある。その先でナメと滝が連続する滝場が現れ、上から順に2段15mナメ滝、多段20mナメ滝、3段60mナメ滝(「水越大滝」)がある。その下は巨岩ゴーロを経て、内鹿野谷に合流する。
■行動記録(敬称略)
・出発まで
前夜、大雨であったが、雨の落ちない快適な場所を見つけて前泊。翌朝起床して、近くの川を見ると、明らかな増水。いきなり撤退ムードが高まるが、わざわざ紀伊半島まで来ているので行けるところまでは行くということにして、まずはトイレを探す。高田集落内で意外と見つからず右往左往するが、河川プールの近くにあるのを見つけ、用を足してから着替える。とはいえ、少しでも減水を待ちたいという思いもあり、なんだかのんびりとしてしまう。着替えてから駐車場の水車小屋へ行ったが、ここにもトイレがあって、先ほどの右往左往は何だったのかと徒労感に襲われた。ラバーソールの木口以外はアプローチシューズで出発。
・出合滝まで
出合滝までは探勝路としてよく整備されており、基本的には歩きやすかったが、前夜の大雨で冠水しているところがあり、普通のスニーカーでは面倒な場面もあった。途中には泳ぎや突破が楽しめそうな淵や、一枚岩、明治に剥がれ落ちたというずり石など見どころがあり、それほど退屈することはなく歩ける道。1時間ほどで出合滝に着き、そのまま左岸から巻きにかかる。残置ロープに導かれて小さく巻くと、滝上には出られたが、ここから遡行を続けるためには滝上のナメ激流を進む必要があり、危険。結局ロープを出して左岸をもう少し登るという、面倒な巻きになってしまった。この巻き後、沢足袋に履き替え(木口以外)。
・一ツ落の滝下まで
出合滝の上には少しナメがあって、その先すぐに15m滝。右壁に木の根が張り巡らされており、快適な根っこクライミングで越える。その先にはこの谷の名物ともいわれる樋状ナメがあったが、増水のため樋状部以外にも水が流れ、一見普通のナメのようになっていた。このあたりで、増水していても登れそうな沢だということがわかり始める。綺麗なナメを越えて少々のゴーロを進んでいくと、右からルンゼの入るのっぺりした10m滝。「その空の下で」の弘田氏の記録ではこの滝を直登していたので、ロープを出して直登を試みてみたが、ホールド乏しく敗退。やはり弘田氏はすごい人である。この滝は遡行図通り右ルンゼから巻くことにして、適当なところから根っこクライミングをしていくと、滝上に出た。とはいえこの根っこクライミングはしなくても、一ツ落の滝下には出られる。滝は、増水のためかなりの迫力があった。
・一ツ落の滝と栂ノ戸滝
一ツ落の滝は左岸滝寄りのブッシュを頼りに直上できると遡行図には書いてあったが、それほど発達したブッシュではなく厳しそうなので、とりあえず右へと斜上する。適当なところでトラバースできそうになってきたので、ロープを出してトラバース開始。45mロープ丁度のところで滝上の立木に至り、終了点として後続を待つ。落ち口より10m程度上に出たが、うまく巻けばもっと下に出られるらしい。時間に余裕がないので栂ノ戸の滝を下から眺めるのは諦めて、そのままリッジに出て巻く。ここの踏み跡は濃く、導かれて滝上に出た。ここから念のため懸垂下降して沢筋に戻る。
・二俣まで
続く5m滝を右岸から小さく巻くと、本流の6mナメ滝と支流の13mナメ滝が両門の滝状になっており、素晴らしい景観。しばし見とれてから、6mナメ滝の右岸側をフリクションを効かせて登る。すると男性が2名いて、手招きをしている。何でもここから釣りをするので、沢に入らないで欲しい、木馬道で口高田へ下山して欲しいとのこと。しかしこちらも遠くからきている身、素直に応じるわけにもいかないので、木馬道で沢奥へ進むということで理解してもらって、ここから木馬道へ上がる。木馬道はとても歩きやすく、このあたりの凡流を遡行しなくて済むという点でも都合がいい。途中やや不明瞭になる場所もあったが、釣り人の言いつけ通りに極力沢筋に入らないようにして、二俣から少し左俣に入ったあたりへと至る。
・稜線まで
左俣に入っても少しだけ凡流が続いたが、程なくして、噂のナメが現れる。次から次へとナメ、直登できるナメ滝が続き、非常に面白い。しかし木口はラバーソールとの相性が良くなかったらしく、苦戦していた。多くのナメ滝はⅢ程度だが、途中にⅣ-程度のナメ滝が1つあり、ここは丸山がフリーで登ってからロープを出した。しかし、登り方の意思疎通がうまくいかなかったため、時間がかかったのは反省点。楽しいナメ滝帯が終わった後は、詰めだが、途中でサンショウウオ(ブチまたはコガタブチ)を迫野が発見。5分の観察・撮影タイムを設けるなどし、それほど退屈しない詰めとなった。また、それほど急な斜面ではなく植林地であったため、詰めやすかった。
・水越谷核心部まで
稜線には林道が通っており、歩きやすい。すぐに沢下降開始点に至る。地形図で見る限り源頭部が急な沢であり、無事下降できるだろうかと不安をもって谷筋へ入るが、最初は案外歩きやすい。しかしだんだんと岩が増えてきて、側壁も立ってきて、ガレの多いゴルジュ状となり、そこそこの歩きにくさとなる。とはいえ滝などの難所はなく、途中の湧水で喉を潤すなどしながら、順調に下っていく。そのうちにゴルジュは終わり、ゴーロの続く平凡な沢となってしまったが、比較的人の入っている植林地のようで、渓畔の植林地中に道らしき物を発見。凡流はこれによりショートカット成功。
・水越谷出合まで
水越谷を460m辺りまで下ったところで、ついに待ち望んでいたナメが出現。内鹿野谷本流にあれほど立派なナメがあるからには、こちらにもあるかもしれないと思っていたが、やはりあった。50mほどのナメの後、2段15m滝出現、右岸から容易に下って、下から見ると、そこそこの美形。そのすぐにまた50mほどのナメが現れ、今度は多段20m程度のナメ滝。平水時の遡行であれば登れるかもしれないが、今回は下降なので右岸リッジ上からの懸垂下降を選択。滝下ではまたナメが現れ、今度は長い、素晴らしい。150m程度もナメを歩いていくと、また滝が出現。左岸を巻き下りながら見ていくと、3段60m程度の立派な滝で、たぶん名前もないので「水越大滝」と命名。これほどの滝を発見できたのはなかなか嬉しい。この滝をしっかり見てから、下降を再開すると、もう滝はなくてゴーロが続く。渓畔の植林帯を適当に下っていくと、朝に見た出合に戻った。
・帰着まで
出合滝上部に至って、出合滝を懸垂下降しようかと思ったが、降りた先で泳ぎが必須となり、この夕方からの泳ぎは避けたいので巻き下る。朝とは違うルートで大きく巻いたら、ロープの必要もなく楽であった。その後出合滝下で靴を履き替えたが、さっきから泳ぎたそうにしていた木口は出合滝滝壺で泳いだ。もう夕方なのによくやるものである。もともとの予定では、帰りの時間に余裕があれば遊歩道脇の淵などで遊ぼうと思っていたが、既に5時を回り、時間の余裕もないので淡々と下る。朝には冠水していた部分もすっかり水が引き、歩きやすくなっていた。
・下山後
下山後に高田集落内にある高田グリーンランド雲取温泉へ行ったところ、500円というリーズナブルな料金の割に露天風呂まであり、なかなか良かった。しかし、内風呂から露天風呂までの距離が異常に長かったのが印象的。その後新宮のイオンに行き、半額の総菜などを買い求めて食べた。デザートとしてみんなで半分のメロンを買ったが、アイスクリーム用の小さいプラスチックスプーンで掘り出しながら食べたのは、滑稽であった。
■備考・感想
・内鹿野谷は、前半の滝群と左俣のナメが秀逸だが、中間部はゴーロが続く。とはいえそこは道によりショートカットできるので、間延びすることもない秀渓である。一般的には木馬道で口高田に下山するルートが取られるが、今回のように水越谷を下降して出合滝上へ下れば、長い車道歩きの必要もなく良い。
・水越谷は、滝場以外に見どころのない沢。もし遡行するのであれば、滝場が終わったところで右岸上部に見えている杣道を辿って下山するのが良さそうである。しかし、この杣道がどこへ続いているのかは不明。
・増水でも遡行できる沢。ちょうどよかった。
・ヤマビルなし。南紀にはいないはず。
・山中での人との遭遇は、例の2人組の釣り人のみ。
・内鹿野を「うちかの」と読むか「うちがの」と読むかに関しては、現地案内の振り仮名にも2通りがあり、はっきりしなかった。
■反省
・セカンドの吹き返しの笛が聞こえないからと言ってトップがもう一度笛を吹くと、サードが登ってきてしまうことに気づかずに吹いてしまった。結果セカンドとサードが同時にロープを使うことになり、状況次第では危なかった。今回は巻きのため、むしろ時間短縮につながり、結果的には良かったといえる。そのあたりを考えた上で臨機応変にやりたい。
・予定時間の設定が甘すぎる。関西100はかなり短めの時間が書いてあると思ったほうがよさそう。
・前夜の大雨でモチベーションが下がって出発が遅れた。
■コメント
・遠いときは、笛の音を大きく吹きましょう。また、迫野はもう少し大きい音の出る笛への買い替えを検討してもいいかもしれない。
・特段の理由のないときは、中間者はアッセンダーで、ラストは末端エイトノットで登ってください。
・木口は、SLの自覚を持ちましょう。