2018/5/4 立間戸谷遡行・左岸支流下降

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
立間戸谷遡行・左岸支流下降計画書 ver. 1.0
作成者:丸山

■日程 5/4(金)(荒天の場合中止または前倒し、前日までに判断)
■山域 南紀
■在京本部設置要請日時 2018/5/4 20:00
■捜索要請日時 2018/5/5 10:00
■メンバー(計4名)
 CL丸山 SL木口 ○迫野 ○久光

■集合・交通
 丸山車で立間戸谷出合付近へ行き、前泊
■行程(予定時間)
  7:00 出発
  8:10 遡行開始地点(260m)
  8:40 屏風滝下
  9:10 牛鬼滝下
 10:00 30m滝下
 11:00 植林小屋
 12:00 奥ノ二俣
 12:30 稜線
 13:00 左岸支流下降開始
 14:30 左岸支流下降終了
 16:00 帰着
 (計9:00)
 (https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-526704.html)

■エスケープルート
 牛鬼滝まで:引き返す
 植林小屋まで:引き返すか、植林小屋まで進んで登山道で下山
 稜線まで:登山道で下山するか、稜線上の林道へ
 左岸支流:引き返して林道に出るか、そのまま進む
 それ以降:そのまま進む

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「大里」
 立間戸谷:関西起点沢登りルート100 p.181
 左岸支流:遡行図なし

■共同装備
 ツェルト(チャーリー)
 救急箱(苺)
 8.6mm×30mロープ
 8.6mm×45mロープ
 お助け紐
 ハーケン・カム
 ハンマー(ロカ)
 ハンマー(チコ)
 アッセンダー

■遭難対策費
 100円×4人
 計400円

■備考
 日の出(5/4)5:05
 日の入(5/4)18:42
 紀宝警察署0735-33-0110

立間戸谷遡行・からぬた谷(仮称)下降記録
作成者:丸山

■日程 2018/5/4(金)
■山域 南紀
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
 CL丸山 SL木口 久光 迫野

■総評
 入山早々道迷いするというトラブルはあったものの、その後は銘渓中の銘渓である立間戸谷の遡行を極めて順調に楽しむことができた。さらに未知沢のからぬた谷を下降したうえで、大スケールの源助滝ゴルジュを下降することができたため、非常に充実した山行となった。

■ヤマレコ記録
 (https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1457743.html)

■時間(括弧内は計画時の予定)
  6:40(7:00) 出発
  6:52-7:40 道迷い
  8:45(8:10) 遡行開始地点(260m)
  9:02-9:11(8:40) 屏風滝下(丸山・迫野のみ)
  9:24(9:10) 牛鬼滝下
 10:11(10:00) 1つ目の30m滝下
 11:17(11:00) 植林小屋
 12:14 二俣(12:00 奥ノ二俣)
 12:31(12:30) 稜線
 13:14(13:00) 左岸支流(仮称からぬた谷)下降開始
 15:11(14:30) からぬた谷下降終了
 15:30-17:05 源助滝ゴルジュの下降
 17:39(16:00) 帰着

■ルート・周辺概況
 ※遡行図は関西起点100を使用、滝の落差・表記は同資料に基づく。
 ・2日前の大雨の影響が残って増水していたが、遡行・下降に問題はなかった。
 ・駐車スペースは県道上の路肩にあるが、この県道は登山口の南で通行止めとなっているため、和気側から向かう必要がある。県道というより険道である。
 ・駐車スペースの登山口には登山地図が置いてあるのみ。
 ・下和気からの子ノ泊山登山道は「通り抜けできない」と警告されているが、少なくとも立間戸谷入渓点まではしっかりと続いている。見失ったときは、沢の反対側を含めて周囲を探せばよい。
 ・8m斜瀑下から屏風滝への往復は、急げば10分で可能。
 ・牛鬼滝下部のスラブは楽しく直登できる(Ⅲ+)が、上部は難しいらしいので途中から左岸樹林帯に入り巻いた。巻きは容易。
 ・スラブ滝15mは左岸、30m形きれいは右岸から、15m簾状は左岸から、いずれも木の根に頼って容易に巻ける。
 ・7×18mナメ滝はラバーソールの場合快適に直登できるが、フェルトソールでは厳しく、左岸樹林帯の木を掴みながらの登りとなる。
 ・30m釜深いは、左岸リッジから巻くと、素晴らしい絶景が見られる。ただし細いリッジなので滑落は許されない。そのまま4m滝も左岸から巻ける。
 ・植林小屋からしばらくの間は沢が荒れており、4×15mナメ滝は埋没した模様。次の4m滝も判然としない。
 ・源流部のナメは果てしないほどに続き、水涸れの直前まであった。傾斜も急ではなく、非常に快適。
 ・右俣の詰めは傾斜の緩い植林地であり非常に楽でった。
 ・立間戸谷は2級上(関西100)~3級下(さわナビ)とされるが、難しい滝の直登や巻きもないため、2級が妥当であると思う。
 ・詰め上げた先にある公団作業道(未舗装路)は、車が通るには荒れているが、非常に歩きやすい。
 ・今回下降した立間戸谷の支流の名称を記した資料は見当たらなかったが、登山地図に「直営林からぬた」と書かれている附近であることから、「からぬた谷」と仮称した。
 ・からぬた谷の源流にあたる鞍部までは小鹿谷林道(舗装路)が伸びており、普通車でも来られるようである。
 ・からぬた谷上部は水のないゴーロが続く。中ほどに廃屋となった造林小屋があるが、附近に道は確認できない。下部は南紀に特徴的なナメとナメ滝が続き、上流から8m, 1m, 3m, 4m, 2m, 10m, 8m, 12mのナメ滝があるが、いずれも(多くは左岸から)容易に巻ける。
 ・からぬた谷出合より下流の立間戸谷は巨岩帯であるが、それほど難儀するところはなく下降可能。
 ・源助滝ゴルジュ上流には広く開放的なナメが80m程度続き、素晴らしい。
 ・源助滝ゴルジュの下降は、まず3段8m滝上左岸の立ち木から15m程度懸垂下降し、渡渉して右岸に移る。残置支点を利用して下降気味にトラバースし源助滝落口近くの立木まで行き、そこから20m程度の懸垂下降という手順で行うことができる。
 ・源助滝から登山道へと戻る道は判然とせず、適当に下降すれば登山道へと合流する。

■行動記録(敬称略)
 ・入渓まで
  今日は昨日の反省を生かし、早起きして出発。倒木の多い植林地内の道を進んでいくと、左岸に3段150mとされるカラ滝が落ちているのが見える。手前の植林地のせいでよく見えないのは残念。道を進んでいくと、川原に降りたところで道を見失う。そもそも「いたるところで寸断」されている道とのことなので、道が消滅しているのかもしれないと思い適当に上流へ進んだが、これが間違いだった。進んでいくと足濡れ必至となり、沢タビに履き替え。多少進んだところで、分かりにくいとされる右岸斜面への登り口を見逃したかと考え、右岸斜面を登ったが、道は見つからず懸垂下降。どうやら登り始めはもっと上流のようだと思いなおして本流を渡渉して遡上していくと、いつの間にか左岸に移っていた登山道と合流。一安心だが、せっかく朝早く出た分以上の時間を消費してしまった。この登山道は程なくして右岸へと渡渉し、そのあたりから斜面を登り始めた。昔からの径路のようで、かなり歩きやすく、順調に入渓点へと導かれる。
 ・屏風滝往復
  入渓点からゴーロを進むこと10分程度で、屏風滝のある支流の合流点へと至る。既に予定時間より遅れていたので、屏風滝の見たさがそれほどでもない久光と木口にはここで待っていてもらうことにして、丸山と迫野で屏風滝へ向かう。沢は大きめの岩のゴーロだが、特に難所はなく、7分程度で滝下に着く。屏風滝は、それだけでも大変壮麗な滝だが、側壁の屏風嵓によって引き立てられ、数多くの滝がある南紀の山域において、一番の滝であるといっても過言ではない。もっとゆっくりしたいところだが、9分で観瀑を切り上げ、下りにかかる。往路では利用しなかったが、左岸または右岸の渓畔林内に踏跡があり、これを辿って3分で戻ることができた。
 ・連瀑帯
  本格的な遡行の始まりとなる斜滝8mを右岸から巻いて、滝上の綺麗なナメを歩いていくと、牛鬼滝60mが眼前に迫る。要所でお助け紐を出しながら下部スラブを直登(Ⅲ+)し、時間の都合上上部は巻くことにして左岸樹林帯へ入る。自然な巻きで滝上に至ると、すぐにナメが現れ、そのまま15m滝となる。左岸を容易に登って巻くと、直後に30m滝。これは右岸リッジから巻くが、沢床に戻るところが要注意。巻ききると次の15m簾状滝があり、息つく間のない滝の連続に感心する。特にこの滝は、右岸側壁が大変立派で、見栄えが良い。相変わらず容易な巻きで左岸を登ると、間髪を入れずに7×18m滝。直登できそうな傾斜で、ラバーソールの木口はすたすたと登って滝上へ行ってしまったが、フェルトソールでは中盤厳しくなり、丸山は滑って滝壺にドボン。結局フェルトソールの3人は左岸樹林帯に掴まりながら巻き気味に登ったが、迫野は嵌ってお助け紐を要した。こんな様子を見ている木口の勝ち誇ったような笑顔と言ったら…。この滝上はナメが続き、すぐに30mの滝となるが、だんだんと30m級の滝も見飽きてきて、贅沢な��發里任△襦�海梁譴郎鹸潺螢奪犬�藉��鳩平Г�いい畔垢い討い燭里如∩��行図とは逆の左岸から巻く。ある程度登っていくと、急に景色が開け、思わず歓声を上げる。今日遡行してきた立間戸谷が一望にでき、本流の熊野川から、対岸の和歌山県の山々が見通せる。両側が切れ落ちた細いリッジであるという状況も、この眺めを引き立てている。しかし、眺めがいいということは風通しもいいところであり、ナメ滝で落ちて体が濡れた丸山には寒かった。ピンクテープに導かれてこのリッジを離れ、谷筋へと戻っていくところで、やや立木の少ないところがあり、多少怖かったが、問題はなし。そのまま進んでいくと、連瀑帯最後の4m滝も左岸から巻いた。
 ・尾根まで
  連瀑帯の上流はナメがしばらく続いた後、廃屋となった植林小屋が現れてゴーロの沢となる。しかし傾斜は緩いので歩きやすい。休憩も挟みながら40分程度進んでいくと、ついに立間戸谷の見どころの1つ、長いナメが現れる。両岸樹林帯であり、それほど開放的で素晴らしいナメというわけでもないが、それでも永遠に続くかのようなこのナメは、必見である。今回はからぬた谷の下降を予定しているため、遡行図の「二俣」から右俣へ入ったが、それでも終わらないナメ。結局水涸れの直前まで続き、非常に楽な詰めで尾根上の林道(公団作業道)へ出た。
 ・尾根上の林道
  公団作業道は単調ではあるが歩きやすく、サクサクと下ってからぬた谷上部の鞍部へ至る。ここは舗装された広場になっていて、登山地図や登山届投入箱もあり、ここから子ノ泊山に登る人もいるようである。ここで休憩としたが、太陽熱で温まったアスファルトが気持ちよく、寝転がる者もいた。
 ・からぬた谷下降
  からぬた谷の下降は涸れゴーロが続き、水が出てきたかと思ったらまた伏流、というようなことを繰り返す。適当に下っているうちに半分以上を通り過ぎ、地形図にも掲載されている小屋へたどり着く。これも植林小屋だったようだが、建物内部は崩れ落ちて廃屋のにおいが漂い、周辺には多量のごみが散乱している。ごみを山に捨てるのが当たり前だった時代の遺物だろうが、残念なことである。このまま何もなく合流することもあろうかと思ったが、やはりここは南紀、小屋から下ること数分でナメとナメ滝が出始める。中には倒木が釜に落ちていて荒れているものもあったが、多くは小綺麗なナメ滝+釜という景観であり、悪くない。いずれも簡単に巻き降りることができ、最後の12m滝を左岸から巻くと、すぐに立間戸谷へ合流した。
 ・立間戸谷下降
  立間戸谷に降り立つと、巨岩の累積するゴーロであり、スケールの大きい大渓谷へ来たような気分になる。西向きの谷であることから、西日が入って輝き、美しい。巨岩帯のため通れるルートは限られるが、ちゃんと見極めればそれほど苦労すること下れた。巨岩帯が終わると、素晴らしく開放的で美しい滑床が続いて癒された後、いよいよ源助滝ゴルジュの下降に入る。まずは3段8m滝上左岸をトラバースしてから45mロープで懸垂下降し、ゴルジュ内へと入る。そこから、上から見えた残置支点目指して沢を渡渉し、さらに残置支点から源助滝上の立ち木へとロープを出して下降気味にトラバース、最後にその立ち木から30mロープと45mロープを連結して懸垂下降した。久光は渡渉やトラバースで失敗し、濡れたり擦り傷を作ったりと苦労していた。このゴルジュの下降は、うまくいく保証がないという点、失敗が即落命につながりかねないという点で緊張感溢れるものであり、高難度ゴルジュ下降のいい経験になった。
 ・帰着まで
  源助滝を下からもしっかり眺めた後、ロープを片付けて沢を下る。本流はとんでもない巨岩帯となっているので下れず、樹林帯を交えて右岸を巻きながら下っていくと、行きにも通った登山道に合流。登山道を下る過程で、行きには見つけられなかった登山道が、予想以上にしっかりしていたので、それを見つけられなかったことについて恥じ入るばかりである。そのまま登山道を辿って帰るだけだと思ったが、最後に再び登山道を外し、一部で道でない川原を歩いて帰る羽目になった。

■備考・感想
 ・立間戸谷は、登れる大滝、登れない大滝、迫力のある嵓、眺望、癒しのナメを兼ね備え、銘渓中の銘渓。しかも難しくないので、超お薦めである。
 ・からぬた谷は、下部の連瀑帯以外に見どころのない沢。悪場はないので下降沢としては使いやすい。
 ・ラバーソールの沢靴が一層欲しくなった。
 ・殆ど濡れないので冬でも遡行できそうな沢。さすが南紀。
 ・ヤマビルなし。
 ・人との遭遇無し。人気沢のはずだが意外と誰とも会わない。

■反省
 ・廃登山道とはいえ、登山道を見失ったらきちんと探すべきであった。
 ・ロープ連結の懸垂下降の場合のロープワークへの習熟が足りない。

■コメント
 ・CLのルートミスに気付いて欲しかった…