2019/9/15 前川大滝沢遡行
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
前川大滝沢遡行計画書 ver1.1
作成者:橋本
■日程 2019/9/15(日) 日帰り・予備日なし
■山域 吾妻
■在京本部設置要請日時 山行当日 19:00
■捜索要請日時 山行翌日 09:00
■メンバー(計6名)
CL橋本 SL杉山 山本 山崎 梶原 河野
■集合・交通
9/14 20時 レンタカーで池袋発。
レンタカーで峠駅へ行き,前泊する。
池袋⇄峠駅は約4時間,高速代5420円(深夜料金5150円)。
峠駅より滑川橋まで15分。橋を過ぎたところに5台程度駐車可能。
■行程
滑川橋-1:00-大滝下-4:00-潜滝手前の登山道(遡行終了)-1:30-駐車スペース(計6時間30分)
■エスケープルート
大滝まで:引き返す
それ以降:そのまま進むか,右岸の登山道に詰める
■遡行図
ヤマケイ入門&ガイド p.148-149
■共同装備
救急箱(有紗):橋本→杉山
8.5mm×30mロープ(紫):橋本
アッセンダー(持っている人全員):適宜分配
テント(フェザーライト・山本私物):橋本,山本 ※前泊用
■個人装備
□ザック □ヘッドライト □予備電池 □雨具 □防寒具 □飲料 □非常食 □行動食 □ゴミ袋 □軍手・手袋 □トイレットペーパー □地図
□コンパス □レスキューシート □筆記用具 □計画書 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む) □学生証 □保険証 □現金 □ライター
□常備薬 □ナイフ □笛 □沢足袋 □ヘルメット □ハーネス □スリング □カラビナ □環付カラビナ □確保器・下降器 □お助け紐
□シュラフ □マット
(□カメラ) (□温泉セット) (□免許証) (□初心者マーク) (□虫除けスプレー) (□ETCカード)
※荷物の防水化
※温泉セット,前泊の装備や着替えは,車にデポする
■遭難対策費
100円/人
計600円
■備考
悪天候の場合は前日夕方までに判断
日没 17:49 (9/15米沢)
日出 05:21 (9/16米沢)
米沢警察署 0238-26-0110
滑川温泉福島屋 500円 9:00〜16:00 混浴の内風呂・外風呂と,女性専用内風呂がある
http://www.namegawa-fukushimaya.com
前川大滝沢遡行記録
作成:橋本
■日程 2019/9/15 (日) 前夜泊・日帰り
■山域 吾妻
■天候 晴れのち曇り
■メンバー(6人・敬称略)
CL橋本(40/B2),SL杉山(39/B3),山崎(25/OB),山本(37/OB),梶原(40/B2),河野(41/B1)
■総評
有名な東北の超人気沢だが,噂に違わぬ素晴らしい沢だった。綺麗なナメ歩き,快適な滝登攀,滑川大滝の観瀑,さらに下山後には秘湯滑川温泉まで付いて,非常に楽しい1日だった。
■時間
7:25 駐車スペース発
7:30 入渓
8:30 滑川大滝下
9:45 滑川大滝上
12:49 1330m枝沢出合
13:11 登山道に上がる
13:56-14:06 休憩
14:50 駐車スペース着
■行動記録
※滝のサイズは『ヤマケイ入門&ガイド』p.149の遡行図を参照した。
・入渓まで
前夜池袋発,峠駅の旧駅舎にてテントを張って仮眠。我々の他にもテントを張っている集団がいて,彼らは4時半頃には出て行った(多分前川大滝沢を遡行しに行った)。駅には仮設トイレがあり(ただしトイレットペーパーはなく汚い),車を旧駅舎の中に入れることもできる。一度だけ列車が通過して目が覚めたが快適に眠ることができた。峠駅から滑川橋手前の駐車スペースまでは安全運転で20分程度。予定していた駐車スペースにはすでに4台の車があり,駐められそうになかったので,脇道の車止めの手前に駐めた。滑川橋の下流側から明瞭な踏み跡が沢まで伸びており,これを利用して沢に降りる。
・滑川大滝まで
早速きれいなナメが広がり,一同のテンションが上がる。沢水に混じる硫黄の影響なのか,沢水に洗われた岩が赤茶色をしていて綺麗。少し歩くと2段15m滝。先行パーテイーがちょうど登り終わったところだった。下段は左をフリーで登り,上段は橋本リードでロープを出す。残置ハーケンで1箇所中間支点をとり,終了点には残置ボルトを利用した。ラバーソールのフリクションを活かすと手を使わずスタスタ歩いて登ることができたが,フェルトソールではそこまでフリクションが効かないようで,杉山さんは軽くテンションをかけていた。落ち口は釜は深そうに見えるが,よく見ると意外と浅く,問題なく歩いて抜けられる。とはいえ,流されると大変なことになるので,山崎さんが一応河野さんにお助け紐を出した。橋本はここはフリーで良いと判断したが,後から考えると,山崎さんの判断通り,お助け紐を出すのが賢明な場面だった。ここからは川幅いっぱいのナメや,釜を持ったナメ滝が続き,とても楽しい。
・滑川大滝上まで
滑川大滝は圧巻の大きさ。大滝と記念撮影をすると,人が豆粒みたいになってしまうほどだ。写真を撮ったり,直登ラインを考えたりしてしばらく時間を使った後,左のルンゼから巻き始める。巻道は一般登山道並にしっかりと踏み固められており,前川大滝沢が超人気沢であることを感じさせられる。2箇所ほど足を滑らせると数十メートル滑落してしまうであろうトラバース箇所があり,1箇所はロープをフィックスし,もう1箇所は山崎さんがお助け紐をスリングで延長しフィックスして通過した。流石に6人パーティでロープを出すと時間がかかり,この滝の巻きで1時間を要した。
・10m滝まで
10m弱の滝とナメが交互に続く素晴らしい渓相が続く。滝はほぼ全て簡単に直登できる。ナメ滝でウォータースライダーをして遊んだり,釜に(特に意味もなく)飛び込んだりして,ワイワイ遊びながらのんびり進んでいく。幅広6m滝は一見直登は難しそうだが,水流内にガバが隠れており,シャワークライムを楽しめる(Ⅲくらい。右から容易に巻くことも可能)。続く6m滝は直登できそうにないので左岸の踏み跡を辿って巻く。そのあとの2段8m滝は,橋本のみ左壁を登り,他の人は右岸の巻道を辿って巻いた。左壁の下段は簡単で,上段の落ち口へのトラバースはやや高度感があるが,釜が深いので落ちた時のリスクは低く,程よい難易度(Ⅲ+)で楽しい。下段を登った後で巻道に合流することもできそうだった。続いて現れる10m滝はロープを出し,杉山さんのリードで水流右を登った(Ⅲ)。
・1330m枝沢出合まで
10m滝上は釜を持つ小滝の連瀑帯となり,これまた楽しい。思い思いのラインでどんどん登っていく。吊り橋跡が沢を横切ったあたりで杉山さんが残置スマホ(ケース付き)を発見。沢でスマホを落として1時間以上探し回った経験がある杉山さんは,落とし主に深く同情したようだ。あとで警察に届けることにして杉山さんが回収。徐々に沢の渓相は平凡なゴーロになっていく。もう十分満足できていたので,1330m地点で分岐する枝沢に入って登山道に上がることにする。
・登山道まで
枝沢は最初階段状の滝があり,これを越えると苔むした平凡な沢になる。ラバーソールの橋本にはツルッツル滑ってつらい。登山道がなかなか見つからないなあと思っていると,鉱物を掘ってできたと思われる洞窟が左に現れる。精神年齢が低い一部メンバーのテンションが異常に高くなった(女性陣と山崎さんは,そんな我々を冷ややかな目で見て,「早く温泉行こうよ」と言っていた)。洞窟を後にし,さらに先へ進むと,上部がハングした大きな滝と出合う。直登はまず不可能で,両岸もきり立っていて巻くのも難しそうだ。先へ進むのを諦め引き返そうとするが,その前に,本当にまだ登山道が交差するところに達していないのか?と疑問に感じGPSで確認すると,登山道を随分と前に通り過ぎてしまっているではないか!
登りよりも注意深く登山道を探しながら,沢を下っていくと,確かにピンクテープがあり,登山道が交差していた。
・駐車スペースまで
登山道は前川大滝沢を遡行する人以外にはあまり使われていないのか,薮が登山道を侵食しているところが多い。一度河野さんが登山道を踏み外したが,幸い傾斜が緩い斜面だったのですぐに止まった。一度休憩を挟みつつ,2時間弱で滑川橋よりやや上流に出た。川(沢?)を徒渉し,沢装備をバシャバシャ洗ってから道路に上がった。下山連絡をしたのち,滑川温泉へ。日帰り入浴500円也。レトロで良い雰囲気の温泉旅館で,温泉の湯加減が絶妙で,とても気持ちよかった。
■メンバー感想・コメント
□橋本(CL)
・めちゃくちゃ綺麗で,楽しくて,アプローチが楽で詰めもない,本当に楽しい沢だった。また何度か再訪したい。
・ツイッターで滑川大滝について検索してみると,あの大滝を1年前に登攀した人がいるらしい。すごい人がいるもんだなあ……。
・山崎さん,色々教えてくださりありがとうございました。
□杉山(SL)
・F1で雑に足を置いたらヌルッと滑った。こういうこと繰り返してるといつか痛い目を見る気がする。
・洞窟で一番興奮していたのは私です。精神年齢が低くてすみませんでした。
□山崎
・美しいナメの沢に沢としては大満足でした。
・滑川温泉の泉質はさることながら湯加減が絶妙で個人的に今までの温泉で一番良かった。
・沢沿いで開放感がある露天風呂は熱く,50前後のカップルが足湯していたため去るまで気を遣って湯に入り続けたが,彼らは不倫旅行中だったと思われる。
□山本
・赤い岩質のナメが素晴らしい。入渓0分で最初のナメがあり,終盤まで飽きるほど登場する。
・意外と水量があり,楽しいウォータースライダーが何箇所かあった。
・F1以外は全てフリーで超えられ,遡行時間も長くないので,初心者にもおすすめ。
□梶原
・噂通りの美しいナメだった。
・水も綺麗なので無駄に飛び込むと楽しい。
・ただ峠駅は二度と使いたくない。
□河野
・美渓じゃなくても綺麗だと思えるお得体質なので,本当に最高だった。
・フリクション頼りの登攀に早く慣れたいです。
・先輩方との遠征,とっても楽しかったです。ありがとうございました。
■反省
・滝上では,それほど危険でないと思って(しまって)も,万が一滑った時に備えてすぐにセルフビレイをとるべきだった(橋本,2段15m滝リード時)。そもそも,考える前にセルフを取る習慣をつけた方がいいとは,山崎さんの言。
・2段15m滝上の釜は,流されるとそのまま滝下まで落ちてしまうので,積極的にロープを出すべきだった。山崎さんによれば,落ち口の釜を越えたところまでフォローを誘導するため,支点は末端から5mくらいのところでfixして,フォローが支点まで来たら末端に付け替えて釜を越えてもらうのが良かっただろう,とのこと。橋本は自分の体格を基準にして,これなら流されない,大丈夫だ,と判断してしまうきらいがあるが,もっとも小柄なメンバーや経験の浅いメンバーの立場に立って,リスクを想像し回避しないといけない。
・人数が多いのでロープはもう1本あった方が良かった。
・登山道を歩く際,(藪などを嫌がって)崖側に寄ってしまうと滑落のリスクが高まるので,藪をかき分けることになってでも山側に寄って歩く方が良い。