2018/8/3-5 屋久島

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
屋久島二等分山行計画書 ver. 2.2
作成者:金丸

■日程 8/3-5+予備日8/6,7
■山域 屋久島
■在京本部設置要請日時 8/7 20:00
■捜索要請日時 8/8 09:00
■メンバー
 CL金丸 SL杉山

■集合
 7/31 14:30 成田国際空港 第3旅客ターミナル2階 Jetstar チェックインカウンター前
 ※第3ターミナル構内図 (https://www.jetstar.com/_/media/images/japan-and-korea/japan/airports_and_terminals/aat_nrt_t3.jpg?la=ja-jp)

■交通
□行き
 成田空港15:30-(Jetstar GK625,\15870(手荷物10kg,受託手荷物30kg込み))-17:40鹿児島空港
 鹿児島空港-(バス(南国交通株式会社),10~15分間隔(最終21:20),約40分,\1250)-鹿児島港
 鹿児島港付近(ターミナル内?)で野宿(参考:快活CLUB鹿児島天文館店 \1543/8h)
 鹿児島本港南埠頭旅客ターミナル8:30-(フェリー屋久島2,学割料金\3500)-12:30宮之浦港
 宮浦小前(宮之浦)-(バス(屋久島交通),4分(2.4km),\210)-楠川
 宮浦小前発 14:17 15:18 15:27 15:47 16:57 17:42 18:42
□帰り
 海中温泉-(バス(屋久島交通),81分,\1490)-宮之浦港
 海中温泉発 6:58 8:13 8:58 10:08 11:18 12:58 13:58 15:18 18:03
 海中温泉-(バス(屋久島交通),14分,\490)-栗生橋
 海中温泉発 18:12 19:30
 タクシー(小型、海中温泉からの目安)
 栗生 10.3km \2700
 安房 21.5km \5300
 小瀬田 33.1km \8000
 宮之浦 40.8km \9800
 フェリーはいびすかす(学割料金\2640)
 宮之浦港08:20-14:40谷山港
 フェリー屋久島2(学割料金\3500)
 宮之浦港13:30-17:40鹿児島本港(南埠頭)
 トッピーロケット(\9000)
 宮之浦港(10:00(種子島経由),10:45,16:00(種子島経由),17:00)-(12:45,12:35,18:40,19:05)鹿児島港
 安房港(7:00(種子島経由),13:30)-(9:35,15:30)鹿児島港
 宮之浦港17:00-18:15指宿港
 鹿児島空港 8/9 20:35-(ソラシドエア SNA082,\11790,手荷物10kg,受託手荷物20kg込み)-22:30羽田空港

■行程
□0日目
 楠川-徒歩7.5km-オーシャンビューキャンプ場
 ※楠川の神社手前の浜から海沿いに県道77号線に出て左折、0.5km進んで右折、1.1km進み右折、3.7km道なりに進んで左折、突き当たるまで0.3km進み右折、県道594号線を1.1kmでオーシャンビューキャンプ場
 ※鹿児島or宮之浦でガスカートリッジ、食料等を調達する
 ※オーシャンビューキャンプ場(\800 0997-42-0091) 宮之浦まで徒歩5分
□1日目
 オーシャンビューキャンプ場-(1:20),4.7km-神之川林道入口-(1:00),3.3km-ゲート-0:30-歩道入口-0:50-トロッコ道合流点-0:15-トロッコ道終点-2:30-龍神杉ほか-(1:30)-高塚小屋-0:10-縄文杉-0:10-高塚小屋(計8:15)
 ※縄文杉-0:25-大王杉-0:30-縄文杉
 ※途中標高560m付近(竜神水)、940m付近に水場あり
 ※トロッコ道終点から竜神杉までに渡渉あり
 ※高塚小屋(水場(10分)、トイレ、テント場あり)
 ※龍神杉までは荒れた道、高塚小屋までは登山道なし
 ※ヤマビルに注意
□2日目
 高塚小屋-1:20-新高塚小屋-0:40-第一展望台-1:20-平石岩屋-0:50-焼野三差路-0:30-宮之浦岳-0:40-ゲンコツ岩-1:00-投石岩屋-0:30-黒味岳分れ-0:15-花之江河-0:50-石塚小屋(計7:55)
 ※焼野三差路-1:10-永田岳-1:00-鹿之沢小屋-1:20-永田岳-1:00-焼野三差路
 ※黒味岳分れ-0:45-黒味岳-0:35-黒味岳分れ
 ※途中新高塚小屋、平石、焼野三差路、ゲンコツ岩、安房岳下、投石平、花之江河、10km峠に水場あり
 標高560m付近(竜神水)、940m付近に水場あり
 ※平石岩屋(8人)、投石岩屋(8人)でビバーク可
 ※新高塚小屋(水場、トイレ、テント場あり)
 ※鹿之沢小屋(水場、トイレあり)
 ※石塚小屋(水場(5分)、トイレあり)
□3日目
 石塚小屋-0:50-花之江河-0:50-データロー岩屋-1:40-ワレノの岩屋-1:30-三能山舎跡-1:40-餅田跡-0:40-湯泊歩道入口-3:30,8.8km-湯泊-0.8km-平内海中温泉(計10:40)
 ※烏帽子岳往復+0:50、七五岳往復+1:40
 ※途中花之江河、高盤岳下(標高1590m付近)、データロー岩屋の先(標高1530m付近)、ビャクダン峰下(標高1540m付近)、ワレノの岩屋、烏帽子岳の西(標高1520m付近)、林道の途中(標高470m付近)に水場あり
 ※データロー岩屋(6~7人、水場あり)、ワレノの岩屋(3~4人)、三能山舎跡(テント2張程度)でビバーク可
 ※花之江河からは荒れた道、林道一部崩壊(歩行可能)
 ※ヤマビルに注意
 ※平内海中温泉 野湯 \100 干潮前後2時間程度のみ入浴可
 干潮時刻
 8/2 4:03 16:10
 8/3 4:46 16:51
 8/4 5:39 17:40
 8/5 6:45 18:46
 8/6 8:06 20:17
 8/7 9:27 21:50
 8/8 10:35 23:02
 ※屋久島青少年旅行村・キャンプ場 \400 シャワー\200
  (http://www.realwave-corp.com/05b&b/04/index.html)

■エスケープルート
 龍神杉付近まで:宮之浦へ
 龍神杉付近から第二展望台付近まで:荒川登山口へ(バス最終18:00 安房まで16.5km タクシー\4100)
 第二展望台付近からワレノの岩屋付近まで:淀川登山口へ(バス最終14:50 安房まで22.0km タクシー\5400)
 ワレノの岩屋付近から:湯泊へ

■地図
 2.5万分の1 「一湊」「宮之浦岳」「栗生」
 山と高原地図 「60屋久島」

■共同装備
 テント(金丸私物(RIPEN TREK RAIZ1))
 鍋(梅)
 ヘッド×1(杉山私物)
 カート×3(現地調達)
 おたま(金丸私物)
 救急箱(有紗)

■遭難対策費
 400円×2

■備考
□小屋は全て避難小屋(予約、テン場代不要)。
□日の出 5:31~5:35
 日の入り 19:17~19:12(楠川分かれ付近、8/2~8/8)
□屋久島警察署 0997-46-2110
□ラジオ周波数
 NHKラジオ第一 鹿児島:576kHz
 NHKラジオ第二 鹿児島:1386kHz
 NHK FM 鹿児島:85.6kHz 種子島:84.4kHz
□バス・タクシー会社
 南国タクシー 0120-226-151 099-222-6151
 種子島・屋久島交通 0997-46-2221
 まつばんだ交通 0997-43-5000
 屋久島交通タクシー(宮之浦) 0997-42-0611
 屋久島交通タクシー(安房) 0997-46-2321
 屋久島交通タクシー(尾之間) 0997-47-2018
 安房タクシー 0997-46-2311
□交通機関リンク
 Jetstar (http://www.jetstar.com/jp/ja/home)
 ソラシドエア (https://www.solaseedair.jp/)
 鹿児島空港連絡バス (https://nangoku-kotsu.com/ashuttle)
 フェリーはいびすかす (http://www.yakushimaferry.com)
 フェリー屋久島2 (http://ferryyakusima2.com)
 ジェットフォイル トッピー&ロケット (http://www.tykousoku.jp)
 屋久島交通タクシー (http://yakutaxi.com/contents/cars.html)
 屋久島交通バス時刻表 (http://yakukan.jp/doc/pdf/yakubus180428.pdf)
□その他リンク
 屋久島のガスカートリッジ販売店 (http://www.iwatani-primus.co.jp/guslist.html#3)
 登山・アウトドア専門店 屋久島アンデス (http://r575087.bizloop.jp)
 屋久島の宿 (http://yakukan.jp/acco/index.html)
 快活CLUB鹿児島天文館店 (http://www.kaikatsu.jp/shop/kyushu_7/6497.html)
□過去の山行
 2016年
 2013年
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■おまけ
 日数が余った時の山行の候補です。
□開聞岳
 開聞駅-0:30-二合目登山口-0:15-二合目半-0:45-五合目-0:30-七合目-1:10-開聞岳-0:50-七合目-0:20-五合目-0:30-二合目半-0:10-二合目登山口-0:25-開聞駅(計5:25)
 (鹿児島から 始発7:56着 終電21:27発)
□韓国岳
 大浪池登山口-1:00-大浪池休憩所-0:50-避難小屋-1:00-韓国岳-0:50-避難小屋-0:40-大浪池休憩所-0:50-大浪池登山口(計5:10)
 えびの高原-1:00-大浪池休憩所-0:50-えびの高原
 (鹿児島から 始発8:50着 終バス16:06発)
 (https://www.iwasaki-corp.com/bus/myplan_kirishima/)
 (https://www.city-kirishima.jp/kirikan/kanko/leisure/documents/rosenzu.pdf)
□高千穂峰
 ビジターセンター-1:00-御鉢火口縁-0:20-背門丘-0:30-高千穂峰-0:20-背門丘-0:20-御鉢火口縁-0:50-ビジターセンター(計3:20)
 (鹿児島から 始発9:29着 終バス15:30発)
 (https://www.iwasaki-corp.com/wp-content/uploads/2016/03/d34f4b72908a0b2e699a17a93e397dfe.pdf)
□太忠岳
 ヤクスギランド-0:30-太忠分れ-0:30-田-0:30-天文の森-2:00-太忠岳-1:10-天文の森-0:25-田-0:25-太忠分れ-0:30-ヤクスギランド(計6:00)
 (宮之浦から 始発9:59着 終バス15:10発)
 (http://yakukan.jp/doc/pdf/yakubus180428.pdf)
□愛子岳
 小瀬田-0:45-愛子岳歩道入口-4:00-愛子岳-3:30-愛子岳歩道入口-0:40-小瀬田(計8:55)
 (宮之浦から 始発5:03着 終バス19:10発)
□モッチョム岳
 鯛ノ川-0:40-千尋滝展望台-1:30-万代杉-0:30-モッチョム太郎-0:40-神山展望台-0:50-モッチョム岳-0:50-神山展望台-0:30-モッチョム太郎-0:30-万代杉-1:00-千尋滝展望台-0:30-鯛ノ川(計7:30)
 (宮之浦から 始発8:54着 終バス18:27発)

■キャンプ場
 海楽園 キャンプ場\800 ドミトリー\1200 素泊まり(要予約)\3500
  (http://www.e-yakushima.jp/)
 とまり木 キャンプ場\800 素泊まり\2000
  (http://tomarigi.synapse-blog.jp/)
 えびの高原キャンプ村(要予約) \720 温泉あり
  (http://www.city.ebino.lg.jp/display.php?cont=140328154326)
 開聞山麓ふれあい公園 (要予約) \1230 温泉\340
  (http://www.ibusuki.or.jp/stay/camp/kaimoncamp/)
 霧島高原キャンプ場 \1000 電源(要予約)+\530
  (http://www.593941.com/53664.html)
 錦江湾公園・キャンプ場(要予約) \500
  (http://www.kagoshima-kankou.com/guide/10545/)

屋久島二等分山行記録
作成者:金丸

■日程 2018/8/3-5 (移動等含め7/31-8/7)
■山域 屋久島・開聞岳
■メンバー・オーダー CL金丸-SL杉山

■記録
□7/31 雨のち曇 強風
・成田空港(集合)→鹿児島空港→枕崎駅
 予定時刻通りに成田空港に集合した。駅からカウンターまでの通路に「ライターやモバイルバッテリーなどは受託手荷物には入れられません」とたくさん書いてあったためそれらを持込手荷物に移したところ、問題なく検査を通過することができた。受託手荷物を30kgまでにしていたが2人とも15kg内外で、20kgまででも良かったかなと思った。
 台風12号は「?」マークのような軌道を描いて3~2日前に東~西日本を散々荒らしたあと鹿児島付近に留まっているらしく、悪天候のため着陸不能と判断された場合は成田空港に引き返す条件付きのフライトとのことだった。
 飛行機は同じ機体を使う前の便の遅れのため1時間ほど遅れて離陸した。飛行機の中では寝不足だと言う杉山くんは大体寝ていて、僕はずっと窓の外を見て浜名湖だ紀伊半島だと分かる地形が現れる度にパシャパシャ写真を撮ってはしゃいでいた。CAさんに「いい写真撮れましたか?」と話しかけられてジェットスターのシールを貰ったあたり、小学生くらいに見られたのかもしれない。
 飛行機は無事鹿児島空港に着き、空港内の大空食堂という食堂で夕飯を食べた。鶏飯バイキングが売りだと言うが、山行を前にしてそこまで重いものを食べる度胸はない。名産だと言うアゴ肉のステーキを頼んだが、鶏モモみたいな食感で旨味が濃く、美味しかった。
 ここで天気予報などを見ながらその後の予定を練り、結局これから枕崎に向かってそこでカラオケ寝なり駅寝なりをして、翌日開聞岳に登り、その下山時刻によってそのあとのことを決めることになった。その旨を在京に連絡し、バス乗り場に移動した。近くには足湯があったがタオルは荷物の奥深くだったので手をぱちゃぱちゃするにとどめ、枕崎行きのバスに乗り込んだ。
 空港で調べたカラオケは営業時間が間違っていたらしく、インターネットで快適だと言われていたこともあり結局駅寝をすることにした。バスを降りると、雨さえ降っていないものの台風の影響で風が強かった。バス乗り場から駅までは少し離れており、バス乗り場のロータリーの周りにはスーパー、薬局、駐車場、公衆トイレがあった。スーパーで明日の食料と水などを買い駅へ向かうと、ちょうど終電がホームに滑り込むところだった。綺麗で広い枕崎駅の駅舎は市民の寄付により5年前に改築されたものらしく、付近の色々なモニュメントを見ても地元に愛された駅なんだなと感じた。鹿児島名物の白くまのカップアイスを食べたり駅ノートを見ていたりしていると22:00頃に照明が消えたので、そのまま就寝とした。
 と思ったが、22:30頃に市役所から頼まれたという人が駅舎を閉めに来たので、結局ホームのベンチで寝た。蛍光灯は何かに反応して付くようで一晩中付いたり消えたりしていた。暴風警報も出ていて風が朝まで強く、雨が降っていなくて良かったと思った。風で寒かったのでシュラフを出したら暑くて、寝汗をモリモリかいた。

□8/1 晴れ 山中は霧
・枕崎駅→開聞駅→開聞ふれあい公園
  7:49 ふれあい公園管理棟
  8:00 2号目登山口
  9:10-9:21 7合目
  9:48-9:59 9合目
 10:09-10:30 開聞岳山頂
 11:42-11:51 5合目
 12:38 ふれあい公園管理棟
・開聞ふれあい公園→開聞駅→五位野駅→谷山港→フェリーはいびすかす
 5:15頃に目が覚めた時には風は弱く晴れていた。昨晩はムーンライト信州と並んで最悪の睡眠環境だった。今後ひどい寝床で寝ることがあっても、これを思い出せば大体は我慢できるだろう。
 杉山くんもあまり寝られなかったようだ。せっかく飛行機に乗ってまで台風12号くんを追いかけてきたのにこの仕打ちとは、よほど嫌われているらしい。
 トイレ、朝食、パッキングなどを済ませて、5:30頃にドアが開いた列車に乗り込んだ。定刻通りに列車は発車し、いつも行くところでは大規模な畑を見慣れない作物の畑(サツマイモが多かった)を見ながら開聞駅に着いた。寝不足と激しい揺れに耐えながら駅メモ!をしていて、剛のwebライターpatoさんの気持ちが少し分かった。樹木が線路に伸び枝が車体に当たっていて、本数の少なさを感じた。
 開聞駅からは標高600mくらいのところから上を雲に覆われた開聞岳の姿が見えた。道中に機械翻訳で、頑張って解そうとしてもミスリーディングになってしまっている看板があったが、開聞岳に登りに来た日本語のわからない人は無事たどり着けるのだろうか。日差しは薄雲に覆われて強くないものの、低い標高と高い湿度が体力を奪う。台風が近くにいる8月1日に来る山じゃないやと愚痴りながらふれあいセンターの管理棟まで歩き、100円のコインロッカーに大きいザックを入れてサブザックを背負って開聞岳に向かった。
 最初は火山岩の砂利道だった。カラフルな虫や大きい蝶が南国の雰囲気を醸し出すが、気温湿度が南国なのは今はやめてほしい。
 5合目は展望台になっていて長鼻岬が見えた。6合目くらいから大きい岩がゴロゴロしだして歩きづらくなり、同じ頃にあたりがガスに覆われて景色がなくなった。7合目(ベンチがなかったので他のところでとったほうが良かったかもしれない)で休憩をとって先に進むと、9合目のところで茨城から来たというおじさんに会った。お互いこの天気で始発から開聞岳に来る物好きはいないと思っていたようで、そんな話から立ち話が膨らんでいった。聞くところによると、ここ2年で5回屋久島に行くほど屋久島が好きらしく、これから屋久島に行くと言うと、西部林道がいいとか、太鼓岩から見る景色が素晴らしいとか、鹿児島市内の柳川氷室というところのかき氷が美味しいとか、色々と有用な情報を頂いた。
 山頂も案の定ガスの中だった。山頂の岩場は植生がなく、その上からは屋久島、種子島を初めとする鹿児島県の大部分の展望と、その手前にある濃厚なガスが非常に綺麗に見える。はあ。風が7~8m/sと少々強く、日差しもないので肌寒い。岩陰に隠れてしばらく過ごすも良くなる気配はない。写真を撮って、追いついてきた先程のおじさんに別れを告げて下り始めた。
 途中7合目の少し上でガスが一瞬薄くなり、佐多岬、種子島、屋久島がうっすら見え、テンションが上がる。5合目ではすっかりガスが晴れて風があり涼しく、時間が余るようなのでここでしばらくだらだらしていた。この時間になると始発組以外の登山者も増えてきて、時々すれ違った。
 登山口は風があることと湿度が下がったことで体感温度は朝より低かった。ふれあい公園管理棟で荷物を回収し、アイスを食べたりシャワーを使って汗を流したりしつつ今後の予定を練った。また浮浪者になりたくないとのことからフェリーはいびすかすで屋久島入りして、明日はのんびり無人(電話で聞いたところそうらしい)ボルダリングジムに行くなどしてゆっくり過ごすことに決まった。
 ギリギリまで多少標高が高く涼しい公園管理棟で過ごし、開聞駅には列車定刻の数分前に着いた。北緯31度11分で日本最南端のJR駅の西大山駅を通過しつつ、車窓風景は畑から海へ、海から町へと変化し、谷山港最寄りの五位野駅に着いた。
 途中のコンビニで食料と水を買い、観音像に屋久島での好天を祈りながら40分くらい歩いて谷山港に着いた。2年前の記録にもあったように、谷山港は受付まではトラックばかりで人の気配がなく心配だったが、奥の方にあった受付と待機場所は人間が滞在しやすい場所だったので安心した。ちょうど今日から運賃を値上げしたらしく、学割証を忘れてしまった杉山くんは従来の学割料金より1000円ほど高い運賃を支払うことになってしまった。
 フェリーはいびすかすは、種子島、屋久島両島への貨物と旅客の両方を運ぶ船である。元々は貨物船であったこともあり二等料金の乗客が動ける場所は狭く、トイレ、荷物置き場、雑魚寝スペース、甲板のごく一部くらいだった。雑魚寝スペースにはテレビがあり、鹿児島テレビを映していた。飲み物と即席麺の自動販売機があったが割高だった。
 フェリーが出港してからはトランプをしたり、次の山行の話をしたり、外に出て景色を眺めたりしていた。ここまで山頂に雲をかぶっていない開聞岳を見ることはできなかった。
 フェリーは予定通りに種子島に着き、種子島行きの人が下船したため、コンセントが空いている場所に移動してスマホやモバイルバッテリーを充電した。22:30頃に電気を消し、そのまま就寝した。鹿児島湾を出てから少し揺れがあったので心配していたが、港に入ってからの夜間の揺れはほとんどなかった。フェリーに積まれたトラックやコンテナの積み下ろしの音と揺れが夜半過ぎまであったが、それ以降は静かで、昨日とは打って変わって快適な睡眠をとることができた。金を出すって大切。

□8/2 曇時々雨
・フェリーはいびすかす→屋久島観光センター→クライミングジム(VIVA2)→楠川
 12:37 楠川
 14:32-15:07 屋久島観光センター
 17:21 ゲート
 種子島で乗ってくる乗客の足音で起きた。二度寝している間にフェリーは定刻通り宮之浦港に着いた。さて、これまでの記録でははいびすかすで島に着いたあと当日中に山に入っているが、今回はその当日は天気が悪いため麓で暇を潰さなければならない。到着が7:00と朝早いためどこも開いておらず、とりあえず環境文化村センターの屋根の下で時間を潰した。この間にもにわか雨があり、この先の行程が思いやられる。
 8:00になってキャンプ場の予約をしに観光センターに向かうと、地元のおじいさんに声をかけられた。山に登る人らしく、オーシャンビューキャンプ場はやめて海楽園のほうがいい、登山道入口でテントを張ることもできる、益救参道の龍神杉から先は気をつけろ、永田岳は素晴らしいなどのアドバイスを頂いた。今日は登山道入口にテントを張り、明日中に新高塚小屋まで行き、明後日の行程に永田岳か黒味岳のピストンを加えることを考えた。
 今日の日中使わない大きい荷物をコインロッカーに詰め、ナカガワスポーツが開く9:00まで観光センター向かいの東屋にいようと思ったが、急に雨が降ってきて折りたたみ傘を持っていない杉山くんとコインロッカーの中に忘れた僕は動けなくなってしまった。
 しばらくして雨が弱くなったので観光センターでガスカートリッジと折りたたみ傘を、ライフセンターヤクデン(スーパー+ホームセンター+衣料品店みたいな店)で食料を買った。基本的に本土より2割くらい高く、島の食料事情が伺えた。水よりスポーツドリンクのほうが高かったのには全力でツッコミをいれた。
 買うものを買えたのでナカガワスポーツに行く必要はなくなり、今日の行動に要らない荷物をもう一度ロッカーに詰めて、昨日発見したクライミングジムに行くことにした。場所が分かりづらく地元の人でもたどり着けないことがあるらしいが、Googleマップを見ながら進むと辿り着けた。
 噂に聞いていた通り無人で、料金箱に料金を入れるシステムだった。詳しくは後ろに付けた杉山くんのレポートを読んでほしい。僕はあまり詳しくないがグレードに対する難易度が高いらしく、杉山くんは4級の課題を「こんなの4級じゃねえ!」と言いながら登っていた。僕は杉山くんのアドバイスもあり、低い難易度のものから初めて6級のうち2/6を登ることが出来たが、握力を使い果たしてしまった。
 午前の部は9:00から13:00まで、午後の部は13:00から20:00までだったが、あとの行程もあるので1時間半ほどで終わりにした。トイレで水を拝借し、12:00頃にジムを出た。
 12:30頃に楠川の楠川天満宮のあたりで海水に浸かり、屋久島二等分のスタートとした。はいびすかすの中のテレビで、地元の人が岳参りをする際に海岸の砂を山頂の祠に奉納すると聞いたので、真似をしようと思い砂を拾ってきた。
 面積を調整するため鬱蒼とした森の中を歩く。路面に細かい藻が生えているのと雨で濡れているので滑って歩きづらい。暑さはそこそこだが湿気がすごく風もないため体力を削られる。茶畑をいくつか通り過ぎると、作業する人が使うのか道端に水場が出てきて、水を飲んだり被ったりした。また、通りかかる沢がどれも凄く綺麗で、屋久島クオリティを見せつけられた。宮之浦に入ると雨が降りだし、時々かなり強くなることがあった。明日の渡渉大丈夫かなあ。
 観光センターで荷物を出して整理し、麓に置いておく荷物を48時間を超えて300円のコインロッカーに入れることを伝えると、追加で300円支払うことで許可してくれた。
 もう一度ヤクデンに行ったり、観光センターにゴミを引き受けて貰ったりしていたところ15:00過ぎと少々遅くなったが、日暮れが遅いことと林道であることからゲートまで進むことにした。フルザックの重みが肩と腰に食い込む。
 集落が終わってから先は、屋久島総合自然公園の近くで虫取り網を持った人1人にしか会わなかった。相変わらずよく滑る道だし、よく分からない実がめちゃくちゃ落ちていて歩きづらい。宮之浦川や遠くに見える滝の景色に励まされて歩く。
 屋久島総合自然公園から先は電波が入らなくなった。道に伐採作業中とあり、誰かと会うと嫌だなあと思ったが、誰にも会わなかった。林道入口には龍神杉登山口まで3.3km、山と高原地図には5.3kmとあったが、GPSのログを見ると3.3kmが正しいようだ。どうやら山と高原地図の5.3kmは登山口から先の林道部分も込みの距離らしい。
 17:20にゲートに着いた。平らで水がこなさそうなところにテントを張った。国立公園内だったので言い逃れできるよう固定はしなかった。湿った荷物を乾かしたり、食料を食べたり、地図を見たりして、暗くなった20:00頃に寝た。
 フライを閉めて寝ていたら熱気がテントの中にめちゃくちゃ溜まり、耐えきれずに22:30頃にフライを開けた。樹林帯で風のない標高180mを舐めていた。それからは多少マシになったものの、依然寝苦しい夜を過ごした。

□8/3 晴れ一時雨
  4:59 ゲート
  5:30 歩道入口
  5:50-6:06 龍神水
  7:34-7:47 渡渉点
  8:42-9:30 三神杉
 11:06-11:28 太古杉
 12:09-12:26 高塚小屋
 12:31-12:36 縄文杉
 12:59 大王杉
 13:16-13:31 縄文杉
 13:36-13:42 高塚小屋
 14:37 新高塚小屋

 3:00起床。杉山くんも暑くてあまり寝られなかったようだ。枕崎駅とは違う質の極悪睡眠環境だった。朝食は、杉山くんはアルファ米のドライカレー、僕は棒ラーメンと昨日買ったパン。辛子高菜味はピリッと辛くて棒ラーメンの中で1番好きな味だった。空は一部曇っていたものの星空が見え、カシオペア座と北極星が分かった。4:40頃に撤収が終わってしまったが真っ暗だったので、5:00を待って出発した。
 今日も湿気がすごく、寒くないのに息が白くなるほどだ。5:20にはヘッドライトがいらなくなった。歩道入口まではところどころ舗装された、車の通れるくらいの幅(通れるとは言ってない)の道で、ところどころテントを張れるくらいの待避所がある。30分で歩道入口に着いた。
 益救参道のトロッコ道までの道は石段で出来ていて、シダ植物が両側から張り出し苔むしているものの、つるつるアスファルトに比べるとよっぽど歩きやすい。苔むした感じが屋久島の森の雰囲気にとても良くマッチしている。周辺はスギの原生林で、「杉の山だ」と杉山くんを茶化しながら調子よく進む。
 龍神水までも水が汲めそうな沢があったが、水場として整備されているのはここだけだった。水を汲んだり浴びたりと、龍神の水を満喫した。これ以降、水を飲み浴びボトルに詰めと一通り水場を楽しむことを「水を補給する」と表記する。
 しばらくしてトロッコ道に出た。平らで広くてとても歩きやすい。落石注意の看板のすぐそばに1m以上の落石が落ちていて説得力があった。途中で横切る沢のいくつかが滝のようになっていて、水量が多くて立派だった。トロッコ道が終わってもしばらくは石段が続いた。石段がないところも道は明快で歩きやすい。
 1度目の渡渉点は立木と岩の間にワイヤーが渡してあり、半分くらいはワイヤーを掴んで歩くことが出来た。それ以外のところは少し怖かったが、注意して歩けば問題なかった。石伝い渡っていくことが出来たので濡れなかった。水もあるのでここで1本休憩をとり、水を補給した。
 次の渡渉点はワイヤーこそないものの、1度目のものより規模が小さく問題なかった。ここより先の標高1000mちょっとと1200m弱のところにもちょろちょろと水場になりそうなところがあったが、毎回あるかは微妙なところなので、水は2度目の渡渉点で汲んでおくのが良いだろう。
 これまでも大きい杉はあったが、龍神杉周辺の杉は規模が違った。大きい株は一番下の中でビバークができそうな株、北側のくり抜かれている株、風が通り抜けそうなくらい大きい穴が開いてもなお生きている風神杉、その隣の雷神杉、そして1番大きい龍神杉の5つだった。陽を浴びて輝くその神々しさに圧倒された。この辺りから世界遺産ゾーンなのも納得で、テンションが上がる。この辺りでは電波がなんとか通じ、ここから高塚小屋、大王杉までは電波がちゃんと入った。
 そこから先に入る目印の黄色のテープは取り外されていて、代わりに立入禁止の表示があったので、少し離れたところから入って合流した。旧宮之浦歩道はしばらくは倒木や軽い薮など荒れてさえいるものの、ピンクテープがよく付けられていて踏み跡もしっかりしている。このあたりで一瞬弱く雨が降ったためザックカバーを出したが、すぐ止んだ。
 http://sbrdo2.naturum.ne.jp/e2778661.html
 この人が迷った箇所で僕達も迷い、20分ほど行ったり来たりしたもののついに先の道が分からなかった。地形図を見ると尾根は歩きやすそうで、すぐそこで正規ルートも尾根に乗るので、適当に尾根に出て歩くことにした。今我々が1番世界遺産屋久島にどっぷり浸かっているんだろうなあと思いながら10分くらい薮を進むと道に出て安心した。
 太古杉のすぐ手前でも一瞬道が分からなくなったがどうにかテープを見つけ、太古杉のところで合流することが出来た。そこで少々長めの休憩をとった。龍神杉方面の踏み跡には立入禁止の表示があった。
 そこからの道は明瞭だった。高塚小屋の手前でヤクザル7匹(うち3匹が子連れ)、ヤクシカ3匹に行く手を阻まれ、散々写真を撮るなどして愛でた後どいて貰おうとストックを振り回して威嚇したが、どいてくれなかったので巻いた。高塚小屋に出るところにも立入禁止の表示があった。
 高塚小屋には誰もいなかった。大きい荷物を置き、サブザックを背負った。縄文杉まではすぐだった。根本近くからは見られなかったが、その大きさに圧倒された。龍神杉のほうが好きという人もいるが、個人的には縄文杉のほうが好みだった。20人ほどの人がテラスにいて、さすがに観光スポットだと思った。
 夫婦杉、大王杉までの道は、地図上では緩い下りに見えるが、実際にはかなりのアップダウンを伴っていた。この間にガイドを連れた人にかなり出会った。動植物の解説をしているのを聞いて、1回くらい話を聞いてみても面白いかなと思った。夫婦杉、大王杉は大きい株だったが、これまでにたくさん立派な杉を見てきたので慣れてしまい、そこまでの感動はなかった。
 帰りに杉山くんがやけに急ぐと思ったら、高塚小屋のトイレに財布を忘れてきたらしい。すれ違ったガイドの方から走っていったと聞いて追いかけるのを諦め、縄文杉の水場に着いた頃には財布を回収してそこまで戻ってきていたので適わないと思った。水を補給し、高塚小屋まで戻った。
 その後は木道の階段が整備されているところが多かった。急な登りが何ヶ所かあったが、コースタイムを1時間20分付けるような道ではなく、55分で着いた。この途中から電波が入らなくなり、新高塚小屋でも入らなかった。
 新高塚小屋は60人入る大きい小屋と15張ほどのテント用木製テラス、トイレに水場と一通り揃っている、屋久島山中の無人小屋の中で最も大きい小屋だ。水場の周りは水浸しで水を汲むのに苦労するが、服と靴下を脱いで身体を洗う我々の敵ではなかった。服やタオルを乾かそうと思って陽の当たるところに干しておいたが殆ど乾かず、屋久島の湿度を改めて思い知った。調理する訳ではないためガスの減りが少なく、余ることが予想されたため、杉山くんはガスを炊いてタオルを乾かしていたが、ホットタオルができただけで全く乾かなかった。
 夜間は小屋内にはネズミが、小屋外にはヤクシカが出て荷物を荒らすらしく、食料は小屋内に張ってあるロープに吊すようにとのことだった。予備食まで詰まった大きい袋にロープが強く引っ張られていて可愛そうだ。
 17:00頃に夕飯にした。杉山くんはなんかおしゃれなパスタを食べていたが、辛子高菜風味の棒ラーメンも美味しいので悔しくない。
 着いた時にはテントの人1人だけだったが、次第にぽつぽつと増えだし、最終的に小屋の中は2組4人、テントは3組4人だった。夏休み期間中の金曜日なのでもっと多いかと思ったが拍子抜けだった。広く使えて良い。これまで悪い寝床(枕崎駅)、いい寝床(はいびすかす)、悪い寝床(蒸し風呂テント)と来ていて、流れの通りここはいい寝床だった。
 明日早く出られるよう手前側を陣取ったが、奥の方の今日淀川から黒味岳と宮之浦岳に登ったという男性2人によると、永田岳は九州第二の高峰で展望も麓まであって良いため登る価値があるが、黒味岳は宮之浦岳まで行けない人が日帰りする山で、宮之浦岳の眺めが良いがそれは宮之浦岳から花之江川への下りでの眺めと大差ないとのことだった。とりあえず明日も5:00に出ることを目標に、テントの撤収がないことを考えて4:00起きと決めて20:00前に寝た。

□8/4 晴れ
  5:08 新高塚小屋
  5:50-6:02 第二展望台
  7:10-7:29 焼野三叉路
  8:22-8:41 永田岳
  9:04-9:10 水場
  9:38-9:43 焼野三叉路
 10:09-10:38 宮之浦岳
 11:54-12:26 投石岩屋
 13:07-13:21 花之江河
 14:05 石塚小屋

 4:00起床。今日はぐっすり寝られた。土間で調理して朝ごはんを食べ、5:00過ぎに出発した。
 ヘッドライトはすぐに要らなくなった。5:30頃の日の出はこれまでの行程で初めて見た日の出で、湿気と光路長のためかとても赤く、照らされた木々がとても綺麗だった。シャクナゲと白い真砂土でぱっと見ると海岸付近に見える登山道は決して歩きやすい訳では無いが、必要なところには木道があってそこまで悪くはない。ただし人が歩いた跡が酷いところでは高さ2m以上凹んでいたり、木道が侵食から取り残されていたりと見ていて痛々しい。
 第一展望台はそのあたりより少し展望がある程度でそんなに展望が良くないが、第二展望台はとても景色が良く、そこで1本休憩をとった。夜明けすぐの朝焼けと、それに照らされた宮之浦岳~翁岳が素晴らしい。
 それから先も1mを超える落石で登山道が塞がれているなど道が良いとは言いがたいが、ウグイスが鳴いているのを口笛で再現しようと試みるなどしながらぼちぼち進んでいく。平石岩屋あたりからは植生が変わり、一面の笹原になった。永田岳方面も見渡せるようになりテンションが上がったが、太陽が上がってきて体力が奪われる。ところどころで登山道がえぐられているために笹の高さが背丈を超えるようになっており、それについた朝露で涼をとりながら進む。半袖なので笹で腕が少し切れたが誰も気にしない。
 焼野三叉路で1本休憩をとり、サブザックに必要なものを詰めて永田岳へ向かった。この往復の間はヤクザルとヤクシカをたくさん見た。登山道を通ろうとしてもヤクシカのお尻に触れそうなくらい(蹴られそうなので触りはしなかった)にしか逃げないところを見ると警戒心が薄いんだなあと思う。このあたりもかなり登山道がえぐれていて、木道が少ないことも手伝って新高塚小屋から宮之浦岳よりも酷く感じた。
 山頂付近はローソク岩を始め、岩がにょきにょきしていてかっこいい。展望も、宮之浦岳や黒味岳を始め、障子岳周辺の岩々やスギの原生林、永田方面と宮之浦港の一部といった海岸部、果ては口永良部島や種子島までが一望出来る。今回の山行で登頂した頂は開聞岳、永田岳、宮之浦岳の3つだけだったが、杉山くんも私もここが一番良いとの意見で一致した。
 頂上にはドローンを飛ばしてネマチ周辺を撮影していた人がいて映像を見せてもらったが、垂直に近い岸壁に迫るところがかっこよかった。しばらく写真を撮ったり景色を眺めたり岩に寝転んだりして休憩した。
 帰りの途中にあった水場で、ヤクザルにガン見されながら水を補給した。焼野三叉路に戻ってフルザックになり、宮之浦岳へ向かった。焼野三叉路の水場は結局見つからなかった。
 宮之浦岳まではそこそこ急な上りだったがそれほど時間はかからなかった。山頂はまあまあ広い広場になっていた。噂通り麓は見えなかったが、屋久島の奥岳(麓からほとんど見えない山+永田岳のこと)を一望できた。笹の大草原から花崗岩の奇岩がにょきにょきと生えている独特の景色に屋久島を感じる。写真を撮ってもらったり日焼け止めを塗ったり山行記録を書いたりしてゆっくりした後出発した。その後10分くらいして楠川の砂を奉納し忘れたことに気がついたが、戻るのは面倒なので湯泊の海に返すことにした。我々の目的は宮之浦岳に参ることではなく、屋久島を二等分することだ。
 そこからも当分荒れた道が続いた。水場マークがある場所以外にも水を汲める場所が沢山あり、どれが記載された水場だか分からずに寄ろうと思っていた水場を通り過ぎてしまったこともあった。
 日差しを防げる投石岩屋に荷物を置いて休憩とし、そこから登り2分下り1分の水場で水を補給した。水場は地図に載っていないこともあって使われていなかったのか蜘蛛の巣が張っていたが、それを気にする我々ではなく精一杯水を補給した。
 投石平を過ぎてからは植生が笹原からシャクナゲやスギなどに変わり展望がなくなった。この山行のボーナスステージの終わりである。黒味岳分岐から先は人気があるためか、木道がよく整備されていて歩きやすかった。
 時間があるため花之江河でも1本休憩をとった。日本最南の高層湿原とのことで、時期にはヤクシマホシクサ、ミズゴケ、コケスミレなどが綺麗らしいが、時期でないか気づかなかったかで、高層湿原だなあとしか思わなかった。杉の木の木陰に座り、地図を見ながら明日の行程がキツいなという話をした。
 そこから石塚小屋までのトラバース道はかなり状態が悪く、沢を横切る度に道が崩壊していた上、ぐちょぐちょになっていて靴やズボンが泥で汚れた。ここまで来るとトラバース道が嫌になってくるが、残念ながら明日の行程はトラバースか急坂かクソ林道で、そのうち最も長いのがトラバースである。明日朝暗いうちにここを通るモチベーションが負という話をしながら石塚小屋に着いた。
 石塚小屋は新高塚小屋よりも小さく、定員20人ほどらしいが、結局我々しか泊まらなかったので広く使えた。トイレで大便をしたところ水がはねてきてめちゃめちゃ尻を拭く羽目になったので、水はねを避けるのが上手い人、水はねを気にしない人、射出後も大便の速度をコントロールできて水はねが起こらないようにできる能力者の人以外は携帯トイレを使った方が良いだろう。これは悪い寝床ですね。明日は良い寝床だろう。
 着いて早々疲れから2人とも寝てしまった。1時間ほどで起き出して、山行記録を書いたりご飯を食べたりした。記録ノートによると、今日8/4の前に使われたのは7/26らしい。1/1に田中陽希さんの名前を見つけて興奮した。下山後に調べたところ、今年1月1日から日本300名山一筆書きにチャレンジ中の田中さんは、その初日に安房から花之江河登山道を経由して(なんで?)石塚小屋に宿泊し、翌日宮之浦岳、永田岳に登って白谷雲水峡へ下山していた。屋久島のゼロトゥーゼロは通常3日間かけるものだが、流石である(なお100名山の時は1日で登っている)。
 山行中最後の夕飯ということもあり、杉山くんは茶碗3杯分のアルファ米とコンビーフ1缶、僕は棒ラーメン2食分を食べて英気を養い荷物を軽くした。このコンビーフは2日前にヤクデンで買ったものだが、包装が缶より軽いプラスチックで登山向きだ。東京でも探してみよう。
 水を使うだけ使ってから17:30頃に水場へ向かい、水を補給した。ここの水場は岩の下から流れ出ていてちょろちょろ出ているところには行けないが、水深20cmくらいの水が溜まっている場所があり、そこで汲むことができる。なおそこは水の流れが弱い上岩陰になっていて水があると分かりづらく、2人とも初見で水にはまった。
 水場での往復の途中にauの電波がごく弱く入るところがあり、杉山くんはそこで連絡をとっていた。人数の多い夏合宿のCLは大変そうだ。小屋の入口付近でも一瞬docomoの電波が入り、僕も家族に生存報告をすることができた。
 明日はいよいよ10時間超行動だが、今日の花之江河から石塚小屋までがコースタイム比88%で、これ以上荒れていると考えて休憩抜きコースタイム通りだとすると、下って温泉にゆっくり入るのは少々厳しそうだ。明日は4:30発と決め、支度をして19:30頃に寝た。

□8/5 晴れ
  4:42 石塚小屋
  5:27 花之江河
  6:16 データロー岩屋
  7:50-8:00 休憩
  8:31-8:34 水場
  9:16 ミノの小屋跡
  9:41-9:51 休憩
 10:55-11:04 湯泊歩道入口
 14:05 平内海中温泉
・平内海中温泉→屋久島観光センター→民宿海楽園
 3:30起床。小屋の中で右足人差し指をヤマビルに食われて塩をすり込んで倒す夢を見て、起きてすぐ確かめたが現実でないと分かって安堵した。そもそも塩を持っていない。
 外に出ると快晴で、カシオペア座が見えた。注意書きはなかったものの一応食料を吊るしておいたためか、新高塚小屋で出ると言われていたネズミは出なかった。カマドウマはいたけど。朝食とパッキングを済ませて4:42に出発した。
 花之江河のあたりでヘッドライトが要らなくなった。結局3日とも最初はヘッドライト行動だった。
 湯泊歩道は初めのうちはそこまで荒れた様子ではないが、滑る大岩を超えなければいけない崩れた沢、それにかかる苔むして滑る渡れない橋、登山道に張り出した藪、登山道を覆う倒木など、次第に厳しい様相を見せてくる。泥に足を取られる度に杉山くんはトムラウシよりマシ、僕は栂海新道よりマシと自分を励ましながら進む。ピンクテープが注意していれば迷わない程度についているが、何度か見落としてしまった。白檀峰の南南東100mの北緯30°17′46.6″、東経130°30′07.3″、標高1545m地点での倒木は完全に道を塞いでおり、先のピンクテープも見えず代わりの踏み跡もほとんどないため、行く人(いる?)はそこだけは頭に入れておいたほうが良いだろう。なお、山と高原地図に載っている屋久島の一般登山道では、GPSの軌跡と地理院地図の点線が非常によく一致する。これは湯泊歩道にも当てはまり、迷ったときに参考にした。湯泊歩道を含む屋久島の荒れ気味な道に行く人がいれば(いる?)GPSを持っていくと良いだろう。
 涼しいうちにできるだけ歩こうと思いここまで休憩を取らずに歩いており、白檀峰付近の水場で1回目の休憩しようとしたが見つからず、その先の平らなところで休憩をとった。
 そこからも道は荒れていて、およそ実線ルートの様相ではない。 1日目は沢の音が聞こえると水場を期待して心を踊らせたものだが、この辺りでは崩れていて危険なところを通らせられるんだとしか思わなくなってくる。なお、水を取れる場所は地図に載っていないものも含めそこそこある。
 烏帽子岳分岐のミノの小屋跡、七五岳分岐を超えると、崩壊していないだけまだマシな道になるが、踏み跡に薮が張り出してきているところも多くある。このあたりの薮で杉山くんの登山靴に枝が刺さって穴が開いてしまい、僕も滑って転んでサポートタイツに穴を開けた。しばらく下り、1338mの標高点の尾根に乗るあたりの広いところで2回目の休憩。早く下りたいのですぐ切り上げて出発した。
 踏み跡を隠す大量の落ち葉の上をテープを頼りに歩いていると、七五岳まで登るという人と出会った。互いにここで人と会うとはと驚いていた。物好きもいるものだ。林道は荒れているが、一応歩けるとのことだった。
 ほとんど会話もせず下りることに集中していたためか、七五岳分岐からコースタイム比64%の早いペースで林道合流点まで下りてきて、そこで休憩した。日焼け止めを塗るなどして休んでいたが、杉山くんの靴に小さいヤマビルがいるのを発見したこともあり早々に出発した。1日目、3日目のルートはヤマビルが出ると聞いていたが、山行中に出会ったヤマビルはこの1匹のみであった。
 山と高原地図には湯泊林道は8.8kmとあるが、少し歩くと道脇に9kmの道標があった。一般道部分も含めた実際に歩く距離は湯泊バス停へは9.7kmである。それに下りでコースタイム3時間30分がつくのだから、大変な林道であることがわかる。
 湯泊林道は上から土砂が落ちてきていたり、下に崩れ落ちていたりと、ところにより並の登山道よりよっぽど酷い道になっている。道が沢になっていて水が汲めるところがあったりヤクシカと会えたりと多少いいこともあるが、そんなことどうだっていいので早くこのクソ林道を下りて温泉に浸かりたい。林道の状況は標高625m、515mの2ヶ所が最も酷く、前者は花崗岩が削れてできた幅30cmほどの崩れかけのナイフリッジを歩かねばならず、後者は完全に崩壊していて、前者の沢が高さ30mくらいの滝になっている横を石伝いに渡渉しなければいけなかった。僕は途中まで鋸岳の釜無川林道よりマシだと言い聞かせて歩いていたが、これには流石にあきれるしかなかった。それ以外にも、上から山がそのまま降ってきたような地滑りの現場を無理やり藪山行しなければいけないなど、林道という響きからはとても想像できないようなひどい道だった。
 山と高原地図の水場マークのすぐ上のところにゲートがあり、その少し先で道をなおす工事をしていた。そこからは道が崩れておらず、すぐに始まったアスファルト道からは里までずっと舗装されたままだった。途中に湯川大滝を望めるところがあったらしいが、無心で下りていたからか気づかなかった。
 標高250mくらいのところで、電波の通じるところで連絡したいことがあるという杉山くんに、合流場所を伝えて先に行って貰った。膝に抱えるもののない若者は歩くのが早く、すぐに見えなくなってしまった。
 林道に出てから日が陰っていることもあったが、標高が低いところは本当に暑い。最後1時間くらいはずっと日が照っていて本当に辛かった。気温の全然違うシートゥーサミットなんて、実際にやろうと思う奴はいったいどこのどいつだいと思った。あたしだよ。
 杉山くんと合流し、面積の微調整と在京への連絡をしながらやっとの思いで海中温泉に着いた。普段は巻けない林道でも、厳しさからコースタイムが甘めになっていたのか、ここまでもコースタイム比8割程度で来られた。最終バスの1本前のバスが来るまでに1時間以上あり、十分入浴する時間がとれて良かった。
 事前の調べでは1人100円とのことだったが、実際には値上げされていて200円だった。入り口のところに寸志箱、温泉の説明の看板、潮汐表があり、そこから先には靴を脱ぐところ、真水が出るホース、沈みかけた複数の湯船があった。下着、水着、土足禁止(バスタオルはOK)とのことだったのでその通りにした。
 人が入浴している間は写真撮影禁止だったが、我々だけなので写真を撮った。海に突き出た岩場で写真撮影をしたが、素足だったので少し切ってしまった。そんなことにもフナムシにも、今は海まで帰ってきたことを実感して笑顔になる。
 楠川の砂を海に返して、岩陰で全裸になって入浴した。源泉は硫黄の匂いがし、しょっぱくなかった。こんなに海に近いのに不思議なものだ。入浴に適した時間帯は干潮時刻(18:46)の前後5時間と書いてあり、その時間帯には当てはまっていなかったのだが、いくつかある湯船のうち1つは海に沈んでおらず暖かかった。とはいえ海水浴もできる季節なので、海に沈んでいる湯船にも入って海水浴気分を味わった。久しぶりに浸かるお湯は本当に気持ちよくて、海の真ん前という絶好のロケーションも手伝って非常に良い時間を過ごした。最高だ。辛い日も悲しい日もきっと楽しいことはいっぱいあるし、楽しいことを楽しいと思えることが一番楽しいのだ。他の人も何グループか来たが干潮時刻から離れているためか入浴する人は少なく、ほぼ貸し切りと言っても良かった。
 このまま最終バスの時間までいても良かったのだが、宿も決まっていないし干潮が近づくにつれ人も増えるだろうと思って15:00前くらいに上がり、着ていた服を着てバス停へ向かった。気温30.4℃湿度83%の炎天下は非常に暑く、真水で流した頭から滴る液体はすぐにしょっぱくなった。
 バスはほぼ時間通りに来た。車窓から見る山は雲を被っていた。乗った時には他に6人しかいなかった車内にも安房あたりからは人が増えたが、荷物を横に置いておけるくらいだった。
 屋久島港入口バス停で下車し、観光センターで荷物を回収した。泊まるところを調べると、民宿海楽園に温水シャワー、コインランドリーがあり、ドミトリーが1200円とのことだった。民宿海楽園に電話したところ空いているとのことなので、そこに宿泊することに決めた。ヤクデンでウインナー、肉、バナナ、炭酸飲料など欲望の赴くままに食べたいものを買い漁り、海楽園へ向かった。
 そこまでは歩いて30分弱だった。暑かったが、途中のご当地コンビニでアイスを買うなどして凌いだ。このコンビニでも、基本的に割高、酒類が多い、不足している物品があり棚が空いているなど、島の物資事情が伺えた。昨日今日の土日で屋久島ご神山祭りをしているらしく、その催し物の一環のバンド演奏を聞きながら海楽園へ着いた。
 管理棟へ行き手続きをしようとすると、管理人さんに暑いのでテントの方が良い、これから岳颪(山から吹いてくる風)が吹いて涼しくなると言われたが、扇風機があり平ら床で寝られ、あちらとしても多少儲かるとのことなのでドミトリーにした。ぶっきらぼうだがいい人そうで、先日のおじいさんが気に入るのもわかった。
 ドミトリーの隣の棟には和式トイレが男女1つずつ、60分100円の洗濯機と10分100円の乾燥機が2台ずつ、いずれも石鹸付きの水シャワー無料、温水シャワー15分100円があった。
 ここはキャンプ場、ドミトリー、民宿、居酒屋が併設されており、キャンプ場は海に面していて眺めが良い。ドミトリーのテント場の人との共用部分に冷蔵庫、流し、石鹸、スポンジ、使いかけのガスカートリッジ、各種ゴミ箱、コンセント、畳敷きの食事スペースがあり、ドミトリー内は20畳ほどで扇風機3台、掃除機、畳1枚、2人がけソファー、テーブル、トランプ、延長コード付き6口タップ、殺虫剤、管理人さんの私物などがあった。4方向に網戸を開けられて風が通り、扇風機もあるため暑くはない。いい寝床だ。
 1人ずつ水シャワーを浴びて全身を石鹸で洗い、落ちていたタイ語のパッケージのリンスインシャンプー(?)(ラウリル硫酸ナトリウムと英語で書いてあったので、おそらくその類のもの)で髪を洗った。暖かい季節のためか水シャワーでも寒くはなかった。服も着替えて完全に下界の人間になった。管理人さんから30歳に見られるくらい髭がボーボーしているが、それはそういう人もいるのでまあ良い。
 それから肉を焼き、炭酸を飲み、プリンを食べ、牛乳を飲みと、山行中では考えられない贅の限りを尽くした。この幸せのままベルトコンベアで自宅のベッドまで運ばれて行きたいと話していたが、残念ながら自宅までは1000km以上離れている。明日からの予定を決めて在京に投げ、花火を眺めながら荷物をあらかた整理して22:00頃に寝落ちた。

□8/6 晴れ
・民宿海楽園(解散)→白谷雲水峡→安房(屋久どん)→千尋の滝→トローキの滝→大川の滝→西部林道→永田いなか浜→一湊海水浴場→永田いなか浜→宮之浦港
 6:00頃に目が覚めた。杉山くんはサラダチキンをバーナーで炙って焼き、僕は棒ラーメンを茹でた。
 ここから杉山くんは屋久島の岩を攻め、僕は山に登ったり適当に観光したりするため別行動をとる。
 杉山くんは9:00前にバスで安房へ向かった。僕は原付で島を回ろうと思っていたが、管理人さんによると原付よりレンタカーのほうが良いとのことだった。クーラーの効いた車内でオタクソングを流しながら汗を流さず回る屋久島も楽しかろうと思い、南星レンタカーの軽自動車(24時間4100円、配車、乗り捨て無料)を手配した。空いている車がないらしく10:00に配車とのことだったので、近くのわいわいらんどというスーパーで、お金を崩しがてら食料を買った。
 9:45頃にレンタカーを受け取った。とりあえず有名だし近いので白谷雲水峡へ向かった。髭を生やして運転しながらヒゲドライバー氏の曲などを聴いていた。駐車場はいっぱいだったため誘導員さんに誘導されて路肩に止め、協力金500円を払って入場した。
 まず弥生杉を見に行った。道は普通の公園程度に整備されていた。弥生杉までは10分そこそこで着いた。弥生杉も縄文杉と似た風格のある杉である。これまで名前のついた屋久杉を見たのは1日目の行動中だけだったので、落ち着いて杉を見るのは初めてだった。ゆっくり眺めて二代大杉を見に行った。この杉は規模こそ小さいものの根元まで立ち入れる。これもじっくり眺めて、迫力のある水が側を流れる沢沿いの道を車まで戻った。
 安全のためには仕方がないことかもしれないが、苔むしたいい感じの石がモルタルで固められていて風情が台無しになっているなど、これまでもっと自然な屋久島を見てきた僕には少し残念に感じた。ここは山風の下界であり、山に生きることのできるわれわれの来る場所ではない。クーラーの効いた1日4100円の俺の城へ帰ろう。
 昼が近くなっていたので、とりあえず安房へ行き、なんとなく目に付いたレストラン屋久どんへ入った。屋久島うどん+魚天丼(1050円)を頼んだ。席からは海が近くに見えて綺麗だった。有名人も来るらしく、様々な人のサインが壁に飾ってあった。そういうのに疎い上、崩して書いてあるサインは読みづらく、解読できたのはあばれる君だけだった。屋久島名物のサバ節と飛魚のすり身で出汁を取ったという屋久島うどんは魚介の出汁がよく出ていて美味しかった。魚天丼も外はサクサク中はジューシーな大きな魚の天ぷらが乗っていて、ご飯を大盛りにしてもらったこともあって食べ応えがあった。
 次は千尋(せんぴろ)の滝に向かった。県道を右折しうねうねしてたどりついた広めの駐車場には、お土産やさんが1件と路上でお土産を販売している人がいた。滝の展望所は駐車場からすぐだった。大きな滝にも驚いたが、それよりも右岸の大岸壁に舌を巻いた。あまり眺めていても西部林道に行く時間が遅くなってしまうので早々にトローキの滝へ向かった。
 トローキの滝は千尋の滝のある鯛ノ川の河口にあり、直接海に流れ込んでいるという珍しい滝である。専用の駐車場はないので、近くの土産品店・直売所のぽんたん館でお土産を買い、トイレと駐車場を使わせてもらった。入口はぽんたん館の正面にあった。少し歩くと撮影スポットの看板があったが、そこからの眺めはさほど良くなく、もう少し歩くともう少し良い撮影スポットに着いた。滝の規模自体は大きくないが、確かに海に直接流れ込んでいる。写真を撮るとモッチョム岳が後ろに映るが、この日は雲の中だった。
 微妙すぎてよく分からないくらいの最南端候補の浦崎とナカノケーモイのどちらかには行きたかったが、いずれも車を停めるところがなかったため断念した。
 屋久島の道は、西部林道を除く県道部分は広く、集落間は制限速度60km/hで運転していて楽しいが、景色が良いのでよそ見してしまいたくなるのが難点だ。
 大川(おおこ)の滝の駐車場は5台ほどしかなく、満員で停められなかった。ちょうど2台の車からひとが下りていくところを見たのでしばらく空かないかなと思い、500mほど離れたところにあった花山歩道始点の空き地に車を停めて歩くことにした。滝まで100mほどのバス停のところに名水百選の大川湧水があり、口当たりが良くて美味しかった。歩いて来なければ気づかなかったので歩いてきて良かった。暑いけど。
 大川の滝は日本の滝百選に選ばれている滝で、落差88mの滝の滝壺の淵まで歩いていくことができる(遊泳禁止)こともあってものすごい迫力だった。滝から吹いてくる風と水しぶきがミストシャワーのようで、数分で滝に面した部分がびしょびしょになってしまうほどだった。虹が見えるところがないか探したが、太陽の方向が悪くて見えなかった。
 西部林道では噂通り野生動物と会うことが出来た。特にヤクザルには合計30匹以上出会い、3度道を塞がれ、1度は車から下りて近づいて逃げてもらった。ヤクシカも5匹ほど見た。サルがいなくても道が細くすれ違いに難儀するため、運転に不慣れな人は日差しが強くない時期なら原付のほうがいいかもしれない。標高が高いこともあり、ところどころ海側の景色がいいところがあった。
 一車線の林道を抜け、永田崎の屋久島灯台へ向かった。花崗岩の白い岩と深緑色の海が印象的だった。先っちょにあるだけあって景色が良く、永田の方まで見渡すことができた。
 その永田の集落を通り過ぎ、永田いなか浜へ着いた。ここはアカウミガメの産卵地として日本最大らしく、夏の夜間は産卵や孵化の妨げにならないよう19:30を過ぎると立入禁止になる。長さ1km、幅35mほどと砂浜の規模が大きく、卵が海水に浸からない浜辺の道路側にはウミガメの卵を保護するための立入禁止エリアがある。花崗岩質の砂浜と緑色の海が綺麗だ。
 次は一湊の海水浴場まで行った。永田のいなか浜より砂浜の規模は小さいが、海の家が1件あり遊泳エリアが設定されていて、実際に泳いでいる人もおり海水浴場感があった。屋久島北端の矢筈崎に行こうと思ったが忘れてしまった。
 今日はこの永田から一湊までのどこかで夕日を見て宮之浦へ戻ろうと思っており、候補は永田、一湊と夕日の丘展望所、東シナ海展望所だったが、車窓から見た印象から永田で見ることにした。
 岩の上に座って口永良部島へ沈んでいく夕日を見ていると、これまで車内で流していたオタクソングも相まってなんだか泣けてきてしまった。ボサボサと髭を生やした見た目30歳のガチ泣きは想像しないほうが良いだろうのでここでは詳しくは書かないことにするが、これまで生きてきた中で一二を争うくらい本当に良い夕日だった。まさかガチ泣きするとは思わなかったので1人で来て良かった。
 日が暮れてからも立ち入りが許されている時間まではいなか浜をぶらぶらと歩いていた。同じくぶらぶらとしている人、死んだウミガメの赤ちゃん、調査のためウミガメの卵を掘っている人などがいた。ああ今日も終わってしまうなあ。
 余韻に浸かるためしんみりとしたオタクソングを聞きながら、運転を邪魔するものがなく時速50kmで走れば1時間後にちょうど50km先に着くような20kmの道のりを、ゆっくりと1時間近くかけて宮之浦まで運転した。この日は宮之浦港の駐車場で車中泊した。
 ガソリンスタンドの営業時間(19:00頃まで)を調べていなかったため、寝る前にガソリンを入れられなかった。宮之浦のガソリンスタンドで、調べた限り最も早く営業が始まるところは7:30営業開始だった。乗ろうと思っていたフェリーはいびすかすは8:10発なので、微妙なところだ。
 窓を閉めて寝ていたら暑くなったので、窓を開けて岳颪を車内に入れたら暑くなくなった。とはいえ平らでないので少々寝づらく、悪い寝床カウントができた。
 Twitterをしていると、台風13号が関東を直撃するためANAが8/8、8/9の便の振替と払い戻しをしているというツイートが回ってきた。ソラシドエアのサイトを見ると同じことが書いてあった。お互いケツカッチンで8/7の最終便か8/10の始発便しか選択肢がなく、LINEで話し合った結果確実に帰れそうな8/7の最終便で帰ることに決まった。最後まで台風に振り回される山行になった。LINEをしながら寝落ちした。

□8/7 晴れ
・宮之浦港→屋久島空港→宮之浦港→益救神社→宮之浦港(集合)→フェリー屋久島2→鹿児島空港→羽田空港(解散)
 4:30頃に目が覚めた。日の出を見ようとうろうろしていると、堤防の先の方へ犬の散歩をしに歩いていく人がいたのでついていったら、曖昧に一般人立入禁止の看板が置いてあるところに入っていった。先をちらっと覗いてみると、特に危険はなさそうな上に日の出を見るのに最適だったため堤防の先まで行って日の出を見た。
 朝日が昇る~私は旅する~とオタクソングを口ずさみながら車に戻ると、小さいもののレンタカーに借りた時にはなかった気がする傷を見つけた。うわあやってしまった。そういえば運転そんなに得意じゃなかったな。恐らく一車線の西部林道ですれ違うときに脇の薮に突っ込んで付いたものだと思われる。とりあえず南星レンタカーに電話しようとするが、昨日わいわいらんどで買ったパンを死んだ目をしながら食べてもまだ6:00前で、当然まだやっていない。
 7:30頃に電話が通じ、営業所は8:30からでまだやっていないが、傷の状態を見たいので屋久島空港へ行くようにとのことだった。屋久島空港へ行き電話をかけるも9:00まで繋がらず、種子島の営業所へかけたら屋久島の営業所から電話が折り返されてきた。
 屋久島空港にいると伝えるとすぐに南西レンタカーの服を着たおばちゃんが来てくれた。すったところを見ると「西部林道はしょうがないね、まあ5000円くらいもらっとこか」とのことだった。ノリが軽いな。軽いノリで3週間分くらいの食費を持っていかれたことに多少のショックはあったが、他人の車を傷つけて5000円で済んで良かったと思いながら支払った。
 時間も時間なのでそのままガソリンを入れ、ついでにヤクデンで昼ごはん代わりのスコールを買って宮之浦港へ行き、レンタカーを返却した。ガソリン代は172円/Lと割高で、180km走って14.10L、2425円だった。ガソリン代を合わせて6000円くらいだろうと思っていた俺の城は結局11525円になった。ありがとう俺の城。ありがとう南西レンタカー。キャラクターがケモナー受けしそうだね。
 それから荷物を置くためフェリー屋久島2の乗船手続きをして、待合室に荷物を置いてしばらくゆっくりしてから益救神社へ行った。地図上では近く見えても意外と距離があり、大通り沿いからは入れないこともあって徒歩15分くらいかかった。山に登らせてくれてありがとうございましたと祈りを捧げ、暑かったので他には一切目をくれず待合室に逃げ帰った。
 12:00過ぎに杉山くんと待合室で合流した。フェリー屋久島2は学生証だけで学割料金が適応されたらしい。詳しくは杉山くんのレポートを読むと良いが、拠点からクライミングエリアまでアップダウンと距離があり、レンタルした自転車で往復するのにせいせいした上、真っ昼間は岩が熱くて登れたものではなく、これくらいでちょうど良かったかもしれないとのことだった。こちらとしても暑い中移動するのは大変だし、登り残した霧島は空港から近く金を積めば簡単に登りに来れそうだと思うので、残りの貴重な院試直前期間は諦めて院試勉強に費やすのが良いだろうと思う。
 フェリー屋久島2はフェリーはいびすかすとは違い、旅客用のフェリーという印象を受けた。客室、展望室、ラウンジ、フードコート、売店を始め、ゲームコーナー、カラオケルーム、浴場、サウナ、海上水族館(ウミガメの赤ちゃんの展示)など、通常のフェリーには付いていないような施設までついている。これでフェリーはいびすかすとほとんど変わらない値段なのには驚きだ。屋久島行きは宿泊費込みだと思えばはいびすかすも良いが、帰りは是非ともフェリー屋久島2をおすすめしたい。
 進行方向を見渡せるラウンジに陣取った。杉山くんも昨晩あまり眠れなかったようで、落ち着くとすぐ眠ってしまった。
 起きると進行方向右手に佐多岬が見えた。ラウンジで流れていたチャーリーとチョコレート工場の日本語字幕を聞いてリスニング対策をしたり、船内を散策してウミガメを愛でたり、霞んではいたもののやっと上から下まで全部晴れた開聞岳を眺めたりしていた。
 その後も知林ヶ島の繋がっていなさそうで繋がっているところや、普通の雲となんとなく見分けがつく桜島の噴煙を眺めたり、山行記録を書いたりして鹿児島港までの時間を過ごした。
 フェリー屋久島2を下りた後は、開聞岳でおすすめされた柳川氷室に向かった。道路の端に火山灰が溜まっており、鹿児島を感じた。下船した時刻が17:45で営業時間が18:00までだったため少し急いで歩いたら5分ほどで着いた。
 2人とも550円のベリーしろくまを頼んだ。18:00の少し前ではあったが、我々が頼んだ数人後にはもうオーダーストップになっていた。危ないところだった。セーフセーフ。
 鹿児島の天然水をゆっくり凍らせて作ったという氷を使ったかき氷はふわふわで口当たりがよく、氷の中に埋まっている味の詰まった冷凍のベリー類と、上からかかっているカルピスソースの味のグラデーションが大きいかき氷を飽きさせない。2人ともうまい!最高!と語彙力を失い、こんなに美味しいかき氷は食べたことがないと開聞岳のおじさんに感謝した。
 鹿児島空港へのバスに乗るため天文館バス停へ向かうと、逆側のバス停に行ってしまったこともあって、18:15発の便をちょうど逃してしまった。18:25発のバスを待つ間、飛行機にガスカートリッジ、バッテリー、ライターを持ち込めないことを思い出し、それらをザックの取り出しやすいところに移すため中身をばさばさ取り出していると、定刻の4分前くらいにバスが来たため急いでそれらをザックに詰め込んで乗り込んだ。
 鹿児島中央駅でそこそこの人が乗り込んできたが、ザックは隣の席に置いておけた。バスは渋滞の影響もあり数分遅れで空港に着いた。
 羽田に着くのは22:00過ぎなので、鹿児島空港で夕食をとることにした。フライトまで1時間15分ほどとあまり時間がなかったため、短時間にたくさん食べられそうな、初日に行った食堂の鶏飯バイキングを食べることにした。
 鶏飯とは奄美大島の郷土料理で、ご飯とその上に乗せた薬味に鶏のスープをかけたものらしく、鶏肉が入っているものと思っていた我々は少しがっかりした。味は鶏の出汁が効いていて美味しく、紅ショウガやたくあんとよく合った。サラダもバイキングの一部で、これまでほとんど野菜を食べていなかったこともあってもりもりと食べてしまった。
 フライト45分前に食べ終わり、チェックインをした。使わなかったガスカートリッジはその辺に置いておいたら別の登山者が拾っていくんじゃないかとも思ったが、放置されたガスカートリッジは完全に不審物なので、環境安全センターの不明試薬処理の大変さを思い出し、順当にカウンターで破棄を依頼した。
 キーホルダーにしていた十徳ナイフのしょぼいやつが持ち込み手荷物に引っかかって(行きは大丈夫だったのに……)大きい荷物に入れ直すなど少々面倒なこともあったが、時間があったため問題なかった。
 羽田空港の混雑緩和のため、数分遅れて離陸した。席が主翼の隣で夜景はあまり良く見えなかったが、室戸岬の形は分かって面白かった。ソラシドエアでは全員にドリンク1杯のサービスをしていて、アップルジュースを貰った。この紙コップの写真を撮ってハッシュタグと共にSNSにアップロードするとプレゼントが当たるとのことだったのでそうしようと思ったが、機内wifiが弱く、通信できなかった。途中からは寝てしまい、起きるとチーバくんの出ベソが見えるところだった。
 羽田空港で飛行機から出ると、台風が北の涼しい空気を運んできていてひんやりとしており、開聞岳山頂を思い出した。ちょうど立秋の暦通り、夏の終わりを感じた。
 羽田空港ではまだ残っていた非日常の雰囲気も、東京モノレールに乗り浜松町駅に着くころにはすっかり普段の東京になってしまった。酒臭いサラリーマンのいるホームで杉山くんと握手を交わして解散し、それぞれの帰路に就いた。

■反省
・下調べ不足。特に山行に入るまでがいきあたりばったりすぎた。台風で屋久島二等分山行を1日順延することを決めた時点でそこまでのことを詰めていなかったことは反省すべき。特に壁のないところで悪天候の中寝ることになってしまった初日の夜のことは反省しなければいけない。確実に寝られるところがあるだろう鹿児島市中心部にいるべきだった。
・藪でのルートファインディング力不足。個人的に藪山行をやっていたことにはやっていたのだが、完全に道のないところに突っ込んでいくタイプのものが多く、今回のように薄くつながる踏み跡を忠実にたどる能力は不足していた。最近の雷鳥では藪や読図山行のようなものをほとんどやらないため(良く知らないけど沢の人達はやっているのかも)、行ける山の幅を広げたいという人は山での総合力を高めるためにやってみてもいいかもしれない。
・ガスカートリッジが多すぎた。普段の山行では使い途中のカートリッジがあったり、調理するためガス使用量が多かったりするが、今回は新品を使ってお湯を沸かすだけだったため、250gの缶を1缶も使い切らなかった。良く考えて個数の設定をすべきだった。
・運転技術は山を続ける上であるに越したことはない。鍛錬します。

■感想
 反省点も多かったが、天候や人に助けられて非常に満足が行く山行になった。山行の完遂だけでなく、クライミングジム、1日の自由行動、おいしいかき氷など、下界でも充実していた。霧島も登り残してしまったし、開聞岳も晴れた涼しい日にまた行きたいし、屋久島にもまた行きたいところ、まだ行っていないところがあるので是非再訪したい。
 睡眠環境や暑さ、荒れ果てた道など辛いことも多かったが、今回のことを耐えられたことは今後の自信になるだろうし、これに懲りずに(もちろん自分に行ける範囲で)キツい山行も計画し、そこでしか味わえない感動や達成感を味わいたい。

■藪山行について
 実はこの山行で藪に行くため必要に駆られて始めた藪山行だが、いざやってみると静かな山との一体感、登山道でないところを自由に歩く爽快感が楽しいものである。地図の感覚も得られる。興味がある人は是非チャレンジしてみてほしい。
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作成者:杉山

屋久島でクライミングをする方に向けて、わずかながら自分が得た情報を記しておきます(2018年8月現在)。
○クライミングジムviva2
 宮之浦の屋久島観光センターから歩いて30分くらい(だった気がする)。屋久島高校脇の急勾配を上がったところにある。大人500円、子供100円と超格安。トイレ、扇風機、換気扇、クーラー有り。無人であるが、レンタルシューズやチョークも存在する。他にハーネスやエイト環、クラッシュパッドも置いてあり、利用者の良心を信じきっているな~と。記帳を見る限り、1日1団体程度が利用するのだろうか?僕らが行った時は貸切状態だった。
 なお、どうもパッドはレンタル用ではないらしく、管理人に電話で尋ねると「安房の山岳太郎(後述)で借りられるよ」とのこと。ハーネスやエイト環については未確認だが、これもおそらくレンタルできないのでは。
 小規模なジムだがルーフやマントルもあり、全体的に面白い。屋久杉推しなのか木製のホールドがかなり多く、都心のジムとはまた違う楽しさがある。ただし課題は辛めで、6級なのにフラッギングが要求されたり、4級で地ジャン+ヒールからの足ブラが必要だったり、と刺激的。
○山岳太郎
 安房に位置し、9:00~18:30の間営業。合庁前や警察署前が最寄りのバス停(確か宮之浦から800~900円くらい)。店の中に小さなクライミングウォールがあり、無料で登れるらしい。普通の登山道具の販売・レンタルの他、クラッシュパッドの貸し出しもある(1000円/day, 2日目以降+500円/day)。三つ折りの大きなパッドでも同額。トポは2000円。チョークはワイルドカントリーのブロックチョーク(約300円)とカンプのよくあるチャンキーチョーク(約1200円)を確認。クライミングシューズは持参していたので、レンタルの有無は不明。
 なお、マットのレンタル時、「クソ暑いですが大丈夫ですか…」と心配された。実際あまり大丈夫ではなかったので、次は冬に行きたい。
○森のきらめき
 山岳太郎のすぐそばにあるロッジ。9:00~19:00で営業。コインロッカー有(大:500円、小:300円。大はザックも入る)。自転車レンタル有(1000円/day, グレードを上げると1500円/day)。wifiもある。寝袋持ち込みであれば1980円/dayが最も安く泊まれるプラン。1階はコンビニ+土産物屋のようになっているが、19:00を過ぎるとスタッフは誰もいなくなる。なお、宿泊客は土産物のみ10%OFFで購入可能。
 近くにモスバーガーとコンビニもどきを確認。ちなみにこの辺りだと牛乳は夕方にはどの店でも売り切れてしまうそうで、困った。
○高平海岸
 時間とお金の都合上、今回行った岩場はここだけ。安房から自転車で7キロちょい(10キロ以上あると思っていたが、勘違いだった)。パッドを背負ってチャリで移動すると坂まみれで死ぬのでオススメしない。下り坂はめちゃめちゃ爽快だが…。
 周辺に自販機やトイレ・コンビニの類は確認できなかったが、坂がしんどすぎて散策していないため、僕が見つけられていないだけかもしれない。海岸ゆえ歩きづらく、全域を歩こうとすると中瀬川・小田汲川・および無名の沢の渡渉を行う必要がある。前二つは飛び石で乗り切れたが、無名の沢では濡れた。夏なのであっという間に乾いたが、冬は困りそうだ。
 海岸なので山ほどフナムシがおり、脱ぎ捨てたサンダルの中にちゃっかり潜んでいたりするので、苦手な人は辛いかもしれない。個人的には、「海のゴキブリ」とか言われる割にはかわいい見た目をしていると思うが…。なお、振動があるとすぐに逃げ出すので、フナムシが邪魔で課題に取り組めないということはない。
 釣り人は1,2人見かけたが、クライマーは2日を通して僕1人だった。まあ完全にシーズン外なので当たり前かもしれない。
 箱岩のそよ風(3級)は下地が悪く、へたに落ちると海水へドボンしてしまう。干潮を狙えば違うのかもしれないが…ムーブも全くわからずやる気が湧かなかったので、ほとんど触れていない。岩から降りるのは容易。
 大ちゃんお迎え岩の大ちゃん(2級)は下地良し。ガバとカチが程よくミックスされていて面白かった。通算50~60回くらい触れたと思うが、右手で2センチくらいのホールドを取ったあと、どう頑張っても上の水平クラックに右手を送れなかった。クラックにマッチできれば、その後のマントルは返せるのだが(たぶんそこだけだと4級くらい)…。結局繋がらず、敗退。無念。とはいえ、学ぶことの多い良い課題であった。たぶんこの課題のおかげでフラッギングが少し上手くなったと思う。トップアウト後は海側から容易に降りられる。
○雑感
 冬に車で来るのが正しい屋久島ボルダーの楽しみ方だと思う。次は大ちゃんにリベンジして、更に瀬切まで行って波の綾(5段-)を見に行きたい。
 あと、屋久島って普通何しに行くところなんですかね。マット背負ってチャリ押しながら坂を上っていたら(漕ぐ元気がなかった)、島民のおじさんに「岩登って楽しい?他にやることあるだろ笑」とか言われてしまった。いや、他にないんですよ、と返して別れた。