2018/9/11-13 東北北部

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
東北北部遠征計画書 ver.1.1
作成者:菅沼

■日程 2018/9/11-13(火-木) 各日日帰り・3日間・予備日なし
■山域 岩手山・八幡平/早池峰
■在京本部設置要請日時 各日 18:00
■捜索要請日時 各日 翌9:00
※在京へは,各日下山後に連絡する。
■メンバー (計5人)
 CL菅沼 SL児玉 石田 小倉 薩摩

■集合(暫定)
 14:00 JR北上駅

■交通
□行き
 各自手配。
□帰り
 各自手配。
 仙台付近までは菅沼車で送っていくことが可能です。
 現在のところ,9/14,15は観光し,9/15に解散予定。

■行程
※全日程とも,必要のないものは車に置いていきます。
□0日目(9/10)
 集合後,菅沼車で河原坊キャンプ場へ〈約1:40〉
 《テント泊》
□1日目(9/11)【早池峰山】
 河原の坊-0:40-小田越-1:20-五合目-1:00-早池峰山-0:50-五合目-1:00-小田越-0:30-河原の坊
 [計5:20]
 ※余裕があれば,薬師岳ピストン
 小田越-1:30-薬師岳-1:00-小田越 [+計2:30]
 ※携帯トイレが必要です。(登山口で購入できる模様)
 下山後,網張温泉キャンプ場へ〈約2:20〉
 《テント泊》
□2日目(9/12)【岩手山】
 御神坂駐車場-2:00-大滝展望地-2:15-不動平-0:40-薬師岳-0:30-不動平-2:00-大地獄分岐-0:20-切通-0:30-分岐-1:20-犬倉山・巻道分岐-0:55-網張温泉
 [計10:30]
 ※時間・メンバーの体調等によっては,エスケープも積極的に検討する。
 ※岩手山は活火山であることに,十分留意する。
 網張温泉キャンプ場泊《テント泊》
□3日目(9/13)【秋田駒ヶ岳】
 起床後,乳頭温泉付近へ〈約1:40〉
 八合目-1:10-浄土平-0:20-男女岳-0:15-浄土平-0:20-横岳-0:15-焼森-1:10-湯森山-0:40-宿岩-0:40-笊森山-1:10-乳頭山-2:30-休暇村乳頭温泉郷
 [計8:30]
 ※このルートをとる場合,休暇村—八合目間でタクシーを利用する必要がある。(少なくとも10000円/台)
 または
 八合目-1:10-浄土平-0:20-男女岳-0:15-浄土平-0:30-男岳-1:40-分岐-0:40-横岳-0:55-八合目
 [計5:30]
 どちらのコースをとるかは,天候・メンバーの体調等を考慮し,前日までに決定する。
 《乳頭温泉泊!》※SLが予約済。
□4日目(9/14)
 盛岡駅へ〈約1:15〉,解散?(解散場所は未定)

■エスケープルート
□1日目(9/11)【早池峰山】
 河原の坊へ引き返す
□2日目(9/12)【岩手山】
 御苗代湖付近分岐まで:御神坂駐車場へ引き返す
 御苗代湖付近分岐から:網張温泉へそのまま進む
□3日目(9/13)【秋田駒ヶ岳】
 笹森山北側1221m付近まで:八合目へ引き返す
 笹森山北側1221m付近から:休暇村乳頭温泉郷へそのまま進む
 または
 八合目へ引き返す

■地図
 山と高原地図5「岩手山・八幡平」・6「栗駒・早池峰」
 2.5万分の1:「早池峰山」/「篠崎」・「松川温泉」/「秋田駒ヶ岳」

■食当
 現地で食材を調達する。

■共同装備
 テント一式(Dunlop V6 No.2)
 鍋(竹,小竹)
 調理器具セット(ガジャ・マダ)
 コンロ*2(チビ,菅沼私物)
 カート*2
 救急箱(エーデルワイス)
 救急箱(アゲハ)
 熊鈴・熊スプレー

■遭難対策費
 100円/人・日*5人*3日
 計1500円

■悪天時
 9日夕方に,山行期間中にわたって明らかな悪天が見込まれる場合は中止とする。
 そうでなければ,集合後,各山行前日の夕方までに判断する。
 中止の場合は,観光等。転進も検討する。予報によっては,集合後山行の延期・または打ち切り解散することも検討する。

■備考
 日出(9/12 盛岡)05:13
 日没(9/12 盛岡)17:50
 岩手県警遠野警察署(9/11) 0198-62-0110
 岩手県警花巻警察署(9/11) 0198-23-0110
 岩手県警岩手警察署(9/12) 0195-62-0110
 岩手県警盛岡西警察署(9/12,13) 019-645-0110
 秋田県警仙北警察署(9/13) 0187-53-2111
 NHKラジオ第一 531kHz(盛岡)/1341kHz(遠野)/1584kHz(湯沢)
 NHKラジオ第二 1386kHz(盛岡)/1602kHz(横手)
 岩手山の活動状況: (http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/207.html)

東北北部遠征記録
作成者:菅沼(山行記は石田・小倉・薩摩)

■日程 2018/9/11-13(火-木)
■山域 岩手山・八幡平/早池峰
■メンバー(オーダー順・敬称略)
 SL児玉 薩摩 小倉 石田 CL菅沼
 なお,オーダーは適宜変更した。

■天候
 9/11(早池峰山):霧のち晴
 9/12(岩手山):晴
 9/13(秋田駒ヶ岳):晴一時霧

■時間
□1日目(9/11・早池峰山)
 05:10河原の坊駐車場発
 05:46小田越登山口着・休憩
 06:02同発
 07:14五合目着・休憩
 07:26同発
 07:55剣ヶ峰分岐
 08:04早池峰山着・休憩
 08:33同発
 09:14五合目着・休憩
 09:25同発
 10:18小田越登山口着・休憩
 10:25同発
 10:49河原の坊駐車場着
□2日目(9/12・岩手山)
 04:30御神坂駐車場発
 04:41林道登山道分岐(西)
 04:48林道登山道分岐(東)
 05:08切接着・休憩
 05:18同発
 06:04休憩
 06:16発
 07:00小休止
 07:04発
 07:30休憩
 07:43発
 08:06鬼ヶ城分岐
 08:14不動平避難小屋着・休憩
 08:22同発
 08:55岩手山(薬師岳)着・休憩
 09:01同発
 09:29不動平避難小屋着・休憩
 09:42同発
 10:47お花畑着・休憩
 11:03同発
 11:28大地獄分岐
 11:40切通着・休憩
 11:53同発
 12:22姥倉山分岐
 12:54水場着・休憩
 13:06同発
 13:10犬倉山分岐(北)
 13:28リフト乗り場(いぬくら駅)
 14:21網張温泉着
□3日目(9/13・秋田駒ヶ岳)
 07:18八合目発
 07:54休憩
 08:04発
 08:40阿弥陀池避難小屋着・小休止
 08:44同発
 08:59男女岳・休憩
 09:22同発
 09:30阿弥陀池避難小屋着・小休止
 09:36同発
 09:58男岳着・休憩
 10:20同発
 10:36五百羅漢付近分岐?
 11:11女岳北の分岐・休憩
 11:21同発
 11:28駒池
 11:48分岐
 12:06小休止
 12:10発
 12:21横岳着・休憩
 12:41同発
 12:50焼森山・小休止
 12:55同発
 13:22八合目着

■記録
□0日目(9/10)
・集合~うすゆき山荘
 計画書では14時北上駅集合としており,他のメンバーはそれより30分ほど前には集まっていたようだが,CLは高速道路の注意看板をよく見ないで一車線交互通行の渋滞を食らったりしていたため,集合より遅れて14:30頃に北上駅着。遠く東北でも遅刻してしまいごめんなさい。雨が降る中,無事メンバーが揃う。北上駅から紫波のマックスバリュへ。夕飯・翌日の朝食と行動食を買い出し。その後温泉行くの行かないののすったもんだがあり,とにかく17:30頃,笠詰キャンプ場付近に到着する。ここで問題発生,笠詰キャンプ場の場所がよくわからない。大和坊も人気がなく,SLが役所の方に問い合わせなどしてくれたが,結局よくわからない。(翌日下山時によく見てみると,ゲートから車で1分ほど手前の場所に,笠詰キャンプ場への車道分岐らしきものがあった。)駐車場にテントでも張るか…と思っていたところ,ふと見た地図に,河原の坊手前に「うすゆき山荘」《無料開放》の文字が…!下界にある(車で行ける)小屋は有料,との思い込みに囚われていたためか,計画段階では全く存在を認識していなかった。ネットで調べるとどうやら駐車場もあるらしい。とにかく行ってみることにした。岳駐車場付近のゲートより先の県道は,1車線の薄暗い林道。日も暮れかかる時間,少し気味が悪い。鹿が道路を歩いている。電波も入らない。しばらく車を走らせばうすゆき山荘。先客はいないよう。山荘は割合と広く,2階もある。15人くらいなら余裕で泊まれるだろう。外には水場・トイレもある。灯油ストーブも置いてあり,灯油もあるが,これは使った分だけ灯油を持参するのがマナーのよう。小屋の中は真っ暗,肌寒い。ダウンを持って来なかったことをこの時点で早くも後悔。去年月山であれだけ寒い思いをしておいて,どうしてそれより遅い時期なのに防寒具を持って行かなかったのだろう…!これから数日間ずっと後悔することになる。ヘッドランプの灯りを頼りにマクバで購入した夕食を食べ,荷物の整理を済ませ,20時頃,就寝した。
□1日目(9/11・早池峰山)
・出発前
 4時半起床。寒い。外は霧がち。明るくなりかける中,さっさと片づけて出発する。河原の坊駐車場は,数十台は駐車できそうな感じ。公衆トイレ・ビジターセンターもある。
・河原の坊~小田越
 河原の坊から小田越えまでの間は車道歩き(河原の坊ルートは登山道崩落で現在通行禁止),結構な坂道。小田越に駐車場はなく,途中も駐車は禁止なはずだが,不思議なことに数台が小田越方面に登っていく。どうやら途中のすれ違い用スペースなどに駐車しているようだ。9月中旬・平日という人の少ないシーズンだからできることで,基本的に河原の坊に駐車するのがよいだろう。小田越には仮設トイレとバスの停留所がある。
・小田越~早池峰山~小田越~河原の坊
 しばし休憩して出発。エアリアにあるように,一合目までの15分ほどだけが樹林帯の中。途中2つほど携帯トイレブースあり。一合目からは早くも森林限界,歩いていてとても気持ちの良い道。高山植物のシーズンはもうとっくに終わってしまったようで残念だが,そのおかげか登山者は少なく快適である。八合目を越えたあたりで鎖場・梯子があるが,なんてことない。ただし,混雑時はここが渋滞ポイントとなるようだ。梯子を登ってしばらく行けば,もう早池峰山山頂である。山頂には避難小屋があり,携帯トイレも販売されている。信仰の山だけあって,神社もある。山頂も霧気味で少し残念。ゆっくり山頂を満喫し,さっさと下る。下山しだすと晴れだす。景色がずいぶんよい。写真を撮りながら楽しく下山した。車道の下りはつらい。
・下山後
 在京に連絡し,盛岡方面へ車を走らす。河原の坊から岳までの林道は昼でも薄暗く,すれ違いもヒヤヒヤする。盛岡付近のガストで昼食をとり,イオンで買い出しし,網張温泉へ。途中小岩井農場でソフトクリームを食べる。農場の中に入らずとも駐車場で売っていたので,ラッキーだった。16時頃網張温泉に到着,よく整地されたキャンプ場にテントを張る。休暇村の施設のようだが,受付等は少し離れた日帰り用温泉施設の受付で行う。人数分の料金に加えて1区画分の利用についても支払う必要があるが,5人もいたから一人一泊1000円程度。炊事場(お湯まで出る!!)・ゴミ捨て場・トイレもあることを考えれば,割高とはいえないだろう。日帰り温泉はテント利用者は100円割引の500円,露天風呂もあるがお湯が熱すぎるのが難点である。牛乳はちゃんとある。各自思い思いの夕食を食べ,少し星を撮ってみたりもして,20時過ぎには就寝した。

【山行記】文責:薩摩
 初日はなんやかんやあって、うすゆき山荘で前泊し、二日目の5時に出発した。河原坊に駐車してから登山口までアスファルトの坂を歩いていくと、途中に2台ほど道の脇に車が停まっていた。河原の坊より先に駐車スペースがあるとは書いてなかったので、おそらくここに停められることをあらかじめ知ってた人たちなのだろう。30分ほどで登山口にたどり着いた。手前には簡易トイレ、手洗い場があった。看板の前で写真を撮り、登山届けを提出し、出発した。
 始めは樹林帯の中の木道を歩いた。前日の雨で濡れていたが、雨水を流す作りになっていてわりと歩きやすかった。木道が終わると岩の道になり、かなりぬかるんでいた。等間隔に熊よけの一斗缶がぶら下がっていたが、叩かれすぎて原型を失っていた。樹林帯を30分弱歩くと1合目にたどり着き、森林限界を超えた。山を覆っていたガスが次第に晴れ、早池峰の全体像が見えた。菅沼くんは「登山口からものの30分でこんな景色が見れるなんてコスパが良いから新歓向きだ」と冗談半分に口にしていた。朝日が眩しく、日に焼けそうだったので、ここで日焼け止めタイムを取った。石田くんは黒い方がかっこいいからと日焼け止めを塗らなかった。かなり風が強く、身体が冷えてしまったため各々防寒着を着た。
 この先は大小様々な蛇紋岩の道がひたすら続き、とても滑りやすかった。高山植物が豊富な早池峰だが、特にナンブトウウチソウが最盛期を迎えていたようで、山の表面が所々、紅色に染まっていて目に鮮やかだった。五合目に到着したが、風が強かったのでそれぞれ適当な岩の影で休憩を取った。さらに先に進むと傾斜の強い岩場に梯子がかけられており、これを2本登ると稜線に出た。ここから先はガスっていて展望は良くなかったが、時折雲の切れ目から遠くの景色が望めたり、青空が垣間見えたりした。木道を進んでいくと、避難小屋が現れ、最後の小さな梯子を登ると山頂に辿り着いた。相変わらずガスは晴れず、風も強かったので、私たちは赤い社の陰で風除けをしながら昼食をとった。おにぎりを頬張る小倉さんはとても可愛いらしかった。山頂は岩でゴツゴツしていたが、かなり広かった。菅沼くんの一眼で各々どアップの写真を撮るなどして遊んでいたが、なかなか晴れそうになかったので、まもなく山頂を後にした。
 下山を開始すると、稜線の木道を過ぎたあたりで山頂のガスが晴れてきていたので、もう少し長居すれば景色が見れたようであった。山頂は残念だったが、帰りはすっかり晴れた青空の下、絶景を見下ろしながら下山することができた。この頃には風もおさまっており、行きとは打って変わって暑いくらいだった。あっという間に登山口に着いてしまい、元気があり余ってたメンバー達はまたしばらく写真撮影会をして、歌いながら駐車場に向かった。

□2日目(9/12・岩手山)
・出発前
 3時半起床,身支度だけを整え,車で10分ほどの御神坂駐車場へ向かう。
・御神坂駐車場~岩手山~不動平
 まだ真っ暗な中出発。2時間ほどは樹林帯の中。森林限界を越えると岩場などもあるが,サブザック行動のこともあり大したことはない。不動平は広々とした平原,岩手山は富士山のようにお鉢巡りでぐるっと1周できる。お鉢巡りの間は常に強風。寒い。体力を奪い取られる。CLは地図を飛ばしそうになる。天気が良く,翌日登る予定の秋田駒ヶ岳や乳頭山ははっきりと見え,前日に登った早池峰も遠く見渡せる。さらに奥には威風堂々たる鳥海山,もっと遠くに月山らしきものも。雨男は卒業したようだ。山頂を踏んで再び不動平についた時点で,事前に打ち合わせしていた時刻よりも早かったため,ピストンではなく行程通り網張温泉へ向かうことを決める。結果的に,楽しい道はここまでだった。
・不動平~網張温泉
 不動平からはお花畑経由の道をとる。きっと気持ちの良い道だろう,と思っていたが,歩いてみたらずっと鬱蒼とした樹林帯。花のシーズンも終わっていてお花畑は草が生えた湿地に過ぎない。期待はずれで残念な道だった。途中の距離標は正確でないように思うので,過信しないように。大地獄付近は硫黄の匂い,沢の色が白っぽくて少し特徴的だが,良いのはそれくらい。稜線コースをとることを強く勧める。黒倉山~姥倉山の間は地熱があるという注意看板があるが,よくわからない。登山道を外れなければ特に問題はないだろう。犬倉から網張温泉までは,リフトが9月は土日しか動いていないものだから,スキー場のゲレンデに沿って,草原の中の急坂をひたすら下る。しんどい。行くなら土日に行ってリフトに乗ろう。
・下山後
 CLは網張温泉発のバスに乗って,御神坂駐車場まで戻り,車を回収。この日も網張温泉に入浴し,レトルト丼を食べ(児玉さんの炊くご飯は美味しい,ありがとう!),暗くなってしばらくしたら就寝した。外は寒い。テントの中の暖かさはありがたい。

【山行記】文責:石田
 久しぶりに山に登って疲れたのか、夜はぐっすり眠れた。すばやくシュラフを畳んでお湯を沸かし、各々の朝食を食べ出発、テントは貼ったままだ。登山口近くの御見坂駐車場まで、車の中は静かである。
 御見坂駐車場には全くと言っていいほど車がなかった。少しストレッチなどをしてから、ヘッドランプで登り始める。コースタイムが10時間半と長い上に、下山場所から車を取りに来るためのバスの時間も決まっているため皆時間を気にしていた。
 物音に怯えながら林道をひたすら登る。後ろに人がいるのはありがたい。鈴持ちであった僕は、ちょっと体を揺らし気味に歩いた。しばらくすると、日が昇り空が明るくなった。皆ホッとしたような顔をしていた気がする。
 林道を抜けると、今度は急な岩場。歩くのは大変だが、同時に展望も良くなってあまり辛くはない。最後尾の菅沼は、事あるごとに専用のギアで胸に装着したカメラで景色やメンバーの写真を撮ってくれた。
 岩場を越えると、不動平まではすぐである。トイレ休憩の後出発。山頂までの上りは砂状のサラサラした土でとても歩きにくく、登り終わった頃にはかなりヘトヘトになっていた。
 山頂は遮るものがなく、とにかく風が強い。たが同時に景色も素晴らしい。晴れた日に登ることができて本当に良かったと感じた。山頂で写真をとり、お鉢を一周する。「所々に刃を上にして立ててある剣はなんだろう?何かの御神体なのだろうか?」などと考えているうちにいつの間にか不動平に戻っていた。
 不動平から切り通しまでの生き方は2つある。我々は北側、谷を下っていく道を行ったのだが、それはもう退屈な道であった。登山道まではみ出ている木々の中をひたすら足元を見ながら歩くのは苦行に他ならない。菅沼がボロクソに言っていたのも頷けるぐらいである。
 切り通しから下山場所までには黒倉山、犬倉山という2つの山があり、前者は「展望が良い」と地図に書いてある。しかし、先のひどい下り道で体力的にも、精神的にも疲弊していた我々に早く下山したいという思いが芽生えるのは自明の理である。「どちらでもいいよ~。」と言いながらも実際には巻く方へとベクトルは傾き、結果的に2つとも巻く形となった。
 犬倉山を過ぎたあたりからはひたすら夏のゲレンデを下る。土日以外可動しないリフト、大量の草花。冬に見る真っ白な斜面とは打って変わった坂道をテンポよくおりた。
 下山後は菅沼が車を取りに行き、残りのメンバーはテント場に戻って夕食の準備をした。流石に10時間も歩いてかなり疲れたおかげなのか、昨日も入ったはずのお風呂がとても気持ちよかった。

□3日目(9/13・秋田駒ヶ岳)
・出発前
 4時頃に起床しただろうか,暗く寒い中意を決してテントを撤収,秋田駒ヶ岳の八合目を目指し車を走らす。途中のコンビニで朝食や行動食を買い出し,6時半過ぎに八合目の駐車場に到着した。田沢湖市街から乳頭温泉まで続く道までは走りやすいが,八合目への分岐以降はヘアピンカーブの連続で一車線,舗装やカーブミラーはよく整備されているものの待避所が少なく,永久名誉初心者のCLは終始緊張を強いられた。夏休みシーズンと春から秋の週末にはマイカー規制があるのも納得だ。実際,縦走の際に車を回収しに行く必要がなく,金だけ払って席に座って揺られていれば到着できるのだから,運転が不安ならバスがある日に行くのも賢明な企てであろう。(マイカー規制がある日のみ,バスが運行されているようである。)八合目に着いてみると,天気は濃霧。昨日の10時間の歩きで疲れているし,霧が晴れなかったら景色も期待できないし,八合目に車を回収しに来るのも面倒だし,ということで縦走のコースを取ることをあきらめ,八合目に戻ってくる行程を取ることとした。計画書を提出し,ゆっくり準備をして,7時半前に出発した。
・八合目~男女岳~男岳~駒池~横岳~八合目
 残念なことに?,霧が晴れないなどということは,雨男を卒業したCLの存在を前にすると,それは杞憂なのである。出発後5分で霧は晴れ,青空と美しい山々の景色が広がった。八合目からずっと,基本的に樹林帯は少なく,涼しい風が吹く中歩く。田沢湖も美しい。鳥海山も美しい。岩手山も見えれば,遠くにはまた早池峰山も望める。稜線の先にある乳頭山を見るとやっぱり縦走したいと思わぬでもなかったが,疲れているし,やっぱりゆっくり歩きたい。ゆったりとした山歩きを楽しめたし,早く温泉に入れたし,結果的には,縦走のコースを取らなかったことに悔いはない。阿弥陀池,男女岳,男岳と気持ちの良い道をゆったり休憩しつつ歩き,男岳から五百羅漢の方へ下りる。しばらくすると駒池と岩に書かれた分岐がある。おおこれが分岐か,意外と早かったなあと曲がってしまったのが運の尽き。踏み跡はあり,道であることは確かなのだが,道の両側には薊,薊,薊。何回悲鳴を上げたことか。しかもかなりの急坂で滑りやすく,歩きにくい。おかしいなあおかしいなあとその急登を下り終わると,なぜか阿弥陀池・駒池・五百羅漢の分岐に出る。ということは,下ってきたのは地図上の道ではなかったのだ。確認不足だった。女岳からは噴気あり。駒池付近は木道で歩きやすい。横岳への分岐から焼森まではザレた道。霧もかかり少し退屈したが,霧が晴れた時の景色は格別である。焼森から八合目までは樹林帯,測量中のようで人が多かった。特に歩きにくいということはない。ただ,真夏は暑いかな。13時半前,意外と時間がかかったが無事八合目へ戻った。
・下山後
 八合目に降りたら,再び緊張しながら狭い山道を下る。幸いそこまで対向車はなかったのでよかった。そこから,乳頭温泉へ。この日で登山は終わりだったから,贅沢に一泊する。15時頃にはチェックインでき,早速温泉へ!ぬるめのお湯,熱めのお湯,露天風呂があり完璧。牛乳もある。そういえば,牛乳の自販機はずいぶん古いものだった。一体何年使っているのだろう。卓球を楽しみ,美味しいご飯を食べ,一杯飲み,温泉へ入り,と十分に満喫した。この温泉はずいぶんよかったので,また行きたいものだ。

【山行記】文責:小倉
 八合目まではくねくねした細道を車で登っていく。待避スペースも少なく運転しにくそうな道である。朝も早よから運転してくれた菅沼くんに感謝。八合目に着いた時にはまだ曇っており、風が強く寒い。加えて前日の10時間半行程の疲れも残っていることから、話し合いの結果5時間半のルートに進むことに決定する。
 だが、準備運動をしたのち出発した頃には、太陽が顔を出してガスも晴れ、少し汗ばむくらいの絶好の天気になった。2~30分登るとすぐに視界が開け、前方には田沢湖、後方には乳頭山が臨めた。少し登っただけでこれほどの景色が拝めるとは、新歓合宿によろしいのではないか、などと話しながら阿弥陀池までゆるゆると登っていく。阿弥陀池付近は木道が続き、大変歩きやすい。男女岳を横目にしばらく和気藹々と写真など撮る。男女岳の頂上までは20分ということだったが、そこそこ急な上に歩幅が絶妙に広く歩きにくい階段のおかげで意外と体力を食う。とはいえ真っ青な晴れ空を目指し歩くのはなかなか気持ちがよく、最高のコンディションのまま頂上に到達することができた。
 頂上でも写真撮影を楽しんだのち阿弥陀池に降り、男岳へ。男岳からの下りは急坂だとエアリアにも載っていたが、それにしても傾斜がえぐい。さらにアザミがあちらこちらに咲き乱れており、葉が服の上からでもちくちくと肌を刺してくる。痛い。オーダーの前から後ろから悲鳴が上がる。ちなみに、アザミの花言葉は「私に触れないで」であるそうだ。言われずとも、である。
 なんとか下りきると、今度は四方一帯を山に囲まれ、世界の狭間に放り込まれたような感覚を覚える。しばらく歩くと再度木道が現れ、分岐までは人も少なく歩きやすい道を行く。途中チングルマの綿毛が見られ、退屈することもない。駒池を過ぎた地点で木道の工事が行われていた。お疲れ様です。
 分岐近くなり横岳の尾根に差し掛かると、上方から雲が下りてきてあれよあれよといううちにガスってしまった。横岳までは道は広いものの足が砂に沈んで歩きにくい。それでも水分を補給しつつ、えっちらおっちら登っていくと横岳頂上付近からは再び青空が拝めた。眼下にはそれまで歩いてきた木道が山々の間を縫って伸びているのが見える。横岳から10分ほど行くと不意に緑が絶え、黒い土がむき出しになった焼森に着く。のっぺりとした円形の広場の中央のみに岩が積み上げられており、およそ山頂とは思えない風景であるが、これはこれで面白い。青空をバックにまたまた写真撮影に勤しむ。
 焼森を過ぎれば250m下にはもう八合目駐車場が見える。素晴らしかった天気への感謝と温泉の楽しみを胸にさっさと歩いていれば、いつの間にやら駐車場に到着。朝にはがらがらだった駐車場が、降りた時には8割ほど埋まっていた。山の中ではそれほど多くの人に会ったとは思わないのだが。
 さて、この後も菅沼くんには車を運転していただく。CL、運転手、そしてカメラマンを務めてくれた彼に心からの謝意を表したい。

□4日目(9/14)以降
 田沢湖の観光やわんこそばなど,一通り楽しんだあと,仙台などで適宜解散した。

■総括
・計画が完成するのが遅く,かなり適当で気ままな遠征だったが,一緒に行ってくれたメンバーに心より感謝する。
・計画段階で,3日目乳頭山から乳頭温泉への道は少し荒れていてお勧めしないという情報があったが,現地での説明を見る限り,雷鳥の山行のレベルであれば特に問題はない程度と思われる。是非再訪したい。
・東北など交通の便があまり良くないところでは,車での移動は非常に便利で快適である。ただし,十分余裕を持った日程にするのが重要。

■反省
・9月の東北は寒い。防寒具は十分に持参すべき。
・風が強いときはむやみに地図を出さない。
・歩く予定の道の下調べは,念入りに行いたい。
・分岐で怪しいと思ったら,面倒くさがらずに地図やGPSで確認するべき。
・テントを設営した後,中を見てみるとめちゃめちゃ砂やゴミがあり,一度フライとペグを取り除いて掃除することになった。設営前の確認不足は反省すべきではある。しかし何度も言うようで恐縮だが,ある程度ゴミなどを取り払ってから装備を返却するようにしていただきたい。

■雑感
・来年も東北の山を登りたい。時間と心の余裕があらんことを。
・最近ガソリンが高い。東京に帰ってきてみると,合計で1800kmくらい走っていた。東北は広い。
・ビュッフェだと欲張りすぎて後で苦しむ。数日山に登ると胃袋は少し小さくなってしまうようだ。
・幼いころからの,わんこそばを食べるという夢が叶って嬉しい。