2018/8/19-21 赤木沢遡行
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
赤木沢遡行 計画書ver.1.2
作成者 山本
■日程 2018年8月19日(日)- 21日(火) 予備日2日
■山域 北アルプス
■在京本部設置要請日時 2018年8月23日(木) 19:00
■捜索要請日時 2018年8月24日(金) 9:00
■メンバー(計4人)
CL 山本 SL 木口 谷口 橋本
■集合
8月18日22:10 バスタ新宿4F
■交通
□行き
○東京から富山へ
VIPLINER バスタ新宿22:40-5:00富山駅北口 7100円
○富山駅から折立へ
富山駅—折立直通バス 富山駅6:10-8:10折立 3500円
予約番号 073187851
□帰り
○折立から富山駅へ
富山駅—折立直通バス 折立13:00-15:00富山駅 3500円
予約番号 073188071
○富山から
・谷口、山本
…富山に滞在し、23日までに路線バスで上高地へ
・木口、橋本
…下山当日または翌日に高速バスや電車で帰宅
■行程
□1日目
折立-(2:00)-三角点-(1:30)-五光岩ベンチ-(1:30)-太郎平小屋-(0:20)-薬師峠
計5:20
※天候と体力に余裕があれば薬師岳ピストン(往復4:50)
※薬師峠キャンプ場に水場あり。
□2日目(沢遡行日)
薬師峠-(0:20)-太郎平小屋-(1:15)-薬師沢左俣出合-(1:00)-薬師沢出合-(1:30)-赤木沢出合-(2:00)-二俣-(1:30)-稜線-(0:50)-北ノ俣岳-(1:10)-太郎平小屋-(0:20)-薬師峠
計9:55
※薬師峠キャンプ場に不要な荷物を預けて出発する。
※薬師峠キャンプ場に水場あり。
□3日目
薬師峠-(0:20)-太郎平小屋-(1:00)-五光岩ベンチ-(1:00)-三角点-(1:10)-折立
計3:30
※天候と体力に余裕があれば薬師岳ピストン(往復4:50)
※帰りのバスに間に合わないことが予想される場合、太郎平小屋付近までにタクシーに電話する(折立は携帯電話が通じない)。
■エスケープルート
○一般登山道
折立に引き返す。
○赤木沢
大滝まで 薬師沢小屋へ引き返すか、そのまま進む。
大滝以降 そのまま進む。
■共同装備 当日適宜分担します。
テント(フェザーライト)
本体・ポール
フライ
鍋(雪月)
カート*2
ヘッド(緑1)
ヘッド(緑4)
調理器具(キャサリン)
救急箱(苺)
ロープ(8.6×30m)
アッセンダー
※救急箱、ロープ、アッセンダーは九州の沢より受け渡し
※鍋、ヘッド、調理器具は山本が北海道よりそのまま持参
■沢装備
□沢足袋 □ヘルメット □ハーネス □スリング □カラビナ(2) □環付カラビナ(2) □確保器・下降器 □笛 (□ウエットスーツ)
※沢遡行時は荷物の防水化
※不要な荷物は富山駅のロッカーに預けられます。
※谷口、山本は槍穂で使える登山靴を忘れないこと。
■地図
2万5千分の1地形図 「三俣蓮華岳」「薬師岳」「有峰湖」
山と高原地図 「37 剱・立山」
■遡行図
沢登り銘渓62選 p.286-289
ヤマケイ入門&ガイド p.208-209
東京周辺の沢(1994) p.302-303
■遭難対策費
400円×4人 計1600円
■備考
日の出: 富山8/20 5:12
日の入: 富山8/20 18:37
NHKラジオ第二: 富山1035Hz 松本1512Hz
□雨天時
前日昼までに判断・連絡する。
現地入り後、富山での停滞も視野に入れる。
□警察署電話番号
富山県警察本部 076-441-2211
富山南警察署 076-467-0110
□山小屋等
・太郎平小屋
…素泊6000円、水場あり
○薬師峠キャンプ場
…テント100張、幕営料1000円/人、水場あり
・薬師沢小屋
…60人収容、一泊2食付9700円、素泊まり6000円、要予約
※小屋予約状況
(http://ltaro.com/?page_id=3760)
□過去記録
2014年
2012年
赤木沢遡行記録
作成者 山本
■日程 2018/8/19(日)-8/21(火)
■山域 北アルプス
■天候
1日目 晴れ
2日目 晴れのち曇り時々雨
3日目 曇りのち晴れ
■メンバー(計4人)
CL山本(37/B4)、SL木口(39/B2)、谷口(37/B4)、橋本(40/B1)
■総評
黒部川本流(奥ノ廊下)の大スケール、赤木沢の造形美、薬師岳の稜線と見どころ満載で充実した遠征になった。それほど難しくない大滝の高巻きで滑落事故が発生しかけたが、深く反省するとともに今後の安全に生かしていきたい。
■時間
□1日目
8:35 折立
9:12-9:30 休憩
10:40-10:55 三角点
11:40-12:00 2011m
12:35-12:45 五光岩ベンチ
13:35-14:25 太郎平小屋
14:40 薬師峠キャンプ場
□2日目
5:15 薬師峠キャンプ場
7:00 薬師沢小屋
7:35 入渓
8:40 3m滝
8:55 赤木沢出合
9:25 2段10m滝
11:45 大滝下
12:10 二俣
13:55 稜線
15:20 中ノ俣岳
17:00 薬師峠キャンプ場
□3日目
4:45 薬師峠キャンプ場
5:02 ベンチ
5:27-5:32 薬師岳山荘
6:08-6:23 薬師岳
6;48-7:00 薬師岳山荘
バス11:30発
7:35-8:08 薬師峠キャンプ場
8:27 太郎平小屋
8:55-9:00 ベンチ
9:50-10:00 三角点
11:00 折立
■行動記録
□1日目
・~折立
富山まではVIPLINERの名にふさわしいVIPな夜行バスだった。各座席にモニターが付いていて、なんと映画鑑賞ができる。国際線の飛行機の間違いではなかろうか…。富山駅でロッカーに荷物を預けたり、朝食を買ったりする。折立の水場が飲用禁止ということで、駅のトイレで苦労して水を汲んだ。折立までのバスの乗車率は半分ほど。二人席の片方にザックを置いて座る形式だった。折立に到着すると、日曜日ということもあって駐車場が車で満杯。水場の水道には「生水はのめません。」と書かれていた。
・折立~三角点
暑さに加えて、皆荷物が多くてしんどい。一般山行の泊り装備に加えて沢装備も担ぐのは初めてだ。谷口は荷物がメインザックに入りきらず、サブザックを何とかメインザックに括り付けていた。木口のザックは特に重い。ガチャ類と食当の材料が入っているからだろう。最初の休憩箇所で、昨日赤木沢を遡行してきた10人弱のパーティー(若い男性L+その他高齢者)と遭遇。谷口のザックを見かねた男性Lがパッキングを手伝ってくれた。おばさんからもお菓子の差入れと激励をいただいた。このような高齢者のパーティーでも赤木沢に入っているのかと思うと気が楽になったのと同時に、赤木沢のメジャールートぶりに驚いた。三角点まで登ると有峰湖と立山連峰の展望がよい。朝までいた富山平野もよく見える。直前に悪天候で立山劔を中止にした谷口は複雑な顔をしていた。
・三角点~太郎平小屋
太郎平小屋までの登山道はよく整備されていて、傾斜もそれほどなくて歩きやすい。山本と橋本が参加した裏銀座の烏帽子岳までの急登とは大違いだ。荷物が重いのはどうにもならないが…。草原が心地よく、薬師岳も見えてきた。荷物に文句を言いつつ登っているといつの間にか太郎平小屋に到着。電波と水を補給する。小屋の外で宿泊者用の布団を干していて、従業員と思しき人が昼寝していた。北アルプスで昼間からお布団にごろんできるなんて何と幸せなことだろう。
・太郎平小屋~薬師峠キャンプ場
太郎平小屋から10~15分ほど木道の空中散歩を楽しむとキャンプ場へ下りられる。テントの受付は太郎平小屋ではなくキャンプ場で行う。早稲田の20人ほどの大パーティーがテントで楽しそうに騒いでいた。キャンプ場は傾斜地が多いが、少し離れた場所で我慢すれば平らで広い場所にテントを張れる。薬師峠キャンプ場は薬師沢から取水しており、冷たくて美味しい水を無尽蔵に使える。食当は木口の麻婆野菜炒め(?)。野菜たっぷりで大変美味しうございました。テント内で沢装備がかさ張ったが、フェザーライトは4人で快適に寝られた。
□2日目
・薬師峠キャンプ場~薬師沢小屋
おそらく3時30分に起床。テントを撤収しなくていいので起床時刻は遅めにしてみた。朝食は橋本のパスタ。お肉たっぷりでたんぱく質を摂取できた。
日の出前の4時45分にヘッドランプを付けて出発。薬師沢出合まで木道を降りていく。細かいアップダウンがあるのと、朝露で少し滑りやすいので注意。薬師沢左俣出合まで来ると並行して流れる薬師沢が目に入ってテンションが上がる。快適な木道を歩いていくといつの間にか薬師沢小屋に着いた。小屋近くの登山道から黒部川本流の青く澄んだ水が見えた時の感動は言葉にできないほどで、ぜひ実際に目で見て味わってほしい。薬師沢小屋でトイレや取水などを済ませ、ゆっくりと入渓準備をした。薬師沢小屋は辺鄙な場所にある割にかなり綺麗かつ便利な小屋で驚いた。
・薬師沢小屋~赤木沢出合
小屋前の梯子から容易に入渓。こんな朝早くから入渓点付近にイワナの釣り師が何人かいた(黒部源流の渓流釣りはリリースが徹底されている)。最初はゴーロ歩きがつらいが、深い青の淵に至るたびに感動。この日は水量が少なかったのか、際どい渡渉どころか腰までつかる箇所すら一つもなかった。しかし、一度増水すれば途端に難易度が上がるだろう。水が恋しい木口は泳がなくても余裕で突破できる箇所で何度か泳いでいた。泳ぎたくなる気持ちは十分分かるが(山本も水がこれほど冷たくなければ泳ぎたかった)、早速寒そうである。
しばらく歩くと側壁が立ってきて流れが急になり、ヤマケイ遡行図の3m滝に至る。これが黒部川本流で唯一の滝だった。谷口は右岸の残置スリングに惹かれてへつりで突破したが、バランス感覚が必要だったようだ(Ⅲ+~Ⅳ程度?)。過去記録の通り、釜の水流はかなりのものであり、流れに巻き込まれて溺れる危険性はありそうだ。他の3人は木口から順番に左岸の壁を3mほどクライムダウンして沢床に復帰してから滝に取り付いた。クライムダウンは簡単すぎず難しすぎず適度な難易度で楽しかった(Ⅲ~Ⅲ+)。3m滝の左岸の登攀は非常に容易(Ⅱ~Ⅱ+)。3m滝の先は若干ゴルジュっぽい箇所もあり、木口の泳ぎが捗る。ほどなくして川幅が広がり、赤木沢出合へ。これまで何度も写真で見てきた憧れの秘境に来ることができて夢のようだった。出合のナメは光が差し込むと本当にきれいで、しばらく写真撮影に興じた。出合は深い淵になっており、ここで橋本も本日初泳ぎ。とんでもなく寒そうにしていたが、楽しそうで何より。
・赤木沢出合~大滝
出合は左岸をへつれば泳がずに突破できる。しばらく赤いナメが続いた後、すぐに2段10m滝に至る。青い立派な釜がどうしようもなく美しい(気に入った筆者はデスクトップの壁紙にしている)。ここで泳がずにいつ泳ぐのだということで、山本と木口が釜で泳ぐことにする。融雪水の影響で水はとんでもなく冷たいが、泳いでみると病みつきになって何度も泳ぎたくなる。ゴーグルで水中を覗くと釜にはイワナが何匹も泳いでいた。せっかくなので2段10m滝にもゴーグル装着で取りついてみたところ、楽しくシャワークライムできた(Ⅲ+)。しかし水温と水量のせいで寒すぎるし、こんな釜に落ちるなんて想像したくもないので、とてもザックを担いで突破に臨みたくはない。結局この滝と釜で40分も遊んでいた。なお、寒がりの谷口は一度も泳がず。
2段10m滝を左岸から巻くと、すぐに開放的な4段ナメ滝が現れる。この赤がかったナメ滝も非常に美しく、筆者はしばらくの間スマホの壁紙にしていた。次の3段8mの滝は1段目を直登し、2段目と3段目は二手に分かれた。谷口と木口は左岸から巻き、山本と橋本はへつって右岸に取り付き、滝を横断してフリーで直登した。直登は滝でずぶ濡れになるが、適度な難易度で楽しい。ここから先は一箇所苦労するへつりがあったが、それを除けばどの滝も快適に超えられる。どの滝も美しいし、何より開放的で北アルプスの深部が見渡せるのが素晴らしい。沢遡行中に北アルプスも楽しめるなんてぜいたくなことだ。
・大滝
大滝は垂直な壁にかかっているが、水量に乏しくしょぼい。泳げるような釜もなくて残念だった。大滝の巻きにロープを出すかは現地判断ということにしていたので、CLがクライムダウンできなくなるところまでノーザイルで偵察に向かう。巻道は明瞭で、多少急な箇所も豊富な灌木に掴まれば難なく登れる。途中分岐の踏み跡を左に曲がると大滝1段目上に出るが、そこから先は高度感もあってどうしようもない岩登りなので注意。分岐まで引き返してそのまま巻道を直登すると大滝2段目上のトラバースに出られる。容易な巻道だったので、確保用のお助け紐(結局使わず)だけ持って巻道に戻り、後続に登るよう指示を出す。橋本、木口、谷口の順に登ってもらい、大滝上で合流した。全員無事に大滝の巻きを終えたが、木口が大滝上のトラバースで滑落しかけていたことが判明(後述)。
・大滝~稜線
水量は少なくなってくるが、次第に北アルプス源頭部の趣が出てくる。二俣から先は沢遡行というよりも、北アルプス源頭部で自分たちだけが自然を味わえている心地良さで気持ちいい。薬師岳だけでなく、水晶や鷲羽といった裏銀座で歩いたピークが見えて感慨深い。詰めはテント場に近い赤木岳ではなく中俣乗越への枝沢を詰めたが、噂に聞いていた源頭のお花畑ではなくハイマツ帯に詰めてしまい5分ほど藪漕ぎをする羽目になった。枝沢は何本にも分かれていたので、適切なルートを取れば快適に稜線まで詰められそうである。とはいえ北アルプス源頭部の開放的な詰めやハイマツ帯の藪漕ぎはなかなかできる経験ではなく、後から振り返るととても楽しいものだった。詰めでお花畑を踏み荒らしてしまうのは心苦しいが、誰も訪れないような源頭部の大自然を独占している瞬間の幸福感には病みつきになってしまう。ハイマツ帯を抜けた後のお花畑で沢装備を解除し、登山靴で稜線に復帰した。
・稜線~薬師峠キャンプ場
稜線上はずっとガスっていて何も見えず。赤木岳でも北ノ俣岳でも眺望は得られなかったが、北ノ俣岳を過ぎた後のお花畑には心癒された。お疲れのメンバーが多く時間がかかってしまったが、3時間ほどでキャンプ場へ戻った。はっきり言ってここの稜線歩きは蛇足でしかなく、次来るときはテント泊装備で赤木沢を遡行して黒部五郎キャンプ場へ抜けたい。
夕食は谷口のパスタ(多分)。相変わらず単純なメニューだが、それでも美味しいのだから憎めない。山本と谷口はキャンプ場の受付でビールを買って、赤木沢の素晴らしさに乾杯した。最高。
□3日目
・薬師峠キャンプ場~薬師岳山荘
確か3時に起床。前夜の天気予報が微妙だったので、朝の天気を見て薬師岳に登るか決める予定にしていたが、テントの幕を開けるとなんと満天の星空!今まで山で見た中で一番綺麗な星空だった。星空に勇気づけられて(微妙なモチベだったところを本気で勇気づけられた)、薬師岳に行くことにした。朝食は山本のラーメン(だったような気がする)。ここまで登山道でお疲れ気味だった木口(沢では一番元気だったのに…)はテントでお留守番を選び、他の3人で薬師岳まで急ぐことにした。コースタイム通りだと折立のバスに間に合わないかもしれないのだ。
日の出前にヘッドライトを付けてキャンプ場からの急登をかっ飛ばす。雪渓が残っているだの迷いやすいだの事前に聞いていたが、この日は特に問題なし。途中ケルンのあるベンチを通過し、コースタイムの半分以下で薬師岳山荘まで歩けた。
・薬師岳山荘~薬師岳
薬師岳山荘から薬師岳までは結構長い。愛知大学大量遭難の碑や使えるのかよく分からない避難小屋がある。薬師岳のカールも稜線も素晴らしい眺望で、急いで来た甲斐があった。山頂では神社の薬師如来像にお参りし、立山方面の稜線の眺望を楽しんだ。冬季にスキーで立山から上高地までつなぐ日本オートルートはこの薬師岳の稜線も通るコースで、夏でもその魅力がよく分かる。特にCLは五色ヶ原の高層湿原をとても魅力的に感じた。なお、どうせ今度の槍穂は天気が悪いということで、山本と谷口は折立に下山せずに立山劔まで縦走するという案もあった。結果論でしかないが、立山まで縦走していればよかったと後悔していないこともない。それにしても、薬師岳は風が強くて寒い。稜線の景色は素晴らしいが、山頂に長く滞在したくなるような場所ではない。
・薬師岳~薬師峠キャンプ場
帰りの薬師岳山荘でお土産を物色した。橋本が家族にポストカードを買っていた。山荘の中で折立11時発のバスがあることを知る(実はフェイクでこの日はもう運転していない)。急げば間に合うので、頑張って下りる。キャンプ場までの下りは特に記憶がないが、岩場の下りで水たまりに着地したCLのランニングシューズがびしょ濡れになってつらかった。
・薬師峠キャンプ場~折立
テントで二度寝していた木口を起こして撤収。少し無理のあった薬師岳ピストンに連れて行けなくてごめんなさい…。帰りは重さの負担を考えて木口と谷口のザックを交換した。実際に木口のザックは断トツで重く、初日から荷物の分担を考えるべきだった。下りは初日より断然楽に下りることができて、11時のバスに間に合った。そのはずだったが、この日はもう運転日ではなかった。薬師岳山荘で騙された人が多いのか、他にも何パーティーか同じ勘違いをしていた。
・折立~
11時のバスがないので、仕方なく折立で2時間待って富山行のバスに乗る。富山に到着すると、暑すぎてお話にならない。まず駅北10分の竹の湯で風呂に入った。受付も脱衣所も風呂もかなりレトロな銭湯だった。脱衣所のテレビで気になっていた夏の甲子園決勝を観戦し、完全に下界モードに入った。駅ナカで富山名物ブラックラーメンを賞味し、各々帰宅の途へ。谷口と山本は3日後からの槍穂縦走(結局悪天候で中止)に備えて、駅前の東横インに宿泊した。
■赤木沢大滝における滑落インシデントについて(文責:木口)
□概要
大滝の巻きの最後、落ち口までトラバースするところで滑落しかけました。
□ルートの状況
巻き道を登りきって、落ち口までの数mをトラバースする明瞭な踏み跡でした。手を使わず足だけで歩ける平らな道で難所ではありませんでした。すぐ横が滝で高度感はありましたが、沢山行ではよくある程度で特別怖いわけではありませんでした。
□木口の行動
上記の道を特に危険だと注意することもなくいつも通り歩いていたら足が山側から滝側に滑って態勢が崩れ、落ちそうになりました。とっさに地面の草を掴んだら止まり、ほとんど落ちませんでした。もし草で止まれていなかったらそのまま下まで落ちていたと思います。
□反省
初級の沢であること、大滝までの行程も簡単だったこと、大滝が予想外にしょぼかったことなどから赤木沢をナメきっていました。この油断が足を滑らせたと思います。沢ではどんなに簡単そうに見える巻き道や滝でも何かミスをすればすぐに重大な事故になるということを忘れないで慎重に登りたいです。
■感想
・赤木沢はまさしく疑いようのない超美渓。赤木沢出合までの黒部川本流もスケール感が素晴らしい。学生のうちに必ず訪れたいと思っていた沢を遡行できて感無量である。ロープなしで十分に遡行できる難易度なので、沢経験が長くない人にもおすすめしたい。
・遡行中に沢タビ以外の沢装備を使う機会がなかった。むしろ泳ぎセットの方が役立つ(ゴーグル、ウエットスーツなど)。ロープ等は緊急時用のつもりで持参したい(大滝の巻きでメインロープを出すパーティも多い)。
・澄んだ水で、釜などの泳ぎがとても楽しい(もちろん突破に泳ぎは不要)。出合からすぐの2段10m滝の釜は絶好の泳ぎスポットである。ただし超寒い。寒さに震えても泳ぐだけの価値はあると断言できる。
・沢屋にとって黒部川は特別な場所である。水量が少なめな奥ノ廊下でも黒部川のスケールの一端を感じられる。力を付けて、いつの日か上ノ廊下や下ノ廊下にも足を延ばしてみたい。
・計画段階で頭の片隅にあった欲張りコース(薬師峠キャンプ場から赤木沢経由で黒部五郎まで日帰り)は単独行でもなければ時間的に厳しい。こんな素晴らしいコースを急ぐよりも、赤木沢で時間をぜいたくに使って楽しむ方が満足度は高そう。
・薬師岳は日本海から吹き下ろす風が直撃し、強風でかなり寒い。稜線の景色は文句なし。
■反省
・赤木沢の大滝上で木口が滑落しかける重大インシデントが発生した。草付きを掴んで止まっていなければ、まず助かっていなかった。滝の巻き、とりわけ滝の落口付近のトラバースは沢の遡下降において最も危険な行動であることを絶対に忘れてはならない。
・さらなる大問題として、滑落インシデントをCLが把握できていなかった(初めて耳にしたのは下山2か月後)。先頭と後続の距離が空きすぎていたことも、遡行中に適切なコミュニケーションが不足していたことも問題。特に核心部の前後ではパーティー全員でコミュニケーションを図らないといけない。
・沢タビの使い分けを検討したい。今回の滑落事案の直接的な原因が沢タビだったわけではないが、木口がどの沢でもラバーソールを履いているのには不安を感じるので、フェルトソールも準備してほしい。
・遡行に時間がかかりすぎた。釜で泳いで遊びすぎたこと、稜線までの詰めに失敗してハイマツ帯で手間取ったことが原因。
・記録は記憶が残っているうちに書くべき(特に泊り山行)。4ヶ月も放置しているとかなりの労力を要する作業になってしまう。今後はCL以外で記録を代筆する記録係を積極的に設けていきたい。
■メンバーより一言
□木口
道ではバテて沢では滑落しかけて、ご迷惑おかけしてすみません。荷物を持ってもらったり励ましてもらったりして楽しく歩けました。ありがとうございました。
(→筆者注:道では疲れた中よくがんばってくれました。パーティー全体でもう少し配慮できればよかったです。)
□谷口
・行きのバスで以前から見てみたかった映画が観られてよかった。
・赤木沢はもちろん美渓だったが、出合までの本流も景色がよくて開放感があり個人的にかなり高評価。
・稜線に上がってからテン場までが、視界ゼロ、雨で寒い、長い、つらいで精神的にきた。橋本が寝るのも納得。
□橋本
・美しい沢の沢登りと北アルプスの稜線歩きを両方楽しめて、大変充実した3日間になりました。赤木沢そのものもとても美しいのですが、遡行中に後ろを振り返ると先日登った水晶や鷲羽がはっきり見えて、北アで沢を登っていることを実感して最高の気分でした。
・裏銀座縦走の時も思いましたが、北アルプスは本当に素晴らしい山域です。高山を登ることが山の全てだというわけではないですが、今年同期で北アに行けたのが僕だけというのは、なんとももったいない、残念なことだと思います。来年の夏は、同期や後輩ともこの北アの素晴らしさを共有したいです。