2018/9/16 安房川本流下部遡行

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
安房川本流下部遡行計画書 ver.1.0
作成者:丸山

■日程 2018年9月16日
■山域 屋久島
■在京本部設置要請日時 当日 20:00
■捜索要請日時 翌日 10:00
■メンバー(3名)
 CL丸山 SL迫野 橋本

■アプローチ
 レンタカーで鍋山林道へ

■帰り
 吉田に松峰大橋右岸に迎えに来てもらう

■行程(予定時間)
 7:00 鍋山林道駐車スペース出発
 8:00 入渓
 15:00 遡行終了(森林軌道)
 16:30 松峰大橋右岸
 (計9:30)
 (https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-565733.html)

■エスケープルート
 引き返すか、左岸鍋山林道または右岸安房森林軌道に詰める

■地図・遡行図
 2万5千分1地形図「安房」「宮之浦岳」
 山と高原地図「屋久島」
 遡行図:なし

■共同装備
 救急箱(有紗)
 8.6mm×30mロープ
 アッセンダー

■遭難対策費
 100円×3人
 計300円

■備考
 日の出(9/14)6:02
 日の入(9/14)18:26
 屋久島警察署 0997-46-2110

安房川本流下部遡行記録
作成者:丸山智朗

■日程 2018/9/16(日)
■山域 屋久島
■天候 晴れ
■メンバー(3人、敬称略)
 CL丸山(35/RS)、SL迫野(35/RS)、橋本(40/FS)
 RS:ラバーソール、FS:フェルトソール

■総評
 日本有数の大スケールの沢。大水量で大迫力、水に磨かれた岩々は美しい。殆ど飽きることなく泳ぎやへつり、登りのポイントが続き、適度な難易度で楽しめる。入渓が悪かったり高巻きや下山でヒヤッとしたりしたが、大変充実した一日となった。

■ヤマレコ記録
 (https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1600540.html)

■時間(括弧内は予定時間)
  7:24 (7:00) 鍋山林道駐車スペース出発
  7:34枝沢下降開始
  8:45-9:10 枝沢合流点で入渓準備
  9:10 (8:00) 入渓
  9:44トンゴの滝上
 12:39 美濃沢出合
 13:45 田代川出合
 14:32 明星岳沢出合
 15:51 エスケープ開始
 16:21 詰め始め
 16:41-56 (15:00) 遡行終了(森林軌道)
 17:56 (16:30) 松峰大橋右岸(車に帰着)

■行動記録(敬称略)
 ※遡行図は作成したが、あまりうまく描けていない。幅の広い沢を描くのは難しい。
・入渓まで
 やや荒れている鍋山林道をレンタカーで進んでいくと、丁字路の先にゲートがあったため、そこに駐車。ここは島なので鍵は車に残して、後で吉田に取りに来てもらう手筈になっている。連日の疲れもあって少々出発が遅れたが、まあエスケープしやすい沢なのでいいことにして、出発。鍋山林道をさらに進み、途中で枝沢に降りて安房川本流を目指す。この枝沢、最初に出てきた12m滝は簡単に巻き下れたが、その先が想定以上の曲者だった。多段25m滝に行く手を阻まれて右岸を巻こうとするが、地形図にもない枝沢に出合ってそれを下っていくと今度は15m滝。これを今度は左岸から下り、漸く本流の25m滝の下に出たが、この区間、急峻で落石が多発し、トゲ植物もあるため危険&不快で最悪。この難所を越えればあとは容易に巻き下れる小滝とゴーロだけだったが、想定よりも随分時間がかかってしまった。出合で入渓準備をしたが、始めてウェットスーツに袖を通す橋本が着方を間違えるなどし、またまた時間がかかってから入渓。
・トンゴの滝まで
 入渓準備中から圧倒的な存在感を放っているトンゴの滝を、まずは越えねばならない。どう見ても右岸から巻き登る滝だが、今いるのは左岸である。従って、このドでかいプールを横断する必要がある。いきなりの80m泳ぎとは気が重いが、このために準備してきたマスクやらスノーケルやらも着用して、入水。透明度は期待したほど高くなく、底は見えないが、ユゴイやボウズハゼなどの魚が泳いでいるのが見える。時々位置を確かめながら進み、右岸へ着岸。4m斜瀑の左を登るが、恐ろしいほどの水流である。そのままトンゴの滝の巻きにかかるが、下部は極めてヌメっていて、ラバーソールとの相性が最悪。III程度だが滑るので嫌らしい。何とか越えると、上部は岩が乾いていて登りやすい。登った上で見渡すと、上流も下流も圧巻の、大スケールの沢で、素晴らしい。
・「最大の難所」まで
 いよいよ、長年の念願だったトンゴの滝上のゴルジュである。最初は泳ぎを交えて左岸伝いに進んでいけるが、すぐに5m滝が現れて右岸高巻きを強いられる。特に難しい巻きではないが、途中で丸山は枯れ木に体重をかけて1m滑落し、ヒヤッとした。高巻き途中は、上からこの大渓谷を見られ、これはこれで良い。クライムダウンで高巻きを終えるとまた何度か泳がされて、いよいよ屋久島遡行人さんの記録(http://sokoujin.blog90.fc2.com/blog-entry-195.html)で「最大の核心」とされる場所(3mCS滝の左岸巻き)。通常左岸クラックから登るようだが、今日は湿っていてラバーソールとの相性が悪そうだったので、乾いた岩であるポットホールの間のリッジを選択。中間支点など取れそうにもないのでまずは丸山が荷物を置いてフリーで登ったが、結構な急傾斜で、ラバーソールでもぎりぎり。エイヤッと気合で登って、お助け紐で荷揚げしてから迫野に同ルートで登ってもらう。ラストの橋本はフェルトソールなので左岸クラックから登ったが、お助け紐ありとはいえスムーズだった。
・ゴーロまで
 「最大の難所」を越えるとやや渓相は落ち着いてくるが、それでもやたらと泳がされる。途中の巨大CSは増水のせいで突破できず、右岸から小さく巻いた。他にも、激流を空身で突破してから荷揚げするような難所が2回ほどあったような気がするが、どこだったか忘れてしまった。ともかく、飽きる暇を与えない秀渓である。明星岳沢出合の手前では巨大なポットホールがあり、茶色く汚い水を湛えていて、これが有名な日本一のポットホールかもしれないと思ったが、あまりに汚いのでやっぱり違うだろうと思いつつ通過(帰宅後確認すると、これがそのポットホールだった)。明星岳沢出合を過ぎると急に平凡なゴーロとなり、800mほど続く。
・詰めまで
 ゴーロを終えると、そろそろいい時間になってきたのでエスケープを検討し始めるが、最後がゴーロで終わるのもつまらないので、少し進んで最後に楽しんでから引き返すことにする。すぐに再び遡行価値のある渓相となり、小滝を巻いたり泳いだりへつったりしながら進むと、今までこの沢では見なかったようなナメ滝が現れた。ここでキリよしとして引き返し、詰めやすそうな枝沢から森林軌道を目指す。すると、好都合にも殆ど滝のない枝沢で、僅か20分で軌道に出た。詰めてきた枝沢には「蛙橋」なる橋が架かっている。
・安房森林軌道
 安房森林軌道は、日本で唯一の現役森林軌道である。「山さ行がねが」などを読んで森林軌道に親しみを持っている丸山としては、唯一の森林軌道の、遊歩道化もされていない部分を歩くというのは、この山行の裏目的であり、楽しみにしていた部分でもあった。実際、切り通しに隧道、橋などが次々と現れ、いずれも野趣溢れており、なかなか面白い。さらにはポイントがあり、実際に動かすことができる。鉄道のポイントを動かすなんて滅多にできる経験ではないし、ここぞとばかりに皆で動かしまくって記念撮影(撮影後、ポイントの向きは元通りにした)。そんなアトラクションにも飽きてきた頃、美濃川橋でイベント発生。丸山が何気なく橋の上の踏み板を歩いていると、何と、踏み板を踏み抜いてしまった! 幸い落ちたのは片足だけだったが、またヒヤッとした。そんなイベントも一通り終わって飽きてくるが、まだ森林軌道は終わらない。モーターカーが来て乗せてくれないかな、なんて思うがそんなこともなく、ただただ歩いていくと(実際にはポイントがある度に動かしては元に戻した)、18時前には松峰大橋付近の道路に出た。ありがたいことに吉田が待っていてくれて、スムーズに宿へと帰還。

■備考
・多少増水していたようだが問題なかった。
・フェルトソールの方が良い箇所とラバーソールのほうが良い箇所があるが、厳しい箇所はラバー向きなので、どちらかと言うとラバーソール推奨。ただしトンゴの滝のぬめりはひどい。
・ヤマビルなし。
・明星岳沢出合から先は平凡なゴーロが暫く続くので、明星岳沢から鍋山林道に脱渓する計画も良さそうである。
・橋本のザックは殆ど浸水せず、優秀であった。
・PFDか浸水しないザックなどで浮力を確保しないと泳ぎにくい。丸山はどちらもなかったのでやや大変だった。

■感想
・4年越しの念願が叶って安房川本流にリベンジすることができ、大変満足した。
・今回遡行した範囲より上流にもそのうち行ってみたい。
・有名な巨大ポットホールが思ったよりも汚くて見栄えがせず、残念だった。

■CLコメント
・橋本にとっては初めての泳ぎ沢だったが、よくついてきてくれたと思う。
・迫野は高巻きで先頭を行ったが、的確な判断が出来ていたと思う。

■SLコメント
・ヒヤッとどころじゃないとこいっぱいあったわ、心臓バクバクしてた。
・私はウェットに加えライフジャケットも持ってったけど、両方リュックに入らなかったから手に持ってた。その状態での入渓枝沢はキツかった。
・トンゴ滝の巻きはマジでフリクション0だったし、登りも長い上に落ちたら助からない、ロープも無いって状況だったからめっちゃ怖かった。
・最大の難所、ラバーソールとは言えエイヤッで登れたのは丸山君が重力を操れる能力者だから。

■反省
・入渓のために下降した沢が悪かった。下流から泳いだほうが安全であった。
・丸山が滝を高巻いているときに掴んだ木が折れ、1m程度滑落したが、そこで止まって良かった。基礎的なことだが、改めて、枯れ木に体重をかけないようにすることが大切である。
・丸山は液晶ガラスが割れた防水スマートフォンをここで水没させた結果、さらに不調になってしまった。完全に使えなくならなかったのは救い。
・現役の橋でも油断してはいけない。