2018/5/5 ヌタハラ谷遡行・赤嵓滝谷下降

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
ヌタハラ谷遡行・赤嵓滝谷下降計画書 ver. 1.0
作成者:丸山
■日程 5/5(土)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 台高
■在京本部設置要請日時 2018/5/5 20:00
■捜索要請日時 2018/5/6 10:00
■メンバー(計4名)
 CL丸山 SL久光 ○迫野 ○谷口

■集合・交通
 5:40に三瀬谷駅にて木口離脱後、丸山車でヌタハラ谷遡行開始点付近へ(70分程度)

■行程(予定時間)
  7:00 出発
  8:00 夫婦滝
 10:00 不動滝
 11:00 ネコ滝
 13:00 P1394南の鞍部
 15:00 赤嵓滝谷下降終了
 16:00 帰着
 (計9:00)
 (https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-526711.html)

■エスケープルート
 夫婦滝まで:引き返すか左岸林道に詰める
 ネコ滝まで:左岸を詰めて旧木馬道で下山
 鞍部まで:桧塚を経由してヌタハラ林道で下山
 それ以降:そのまま進む

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「七日市」「大豆生」
 ヌタハラ谷:関西起点沢登りルート100 p.99 など
 赤嵓滝谷:さわナビ(http://anshade.zone.ne.jp/sawanavi/2008/akakurataki/akakurataki.html)

■共同装備
 ツェルト(チャーリー)
 救急箱(苺)
 8.6mm×30mロープ
 8.6mm×45mロープ
 お助け紐
 ハーケン・カム
 ハンマー(ロカ)
 ハンマー(チコ)
 アッセンダー

■遭難対策費
 100円×4人
 計400円

■備考
 日の出(5/5)5:02
 日の入(5/5)18:43
 松阪警察署0598-53-0110

ヌタハラ谷遡行記録
作成者:丸山

■日程 2018/5/5(土)
■山域 台高
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
 CL丸山 谷口 SL久光 迫野

■総評
 ヌタハラ谷は台高屈指の銘渓ということで期待して行ったが、残念ながら飽きの来る沢であり、不動滝の巻きに失敗して行程を完遂できなかったこともあって、不満足感の残る一日となった。とはいえ不動滝と奥峰滝は間違いなく名瀑であり、これらを見ることができたのは良かった。

■ヤマレコ記録
 (https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1457728.html)

■時間(括弧内は計画時の予定)
  7:13(7:00) 出発
  8:46-11:56(8:00) 不動滝(夫婦滝)
 12:59-13:29(10:00) 奥峰滝(不動滝)
 14:09 1160m二俣 (11:00 2段40m滝) 
 15:30-45 ヌタハラ作業道終点
 16:32(16:00) 帰着

■ルート・周辺概況
 ※遡行図は関西起点100を使用、滝の落差・表記は同資料を参考にした。ただし、この遡行図には間違いが多い(下記)。
 【遡行図の間違い】(左が誤、右が正)
 無名12m滝→夫婦滝
 夫婦滝→不動滝
 不動滝→奥峰滝
 コウ七滝(正しくはコウセ滝/コウセン滝)、ネコ滝、アザミ滝→これらの滝については諸説あり、どの滝か不明。
 1つ目の「大きい枝谷」→1160二俣
 1160二俣(2:1)→1300二俣?
 桧塚→桧塚奥峰
 桧塚奥峰→1390m台のピーク
 「林道終点へ」の「旧木馬道」→林道終点へは繋がっていない
 ※滝名に関しては、下記のウェブページに従った。
 (http://amaimonoko.at-ninja.jp/s-mtdata/ki/nutahara.htm)
 【概況】
 ・ヌタハラ谷出合までの林道は未舗装だが、普通車で問題ない。路肩に駐車可能。
 ・出合から分岐するヌタハラ作業道にもゲートはないが、2輪駆動の普通車での進入は厳しそうである。
 ・ヌタハラ谷出合のすぐ上流にあるゴルジュは杣道で巻くのが一般的だが、ここを遡行しても面白そうである。
 ・谷の前半は石灰岩が多く、白くて造形も面白い。湧水、ナメ、小滝が連続して現れ飽きない。
 ・6m滝にあったとされる残置ロープは見当たらなかったが、容易であり問題はない。
 ・続く12m滝は2条の滝であり、片方の水量が多く片方が少ないため、これが夫婦滝であると考えられる。右壁を登れる(Ⅲ)。
 ・その先の2つの5m滝は、遡行図では左岸巻きが案内されているが、1つ目を右岸から巻き、2つ目の釜をへつって右壁を直登(Ⅲ+)すると面白い。
 ・不動滝の下段は山抜けにより下部が埋まっており、落差15m程度となっていて、左壁から取り付いて直登可能(Ⅲ+)。
 ・不動滝の上段は右岸からも巻けるが、ロープが欲しい巻き(Ⅲ)となるので、定跡どおり左岸から巻く方が楽と思われる。
 ・不動滝以降、大きい滝以外はやや平凡。
 ・奥峰滝の巻きは、左岸に明瞭な踏み跡があり容易。
 ・この踏み跡を東方向へ辿っていくと植林地に入るが、途中で踏み跡は不明瞭になる。それでも下り気味にトラバースを続けていけばヌタハラ作業道終点へエスケープできる。途中山抜けした谷を横断するが、特に問題はない。
 ・ヌタハラ作業道は現役の作業道で、林業現場の雰囲気が強い。勿論歩きやすい。

■行動記録(敬称略)
 ・湧水まで
  作業道ヌタハラ線の分岐の少し手前の路肩に車を駐車し、早朝のため寒いが入渓準備。連日の疲れもあってそれほど準備は捗らず、予定より13分遅れて出発。ヌタハラ谷を左に見ながら林道を進み、さらに杣道へと入るが、この辺りもゴルジュが続いていて面白そうで、巻くのは勿体ないと思う。杣道はまだ続いているが入渓が待ちきれなくなり、3m滝手前で入渓。石灰岩主体の小綺麗なゴルジュで、なかなかの癒しの渓相。このゴルジュが終わって10分程度で大岩にかかる2条5m。この滝は意外と越えにくいが、大岩の右側から倒木伝いに登った。滝上では、遡行図にもある湧水があり、水を飲んでから汲む。水が石灰岩の穴の中から出ているので、「鍾乳洞か?」と思って近づいてみたが、人が入れるような穴ではなかった。
 ・不動滝下段まで
  その先は飽きない程度にナメや小滝が現れ、遡行感は良い。途中の2連続5m滝は、いかにも容易そうな左岸巻きを避け、1つ目は小さく右岸を巻いたが、やや悪い。2つ目は、面白いへつりを経て右壁を登り(Ⅲ+)、後続にはお助け紐を出した。巻くよりは充実する。この先では沢中にやたらと倒木が増え、何事かと思っていると、非常に大規模な崩壊(山抜け)の跡地が出現。面倒な思いをして越えると、眼前に不動滝下段が現れたが、35mとされる割になんだか小さい。15mくらいしかないのではないか。どうやら、山抜けにより下部は埋まったようである(実際そうであり、2006年の写真では、現在埋まっている部分も滝となっている:下記URL)。この小ささなら直登できそうと判断し、丸山が右岸壁を登って(Ⅲ+)後続をお助け紐で上げ、流心へとトラバースして直登成功。
  (http://anshade.zone.ne.jp/sawanavi/2006/nutaharatani/nutaharatani.htm)
 ・不動滝上段
  下段上から見える上段はなかなかの見ごたえ十分の大滝である。わざわざこの滝を見に来る滝屋がいるというのも頷ける。中段を容易に登って上段直下に至り、巻き方を考えるが、遡行図とは逆の右岸巻きが容易そうに見える。ということで丸山が右岸壁に取り付いたが、ぼろぼろで思いのほか悪く、詰まってセミになる。その間に谷口が滝近くで容易な巻き方を発見したため、久光がもう1本のロープでリードして上部に至り、セカンドで登った迫野にロープを上から投げてもらって事なきを得る。結局、下から容易に見えた壁はⅤ以上あった。谷口がラストで上がり、これで不動滝の巻きの核心は終わりかと思いきや、小尾根状を登っていくと岩壁に阻まれる。再度45mロープを出して丸山がリードし、40m程度巻き気味に、モンキークライムを挟みながら登っていく(Ⅲ)と、無事に巻き終えた。沢床に戻る際は念のため懸垂下降。この巻きに時間がかかりすぎたため、予定より3時間遅れとなり、この時点で全行程の遂行は厳しくなった。
 ・奥峰滝まで
  不動滝の上部は割合単調なゴーロとなり、いくつか現れる小滝も登れないか、登り応えのないものばかりであって、飽きが来る。沢の傾斜も緩くはなく、登り疲れたころに現れたのは、圧倒的な落差を持つ奥峰滝。不動滝ではないらしいし、言うまでもなく高幡不動やピナイサーラではない。ナメ滝状となっている下部と上部に対し、中部では水が宙を落ちるというコントラストが面白く、素晴らしい滝。気を良くして暫し休憩し、今度は定跡どおりに左岸斜面を登っていくと、明瞭な踏み跡出現。高度感があって少し怖いところもあるが、これを追っていくだけで巻き完了、容易。
 ・1160二俣まで
  既に全行程の遂行は諦めていたため、どこでどのようにエスケープしようか悩むが、とりあえず進んでみる。踏み跡もいつしか消え、沢を進むが、ところどころに小さいナメがある程度の平凡な沢。傾斜が緩いので楽なのは救い。1160m二俣まで進んだところで、遡行図で「コウセ滝」や「ネコ滝」とされる滝が見えたが、パッとしない。3日連続遡行による疲れや、明日の蛇谷があることも考え、遡行図にある旧木馬道を頼ってエスケープすることに決定。左岸斜面にあるはずなので探しながらトラバース気味に戻ったが、結局見つからず、途中からは単純に沢下降をする。結局旧木馬道は見つからないので、奥峰滝の巻道が林道終点へと導いてくれることを期待して、奥峰滝上まで戻る。
 ・林道終点まで
  奥峰滝の巻道から東側へ続く径路にはサングラスが落ちていて、確かに人の通う路であることが確かめられる。これに勇気づけてそのまま進んでいくと、植林地に入り、急に道も立派になる。これで楽な下山は約束されたかと思ったが、この道を辿って下っていくと、いつの間にか不明瞭になってしまう。林道終点と繋がっているのは径路の上側かもしれないことを考え、登り返す選択肢もあったが、GPS頼みの植林地トラバースを選択。標高を少しずつ下げながらトラバースしていくと、急に前方が明るくなり、何事かと思っていると、不動滝下段を埋めた元凶である、山抜けの跡地だった。遠目には通過が厳しそうであったが、近づいてみると案外与しやすく、問題なく横断することができた。それにしてもこの崩壊地はこれまで見た中でも最大の規模であった。以降は、植林地トラバースを続けること少々で、作業道終点にドンピシャで出た。ここで沢装備を外し、暫し休憩。
 ・下山
  ヌタハラ作業道はいかにも現役の林道で、途中には皆伐の現場が散見される。こんな奥地で林業なんてやって、採算がとれるのかどうかと、余計な心配をしてしまう。雑談しながら下ること約45分で、車に戻った。
 ・下山後
  松阪名物のB級グルメである鶏焼きを、有名店らしい「前島食堂」で堪能。18時という微妙な時間に閉店するため、直前の滑り込みであり、無いメニューもあったが、非常に美味で再訪したいと感じた。その後同市内の銭湯「花岡温泉」で入浴。なんでも昭和36年創業当時からの建物を使っているらしく、激渋(誉め言葉)。熱い薪風呂と温かい接客で身も心も温まって、石榑峠へ向かった。

■備考・感想
 ・ヌタハラ谷は、関西100の本に、「遡るものを有頂天にさせること請け合い」と書いてある。1160二俣まででこの沢の見所は殆ど遡行したはずだが、それほどの魅力はないと感じた。
 ・2つの大滝は圧巻だが、不動滝以降の部分には平凡さを感じ、今一つ魅力に欠ける。どちらかというと滝見に行く沢という印象。
 ・ヌタハラ作業道には、「ぬたわら」と振り仮名があったので、ヌタハラ谷も「ぬたわら」と読むと思われる。
 ・泳げるが、その必要はなく、春・秋も遡行可能。
 ・ヤマビルなし。ただしこの辺に生息はしているらしい。
 ・山中での人との遭遇なし。しかし下山後に片付けをしていたら、林道を車が通った。すぐに引き返していったので、一体何の目的でこんな奥地まで入ってきたのか不明。
 ・予定の行程を完遂できなかったのは残念だった。
 ・連続3日目の沢は割とつらい。

■反省
 ・不動滝上段側壁の登攀難易度を見誤って取り付き、セミになったこと。もっと慎重であるべき。
 ・不動滝上段で右岸巻きを選択した結果、2ピッチのロープが必要な巻きとなり、時間がかかったこと。定跡をあえて外す必要はなかった。

■コメント
 ・CLやSLでなくても、各自ダイレクトビレイを習得しましょう。それにより、2本のロープがある場合に並行しての登攀が可能となり、時間短縮になる。また、ATCを購入する際はガイド機能のあるものにすること。