2019/9/21 勘七ノ沢遡行
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
勘七ノ沢遡行計画書 ver.1.0 (2019/9/20時点)
作成者:橋本
■日程 2019/9/21(土) 朝発 予備日なし
■山域 丹沢
■在京本部設置要請日時 9/21 19:00
■捜索要請日時 9/22 9:00
■メンバー(計4名)
CL橋本 SL河野 豊永 嘉村
■交通
〇行き
小田急小田原線急行・新松田行 下北沢05:34…登戸5:46…相模大野6:08…渋沢6:40 ※先頭車両集合
神奈川県中央交通バス 渋沢駅北口6:48→大倉7:03
※丹沢大山フリーパスを使いましょう。お安いです。
※遅れた場合
渋沢駅北口(7:02/7:18/7:36/7:50/…)→大倉(7:17/7:33/7:51/8:05/…)
〇帰り
大倉(.../13:38//14:08/38//15:10/38/55//16:10/18/38/55//17:08/35/…/20:39(終バス))-渋沢駅北口(15分程度)
■行程
大倉バス停 -1:10- 勘七ノ沢出合(F1下) -1:00- F1上 -2:30- F5 -1:30- 940m付近枝沢出合 -35-
大倉尾根1128m小ピーク -15- 小草平 -1:15- 大倉
計8:15
※遡行のコースタイムは過去記録等を参照し、初心者がいることを考慮して長めにとっています。
■エスケープルート
F1まで:引き返す
F4上まで:引き返す or そのまま進む or F4上の左岸踏み跡を詰めて小草尾根に上がり入渓点へ
それ以降:そのまま進む
■遡行図
東京起点120 p.98-99
丹沢の谷200 p.34-35
■共同装備
救急箱(有紗):橋本→河野
8.5mm×30mロープ:橋本
お助け紐:橋本、河野
アッセンダー(No.2、橋本河野私物):適時分配
■個人装備
□ザック □ヘッドライト □予備電池 □雨具! □防寒具! □飲料 □非常食 □行動食 □ゴミ袋 □軍手・手袋 □トイレットペーパー □地図
□コンパス □筆記用具 □計画書 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む) □学生証 □保険証 □現金 □ライター □常備薬 □ナイフ □笛
□遡行図 □沢足袋 □ヘルメット □ハーネス □スリング □カラビナ □環付カラビナ □確保器・下降器 □下山用シューズ □着替え
□地図の予備(CLのみ)
※荷物の防水化。
※山ビル対策。
■遭難対策費
100円×4人
計400円
■悪天時
前日夕方までに判断。小雨決行。
■備考
□日の出日の入@大山
9/21 日の入:18:05
9/22 日の出:5:30
□警察署電話番号
○秦野警察署 0463-83-0110
□過去記録
○2015/11/8
○2018/7/1
○2019/6/23
勘七ノ沢遡行記録
作成者:橋本、河野
〇日程 2019/9/21(土)
〇山域 丹沢
〇メンバー、オーダー(敬称略)
SL河野(41/B1)、嘉村(41/B2)、CL橋本(40/B2)
※体調不良により豊永は不参加
〇天気 曇
〇タイムスタンプ
0720 大倉バス停発
0835 二俣着(入渓準備)
0856 同発
0956 F1上
1136 F4下
1330 F5下
1448 880m枝沢出合
1519 登山道に上がる
—この間,沢装備解除,小休止を挟む—
1705 大倉バス停着
〇総評
登攀が多くて楽しい沢。増水していなければ(落ちない限り)水をかぶることもないので、沢シーズン終盤でも行けそう。ただ人気沢なだけあって天気予報にかかわらず混雑が予想されるので、CTなど考慮に入れておいた方が良いかもしれない。
〇記録
沢新人がいるのにSLの記録が見たいということで、山知識ゼロで沢6回目の河野が拙筆をとることになりました。
登り方、評価等はベテラン橋本先輩に丸投げして断片的に印象に残ったことを羅列しようと思っていたら、「記録を書くのも練習です、全部自分でやってみよう」と突き放されてしまいました。母親から巣を追われて自立していく野生動物の気分です。不備も多いかと思われますが、せめて生ぬるい目で見てくだされば幸いです。
〇バス停まで
事前にCLから勘七でリードをやってみましょうという話が出ていたので、電車を待つ間ザックにカラビナやスリングをかけて支点構築の練習をしていた。はたから見たら普通に変な人である。
橋本さんがほっぺにご飯粒をつけたまま乗車してきた。少女漫画のヒロインですか?
〇アプローチ、入渓
渋沢駅からバスで大倉へ。分岐の看板を見ながら二俣を目指す。3か月前木口さんが「しんどい」と渋い顔で歩いていらっしゃったなぁ、道中に見た猫が可愛かったなぁと初沢のことを思い出していた。あの時は何もかもが新鮮で一時間以上のアプローチにさえ不思議と高揚した気分だったが、今となっては「しんどい」と自分がぼやく始末である。ずいぶん生意気になったものだ。
アプローチの半分程度を過ぎた地点で、後方からやたらと我々を気にする乗用車が走ってきた。何事かと思ったらサークルの身内だった。びっくり。
今日は鍋割で歩荷をするらしい。お互いにエールを送って別れる。内心入渓点まで乗せていってくれないかと期待したが、あっさり行ってしまった。現実は甘くない。
登山道と沢が交わった箇所で入渓準備。
数十年前沢遡行に興じていたという気のいいおじさんにりんごを頂く。
ヒル対策にはストッキングが良いよと有益な情報を提供してくださったが、男性陣はどういった心持ちでこれを聞いていたのだろうか。
嘉村さんは今日のために沢靴を購入されていた。かっこいい。
今回は彼の初沢。不慣れな部分もあり、準備完了に少々時間がかかった。
沢タビに水がしみ込んでくる瞬間はいつだってドキドキする。川底に足の裏をつけたり岩の上に乗ってみたりして束の間の渓流歩きを楽しんだのち、最初の堰堤を左にかわす。木々が茂って開放感はないが、先日前川大滝沢で見た褐色のナメとは対照的なくすんだ青緑の岩が印象的。水はそれ程冷たくはなかった。初めてのトップ、細かなルートファインディングが不安な反面、視界に人がいないのが新鮮だった。
〇F1
CL橋本さんがリード。ここで落ちたら明日ジムで特訓しますと前日におっしゃっていたが、堅実にクリア。流石です。
ビレイしながらムーブをカンニングしていたが、そうはいっても下部が難しい。時間がかかったが嘉村さんのアドバイスと上からの応援により何とかノーテンで登りきることができた。やったぜ。終始直登ではなく、とりつきはやや左から入る方がホールドとスタンスがあって吉。上部は容易。
支点構築を一通りおさらいしてから、河野ビレイで嘉村さんに登ってきていただく。スキー山岳部所属でアルパイン経験があるだけに、登攀が早くてビレイが大変だった。
〇F2-F4
河野のリード及びダイレクトビレイの練習、新人連れという理由からすべての滝でロープを出した。
笛が聞こえないなど意思疎通に苦労した。
・F2
上部ではロープを振り分けている男性が見えた。天気予報が悪くても遡行に踏み切るなんて、物好きもいるもんだなぁと思いながら、スリングやヌンチャクを頂いてリードの準備をする。
右壁を登る。岩がはがれやすいが難しくない。残置がないので、一段目にある岩と、看板を留めているハーケン(左上のみ。右上は外れかけている)に細めのスリングをかけて中間支点とした。登りきったのち立派な立ち木に支点構築したが、いざ一人でセットするとなると、緊張からかやり方が頭から飛んでしまった。F1の際に備忘のために撮ったカメラの画像を見ながらもたもたとセットする。フリーで登ってこられた橋本さんに点検してもらったところ、支点が信頼できるのにタイオフで済まさずスリングを多用したため「無駄が多いね」と笑われた。恥ずかしい…。
・F3
内側に湾曲した左岸をへつりつつ徐々に高度をあげていく。楽しい。手ごろな位置に残置ロープがあるうえ(ただし古い)しっかりとしたスタンスがあるので難しくないが、ビレイがきつくてなかなか進めなかった。よくジムでビレイする際、「きついからもっと出して」と言われていたが、なるほどこういうことかと実感。これからは気を付けます。残置ロープを留めているボルトと看板のワイヤーを使って中間支点をとる。
問題なく進めるはずの橋本さんが遅いので心配してのぞき込むと、なぜかザックを二人分担いで登ってきていた。嘉村さんが泳ぎたいらしく、シューズを濡らしたくないため代わりに持ってきたとのこと。かなりの重量だった。嘉村さん、悪態をつく橋本さんにはおかまいなしに釜へダイブ。沢をエンジョイしている様子がうかがえてなんだかほほえましい。
上段ではルンゼを登る。途中ロープの流れが悪くなってビレイできず、橋本さんがクライムダウンして流れを直してくださった。
今度はアメリカンデストライアングルを作った。後日このセット方法の何が問題なのか分かりやすく解説したサイト(https://micki-pedia.com/american-death-01.html)を橋本さんがグループにあげてくださった。間違い一つで人を殺すことになりかねないので、理屈込みでの正しい知識を身に着けたい。猛反省。
全員登り終えた後、スリングが一本足りないことが判明。回収を忘れていたらしい。橋本さんが「何してくれるんよ」と二度目の悪態とクライムダウンで取りに行った。
ここで後続から追いついていた2人組のパーティに抜いていただく。
・堰堤
最初の2つは左岸、残り3つは右岸を巻く。どこから巻けばいいのかいいのかが分からず、橋本さんに教えを乞うが「自分で考えてみよう」とニコニコされた。徹底して私を育成するつもりらしい。お借りしている沢登り入門書に「巻きこそ沢屋の技量が試される場所」と書かれていたのを憶えていたので、変にプレッシャーがかかる。途中踏み跡が不明瞭で足取りがおぼつかなくなった。早く真の沢屋になりたい。練習と実践。
・F4
15人以上のパーティがF4にとりかかっていた。F2、F3で見た方々もいる。高校の山岳体験会なるものらしい。沢でこんな大所帯見たの、初めて。かんしちすごいや。
仕方がないので頂いたリンゴをほおばりながら40分程度待機。ただでさえ水しぶきがかかって冷えるのに、嘉村さんはF3で全身に水を浴びたことが裏目に出て非常に寒い思いをされており気の毒だった。
パーティの中に赤ヘルメット、青ラッシュガード、ショートパンツにスパッツ、紫のザックを背負った女性がいた。みためが完全に41期のあいつである。勘七への思いが強すぎるあまり体調不良をおして別パーティで参加するとは、だいぶ来るところまで来たな…
ロープが一段目に残されたままラストが登っていってしまったのだが、あれは一体どういうことなのだろうか…
時間短縮のため、先方パーティのラストが二段目にとりついた時点で一段目をフリーで登り、二段目から河野リード、橋本さんフリーという形をとった。二段目のとりつきはややハイステップ気味かも。滝の近くより右側の方がホールドが多いが若干もろい。
沢に入って3度目の支点構築は立ち木に。セット位置が低かったため非常にビレイしにくかった。あと無駄にオーバーハンドノットを作った。駅での練習もむなしく結局一度も及第点を出せるような支点構築はできずに終了。嗚呼。
・F5
橋本さんがリード。右岸を直登するのだが、高度感の割には難しくない。
立派な岩に打ってあるバチ利きのボルトにビレイデバイスをセット。念のためにボルトの右上にある残置ハーケンにもスリングをかけてカラビナに装着した。当然正確であるし、手際の良さが私とは雲泥の差である。慣れたらこんなもんだよと橋本さんはおっしゃっていた。来年同じこと言えるように頑張ろう。
・それ以降
ゴルジュ帯に入った。へつりとツッパリがとても楽しい。はしゃいでどんどん先へ進んでいったら、「後続もちゃんと見るように」と牽制された。すみません。
1度だけ楽々小滝でお助け紐を使う練習をした。が、もたもた引っ張っているうちに嘉村さんが登攀完了、全く意味のないものとなった。
枝沢に入ってから誰ということもなしに嘉村さんがトップに。めちゃくちゃ早い。山岳愛好会雷鳥ではなく完全にスキー山岳部の動きである。
実際は940m付近の枝沢よりも手前の880mあたりの枝沢で詰めた。水が枯れてからはかなりハードなツメとなった。
(※ツメが超絶苦手な筆者の主観です。橋本さん曰く「10段階中5か6くらい」)
ザレザレの土に加え、埋まっている岩はぼこぼこ剥がれていく。ツメは未だに慣れないし怖い。大汗を垂らしながら無心に草付を掴んで這い上がり、ようやく尾根にたどり着いた。
・下山
テーブルのある広い登山道の脇で装備解除して休憩。
今日はヒルに食われなかった~とご機嫌で沢タビを脱いだら丸々と太ったヤツとだらだらと鮮血を垂らす左足甲が現れた。なぜスパッツを履いた私がやられて無防備な嘉村さんは被害なしなのか。絶対に許さん。
嘉村さん、初沢はどうだったかという質問に対し「楽しかった」と破顔。こっちまでなんだか嬉しくなっちゃった。
小走りで下山していると何やら大層な装備を抱えた集団に出くわした。何かの撮影中と思われる。好奇心が尽きないので通り過ぎたのち少し離れたところで様子をうかがっていたが、それでもカメラ内に入るらしく追い払われてしまった。邪魔してすみません。これ以降お二人の中高時代のお話を聞きつつさくさく降りていく。一般登山客も多く見られた。
のんびり遡行に加えてロープをたくさん出したので大倉に着いた時点で17時を回ろうとしていたのだが、予想されていた雨は結局最後まで降らず快適な沢登りができた。天気予報が芳しくなくても行ってみるものだなぁ。
大倉でバスを一本遅らせて、綺麗な服に着替え装備を洗う。トイレも洗い場もあって良心的。のんびりしていたら次のバスにも遅れそうになり、細かい荷物を脇に挟みつつ、橋本さんから頂いたパピコを咥えて駆け抜けた。
渋沢でラーメンをすすってから帰路につく。ここでも一本電車を逃した。雷鳥らしいというかなんというか…。空腹が満たされたからか二者二様の緊張がほぐれたからか、電車内では橋本さんも嘉村さんも熟睡だった。嘉村さんに至ってはアイマスクとネックピローを装着してガチすやすやモード。軽量化の概念を完全に放棄した穏やかな寝顔である。クレイジーでとてもツボだった。
〇感想
CL橋本
・残置が多く,リードの練習をするにはもってこいの沢だと感じた。F1のリードはなかなか楽しかった。
・@河野さん たった3ヶ月前に初めて沢登りをしていた後輩が,いまや立派にリードをしているのを見て感動した。でも,「高度感の割には難しくない。」なんて可愛げのない記録を書くようになっちゃって,ちょっとさみしい気もする。リードも支点構築も,最初から完璧にできる人なんてそういないので,じっくり練習を積みましょう。
・@嘉村 まさか高校同期と一緒に沢に行く日が来るとは。TUSACと兼サーしてるだけあって滝の登攀が上手で,体力もあって流石だなと思った。また一緒に沢に行こう。
・SCWはそんなにあてにならない。小雨の予報くらいでは,降らない可能性も十分にあるので,増水の危険の少ない沢ならとりあえず行ってみていいのかも。
SL河野
・初沢・小草平のお隣である勘七でリードをさせていただきました。感慨深い。
・橋本さん、新人のサポートかつ後進の育成はなかなか骨の折れるものだっただろうと心中お察しします。お疲れさまでした、ありがとうございました。
・嘉村さん、また一緒に沢行きましょう!
・沢に来るたびに何かしらやらかして反省してる気がする。記録書いててあまりの自分のふがいなさにイライラしてきた。デバイスのセットミスは人命に関わる可能性もあってシャレにならないので、もっと練習しなければいけない。先輩方、今後ともご教授のほどよろしくお願いします。
・唯一満足できた点は初めて地図遡行図を落としたり濡らしたりしなかったことです。
嘉村
・初沢は非常に楽しく満足度の高い山行となった。時期的にやや寒かったりもしたが、その中あえて泳いだりしたのもいい思い出。何よりヒルに噛まれなかったことが大きい。
・TUSACは笛使わないらしい。笛でも聞こえないこともあり、どっちがいいのだろうという気持ち。
反省
・財布、笛などが入ったジップロックを忘れた。あと地図は印刷したが我が家のプリンターが故障しているのにまだ直していないため使える地図でなかった。猛省。
・ツメであまり前を見ず淡々と登っていたら変なところに行ってしまい、ちょっと落ちちゃった。プチ反省。あとツメのペースが不必要に早かったかもしれない。
〇反省(橋本)
・CLなのに地図を落として本当にすみませんでした。ズボンのポケットに地図を入れるのはやめるなどして,再発防止を徹底します。
・沢では意思疎通に笛が必須です。忘れずに持って来ましょう。