2018/6/30 原小屋沢・カサギ沢遡行

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
原小屋沢・カサギ沢遡行計画書 ver. 2.0
作成者:丸山

■日程 2018/6/30(土)(荒天の場合中止、前日までに判断)
■山域 裏丹沢
■在京本部設置要請日時 6/30 21:00
■捜索要請日時 7/1 10:00
■メンバー(計4名)
 CL丸山 SL杉山 橋本 久光

■集合・交通
 6:40にココス南町田店駐車場(橋本)、6:50にドミノピザ相模大野店前(杉山・久光)で合流し、早戸川林道魚止橋へ(70分程度)
■行程(予定時間)
  8:30 出発
  8:50 伝道
  9:40 雷平
 10:00 雷滝
 11:00 カサギ沢出合
 12:00 ガータゴヤの滝
 (この間、沢沿いまたは原小屋沢・カサギ沢の中間尾根を下降)
 13:00 カサギ沢出合
 15:00 カヤノ沢出合
 15:30 榛ノ木丸
 (この間、榛ノ木丸東尾根または伝道沢を下降)
 17:30 魚止橋
 (計9:00)
 (https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-570645.html)

■エスケープルート
 原小屋沢:引き返す
 カサギ沢:引き返すか、そのまま進む
 それ以降:そのまま進む

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「大山」「青野原」
 原小屋沢・カサギ沢:丹沢の谷200ルート p.111 など
 伝道沢:丹沢の谷200ルート p.121 など
 その他:丹沢写真館地図
 (http://www.geocities.jp/tanzawakan/onigaiwa0.png)

■共同装備
 ツェルト(チャーリー):丸山→橋本
 救急箱(苺):丸山→久光
 8.6mm×30mロープ:丸山→杉山
 8.6mm×45mロープ:丸山
 お助け紐:丸山・久光・杉山
 ハーケン・カム・ナッツ:丸山
 ハンマー(ロカ):丸山
 ハンマー(チコ):丸山→杉山
 アッセンダー:丸山→久光・丸山

■遭難対策費
 100円×4人
 計400円

■備考
 日の入(6/30)19:04
 津久井警察署042-780-0110

原小屋沢遡行記録
作成者:丸山

■日程 2018/6/30(土)
■山域 裏丹沢
■天候 晴れ
■メンバー・オーダー(計4人、敬称略)
 SL杉山(39)、橋本(40)、久光(34)、CL丸山(35)
 のち
 丸山、橋本、久光、杉山

■総評
 原小屋沢は、丹沢としては水量豊富で、滝に見応えがあって、渓相も美しく、泳ぎも登攀も楽しめる良い沢であったが、核心部が終わってからの下山が難しかった。地形図の誤りにより下降沢を間違えた結果、同じルートを往復する区間が長い山行となり、山行全体としての締まりがなくなってしまったのは残念であった。

■ヤマレコ記録
 (https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1515140.html)

■時間(括弧内は予定時間)
  8:27(8:30) 魚止橋出発
  8:42(8:50) 伝道
  9:21-37(9:40) 雷平
 10:46-10:50(10:00) 雷滝
 11:46(11:00) カサギ沢出合
 12:59-13:36(12:00) ガータゴヤの滝
 14:18 原小屋沢遡行終了
 14:37 原小屋沢枝沢詰め終わり
 14:52 カサギ沢枝沢下降開始
 15:57 カサギ沢枝沢下降中止
 16:45 カサギ沢出合
 17:56 雷平
 18:29 伝道(下山)
 18:40(17:30) 魚止橋

■ルート・周辺概況
※遡行図は丹沢の谷200ルートを使用。滝の落差も同書に基づく。
・早戸川林道ゲートは開放、悪路走行可能な車なら伝道まで通行可能。悪路走行不可なら魚止橋附近まで
・早戸川林道のヘアピン部は徒歩ならショートカット可能。
・雷平までの道は、高度感はあるものの、木橋も含めてよく整備されている。
・原小屋沢沿いも、雷滝までは径路が概ね整備されており、靴を濡らすことなく観瀑できる。1箇所だけ飛び石渡渉を要する。
・大岩の滝は、右から巻き気味に直登できる(Ⅲ)。残置ハーケン1つあり。径路が左岸を通っている。
・雷滝の巻きは両岸から可能だが、右岸のほうが道が良い。特に下降の場合は右岸を選ぶほうが良い。
・雷滝上からカサギ沢出合までは小滝が多く、登攀力に応じて楽しめる。
・バケモノ滝は両岸から巻けるが、右岸の方が容易と思われる。直登用の残置もあった。
・3段15×25m滝は、下段は滝壺を泳いでから右から登って岩を潜れるし、水流左も登れる。中段も左右両側が登れる。上段は、右の水流の左右両側を登れる。いずれも、Ⅲ~Ⅲ+程度。快適に登れるので巻くのは勿体無い。
・ガータゴヤの滝手前の10m滝は水線直登も可能らしいが、激シャワーとなりそうである。左岸巻きは容易。
・ガータゴヤの滝は残置ハーケンやスリングあり。水流右はⅢ程度だが水流激しい。
・鎖のある2条3m滝は鎖を使わなくてもⅢ-程度。
・1210m附近で左から入る枝沢は、水も滝もなくただ詰め上げる。この枝沢を詰め上げた先の実際の地形は、地形図とは大きく異なるので要注意。
・カサギ沢に1130m附近で合流する枝沢は、小滝が連続し下降しにくい。遡行価値は多少あるかもしれない。この枝沢の集水域は、地形図で見るより広い。
・カサギ沢と原小屋沢の中間尾根の下降は読図が難しく、GPSがある方が良い。
・雷滝より上の原小屋沢沿いにも径路がついていて、マーキングがなされているが、不明瞭であり、トレースはやや難。

■行動記録(敬称略)
・入渓まで
 未舗装の悪路である魚止橋先の林道を避け、魚止橋手前に駐車。附近にも数台の駐車車両があり、釣り師と思われる。車を降りると、路上にいきなりヤマビルを発見し、先が思いやられる。しかし出発して伝道まで行き、山に入ると、意外とヤマビルはいない。暑くて登りの登山道歩きは辛いが、その先で気持ちよく沢に入ることを考えながら黙々と歩く。高度感のある径で、途中には腐りかけた桟橋もあるが、1人ずつなら壊れそうな気配はない。渡渉点に架けられた木橋も流されておらず、靴を濡らすことなく雷平に着く。そのまま大滝の方へ向かいそうになる杉山を止めて、入渓準備。ここまで順調。
・大岩の滝まで
 沢沿いに径路は続いているが、暑くてもう待ちきれないのでここで入渓。暫くはゴーロ主体の渓相だが、ところどころ泳ぎを交えて涼む。なぜか中ノ沢の方へ進みそうになる杉山を止め、本流をさらに少し遡行すると、大岩の滝。滝全体の直登はどう見てもできないので、まず右の岩に乗り、少しトラバースしてからロープを出して、丸山がリードして落口を突破し、滝上に出る。続いて杉山が問題なく登り、橋本が少々苦戦してから登ったが、ここで橋本がアッセンダーを落とし、水流に飲み込まれて紛失。その後ロープを余ったロープを上げてから久光を上げようとするが、上げたロープが水に流されて引っかかるなどし、少々時間がかかった。
・バケモノ滝まで
 雷滝は、水量豊富で落差も幅もあって、立派で見ごたえのある滝。直登できそうな気がしないでもなかったが、時間も過ぎているので左から容易に巻いた。しかし沢床に降りるのがやや面倒で、丸山と橋本は木にかけたお助け紐を使った。久光と杉山はもう少し大きく巻いた。雷滝からカサギ沢出合までは水量豊富な小滝が続く好ましい渓相で、楽しく進む。カサギ沢出合を見送って原小屋沢を進むと、すぐにバケモノ滝。割と普通の直瀑であるが、落口にあるでかい流木が印象的である。カラビナ付きの残置が誘っているが、難しそうなので今日は巻くことにして、左岸を選択。それほど面倒でもないが、1級上の沢としてはがやや難しい気もする。右岸の方が楽かもしれない。
・ガータゴヤの滝まで
 2段6m滝は無意識のまま越え、3段15×25mに至る。容易に巻けそうだが折角なので泳いで取り付き、橋本・丸山・杉山は1段目を右から、久光は左から登った。右は、狭い岩潜りがあり面白い。2段目・3段目も快適に登れ、巻くのは勿体無い滝である。その先5×10m滝は容易だが、次の10m滝は厳し目の直登が予想されたので、右から巻く。するとガータゴヤの滝。階段状の幅広滝で、丹沢では他にあまり無い面白い滝である。杉山がリードしたが、水をかぶるところでやや手間取ってかなり濡れた。続いて久光がアッセンダーで問題なく登り、3番目に丸山が、アッセンダーを1つ紛失しているのでクレムハイストで登ろうとしたが、油断してスタンスを甘く決めた結果、フォール。クレムハイストですぐ止まるだろうと思っていたが、全然止まらず5m近くグラウンドフォール。階段状なのでゆっくりズルズルと落ちたため、ほぼ無傷だったが、このときの衝撃でポケットに入れていたスマートフォンの液晶ガラスが割れて、ショック。結局別ルートで登り直して突破。ラストの橋本は問題なし。
・詰めまで
 鎖のある2条3m滝は、鎖がわざわざ設置してある割には簡単で問題なし。その先に大釜を持つ1mナメ滝があったが、既に体が冷えていたので、巻いたりへつったりして越える。又兵衛沢の出合には涸れたナメと湧水があり、割と奇妙な景観。もう平凡な沢になっているので、その先で遡行終了とし、ほぼ水のない枝沢を詰める。上部は赤土斜面となったが、杉山が上部でハマり、お助け紐を要した。
・カサギ沢枝沢下降
 尾根上で読図をし、予定通りの枝沢に下降、したつもりだった。最初は下りやすい沢だったが、徐々にゴルジュや小滝が出てきて、懸垂下降を要し、結構時間がかかる。しかも随分と下降しても予定していたカヤノ沢に出ないため、不審に思ってGPSを確認すると、別の沢を下降していることが判明。既にいい時間なので、ここから最速で下山する方法を暫し考える。
・下山まで
 最速下山の方法として、カサギ沢と原小屋沢の中間尾根を下ることにする。とりあえず右岸斜面を詰め上がって、目的の尾根に出ると、意外と歩きやすく、絶対に間違えないようにGPSを見ながら下って、カサギ沢出合いに戻ってくる。ここからは径路を探しながら歩き、程なくして見つけてそれを歩いたが、整備状況があまり良くなく、期待したほどの時間短縮にはならなかった。マーキングにいざなわれて雷滝は左岸から下降したが、残置ロープに頼って脆い斜面を下ることになったため、お薦めできない。その先は登山道並みの整備状況となったため、沢装備解除。朝に遡行した横にこんなちゃんとした道があったのかと感心しながら歩く。1箇所、原小屋沢の飛び石渡渉で悩んだ以外は何の問題もなく、明るいうちに魚止橋に戻った。

■備考・感想
・原小屋沢は、丹沢としては水量豊富な沢で、夏に水と戯れながら登るには良い。滝・小滝への取り組み方で遡行時間が大きく変わるので注意が必要。
・ヤマビル被害は、丸山0、他3人は1ずつ。予想よりは少なかった。
・丹沢写真館地図は役に立つが、Vルートとして紹介されている部分の道の状況には大きなばらつきがあるので注意すべき。
・下降沢の間違いは、地形図の等高線の間違いに拠るものであり、仕方がなかった。丹沢の谷200ルートの遡行図に描かれている水線も、同様に間違っている。地形図にも間違いが有り得るものとして考えるべきである。Web等高線メーカーや空中写真の併用も有効かもしれない。
・全体的に虫の多い沢だった。おそらく虫刺されが原因で、翌日に杉山の顔や橋本の左手がパンパンに(試合後のボクサーのように)腫れたらしいので、虫刺されに要注意。ハッカ油やスプレーなどによる虫除けを検討すべし。
・今回カサギ沢は結局遡行できなかったので、そのうちリベンジしたい。

■コメント
・杉山は、ロープワークや登攀技術には問題がないが、ルートファインディングに課題あり。場数を踏んで慣れましょう。
・沢で物を落とさないように。
・いざというときにスマホGPSが使えるように、普段から練習しておくのが良いと思う。一般山行だけの人も含め。

■反省
・実際の遡行スピードと計画書に書いた予定とのズレが大きすぎた。もっと正確に見積もるべきである。
・滝登攀は、リードでなくてもいい加減にやってはいけない。
・クレムハイストが効くかどうかの確認はしっかり行うべきである。
・下降沢を間違えたことに気づくのが遅かった。過信により読図を疎かにしていたせいである。右岸から枝沢が合流してきた時点で読図をし、予定の枝沢と方角が全く合わないことに橋本が気付いていたが、納得出来ないまま流してしまった。読図においては全員が納得できるまで行うべきであり、GPSによる答え合わせも躊躇しないほうが良い。また、読図をL任せにせず各自が適時行い、不審点があればすぐに共有することも大切である。