2019/8/25-28 白峰三山
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
白峰三山夏合宿計画書 ver.1.1 (2019/8/24時点)
作成 猶木
■日程 2018/8/25(日)-28(水) 3泊4日・予備日8/29(木)
■在京本部設置要請日時 2018/8/29 18:00
■捜索活動要請日時 2018/8/30 10:00
■山域 南アルプス
■メンバー
CL猶木 SL鈴木 渡邉
■集合
JR高尾駅 7:06発JR中央本線甲府行き先頭車両内
■交通
□行き 計3640円
〇高尾7:06-[JR中央本線甲府行]-甲府8:43
1490円 (81kmなので高尾以前に20kmJRに乗っていれば学割使用可、参考までに、中央線だと西国分寺-甲府間で101.3kmで学割使用可)
甲府(南口バスターミナル1番乗り場)9:05-[南アルプス登山バス]-10:58広河原
2150円 (ICカード不可)
<遅れた場合>
〇高尾7:11-[JR中央線大月行]-7:48大月7:56-[JR特急スーパーあずさ1号・松本行]-8:28甲府
(高尾7:06に遅れて甲府9:05に間に合う特急はこれのみ)
□帰り およそ4000円
〇奈良田(9:50/13:50/15:55)-[はやかわ乗合バス]-身延(11:20/15:20/17:25)
1200円(手回り品持ち込み料含む)
身延以降は、家が中央本線側にあるか、東海道本線側にあるかでルートが変わる
東海道線利用の場合:身延から富士へ南下し、東海道線へ合流
中央本線の場合 :身延から甲府へ北上し、中央本線へ合流
新宿まではどちらでも所要時間はあまり変わらず、およそ4時間半、2680円(学割使用)
身延(11:50/15:45/17:53)-(JR身延線・甲府行)-(13:20/17:14/19:16)甲府(13:52/17:32/19:45)-(JR中央本線・中央線)-(16:14/20:03/22:17)新宿
身延(12:34/16:30/17:43)-(JR身延線・富士行)-(13:52/17:51/19:08)富士(14:02/18:01/19:12)-(JR東海道本線)-(16:48/20:53/21:57)新宿
〇奈良田(9:50/13:50/15:55)-[はやかわ乗合バス]-(10:50/14:50/16:55)飯富ふれあいセンター
1000円(手回り品持ち込み料含む)
飯富(13:29/15:29/17:29)-[山梨交通高速バス身延・南アルプス=新宿線]-(16:31/18:31/20:31)バスタ新宿
3000円
身延-新宿間の高速バスだが、身延ではなくはやかわ乗合バスを飯富ふれあいセンターで下車し高速バスの飯富から乗車する。
事前に予約が必要、乗るバスの始発バス停発車時刻30分前まで予約が可能
〇奈良田(9:00/13:30/15:30)-[南アルプス登山バス]-(9:45/14:15/16:15)広河原(10:20/12:00/14:00/16:40)-甲府(12:15/13:50/15:55/18:30)
下山の見込まれる昼頃の広河原での接続が著しく悪いことからお勧めしない。
※山梨交通南アルプス登山バス広河原=奈良田線は2019/7/4現在土砂崩れにより運休中
■行程
〇1日目
広河原-(0:25)-分岐-(2:10)-白根御池小屋
計 2:35
〇2日目
白根御池小屋-(2:30)-小太郎尾根分岐-(0:30)-北岳肩の小屋-(0:20)-両俣小屋分岐-(0:30)-北岳-(0:55)-北岳山荘 計4:45
〇3日目
北岳山荘-(0:45)-中白根山-(1:00)-間ノ岳-(1:00)-農鳥小屋-(1:10)-西農鳥岳-(0:50)-農鳥岳-(0:40)-大門沢下降点-(0:40)-広場-(0:50)-河原-(1:00)-大門沢小屋
計7:55
〇4日目
大門沢小屋-(1:00)-峠-(0:40)-岩-(0:50)-大門沢登山道入口-(0:30)-奈良田第一発電所-(0:20)-丸山林道入口-(0:10)-奈良田
計3:30
■エスケープルート
白峰三山にはエスケープルートが無いので行くか引き返すかになります。
1,2日目の行程は北岳に登るだけなので短いですが、3日目は北岳山頂から一気に農鳥岳を越して大門沢小屋まで進むので、悪天候の場合3日目の行程を決行するかどうかは慎重に判断します。
〇1日目
広河原山荘に引き返す
〇2日目
小太郎尾根分岐まで:白根御池小屋に引き返す
小太郎尾根分岐~北岳:北岳肩ノ小屋へ
北岳以降:北岳山荘に進む
〇3日目
出発前に予め悪天候が予測される場合は停滞する。
長引くようであれば広河原に引き返すことを検討する
間ノ岳まで:北岳山荘に引き返す
間ノ岳~農鳥岳まで:農鳥小屋へ
農鳥小屋以降:大門沢小屋へ
〇4日目
下山口まで降りる
■地図
2.5万分の1:「鳳凰山」「仙丈ヶ岳」「間ノ岳」「夜叉神峠」「奈良田」
エアリア:北岳・甲斐駒
■共同装備
テント(ステラリッジ):猶木
鍋(雪月):鈴木
ヘッド
(緑4,8):猶木→渡邉
カート*4:鈴木
調理用具セット(ガジャ・マダ):渡邉
救急箱(エーデルワイス):猶木
■食当
朝 / 夜
1日目 /渡辺
2日目猶木/鈴木
3日目渡邉/猶木
4日目鈴木
※予備食は各自
■個人装備
□ザック □ザックカバー □サブザック □サブザックカバー □登山靴 □替え靴紐 □ヘッドランプ □予備電池 □雨具 □防寒具 □帽子 □水
□行動食 □非常食 □ブキ □コッヘル □ロールペーパー □ライター □新聞紙 □ゴミ袋 □軍手 □地図 □コンパス □筆記用具 □計画書
□遭難対策マニュアル(緊急連絡カード含む) □学生証 □保険証 □現金 □常備薬 □日焼け止め □タオル □歯ブラシ□学割証明書
□エマージェンシーシート □シュラフ □マット
(□カメラ □サングラス □温泉セット □着替え)
■遭難対策費
600円/人×3人
計1800円
■悪天時
前日昼頃までに天候とメンバーの状況を基に柔軟に判断する。
状況によっては北岳のみあるいは間ノ岳までのピストンを検討する。
初日の悪天候の場合の間ノ岳ピストン行程
〇1日目 午後 高尾駅集合 甲府駅から広河原までバス、広河原山荘幕営、テント泊。
〇2日目 広河原山荘-(2:35)-白根御池小屋-(2:30)-小太郎尾根分岐-(0:30)-北岳肩ノ小屋
計5:35
〇3日目 北岳肩ノ小屋-(0:20)-両俣小屋分岐-(0:30)-北岳-(0:55)-北岳山荘-(0:45)-中白根山-(1:00)-間ノ岳-(1:00)-中白根山-(0:45)-北岳山荘-(0:55)-北岳-(0:30)-両俣小屋分岐-(0:20)-北岳肩ノ小屋
計7:00
〇4日目 北岳肩ノ小屋-(0:20)-小太郎尾根分岐-(1:30)-白根御池小屋-(1:50)-広河原山荘
計3:40
■参考情報
〇日の出・日の入
・日の入 18:34 (8/25)
・日の出 5:01 (8/26)
南アルプス警察署:055-282-0110
広河原山荘 090-2677-0828 テン場代500円/人、100張 素泊まり5200円
白根御池小屋 090-3201-7683 テン場代500円/人、50張 素泊まり5300円
北岳肩ノ小屋 055-288-2421 090-4606-0068 テン場代700円/人、50張 素泊まり4500円
北岳山荘 090-4529-4947 テン場代800円/人、50張 素泊まり4800円
農鳥小屋 0556-48-2533 テン場代500円/人、50張 素泊まり3500円
大門沢小屋 090-7635-4244 テン場代500円/人、50張 素泊まり4000円
奈良田の里温泉 女帝の湯 入浴料 550円 休憩所利用で入浴料込みで1500円
白峰三山夏合宿山行記録
■作成者:猶木(およびメンバーの二人)
■日程:2019/08/25-27
■山域:南アルプス
■メンバー(オーダー順・敬称略)
一日目 CL猶木(40期/B2)渡邉(41期/B1)SL鈴木(41期/B1)
二日目 SL鈴木(41期/B1)渡邉(41期/B1)CL猶木(40期/B2)
三日目 渡邉(41期/B1)SL鈴木(41期/B1)CL猶木(40期/B2)
■総評
・夏のアルプスの稜線歩きは最高に気持ちがよい。北岳の山頂から富士山を望めなかったのはやや残念だが景色は非常に良かった。西農鳥での日の出、農鳥岳の360度の眺望、富士山から北アルプスまでの山々の姿はクライマックスにふさわしい景色だった。
・メンバーが3人とミニマムな合宿。後輩二人とも経験者、それも高校同期ということで体力があって動きやすく、恵まれた山行で、結果としてだが、2泊3日で適当だった。
■行程
8/25(日) 1日目
11:15 広河原出発
11:44-11:49 白根御池小屋分岐
12:20-12:25 小休止(第一ベンチ)
12:54-13:00 小休止(第二ベンチ)
13:28-13:33 小休止
13:55 白根御池小屋到着
(計2時間40分)
8/26(月) 2日目
04:55 白根御池小屋出発
05:38-05:43 小休止
06:30-06:40 小休止(右俣コース合流点手前)
07:07-07:12 小太郎山分岐
07:43-07:53 北岳肩ノ小屋
08:36-09:06 北岳
10:05-10:20 北岳山荘
11:00-11:10 中白根山
11:38-11:43 小休止
12:25-12:45 間ノ岳
13:55 農鳥小屋到着
(計9時間)
8/27(火) 3日目
04:18 農鳥小屋出発
05:10-05:25 西農鳥岳(日の出)
05:57-06:15 農鳥岳
06:46-06:51 大門沢下降点
07:57-08:02 小休止
09:07-09:30 大門沢小屋
10:18-10:23 峠
(10:55 大古森沢横断)
11:33-11:38 大門沢登山道入口
12:30 奈良田の湯到着
(計8時間12分)
■CL記録
道の状況などは山行記によく書かれているので多くは触れず、それ以外の点で残すべきであろうことを記録する。
<計画>
・去年、悪天候などにより夏合宿がすべて潰れ人によっては夏山に一度も行けないというような状況が起こっていたことを念頭に、たとえ全日で天気が良くなくとも短縮などによって対処できる山行を考える必要があり、去年の合宿のうちの一つの白峰三山の計画をほとんどすべて踏襲して今回の計画とした。
・当初SLをお願いしていた河原井が鹿島槍ヶ岳の合宿での怪我により参加できなくなった。ほかの参加できる上級生を探すことができなかったが41期の二人とも山岳部出身の経験者ということでほかの40期とも相談したうえで3人での決行を決断した。
<1日目>
・登山道はやはり人気なルートのためかよく整備されていて迷う心配もないほどだ。前泊なしだとバスの到着は11時ごろになってしまうので白根御池小屋まで2時間半ほどの行動がちょうどよい。
<2日目>
・小屋から稜線に上がるまでがかなりの急登でステップを刻んで登るしかない。上がってからは東側が雲で隠れてしまったため期待していた富士山を見ることはできなかった。
・間ノ岳を過ぎてから渡邉くんが少しバテ気味で先頭の鈴木くんと間が空くようになっていたためたびたびペースを落とし、休憩も多めにとった。結果的に9時間かかったがそれでも余裕をもって農鳥小屋に到達することができた。
<3日目>
・大門沢下降点から大門沢小屋までが最も急な下りで1000m以上下る。なおかつ、藪のようになっている区間も長く足への負担が大きい。計画書通りの行程では3日目、間ノ岳・農鳥岳登頂後にこの区間を通る予定であったが、登頂後の疲労が溜まった状態での下降はある程度危険だったかもしれない。
・奈良田の湯は水曜定休なので計画書通りの行程では下山後に入浴できなかった。結果往来である。
・奈良田-身延の早川乗合バスは甲府経由で帰宅する場合は下部温泉で降りて乗り換えると身延までバスに乗るより、バス賃200円、JR運賃300円の計500円程安くなる。さらに、駒場東大前利用者は高尾から京王線乗り換えでより安くなる。参考までに、下部温泉-駒場東大前(高尾まで学割利用)2170円也。
<2泊3日という行程について>
・日程の短縮判断について。計画書では3泊4日の行程を予定していたが広河原での登山届の提出時に天気について注意があったことから行程の変更を検討した。計画段階では農鳥小屋での宿泊を具体的には考えておらず、本来であれば計画書に記載した以外の行動をとることは避けるべきことだったが、なるべく計画を完遂したいという強い意志、大門沢ルートが沢沿いで渡渉もあり天候悪化は危険性が高いこと、いざとなれば途中の小屋で停滞できること、などから計画書通り進めるよりも短縮の方がよいと考え2泊3日の行程をとる判断をした。しかし、行程の検討はもっと事前にしておくべきであったというのは反省点であろう。言うまでもないことだが、天候の判断は安全を第一に考慮して決めるべきである。それと同時に夏合宿は夏山でのテント泊の訓練の貴重な機会でもあるので安易に完全な中止にするべきではないだろうということも考慮する必要がある。
<トイレについて>
・白根御池小屋には、そうか私は登山に出掛ける夢を見ていたのだなと思ってしまうほど設備の整った近代的な普通の水洗洋式トイレがある。ところが行程が進むにつれてトイレ事情は過酷なものとなっていくのであった。北岳肩の小屋、北岳山荘は比較的清潔なバイオトイレが存在するらしい。(私は利用しなかったので詳細は知らない。)二日目の農鳥小屋のトイレは、まずトイレの小屋がかなり傾斜した土地に木材で支えられて立っていて、強風のためかワイヤーで支えられてはいるものの小屋自体が斜めっているようで心もとない。また、男女で分かれていないことも注意が必要かもしれない。そして最後の大門沢小屋もまた独特なトイレであった。男女兼用汲み取り式なのは同じくだが、岩を樋の代わりのようにしてブツを流すので印象的な仕上がりになっている。
■山行記
8/25 (1日目) 文責:猶木
予定通り高尾駅で3人とも集合し甲府駅に着く。甲府駅前のバスロータリーには広河原行きのバス停の前にすでに登山客の列ができていた。後ろに並んで各々コンビニに食料を買い出しに行ったりトイレに行ったりして準備をする。バスが来て後ろの方の座席に座ることができたので広河原まで二時間ほどうつらうつら。山が深くになるにつれて南アルプスの塊が近く大きく、迫ってくる。
バスは途中、夜叉神峠に止まる。去年鳳凰三山に登った登山口。鳳凰三山は去年唯一行けた夏山だ。夏合宿がつぶれてしまって、そのあと10月に38期の菅沼さんが連れて行ってくれた。それと吉田さんと川瀬さん、あと岩瀬も。もしそれがなければ夏山に行けてなかったので大きいことだ。なかったら今ここに後輩を連れて、来られてなかったかもしれないのだから。
11時広河原に到着。広河原のインフォメーションセンターの前で身支度をする。途中でインフォメーションセンターの中にある県警の出張所に計画書を提出。警察の人に3日目以降天気が崩れるかもしれない、特に奈良田への下降ルートは滑りやすくなるので注意するようにとのこと。エアリアでは大門沢ルートは2018年10月時点で橋の崩壊により通行不能ということだったが、現在、通行はできるということもここで確認できた。
身支度が済みいざ出発、と進み始めて早々に車道の分岐で迷って地図を見る羽目に。つり橋を渡らなくてはいけなかった。下界だったので油断していた…出鼻をくじかれたが気を取り直し登山開始。広河原ベジカレーがおいしそうだなとランチメニュー看板を横目に見つつ広河原小屋のわきを通りぬける。
とりあえず今日は私が先頭を歩く。登山道はよく整備されていた。多少でも崩落しかけていたようなところには新しめの木の階段や柵がついていたりする。登山者は非常に多く、何度もすれ違いがあるが、それでも余裕があるほど道幅も広いところが多い。
登り初めから30分ほどで大樺沢への分岐に出る。ここから尾根線沿いに白根御池小屋に向かう。尾根の上は樹林帯の木々の隙間から少し風が吹いてきて、上がった体温に気持ちがよい。しばらくは比較的の急坂が続くが親切なことに、おおよそ30分ごとにベンチが設置してありそこで軽い休憩をしながら進む。
第二ベンチでの休憩の時に、3日目から天気が悪くなりそうだがどうしようかという話をメンバーにしてみる。天気予報にもよるが間ノ岳までのピストンにしようかと思っていたが、鈴木くんから明日多目に歩いて農鳥小屋まで歩くことで一日短縮できないかということを提案された。しばらくその可能性を考えながら歩いていた。道は尾根からそれ、トラバース気味になる。途中一度沢を渡るところで視界が開け、空が見える。稜線も見える。
ほどなく小屋に到着。14時。休憩を含めてほとんどCT通り。受付を済ませテントを張る。翌日にヘリが来るので御池の近くにはテントを張らないようにということだったので木々の間にテントを張った。
夕飯の準備までしばらく時間があるのでうろうろ池の方を見に行ったり、トイレに行ったり、本を読んだり。池は古くから雨ごいを祈願する池としてあがめられてきたということであったが濁ってあまりきれいとはいいがたい。小屋のトイレは非常にきれいで驚いた。なんと洋式の水洗トイレ!一週間前の北海道とは大違いである。環境に感謝しつつ味わって(?)用を足した。
白根御池小屋ではauの電波は入らなかったため私の携帯は使えなかったが、ドコモは入ったため鈴木くんに天気を確認してもらった。その時点で27日の夕方遅い時間から天気が悪くなるという予報で、地図も見つつ、農鳥小屋で幕営としても歩けそうだということをメンバーと確認。念のため最終的な判断は、計画書での二日目目的地の北岳山荘到達時点でするということに決め、在京の河原井にも連絡をとった。
夕飯は渡邉君のカレー。炊飯を担当した鈴木くんと、米は蓋を取らずに沸騰を待つのがよいのか、蓋を開けて混ぜながら炊くのがよいのかというような話をする。私は時間を測りながら蓋を取らずに沸騰を待つ流派、というより後者のやり方はその時はじめて知ったのだが、鈴木くんは蓋を開けて様子を見ながら作るらしい。ともかく、カレーをこぼしてしまったり、大幅にお米をこぼしてしまったり、その時鍋が火から外れて温度が下がったためかお米に芯が残ってしまったりといろいろトラブルがありながらもカレーはおいしく完成したのである。
夕飯が終わり、片付けが済むとやることもない。今日は全然歩いていないうえ、ひんやりとした気温が気持ちよく、ストレスもない。思えば、水はいくらでも汲めるし、ルート上にいくつも小屋があって食べ物もあるし、熊もそんなに出没するわけではなく、北海道での合宿に比べたらかなり不安要素は少ない。そんな北海道での合宿を成功させた橋本には「まったく敵わんなあ」と思う。勝ち負けとかそういうのではないがそういうふうに思わずにはいられない。座って上を見上げると目指すべき北岳が夕日にオレンジに染まって見える。本当にあこがれるほどカッコいいなと思う。
日は山陰に入り徐々に暗くなっていく。明日の朝の準備をしてシュラフに入り目を閉じる。明日は北岳だ。明日、自分は、そして41期の二人は何を考えているだろうか。
8/26 (2日目) 文責:鈴木
朝3時に起床。標高が高いせいか朝は冷え込む。少しかさばってでも靴下を履いたまま履けるサンダルを持ってくればよかったなどと思いながら外に出た。空は雲一つない快晴で、これが何時まで続くだろうなどと考える。朝食は猶木さんの棒ラーメンであった。暖かいうちにおいしく頂きテントを撤収する。下界であっても及第点が与えられるようなトイレを誇る白根御池小屋を5時になる直前に出発する。
日の出直前なのでもう明るい。3日目の晩から天気が崩れる予報が出ているため、本日の行程は3日目の途中であったはずの農鳥小屋までになった。本日のトップは僕である。迷うようなところもないのでペース決定権を授かったようなものだ。ここから北岳山頂までの最初の2時間半の登りは草スベリという名前がついているらしいが、きつそうな名前なので日が登って暑くなる前に越えてしまいたい。序盤はただの草の生えた坂だったが半分を超えたあたりから多少木が生えてきた。後から考えると、2日目の最後に渡邉が疲れ切ってしまったので、ここは少し飛ばしすぎてしまった。樹林帯ともここで一日ちょっとお別れとなる。うれしい。
森林限界を越えた後少し進むと稜線に出る。強い風が吹いているが雲は少なく昨年高校山岳部で登った仙丈ケ岳なども見えた。(こちら側から見た北岳はあまりかっこよくないなどと思ったことは秘密である。)
肩ノ小屋経由で北岳山頂へと向かう。平日とはいえまだ中高生も夏休みであるから肩ノ小屋には山頂側から下りてきた高校生のような団体がいた。大団体は時間がかかりそうだななどと思いながら休憩はほどほどにして山頂を目指す。雲が出て下界が見えなくなる前に山頂につきたかったが、山頂についたら東側は雲しか見えなくなっていた。幸い西側はきれいに晴れていたし、山頂の看板も西側を背にして立っていたのでいい景色の写真が撮れた。一番の目的を達成したようなものなので山頂ではかなりのんびりした。ベンチのようなものもありとても過ごしやすい山頂だった。
山頂で長時間休憩したが、時間には余裕を持ったまま当初の幕営予定地であった北岳山荘へと向かう。10時過ぎに到着して小屋の人に話を聞いたが、やはり4日目の天気は崩れそうなのでもう少し進むことを決断。気温が上がりガスってきた。なだらかな稜線を進み中白根山山頂を目指す。中白根山の山頂は標があるだけでどこが山頂なのかもよくわからないなだらかなピークだ。休憩を済ませて出発すると向かてくるグループがなんだか楽しそうである。「雷鳥がいる」と言っている。一瞬自分たちのことかと思ってしまったが自意識過剰すぎる。左側を見ると確かに雷鳥がいる。さっきまで珍しいのであろう高山植物を眺めながら「まったくわからん」と思っていたので初めて人間以外の知っている生き物を見られてうれしい。
間ノ岳までは稜線から少し下りたザレた道を進む。間ノ岳の方まで入ってきても、山頂には他にも4人ほどいらっしゃった。やはり人気のルートなのだろう。北岳を見たかったがガスっていてよく見えない。このあたりで見た顔は翌日もたびたび見ることとなった。8時間を超える行動時間に疲れを感じながらも山頂から見えた農鳥小屋を目指して鞍部に下りていく。岩に「ノウトリ」とペンキで書かれているのが少し垂れていてホラーのようだ。
休憩の分を除けば、コースタイムと同じぐらいで2日目の行程を終える。出発前にあるブログを読んだ様子だと、この農鳥小屋は面白いらしい。僕は結局話す機会がなかったが特に親父が特徴的だそうだ。そんなことを思い出しながら先に着いていた男性の方に水場についての話を伺う。そんな話を聞いていると猶木さんが受付を終えてテントを張り休憩。渡邉は気づいたらテントの外でマットも無しに寝ていた。夕食は僕の炊き込みご飯と豚汁の予定であったが、2800mを舐めていたせいで水場まで往復30分もかかるのにのんびりしすぎて吸水に時間が取れず残念な仕上がりになってしまった。申し訳ない。食後に小屋の売店や建物を見たが、賞味期限切れのアクエリアスが格安で売られていたり、トイレも驚きの仕様であったりとやはり登山者の記憶に残りそうな山小屋である。
電波が入ったので天気予報を確認したが、やはり明日中に下りてしまいたいということを確認して就寝となる。傾いたテントの中は寝にくかった。
8/27 (3日目) 文責:渡邉
前日のピストンにより農鳥小屋に到着していたが、3泊4日の日程を2泊3日に変更し、その影響もあって2時半に起床。前日に全身の筋肉という筋肉が死滅した私にとってはこの3日目の行程は不安でしかなかった。この日の朝は私の食当でサトウのご飯とサンマの蒲焼きの出汁茶漬けを食べた。サトウのご飯は少人数であるからできるシロモノで、温まるのにそれなりの時間がかかった。沸点が低い事も考える必要がありそう。4時18分出発。農鳥小屋前に暗がりの中にも微かに広がる雲海を見て取れた。空には満点の星が広がり、オリオン座もはっきりと見えた。最高です。先頭の私を後続の2人の支えによって暗がりの中を西農鳥岳へ岩場を登って行く。5時10分、西農鳥岳着。登り終えた時に、丁度朝日が昇ってきた。めちゃんこドラマティックである。雲海から飛び出る北アルプスの山々、昨日ガレ場で苦戦を強いられた間ノ岳、高く聳える北岳、一人構える富士山が私達の周囲をぐるりと囲み、朝日がそれらを煌々と照らしている。爽やかな気持ちのまま農鳥岳へ向かった。稜線沿いの岩場を通る。5時57分、農鳥岳着。白峰三山の一つをなすそこからより望める先程よりも日の高く登った景色はまた美しく、緑と茶と白の山々のコントラストを引き立てている。ここからはひたすらに道を降りて行く。1日にして約2200mを下る3日目の山場が始まった。稜線を外れ最初は富士山らを左手に伺える岩場を降り、登山道は次第にザレ場となった。大門沢下降点には6時46分に到着。ここから大門沢小屋まで急なヤブの岩場を下る。ここがかなりのヤマであった。途中ストックやペットボトルを落とす事もあったが切り抜けた。途中休憩を適宜入れながら9時7分大門沢小屋到着。農鳥岳から道中よくお会いする方にジュースを奢っていただいた。とても嬉しく、私もいつか、登山で出会った少年少女にジュースを奢れる粋な人間になりたいと思った。9時30分に出発、コースタイムにして2時間半の下りが再開。沢沿いの登山道のため、水の流れる登山道やちょっぴり怖い丸太橋などを渡り大きな岩が転がる岩場を超えた。それでも緩やかな下りだったため歯を食いしばって下る。足の両親指は前日の疲労も相まって爆発寸前である。大古森沢手前の急坂には注意が必要。登山道への倒木や大きな落石があったために道の状況はあまり良くはなかった。また途中に渡渉を何度かする事になる。11時33分大門沢登山道入口到着。ついに舗道!ここからはひたすらに舗道を下る。これが意外に辛い。途中崖崩れで隣接する迂回路を通行するが、この迂回路が道幅が大変狭く危険であり注意する必要があった。歯を食いしばり降りて行き、12時30分奈良田温泉到着。本当に気持ちのいいお湯でした!終わってみればコースタイムを大きく巻いた山行であり、大大大満足だった。
■反省
・悪天候予報時の対応について間ノ岳より手前であればいくつも選択肢があるから大丈夫だろうと考え、計画段階であまり具体的な選択肢の検討を行っていなかったことは反省点である。結果的に後輩二人の体力などにも救われ柔軟に対応できたが、事前のコースの検討はいくらでもやって、やりすぎるということはない。
■雑感
・体力があれば塩見岳の方も縦走してよいかもしれない。そのうち塩見岳にも登りたい。それと三伏峠にも。