2018/6/17 シンナソー遡行・ヒヤマゴ下降

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
シンナソー遡行・ヒヤマゴ下降計画書 ver. 1.0
作成者:久光

■日程 6/17(日)(荒天の場合中止、前日19時までに判断)
■山域 奥多摩
■在京本部設置要請日時2018/6/17 20:00
■捜索要請日時2018/6/18 7:00
■メンバー(計4名)
 CL久光 SL杉山 梶原 鶴田

■集合・交通
 入間市駅6:10or武蔵五日市駅7:05集合
 武蔵五日市駅より入渓点先の駐車スペースまで約30分

■行程
  8:00 駐車スペース
  8:10 入渓点
  9:20 狭隘部出口
  9:35-9:50 5m滝
 10:40-11:20 3段15m滝
 12:05 二俣
 12:30 藤倉尾根
 15:00 駐車スペース
 ※下山はヒヤマゴ経由。ただし、二俣着が14:00を過ぎた場合、あるいはメンバーの疲労状況や山域の荒れ具合からヒヤマゴ下降を断念する場合は、シンナソー左岸尾根経由で下山。
 ※藤倉尾根は現在工事中とのこと。
 ※コースタイムは「東京起点の沢120」p.32及び山と高原地図による

■エスケープルート
 狭隘部出口まで:引き返す
 狭隘部出口から二俣まで:藤倉尾根へ
 源頭部周辺:浅間尾根から数馬もしくは笹久保へ
 ヒヤマゴ沢:藤倉尾根へ、もしくはそのまま下る
 シンナソー左岸尾根:そのまま下る

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「猪丸」
 遡行図:関東起点沢登りルート100 p.32

■共同装備
 ツェルト(アルファ)
 救急箱(エーデルワイス)
 8.6mm×30mロープ
 お助け紐
 アッセンダー

■遭難対策費
 100円×4人
 計400円

■備考
 檜原村 日の出(6/17)4:27
 檜原村 日の入(6/17)19:02
 五日市警察署 042-595-0110

シンナソー遡行・ヒヤマゴ沢下降記録
■作成: 久光
■日程: 2018/6/17(日)
■山域: 奥多摩
■天候: 曇時々雨
■メンバー: CL久光 SL杉山 梶原 鶴田

■行動記録
8:00 駐車スペース
8:10 入渓点
9:20 狭隘部出口
9:35-9:50 5m滝
10:40-11:20 3段15m滝
12:05 二俣
12:30 藤倉尾根
15:00 駐車スペース

■概要
・シンナソーは過去の雷鳥記録で酷評されてきた曰く付きの沢である(参照:2002年記録 http://www.geocities.jp/raicho_hp/itiran/sawa2002/02shinnaso.html )。OBから直接悪評を聞いたこともあり、その変わった名前もあって以前より気になっていた。今回は、初心者二人を連れていけて、かつ杉山のCL訓練もできそうな沢ということで行き先に選んだ。行ってみた結果は、予想をよい意味で裏切る好印象の沢だった。
・3段10mは水線を直登(III)。30mロープ使用。支点は右岸を上がったところにある立ち木。
・5m滝は左から直登。梶原・鶴田にはお助け紐を出した。
・3段15mは水線を直登(III)。30mロープ使用。支点は右岸を上がったところにある立ち木。
・ツメは楽な部類。左股から沢形を忠実にたどれば、踏み跡経由で藤倉尾根の登山道に出られる。
・ヒヤマゴ沢下降は右股の最上部から沢形を降りていく。上流はやや倒木が多い。滝は概ねクライムダウン可。最上部の一ヶ所のみ懸垂した(ただしこれも下から見ると小滝群だったのでおそらくクライムダウン可)。

■記録
6時10分に入間市駅集合。久光車で入渓点へ向かう。途中鶴田さんが酔ってしまったこともあり、道沿いの休憩スペースで20分ほど休む。8時過ぎに入渓点のある藤倉集落着。
入渓点付近は集落内の狭い道になっており路駐不可のため、300mばかり行き過ぎたところに駐車した。路端の空地で入渓準備を行う。

シンナソーは藤倉集落からみて北秋川対岸にあるため、まず北秋川に下りる。川沿いの道路に設けられているすれ違いスペースの端から下れるが、足場が悪いので念のため鶴田にはお助け紐を出した。しかしここでハプニング発生。お助け紐の先につけていた環付きが、強くロックしすぎたせいか開かない。5分ほど試行錯誤しても同じなので、仕方なく開かない環付きを鶴田のハーネスに残したまま、お助け紐をほどき別の環付きに付け替えた。

気を取り直して入渓。オーダーは久光-鶴田-梶原-杉山。シンナソーは北秋川の対岸に小滝を掛けて流れ落ちている。北秋川を渡って取りつく。北秋川は深くてもふくらはぎ程度の水量で、特に問題なく渡れる。シンナソーは今朝までの雨のせいか、写真で見たより水量は多い気がする。

北秋川にかかる最初の小滝は一年生二人に念のためお助け紐を出す。小滝の上は早速遡行図でいう「狭隘部」で、狭いプチゴルジュの底を細流が流れている。両手の届くような狭い部分や小滝が次々に現れ、興味深い。小滝では必要に応じて一年生にお助けを出した。途中、二人組のパーティーが来たので抜いてもらう。

狭隘部最後の3段10m滝は、実際には7m程度と思われる。練習も兼ねて、杉山にリードしてもらった。特に難なく登ったものの、適当な木がなく支点探しに苦労した模様。右岸の微妙な斜面を数m上がったところの立ち木でビレイしていた。中段がツルツルだが、高さはないので特に問題はない(III)。なお先行パーティは右から巻いていた。

3段10mを過ぎると一度沢は一旦伏流する。しかし伏流区間はそれほど長くなく、程なく元のような渓相に戻る。
2条3mの小滝を越えると5m滝。左から直登。ガバガバで簡単に登れる(II)。念のため一年生二人にはお助け紐を出す。

5m滝上も小滝がいくつかあるが、いずれも特に問題はない。しばらく行くと正面に存在感のある3段15m滝が現れる。実際はそれほど高くなく、10m程度。杉山リードで登ってもらう。滝は上段が立っているものの、ホールドは豊富で難しくない(III)。支点は右岸の木だが、ここも微妙な斜面を少し登る必要がある。全員苦労せずに越えたあと、杉山はビレイ地点から懸垂で降りてきた。

3段15m滝を過ぎれば沢も終盤になる。程なくして二俣。両側から細流がチョロチョロと流れている。予定では右に行けばシンナソー左岸尾根経由のエスケープ、左に行けばヒヤマゴ沢の下降になる。もともとは余程余裕がなければ左岸尾根経由でエスケープしようと考えていたが、予定より1時間近く巻けている。一年生二人にどちらに行きたいか尋ねたところ、二人とも「沢下降がいいです」とのこと。よい心意気である。希望通り左股に進む。

左に進むと間もなく水は涸れる。二俣奥にも二度分岐があるが、いずれも左に進む。沢形を忠実にたどると踏み跡が横切るので、これを利用しつつツメると、特に苦労せず藤倉尾根に出た。ザレてもガレてもおらず高低差も小さいのでツメとしてはかなり楽な部類。藤倉尾根は下方を見ると痩せ尾根になっていたので、早くツメ過ぎると苦労するだろう。

藤倉尾根を上がって道標のあるところで休憩。そのまま踏み跡を利用しつつトラバースし、小尾根を越えるとヒヤマゴ沢本流の沢形に入れる。ここからは杉山-梶原-鶴田-久光の順にオーダー変更。この辺りの勾配は比較的急だが、それでも初心者が歩ける程度。100mほど下ったところで右の支沢から水が出てきた。前情報通りやや倒木が多いものの、そこまで歩きにくくはない。

標高700m辺りで滝が出てくる。「東京付近の沢」遡行図の「F5 10m」と思われる。杉山によれば下の方が分からず下りるのは難しそうとのこと。巻きも厳しそうなので懸垂とする。降りて下から見てみると、果たして簡単な多段滝(6m程度)で、普通にクライムダウンできたようだ。

遡行図上にある「二俣」は見落としてしまったらしい。その後も「10m滝」がいくつかあることになっているが、何れもせいぜい5~6m程度の多段滝。いくつかの滝では一年生にお助け紐を出したが、概ね簡単にクライムダウンできる。渓相は全体的にシンナソーよりは平凡だが、ナメやプチゴルジュがそれなりの頻度で現れるため退屈はしない。水が少なく、歩くと水が濁るのは難点。

やがて左岸に貯水タンクが現れると堰堤が出現する。左岸には集落からと思われる登山道並みの作業道がついている。道を辿っていくともう一つ堰堤を高く巻き、そのままワサビ田跡を経て、案の定集落近くの広場に出た。これにて下降終了。

広場で装備解除。懸案の環が開かなくなった環付きは、杉山が(なぜか)持っていたペンチで開けることができた。10分ほど歩いて車に戻り、着替えて帰途につく。帰りも行きと同じく入間市駅で解散した。

※滝名は「東京起点沢登りルート120」(シンナソー)、「東京付近の沢」(ヒヤマゴ沢)に従う。

■反省・備考
・個装・共装ともに装備が問題なレベルに老朽化している。今回は問題なかったが、環付きが開かない等のトラブルは、場面によってはシビアな状況に繋がりかねない。また共装のハーネスも古く、命を預けるには心許ない状態。個装を買い換えるのは当然として、共装も更新が必要だと思う。
・2002年の雷鳥隊がツメで苦労したのは、早めにツメ過ぎたのが原因と思われる。藤倉尾根は痩せ尾根だが、その側方を無理矢理登ったのであればそれは苦労するだろう。地形図でも分かる通り、沢形をたどればツメは特にキツくない。

■感想
・シンナソーは、期待が低かったのを引いたとしても、予想よりはるかによい沢だった。トイ状に水の流れるプチゴルジュや小滝が連続して飽きがこない。滝はいずれも初心者でも登れるが、中級者でもそれなりには楽しめる。ツメも楽。さらに、入渓点近くにバス停があるので公共交通でのアクセスも容易。初心者を連れていける東京近郊の日帰り沢という観点では、かなり良い選択肢だと思われる。見直されるべきだろう。ただし、水が少ないのと流程が短すぎるのはマイナス点。
・ヒヤマゴ沢も前情報ほど悪くなかった。倒木はそれなりに多いが、特に困難な場所もなく、小滝やプチゴルジュをそれなりに楽しめる。藤倉尾根は通行止なこともあり、シンナソーからの下降路にはちょうどよいと思われる。
・今回の水量は恐らく平時よりは多めだったが、それでも前情報通り、人一人歩くと水が濁る程度しかない。したがって暑い日に行くのはお勧めできない。梅雨や秋雨のように、雨が続き肌寒いような時期に、多少増水しているのを狙って行くのがちょうどよいと思われる。
・のちの倉沢谷の際、鶴田さんに「これまで参加した沢(大持沢・シンナソー・倉沢谷)でどこが一番良かったか」と聞いたところ、意外なことにシンナソーとの答えが返ってきた。曰く、自力で登れる程度の滝が連続して楽しかったとのこと。