2019/11/22-23 常念岳

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
常念岳山行計画書第三版
作成者:杉山

■日程 2019/11/22-23(金土) 1泊2日(+予備日1日) 前夜発
■山域 北アルプス
■在京本部設置要請日時 2019/11/24 19:00
■捜索活動要請日時 2019/11/25 9:00

■メンバー (計2名)
CL杉山 SL橋本

■集合・交通
〈0日目〉3500円
新宿から松本へ高速バスで移動。24時前後に到着、そのまま駅寝する。

〈1日目〉約3000円
大糸線 松本5:58-穂高6:28 330円
タクシーで一の沢登山口へ 15分 約5300円/台
※上記は安曇観光タクシー価格 0263-82-3113

〈2日目〉約6500円
行き同様にタクシーで穂高駅周辺まで移動。
案1:アルピコ交通新宿白馬線 安曇野穂高(10:32/16:32/18:32) – 新宿(14:28/20:28/22:28) 3800円
案2:JRで穂高駅から帰る。約5時間、学割抜きで4000円強。
終電:穂高18:43-新宿00:04 など。
終バス:松本21:45-新宿01:03(家には帰れない)など。

■行程
〈1日目〉
一の沢登山口 -1:30- 王滝ベンチ -4:00- 常念冬季小屋(小屋の南東側に位置)
計5:30
※天気と時間に余裕があれば、そのまま常念岳をピストンする(CT+1:50)。
※基本小屋利用の予定だが、念のためテントも持っていく。

〈2日目〉
常念冬季小屋 -1:00- 常念岳山頂 -50- 常念冬季小屋 -2:30- 王滝ベンチ -1:00- 一の沢登山口
計5:20
※冬季小屋に不要な装備はデポ。
※コースタイムはヤマタイムの夏道といくつかのヤマレコ記録をもとに大雑把に算出した。

■エスケープルート
引き返すorそのまま進む

■地図
未確認(二人とも地図を印刷する人なので)

■食当
22夜:杉山
23朝:橋本
※予備日は行動食で食いつなぐ。

■共同装備
テント(ゴアライト):杉山
ヘッド(緑8):橋本
カート*2:橋本
鍋(雪・月):杉山
救急箱(私物):杉山
調理器具セット(ガジャ・マダ):橋本
雪用ゴミ袋:橋本

■個人装備
□ザック □ヘッドランプ □予備電池 □銀マット □ハードシェル(or雨具) □防寒具 □着替え □温泉セット □地図 □コンパス □水筒
□ゴミ袋 □コッヘル □タオル
□筆記用具 □計画書 □ロール □ライター □非常食 □行動食 □常備薬 □身分証明書 □保険証の写し
□遭対マニュアル(緊急連絡カード含む) □新聞紙 □ナイフ
□ピッケル □アイゼン □スパッツ □目出帽 □ゴーグル or サングラス □スコップ □手袋・オーバー手袋 □シュラフ(冬用or2枚重ね)
(□シュラフカバー) □登山靴(プラ靴or重登山靴) □ビーコン □ゾンデ □ワカン (□カメラ)

■悪天時
前日正午までに判断。

■備考
□日の出日の入(@常念岳)
11/22 6:32-16:37
11/23 6:33-16:37
11/24 6:34-16:36
11:25 6:35-16:36

□警察署電話番号
〇松本警察署 0263-25-0110
〇安曇野警察署 0263-72-0110

常念岳山行記録
■日程 2019/11/22-23(金土)
■山域 北アルプス南部
■天候 晴れ/晴れ
■メンバー CL杉山(39/B3) SL橋本(40/B2)
■タイムスタンプ
〈1日目〉
7:45 一ノ沢登山口
8:53 大滝ベンチ
9:19 烏帽子沢
11:34 最終水場
12:51 常念小屋

〈2日目〉
5:15 常念小屋出発
7:10 常念岳山頂
9:46 最終水場
11:45 一ノ沢登山口

■行程
〈0日目〉
踏切に人が立ち入ったらしい。武蔵浦和駅員のアナウンスに危機感がないのは、午後9時半を回って上り線の乗客が殆どいないからだろう。人気のないホームで過ごすこと30分、松本へ向かう夜行へ乗るにはもはや一刻の猶予もない。橋本くんだけ松本に行かせ、僕は一度甲府で駅寝しようか、等と検討するうちにようやく電車が来た。とはいえ板橋を過ぎるころには遅刻が確定していたのだが、橋本くんの交渉により出発を3分だけ延期してもらえ、新宿駅からバス停まで最短経路で走り抜け、なんとかバス代を無駄にせずに済んだ。20キロ強あるザックを担いでの中距離走は当分遠慮したい。喘息のため喉からかすれた笛のような音が呼吸に合わせ鳴り続けているが、幸い乗客は殆どおらず、周囲に気を遣う必要はなかった。
バスは定刻よりやや早い午前1時半に松本へ到着した。音のやかましいエスカレーターを上がると、エレベーターとコンビニの間に幅1mほどの狭い隙間があり、2人縦に並べばなんとか寝られそうに見えた。シュラフを出すのが億劫でマットのみ使って寝ようとしたが、2時半ごろまでコンビニ商品の搬入で人がひっきりなしにやって来てはこちらに怪訝そうな目を向けるし、エスカレーターのアナウンスは相変わらず手すりを掴めだのなんだのうるさいし、何より松本の夜は底なしの寒さで、僕は4時にとうとう耐え切れなくなってセブンイレブンへ逃げ込んだ。橋本くんはシュラフをかぶって寝ていた。

〈1日目〉
穂高駅へ向かう始発に乗った。案の定車両は空いており、2人とも座席に倒れこむようにしてしばし眠った。僕がタクシーの予約をし損ねるという失態を犯したため、フリーのタクシーの存在を祈りながら改札を潜ると、有難いことに南安(ナンアン)タクシーが1台停まっていた。この運転手さんは相当この辺りに詳しいと見えて、はじめは辺り一面霞がかって薄どんよりとしていたのが、もう幾ばく走ると靄から抜けますよ、この町は高低差があるのでね、とこの方が言うと、果たしてその通りに靄が晴れるのであった。おまけに昔は埼玉の浦和、僕の母校のすぐ近辺に縁があったらしく、眠気を忘れて話すうちに一の沢登山口へ着いてしまった。メーターは5000円をやや上回っていたが、下3桁はおまけしてもらった。
やや傾いた木のベンチに腰掛けて共装の分配に取り掛かる。お手洗いは冬季閉鎖中だ。この時はじめて、ゾンデを1本自宅の車に落としたことに気が付いたが、今さらどうしようもない。幸か不幸か冬靴を履くのがばからしくなるほどに雪がなく、雪崩はまずないだろうと判断して山行を続行した。
しばらくは特筆すべき点のない道を行く。初冬という響きからはかけ離れた、5分も歩けば汗ばむ陽気だった。沢沿いから覗く山の姿はいかにも春先のそれで、数年前の同時期に東大のワンゲル部が訪れたときは避難小屋がすっかり雪に埋もれていたというのに、今や北アルプスの厳しい冬は一切感じ取れなかった。思えば半年以上まともな幕営登山をしておらず、すっかり体力の落ち切っている僕は一向にペースを上げられない。笠原沢の渡渉地点では、柔らかい日差しと沢を吹き抜ける涼風が心地よく、2人とも腰を落ち着けて休んだ。タクシーから地の色がむき出しになった山々を見たときは落胆したが、雪がなくても山は山、登れば楽しいのだ。橋本くんは、このまま寝られますよね、ていうか寝たい、なんて言っていた。
殆どは土の露出した道を行くことになったが、幾度か繰り返す渡渉点のそばでは、道に薄い氷が張っていた。手掛かりにできる木や石も少なく、チェーンスパイクの類を所持していなかった我々は(僕は金がなくて買わなかった)、渋々12本アイゼンを嵌めてはすぐに外し、という面倒な手段を取らされた。とりわけ胸突き八丁の階段付近は凍結がひどく、意外と高いだの重いだの言わずにチェーンスパイクを調達しておくべきだった。急勾配の階段を超えてトラバース道をしばし歩くと最後の水場である。水場を覆う氷はさいわいパイプを完全に固めてはおらず、半透明の氷の下から水の流れる音がした。アッズで氷をたたき割って水の補給をした。橋本くんはプラティパスを紛失したようだ。出発直後の休憩では間違いなくプラティパスから水を飲んでいたから、休憩後にザックにしまい忘れたのだろう、明日帰りがてら見つけよう、とは言ったものの、結局最後までプラティパスが見つかることはなかった。
水場で調子に乗って水を多く汲みすぎたこともあり、ここから小屋までの登りで僕は完全にバテていた。橋本くんは荷物をいくらか預けるよう提案してくれるが、安いプライドが邪魔をした。亀のような足取りでコルを超えると、痛々しいほど積雪がなく、小屋は入口がむき出しになっていた。料金箱(といってもただの菓子入れだが)に1人1000円ずつ入れ、面白がって小屋内に2人用テントを張ると、片付けもそこそこに2人とも寝てしまった。今日空身でピストンする案もあったのだが、この手の計画は宿で腰を下ろした時点でたいてい破綻する。夕食は例によって鍋で、僕がふざけ半分で肉を1.3キロも買ってきたため、鍋が空になるころには腹が脹れて2人とも口数が少なくなっていた。この夜は蒸し暑く、夜半にシュラフを脱いでしまうほどだった。

〈2日目〉
どうせなら普段はできないチャレンジをしよう、そう話し合って、真っ暗なうちに出発した。小屋のあるコルから見上げる登山道は壁のように急峻に映る。夜間でのルーファイ力を鍛えるつもりだったが、実際は雪の少なさにイラつきながら、単に直上するだけになってしまった。この日はたいへんな快晴で、雲海から太陽が顔を出したときは足を止め、カメラを構えさえしなかった。2年前の夏合宿でも同じこの場所で日の出を拝んだ。あの時は冬山にこれっぽっちも関心がなかったのだが。
日が差して幾分歩きやすくなり、何度か偽ピークに騙されつつも(2年前の経験が活かされていない)、無事常念岳の山頂を踏んだ。空は澄み、見渡せば北アルプスの長い稜線から富士山はもちろん、果ては白山まで望めた。東尾根は明らかに積雪が少なく、踏み抜きと水不足に悩まされただろう。燕から常念までの稜線の寡雪ぶりに対して、乗鞍や後立山方面は一面白く覆われており、来年はあっちにしようなどと話した。今回12本のアイゼンを必要としたのは山頂に続く稜線のわずかな範囲のみである。
体が冷え始めたところで、名残惜しいが山頂を後にした。雪がなくて歩きづらいと文句を垂れていたコルからの登りは、実際には我々が雪のないところばかり歩いていただけだった。よく踏まれたつづら折り状の夏道のみ雪が溜まるのだ。やはり暗がりの出発をするには経験不足だったな、と小屋へ駆け降りながら少し反省した。
一の沢登山口は電波が入らないため、下山する前に稜線からタクシー会社へ電話を入れないといけない。強風の中での電話は骨が折れた。荷物をまとめ、行きより汚いパッキングのまま小屋を後にし、走り抜けるように下山した。すれ違う人にプラティパスの落とし物を見たか逐一聞いたものの誰も目にしておらず、落としたと思しき付近にも何もなく、どこへ行ってしまったのやら。
行きとは違う運転手だったが、この方もやはり運賃を少しまけてくれた。穂高駅そばの土産物屋で買い物をし、店員と世間話をしてから帰路についた。雑なパッキングと土産物のせいで、ザックははちきれそうになっていた。

■反省・雑感
〇杉山
・ザックに外付けしていたゾンデを自宅の車に落とした。雪が平年通りだったら撤退する羽目になっていたかもしれない。
・体力不足。

〇橋本
・雪はほとんど無かったが,北アルプスはやっぱり楽しかった。
・朝焼けに照らされた白い槍がカッコ良かった。いつか登りたい。
・2人で肉1.3キロは多すぎる。
・休憩場所を発つ際には忘れ物がないか確認する癖を付けたい。