2019/7/7 大ベタテ沢右俣遡行・カラホリ沢下降
ぶなの会・山岳愛好会雷鳥
大ベタテ沢右俣遡行・カラホリ沢下降計画書(7/5提出)
作成者:丸山
■日程 2019/7/7(日)日帰り
■山域 谷川岳
■在京本部設置要請日時 当日 20:00
■捜索要請日時 翌日 10:00
■メンバー
CL丸山 SL杉山 山本 鶴田
■集合・アプローチ
前日の訓練から直行し前泊
■行程(予定時間)
5:00 出発
5:20 大ベタテ沢入渓
10:20 遡行終了
10:40 カラホリ沢下降開始
13:40 下降終了
14:00 帰着
遡行に時間がかかった場合は吾策新道で下山(1時間程度)
■山行中の留意点、危険箇所、安全対策等
・滑落、落石、浮石、岩剥がれ、雪渓に注意
・滝を無理に登らない
・初心者のサポート
・カラホリ沢は記録のない沢なので無理しない
■エスケープルート
引き返すか、そのまま進む
■遡行図
大ベタテ沢右俣:https://blogs.yahoo.co.jp/well_ksandw/4802179.html
カラホリ沢:なし
■共同装備
救急箱(丸山私物)
8.6mm×30mロープ
8.6mm×45mロープ
ハーケン
ハンマー・バイル
テント(リョクモンエダシャク)
■個人装備
□ザック □ヘッドライト □予備電池 □雨具 □防寒具 □飲料 □非常食
□行動食 □ゴミ袋 (□軍手・手袋) (□トイレットペーパー) □地図 □コンパス
□筆記用具 □計画書 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む)(□学生証)
(□運転免許証)□保険証 □現金 □ライター □常備薬 □ナイフ □笛
□お助け紐
□地理院地図 □遡行図(□山と高原地図「谷川岳」)
□地理院地図をキャッシュ済の地図アプリが入ったスマートフォン
□沢靴(ラバーソール推奨)
□ヘルメット □ハーネス □スリング □カラビナ □環付カラビナ
□確保器・下降器 (□登高器) (□ゴーグル)
□エマージェンシーシート
□シュラフ □マット
■遭難対策費(雷鳥)
100円×4人 計400円
■備考
・日の出(7/7) 4:32
・日の入(7/7) 19:08
・南魚沼警察署025-770-0110(計画書提出なし)
大ベタテ沢右俣遡行・カラホリ沢下降記録
作成者:丸山
■日程 2019/7/7(日)
■山域 谷川岳
■天候 曇り後時々晴れ
■メンバー(4人)
CL丸山(35/OB)、SL杉山(39/B3)、山本(37/OB)、鶴田(40/B2)
■総評
大ベタテ沢は杉山・山本にとって初の雪国の沢であり、その魅力がコンパクトに収まっていて良かった。カラホリ沢は上部が何もない涸れ沢だったが下りやすく、水が出てからは水量豊富で滝やナメもあって、記録のない沢としては悪くはなかった。初の雪渓も経験できたし、関東は雨だったようなので転進して大正解だった。
■ヤマレコ記録
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1933258.html
■時間
5:13 出発
5:48-57 大ベタテ沢出合
6:15 二俣
6:25-33 スノーブリッジの通過
6:53-7:20 4m滝A0クライミング
8:09-32 25mスラブ滝
8:35-59 スラブ内3m樋状滝
9:48 沢形消えて詰め開始
10:02-09 詰め終了点
10:10-29 休憩
10:36 カラホリ沢下降開始
11:48 1050m湧水
12:07-15 2段15m滝
13:06 カラホリ沢出合
13:24 帰着
■ルート概況
※滝の落差等は自作溯行図に基づく。
○アプローチ
・スリット堰堤直下(地理院地図の破線の端)までは後輪駆動の軽自動車で行ける。道は多少荒れている。
・スリット堰堤(スリットは3つ)直下は深く、股?腰下くらいまで濡れる。最も深い(胸程度)右岸側以外は流木が3m程度溜まっており、登って越えるのが面倒。
・カラホリ沢出合まではゴーロ。
・カラホリ沢出合から大ベタテ沢出合までは、ナメや小滝があり癒やされる。
○大ベタテ沢
・大ベタテ沢に入って暫くは藪のかかるゴーロ。容易な小滝を2つ越えると二俣。
・右俣に入ってすぐの5m滝を越えると、スノーブリッジ(途中に穴があり100m程度)があった。参考にした遡行図(https://blogs.yahoo.co.jp/well_ksandw/4802179.html)と同じ場所であり、ここが残りやすいらしい。下はゴーロなので素早く潜って通過。
・スノーブリッジを通過後すぐに連瀑帯となる。最初の6m滝は左から巻けるが見た目以上に厳しい(III+)。次の4m滝は右岸壁のクラック沿いに残置ハーケンが狭い間隔で3本打たれており、ロープを出して登れる(A0,IV+)。その後もIII~III+程度の滝があり、楽しく登れる。
・25mスラブ滝はIV程度。ラバーソールのフリクションはよく効くが、ホールドは部分的に乏しい。上部の核心部に残置リングボルトが1つある。ここはロープ(45m以上)を出した方が良い。
・滝上もスラブが続く中に樋状3mがあるが、これは登れず左から巻く(IV-)。
・スラブ帯が終わると大きい滝や難しい滝はなく、二俣では水の多い方を辿っていくと、突然沢形が消えて藪に阻まれる。
・詰めはかなりの急登だが、笹や灌木が多いので登れる。
○カラホリ沢
・カラホリ沢は、稜線直下で沢地形が現れるので下りやすい。ただし、水の湧き出る1050m附近までは、容易にクライムダウンできる涸棚2つ以外、何もない。
・湧水地点で大量に湧き出しており、急に水の多い沢になる。滝やナメが出てくるが、2条7m滝以外は容易に巻き下れる。遡行であれば登れそうな滝もある。2条7m滝は、右岸にお誂え向きの立木があり懸垂下降しやすい。巻き下るのはやや悪そう。
・カラホリ沢の最下部は、大ベタテ沢下部と同じく藪っぽいゴーロ。
■行動記録
□アプローチ
○前泊まで
岳嶺岩訓練解散後、数カ月ぶりという杉山の運転で河辺へ。思ったより問題ない運転。河辺のはちのこ食堂で夕食をとりながら、訓練をサボった山本と合流。山本に運転を替わり、ヤオコーで行動食を買って給油してから、青梅で圏央道に乗って湯沢へ。やはり高速を使うと速く、3時間ほどで土樽に着いた。適当な空地で前泊。
○山行開始まで
4時に起床し、テントを撤収して準備をするが、虫(ヌカカ?)がうざい。丸山と杉山が被害に遭って、後でかゆくなったり腫れたりした。入渓点までの道はやや悪いことが分かっていたので丸山が運転。アプローチゼロの場所まで車で入れるので有難い。
□遡行(万太郎本谷~大ベタテ沢右俣)
○スリット堰堤
スリット堰堤は、濡れるのをできるだけ避けて一番浅い中央を選んだが、それでも股下まで浸かって冷たい。しかも、スリットの出口にある折り重なった流木の登攀が面倒。いきなりのこれなのでテンションが下がる。
○大ベタテ沢出合まで
万太郎谷はさすがに規模が大きい。特に難所はないが、ラバーソールとの相性が悪く、フェルトの鶴田以外は滑りまくった。カラホリ沢出合を過ぎるとナメも出てきて、万太郎谷の美しさを少しだけ味わった頃、大ベタテ沢出合に至る。山本が雉打ち。
○二俣まで
CLは以前(2016年8月)大ベタテ沢左俣を下降したことがあり、その時の記憶によれば二俣までは平凡だったが、今回もやはり平凡だった。ただ、前回はインゼルがあったような気がするが、今回はその左岸側だけに水が流れていて、右岸側はインゼル跡地となっていた。なお、水線よりもこの跡地の方が歩きやすい。飽きた頃に漸く小滝が出てきて、適当に登ると、二俣となる。右の方が水量が少ない。
○雪渓通過まで
二俣から見えていた5m斜瀑を簡単に登ると、何だか冷気と水の冷たさを感じ、嫌な予感がする。少し進むと、やはり、雪渓出現! 初めての雪渓処理でどうしようかと思うが、綺麗なブリッジになっていて中に難所もないので、素早く潜ることにする。まずは丸山が途中の穴まで潜り、後続に無音で合図を出して、万一崩落しても大丈夫そうなところで後続を待つ。穴以降も同様にして、無事通過。運頼み感がすごい。
○連瀑帯
雪渓を越えるといきなり連瀑帯となり、最初の滝は登れず杉山から巻こうとしたが、一歩が出ず、丸山が先に登ってから後続にお助け紐を出した。次の4m滝も水線直登は無理だが、左のクラックにハーケンが連打されていて、登れそう。厳しいクライミングになりそうなのは明確だったので、さらに左からの巻きも検討したが意外と悪く、結局ロープを出して例のクラックを丸山がリード。フリーではどう考えても無理なので最初からA0していき、なかなか楽しいクライミングで滝上へ。鶴田・山本はゴボウも交えてフォロー。杉山はA0のみでの登攀に成功。さらに続く7m滝でもお助け紐を出しつつ楽しく登り、その後の20m滝は快適に直登。
○25mスラブ滝まで
一瞬藪っぽい沢になるが、7m滝を越えると再び開けてスラブが現れる。ブリーフィングではロープを出そうとしていた滝だが、山本がさっそく登りだして、中段までは行けそう、とか言うのでそのまま送り出し、全員ノーロープで登り始めてしまった。しかし、上部に行くにつれて難しくなってきたのでこの判断を後悔。後続には灌木でセルフを取って待っていてもらい、とりあえず丸山と山本が上まで登り、お助け紐を出そうとしたが長さが足りず、お助け紐2本連結とかいう微妙なことをやって杉山・鶴田を上げた。
○スラブ内樋状3m滝
先程のスラブ滝を登って調子に乗っていた山本が最初に取り付き、突っ張りで登って行ったが、落ち口付近で詰まり、セミになった。怪しげな灌木でセルフを取って待っていてもらい、丸山・杉山が左から巻いて、滝上の立木から山本にロープを投げ、山本がゴボウ登攀して無事救出。
○吾策新道まで
水が減ってやや藪っぽくなるが、小難しい小滝もあり、開けている箇所もあるので楽しく標高を上げていく。結構進んでいくと急に沢形が消え、詰めの様相。いきなりの酷い藪だが、うっすら踏み跡はあり、それに従ってモンキークライムしながら急登していくと、15分ほどで稜線登山道に出た。
□稜線・下降(カラホリ沢)
○下降開始まで
詰め上がったところは狭く景色も悪かったので、少し下って景色の良いところで休憩。あちこち雪渓だらけであるが、やはり上越の山は景色が良い。遡行が順調だったこともあってゆったりとする。充分休憩してから下山開始、良い景色を眺めながら数分で下降開始点に至る。さて、CL以外誰も沢下降なんてしたくなさそうな顔をしているが、そんなに早く下山しても勿体ないので、CL判断で沢下降決定。
○1050m湧水まで
沢下降を始めると、大ベタテ沢右俣とは違ってすぐに明瞭な谷筋があり、下降しやすい。が、水がなくつまらない。山本が「奥多摩以下」だとか不満をブーブー言ってくるのがCLとして辛い。やはり、「カラホリ」の名は伊達ではなかったか。傾斜量図で滝が期待されたところも容易な涸棚で、楽に降りられて嬉しいやら悲しいやら。そんな調子で1時間以上くだった頃、1050m地点で多量の水が湧き出てくる。暑くなってきた体を冷やし、湧水を飲んで気を取り直す。
○2段15m滝まで
しばらくはゴーロだったが、水があるだけで嬉しい。だんだんとナメやナメ滝が出てきて渓相も良くなってきて、遂には大滝も出現。2段15mほどでクライムダウンは出来ないが、左岸から容易に巻けた。滝下から見てみると、それなりに見応えもあって良い。何より、殆ど誰にも存在が知られていないというのが良い。
○カラホリ沢出合まで
その後2m滝を巻くあたりで、左岸から多量の湧水が合流してきて水量が倍増。なかなか迫力ある沢になる。7m末広がり滝を容易に巻き、2条7m滝を懸垂下降して、4m滝を巻き下ると、あとはゴーロとなって本谷に合流した。最後のスリット堰堤は、山本と杉山は中央の面倒な流木群を下ったが、丸山と鶴田は多少深いのを覚悟で流木のない右岸側を選択した。こういうところにも性格が出て面白い。
□帰路
丸山の運転で市街まで出た後、杉山に運転を替わる。社会人になってもケチは相変わらずなので一般道通しで飯能まで行った。おかげで杉山がだいぶ運転に慣れたようで良かった。
■備考
・大ベタテ沢右俣は、短いながらも登れる滝が多く、スラブなど雪国らしい景観もあって、なかなか良い沢。よく遡行されているだけのことはある。2級程度。
・カラホリ沢は、上部は水がなく遡行価値が全然ないが、下部は滝やナメがあり、水量も豊富なので悪くはない。ここへ行くなら水が涸れたら引き返す方が良い。今回のように、大ベタテ沢が早く終わりすぎたときの下降ルートとすれば、いい訓練になる。1級上程度。
・残置ハーケンは連瀑帯4m滝以外では確認されず。
・ヤマビルなし。
・大ベタテ沢右俣とカラホリ沢の無水部はラバーソールの方が良いが、カラホリ沢の有水部はヌメリがひどく、フェルトソールの方が良い。
・山中での人との遭遇なし。
・雪渓を越えて次の6m滝を巻いているとき、下流の雪渓附近に熊を目撃。「熊だ~!」とか言っていたらすぐに右岸の藪へと消えていった。
■CL感想
・初めて本格的な雪渓を経験したが、安定していそうとはいえ、潜るのには漠然とした恐怖感があった。
・隣にある大ベタテ沢左俣(2016年下降)やカラホリ沢の遡行価値は低いのに、大ベタテ沢右俣の遡行価値が高いのは興味深い。地形の妙を感じるとともに、探り当てた先人に敬意を表したくなる。
■CLコメント
・ブリーフィングでわざわざ取り上げた滝を勝手に登り始めるのはやめましょう。CLを含めて全員で慎重にオブザベしてからにするべき。
・未知の沢の下降も悪くなかったでしょ?
・2回小滑落した鶴田は、もう少し慎重に行動しましょう。特別難しい場所ではなかったので、丁寧にやれば落ちなかったはず。
・遡行図を描きながらついていくのが大変なほどのハイペースで3人とも遡行・下降できており、頼もしく感じた。
■杉山感想
・前泊地で変な虫に刺され、指と手首に痛みを伴う腫れが生じた。もはや沢ですらない…。
・自分が掴んだときだけ草付きがブチブチ千切れていた。痩せたい(切実)。
・雪渓を通過したのはいい経験になったが、くぐる分には運ゲーでしかない。
・A0しまくっての登攀が楽しかった。フリーより好きかもしれない。
・沢下降でずるずる滑りまくった。いつまで経っても歩くのが上手くならないので困る。
■鶴田感想
・ホールドが細かいスラブはやはり苦手です。
・二度軽く滑落してしまいました。丸山さんのご指摘のとおり、集中力をきらさず慎重に進みたいです。特に行程の後半は疲れで気がゆるみがちで、体力のなさを実感します…
・乾いている箇所ではラバーソールの先輩方が快適そうに進まれていて羨ましかったです。ただ、ぬめった岩の上を歩くときはフェルトソールさまさまでした。
・雪国の沢は景観が好みです。(昨年の日向沢含め2回しか経験していませんが。)雪渓を通過するときは緊張しました。
・2級以上の沢は初めてで苦戦する場面もありましたが、楽しかったです。色々とサポートして頂きありがとうございました。
■山本感想
・訓練を欠席してすみませんでした。金曜夜は早く帰りたいものです。
・上越の沢の支点の取りづらさは想像以上だった。
・スラブの滝のよさ。万太郎本谷や西ゼン、東ゼンにも身体が元気なうちに通いたいと思った。
■反省
+適切な転進判断をした。
+高速道路を使ってアプローチして十分な睡眠をとった。
-ブリーフィングでロープを出そうと言っていた25mスラブ滝でロープを出さなかった。
-スラブ内3m樋状滝で山本がセミになった。
-虫に対する油断