2018/6/9 大持沢遡行・小持沢下降

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
大持沢遡行・小持沢下降計画書 ver. 1.0
作成者:丸山

■日程 6/9(土)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 奥武蔵
■在京本部設置要請日時 2018/6/9 20:00
■捜索要請日時 2018/6/10 10:00
■メンバー(計4名)
 CL丸山 SL久光 大久保 鶴田(八ヶ岳中止の場合のみ参加)

■アプローチ
 武蔵横手駅前ロータリーに6:48集合、丸山車で入渓点附近へ(45分程度)

■行程(予定時間)
  8:10 出発
  9:30 7m滝下
 11:10 最終ゴルジュ上
 11:50 大持沢遡行終了
 15:00 小持沢下降終了
 (計6:50)
 (https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-560853.html)

■エスケープルート
 大持沢:引き返すか、仕事路で下山
 稜線付近:登山道で下山
 小持沢:そのまま進むか、仕事路で下山

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「秩父」
 山と高原地図「奥武蔵・秩父」
 遡行図:東京付近の沢p.242

■共同装備
 ツェルト(チャーリー)
 救急箱(苺)
 8.6mm×30mロープ
 ハンマー(ロカ)
 アッセンダー
 お助け紐

■遭難対策費
 100円×4人
 計400円

■備考
 日の入(6/9)19:00
 秩父警察署  0494-24-0110

大持沢右俣遡行・小持沢左俣下降記録
作成者:丸山

■日程 2018/6/9(土)
■山域 奥武蔵
■天候 晴れのち曇り
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
 CL丸山(35)、大久保(40)、鶴田(40)、SL久光(34)

■総評
 新人2人を迎えた初心者向け沢山行としての企画であったが、情報のない右俣に入ったところ登り応えのある滝があり、さらに詰めも手間取ったため時間がかかった。初回としては厳しめの山行になってしまったが、沢のいろいろな面を感じ取ってもらえたと思う。沢自体は、アプローチも下山も殆どなく、沢ばかりを歩ける好ルートであった。

■ヤマレコ記録
 (https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1495595.html)

■時間(括弧内は計画時の予定)
  8:23(8:10) 出発
  9:40-9:45(9:30) 7m滝下
 11:18(11:10) 最終ゴルジュ上
 13:47-53(11:50) 分水界尾根に出る(大持沢遡行終了)
 17:06(15:00) 小持沢下降終了
 17:08 帰着

■ルート・周辺概況
 ※遡行図は東京付近の沢(1994)を使用したが、現状とは大きく異なっていたため新たに作成した。
 ・入渓点附近にトイレはないが、生川沿いのセメント工場の脇に登山者用トイレあり。
 ・途中から未舗装になるが、小持沢の出合までは車で入れる。路肩に駐車可能。その先は一応通行止めだが、ゲートはない。
 ・「東京付近の沢」の大持沢の遡行図は、滝の落差を過大評価している。遡行図の7m滝は実際は5m程度、2段10m滝は6m程度であった。
 ・大持沢入渓後数分で最初に現れる595m附近Y字状CS3m滝の直登は厳しいが、左から容易に巻ける。
 ・610mの3mナメ滝はスタンスが乏しくⅢ+。右に残置ロープがあり巻ける。
 ・その後暫くはゴーロと小ナメ、Ⅱ程度以下の小滝が続く。710m二俣は1:3。750m附近にL=5m程度のトロもあるが、太腿程度の深さ。
 ・830m附近で、出合からずっと沢沿いに並行していた径路が沢を離れ、左岸斜面を登っていく。
 ・やや倒木の多いゴーロや小ナメを越えていくと、910mでゴルジュとなり、3m滝(Ⅱ)、3m滝(Ⅱ-)、2段6m滝(水線Ⅲ)がある。最後の2段6m滝は水線も直登できるし、右の岩穴を登っても良い。
 ・ゴルジュ上は930m二俣(左4:右1)である。どちらも苔生したゴーロ。
 ・ここを右に入るとすぐに伏流となるが、少し登ると水は復活し、990mで核心的な8m滝(Ⅲ+)がある。右から巻くこともできる。
 ・8m滝上で水は涸れ、詰めの開始。少し登ると1050m附近で仕事路があるが、ここを右へ行っても不明瞭となる。左がどこへ通じているかは不明。仕事路を無視して登れば、大持沢と小持沢の間の尾根に出る。
 ・大持沢と小持沢の間の尾根には径路があるが、分岐が多い。径路に従って下り、標高1000m附近の十字路を左へ行くと小持沢の源頭1000m附近に至る(右は大持沢830m附近へ向かうようが、直進は不明)。ここには潰れた小屋がある。このあたりの径路は比較的歩きやすい。
 ・小持沢左俣は970m附近から水が出ているが、1010m附近にゴルジュがあり、小難しい(Ⅳ+)涸棚がある。更に上流にも涸棚が続いている。
 ・ゴーロを下ると900m附近で4m滝があり、その下は小ゴルジュ。すぐに3m滝がありゴルジュを抜ける。どちらもクライムダウン可能。
 ・倒木多めの沢を下ると、810m附近で二俣。右俣は3m樋状ナメ滝で出合う。
 ・二俣から690m附近まで凡流。踏み跡があり歩きやすい。途中、伏流箇所やインゼルがある。
 ・690m附近から、3m滝(小さく右岸巻き)、6m滝2つ(まとめて左岸巻き)がある。この6m滝2つの直登は難しそうだが、挑戦しがいはあるかもしれない。
 ・640m附近10×15mナメ滝は水流の脇をクライムダウン可能。その下は巨岩帯となるが、まとめて右岸を巻ける。巨岩帯の中には上から順に2m,2m,6m滝があるが、いずれも直登は難しそうである。6m滝は岩潜りで突破することもできるらしい。
 ・巨岩帯が終わると凡流となり、右岸踏み跡を歩いて堰堤を2つ巻くと林道に出る。

■行動記録(敬称略)
 ・駐車スペースまで
  鶴田が遅れ、1時間に2本しかない飯能以遠の列車を逃したため、丸山が飯能まで迎えに行って合流。このような対応ができるのも車アプローチの強みである。山行前にトイレに寄っておきたかったので、西善寺附近にある公衆トイレにわざわざ寄ったが、生川沿いにも登山者用トイレがあったので、その必要はなかった。生川沿いはセメント工場が立ち並び、異様な景観。工場に迷い込んだかのよう。工場が終わると急に山道になり、進んでいくと未舗装になるが、走行に問題はなく、林道の丁字路路肩に駐車。
 ・入渓まで
  初めてということもあり、ハーネスの誤装着などもあったが、ちゃんと出発前に気づき、軽くブリーフィングをしてから、林道をほんの少し歩くと、大持沢に出合う。左岸の踏み跡を辿って堰堤を1つ巻いたところで、踏み跡に従って入渓。正面の大岩が印象的。まずは沢歩きから慣れてもらう。
 ・3mナメ滝まで
  程なくしてY字状CS3m滝があり、丸山がフリーで登ろうとしたが、難しく、左から小さく巻く。4分ほどで今度は3mナメ滝。右に残置ロープがあるのが見えるが、これに頼っては面白くないので、まずは丸山が水線を直登。スタンスが殆ど無いので結構難しい。お助け紐を出して鶴田と大久保に上がってもらうが、初っ端から大苦戦。久光に押し上げてもらったり、お助け紐を目一杯引いたりしてなんとか登る。それでも、楽しかったようなので良かった。
 ・5m瀞まで
  暫くゴーロが続いてから、そこそこ綺麗なナメと小釜を越え、続く3段5m滝では一応お助け紐を出す。突っ張ると楽な滝だが、突っ張りに自身が持てず苦労したようである。その先左から顕著な枝沢が合流してきたので、軽く読図講習。その後、東京付近の沢の遡行図に7m滝として記される5mナメ滝。前半の核心かと思っていたが、階段状で易しく(Ⅱ-)、全員フリー登攀。その後ゴルジュ状の部分に5m程度の瀞が現れ、小さいながら瀞もある沢なんだと感心。へつりを楽しみたいところだったが、足がかりがなく無理。
 ・2段6m滝まで
  その後もいくつか小滝やゴーロを越え、沢沿いに続いてきた径路が沢を離れるのを見送る。その先の3×8mナメ滝はそこそこ綺麗。あとは大したものもなく進んでいくと、この沢の核心とされるゴルジュに至る。最初の2つの3m滝はなんの問題もなく越え、最後の2段6m滝。ここはロープを出す。右の岩穴を抜けるルートが一般的なようだが、ここはシャワークライムを楽しんでもらうことにして、丸山が水線をリード。続いて大久保、鶴田がアッセンダーで順に登攀したが、苦戦。滑ったりロープを引いたりして、時間はかかったが何とか登りきった。
 ・右俣8m滝まで
  ゴルジュ上の二俣は左へ入るのが一般的だが、小持沢方面へ登りたいため、右へ入る。すぐに水が伏流してがっかりさせられるが、しばらくするとまた水が出てきて、ナメ状となり、悪くはない。そうこうして登っていると、眼前に壁のような8m滝出現。本日の新たな核心となりそうな気配を漂わせている。登れそうではあるので、まずは久光がリードして左壁から登る。次いで大久保がアッセンダーで登ろうとするが、どうしても登れない。見かねた久光が巻きルートを探りつつ降りてきて、大久保は巻くことにする。今度は丸山がアッセンダーで登って、鶴田をトップロープで上げようとする。鶴田もかなり苦戦したが、上からロープで引かれていることもあり、何とか登りきった。暫くして久光と大久保もこの滝を巻き終え、この滝終了。この滝だけで1時間はかかった。
 ・分水界尾根まで
  滝上で水は涸れ、詰めの様相。と思っていたが、少し登っただけで仕事路があり、ラッキー。小持沢方面の右へ進んでいくが、段々と不明瞭になり、しかも違う方向へ下っていくので、怪しみ始める。都合のいいところに山仕事の人がいたため、小持沢への行き方を尋ねてみると、やはりこの踏み跡ではないようで、尾根まで詰めるしかないとのこと、残念。ということで、植林地をガンガン登り、小尾根へ出る。さらに登らないと分水界尾根には着かないようだったが、それも大変なので、トラバースして登る高さを減らそうとする。だが、鶴田が斜面で滑り、高さ2m程度滑落して立木で停止。やはりトラバースは危険ということで、お助け紐を出して小尾根に戻り、素直にこれを登って分水界尾根に至る。
 ・小持沢入渓まで
  多少休憩後、分水界尾根に出た時点で2時間程度遅れていたため、エスケープするか協議したが、更にこれ以上登るのも大変であり、この尾根上には仕事路がはっきりしていることから、とりあえずこの尾根を路に従って下る。少し下ったところで交差点があり、右は大持沢、左は小持沢、正面はどこか分からない場所に通じているようである。ここはひとまず、本来の下降沢でもあり、エスケープできる登山道も近づく小持沢方面を選択。思ったよりちゃんとした径路で、橋などもしっかり架かっている。進んでいくと、水はないが小持沢の源頭部に至り、潰れた小屋がある。この上流に、水無しのゴルジュとCS小滝があったので、丸山は登ってみたが、割と面白かった。ここから更に径路を進んでから、結局沢下降を選択し、水流も現れだした小持沢左俣ヘ下降。
 ・小持沢左俣
  小持沢左俣を下降し始めて程なく、小ゴルジュへと落ちる4m滝。クライムダウンできなくもなさそうだが、ここを逃すと練習の機会を逃しそうなので、左岸からの懸垂下降を選択。懸垂下降は2人とも問題なかった。続く3m滝をクライムダウンして小ゴルジュを抜け、いくつかの小滝を巻いたりクライムダウンすると、左岸に大岩壁を見上げる。その岩壁が切れたところで、右俣が小滝で出合う。
 ・小持沢
  二俣から先は沢の傾斜が緩み、長いゴーロとなるが、薄い踏み跡状があって、渓畔林は比較的歩きやすい。どんどん下っていくと、右岸に炭窯を発見。珍しく陥没しておらず、まだ使えそうな雰囲気。感心して、炭窯の意義などを語る。その後インゼルを経て、右岸から涸れ沢が入ると、滝場。まず3m滝を小さく右岸から巻くと、すぐに6mの狭い滝があり、直下降不能。次の6m滝と合わせて左岸から巻く。この辺りは巨岩のゴーロ状で、ちょっとだけ沢のスケールが大きい。その先では10×15mナメ滝があり、赤っぽい岩の混ざり具合がなかなか綺麗。その後もゴーロの合間を縫うようにして下っていくと、岩間滝があり、直下降は難しく、右岸踏み跡から巻くが、やや高度感あり。これを終えるともう小持沢には何もなく、はっきりしてきた踏み跡を辿って堰堤を2つ巻き、林道に降り立つ。
 ・下山後
  復路の車の中で、大久保は足をブヨらしきものにやられていることに気づいた。大したものではないと思い放っておいてしまったが、後で腫れ、受診したとのこと。沢タビの中になっている部分がやられていたため、下山後に着替えていたときにやられた可能性もある。

■備考・感想
 ・大持沢はまずまずの沢で、初心者向けの沢として使える。結構登れそうなら右俣へ、そうでもなさそうなら左俣へ行けばよい。
 ・小持沢は、遡行した場合、水がなくなってすぐに仕事路が横切るので、非常に都合が良い。ただし、中間部のゴーロが長いので微妙な沢。
 ・白い石灰岩が割と美しい。
 ・真夏に行くには水が少ない。
 ・ヤマビルなし。
 ・例のごとく派手なオオセンチコガネを見かけた。
 ・珍しく、沢中で十数名の団体遡行者と出会った。マイナーな沢かと思っていたが意外。
 ・割と変化のある沢で、1級の沢としてはつまらない方ではないと感じた。

■コメント
 ・大変お疲れ様でした。余裕を持って楽しむことができなかったかもしれませんが、これに懲りずにまたぜひ沢に来てください。杉山も記録(raicho 12825)に書いていたけど、慣れが重要です。
 ・遅刻するときはできるだけ早く、参加者全員に伝えましょう。
 ・車アプローチのときは、着替えなど、山中で不要なものは車に置いておきましょう。

■反省
 ・ごく短い距離とはいえ、初心者連れで未知沢の遡行をしたのは良くなかった。時間が予定よりかかったのはこの部分だけである。
 ・道のない斜面のトラバースは、山慣れない人にさせるべきではない。
 ・登攀力に不安がある場合、アッセンダーよりもTRの方がいい。
 ・丸山や久光のような、初級の沢には熟練しているようなCL&SLであれば初心者を安全に沢に連れていけると思っていたが、むしろ実力差がありすぎて、危険を過小評価してしまうという問題を感じた。初沢の人を連れて行くときは、可能であれば初級者レベルの人も一緒に行くのがいいかもしれない。
 ・大久保がブヨにやられたことに気づいた時点で、救急箱のポイズンリムーバを使用するべきであった。お守りとして持ち歩いているだけでは意味がない。また、着替え時は特に無防備になるため、虫には気をつけたほうがいいかもしれない。