2019/11/30 谷川岳
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
谷川岳山行計画書第二版 作成者:杉山
■日程 2019/11/30(土) 日帰り 予備日なし
■山域 上越
■在京本部設置要請日時 2019/11/30 19:30
■捜索活動要請日時 2019/12/1 9:00
■メンバー (計5名)
CL杉山 SL岩瀬 鈴木 中村 豊永
■集合・交通
可能な限り早く集合、鈴木車で谷川岳ふもとへ移動。関越経由で2.5時間程度。土合霊園地に停める(無料)。
参考:練馬IC-水上IC 3090円 ロープウェイ駐車料金1000円
■行程
谷川岳ロープウェイ駐車場 -10(ロープウェイ)- 天神平 -20- 天神尾根分岐 -40- 熊穴沢避難小屋 -2:00- トマの耳
-15- オキの耳 -15-トマの耳 -1:20- 熊穴沢避難小屋 -20- 天神尾根分岐 -15- 天神平 -10-
谷川岳ロープウェイ駐車場
計5:35(+ロープウェイ20)
※ロープウェイは大人往復2100円。11月祝日の稼働時間は7:00~17:00。
※コースタイムは積雪量で大きく前後する。13:00の時点で引き返し始める。
※風雪で進めない場合やロープウェイが停止した場合は、雪訓の時間を長く取る。
■食当
全て各自
■エスケープルート
そのまま進む or 引き返す
■共同装備
ツェルト(私物):杉山
救急箱(私物):杉山
■個人装備
□ザック □ヘッドランプ □予備電池 □ハードシェル(or雨具) □防寒具 (□着替え) (□温泉セット) □地図 □コンパス □水筒 □ゴミ袋 (□タオル)
□筆記用具 □計画書 □ロール □ライター □非常食 □行動食 □常備薬 □身分証明書 □保険証の写し
□遭対マニュアル(緊急連絡カード含む) □新聞紙 □ナイフ
□ピッケル □アイゼン □スパッツ □目出帽 or ニット帽+ネック □ゴーグル or サングラス □スコップ □手袋・オーバー手袋
□登山靴(プラ靴or重登山靴) □ビーコン □ゾンデ □ワカン (□カメラ)
■地図
2.5万分の1:「谷川岳」
■遭難対策費
100円/人 * 5人=500円
■備考
□日の出日の入(@谷川岳)
11/30 -16:28
12/1 6:38-
□警察署電話番号
〇沼田警察署 0278-22-0110
谷川岳山行記録
■日程 2019/11/30(土)
■山域 上越
■天候 曇り+雪少し
■メンバー CL杉山(39/B3) SL岩瀨(40/B2) 鈴木(41/B1) 中村(41/B1) 豊永(41/B1)
■記録・行程
6:25 新宿発
9:15 谷川岳ロープウェイ着
10:10 天神平
11:00 天神尾根約1460mのピーク ラッセル開始
12:40 1441mピークの約100m先 撤退開始
12:45-13:00 休憩
13:40 天神平 雪訓開始
16:30 雪訓終了
〇アプローチ
いつものように鈴木車で新宿を発った。毎度往復の運転を完全に任せてしまって申し訳ないが、僕が運転を代わるともっと申し訳ないことが生じそうなので大人しく後部座席に収まる。久しぶりに混雑のない関越を走り抜け、2時間もすると窓の外は白に覆われ始めた。漸く本格的な冬の到来だ。ICを降りると次第に路面状況が悪くなり、消雪パイプから噴射される液体が勢い余ってフロントガラスに飛び掛かってくる。ところどころ凍結箇所を超え、何とかチェーンをつけることなくロープウェイ駅に到着した。無料と噂の霊園地はどうも見逃してしまったらしい。中村君は雪がちらつき出してからしきりに「(テンションが)ぶち上がるわー」と繰り返していた。岩瀨君はトイレを我慢しすぎて暴れていた。
〇出発まで
冬季駐車料金は1000円と聞いていたが、11月末はまだ冬季扱いでないのか、500円で済んだ。服を替え、靴を履き、共装の配分と解説…と準備に存外手間がかかった。特にビーコンの装着が面倒で、あの古いビーコンを初見で正しく装着できる人はまずいない。下級生で唯一おニューのビーコン、Mammut
Barryvoxを持ってきた豊永さんだけが一瞬で装着しており、装着の手間1つとっても新旧の格差があるのかと思った。そしてBarryvoxはグループチェックも素早い。スイッチ操作、画面表示、マーキング、精度、そしてカッコよさ、どれをとってもBarryvoxの完勝である。なお、共装No.12は電源の入りが悪く、正常に立ち上がるまで何度かスイッチのオンオフを切り替える必要があった。こいつも間もなく寿命を迎えるようだ…。
〇ロープウェイ~約1460mのピーク
大人往復2100円でロープウェイに乗れる。JAF/モンベルカード所持者がいれば1人あたり100円引きになるようで、これまた鈴木君のおかげでお金が浮いた。ロープウェイから下を覗くと西黒沢が氷を割るように蛇行している。今遡行したら寒さで死ぬだろうな。確か加藤文太郎も冬のアルプスで沢に落ちて死にかけていたような気がする。揺られること数分、天神平に到着。前日まで「薄っすらcm」と報告されていた天神平の積雪だが、当日朝には35cmまで増えており、行きの車内で期待に胸を膨らませていた。果たしてどれだけ積もっているのか。駅舎を出て雪上に踏み出すと、これはこれは、明らかに35cmより多い。大体50~60cmはあるだろうか、僕のアックスがちょうど頭まで埋まってしまう。トレースを辿って右手に進み、あとは田尻尾根より手前、一番初めの尾根に乗り上げてから直接天神尾根に向かうことになりそうだ。思考停止でトレースを追うとなぜかリフト降り場に上がる羽目になったが、どうも作業者のトレースだったらしく、先に続いていない。戻るのも面倒なので降り場から雪にダイブした。ちょっと怖がっているメンバーもいたが、いざ飛び込むと新雪のクッション性に驚いたようだ。奥に見えているトレースまでラッセルで合流し、そのままやや歩みを緩めて天神尾根へ突き上げていく。
気温-11度、風速18m/s、北西の風。それが当日の山頂の予報だったが、天神尾根に詰める間は全身に熱がこもり、暑くてたまらなかった。主稜線に出ていないうえ、激しい降雪があったといえど樹木を覆うほどではないから、天神平周辺までは風が届かないのだろう。斜度が緩んだところで小休止して衣服を調節した。ほどなくして天神尾根に突き上げると、コルのあたりで男性が2人休憩している。左手に建物が見え、コルからは左右にトレースが伸びている。落ち着いて考えればあの建物はゲレンデスキーのための建築物だが、一瞬なんだかわからず戸惑って地図を開くと、男性の片方が右側のトレースに目をやりながら「山頂はこっちですが、行かれるんですか?」と聞いてきた。ええ、13時をリミットにして引き返すつもりですが、と返すと、「先行者は1人だけで、その方も立ち止まっているのでこの先はトレースがないですね」と教えてくれた。先行者が1人?あんなにゆっくり出発したのに?休日の谷川でもそんなことがあるのか。
〇ピーク~撤退地点
お2人にお礼を告げて天神尾根を進むと、ほんの数十m先でもうトレースがなくなってしまった。とりあえずラッセルで突っ込むが、新雪ばかりで硬い雪の層が一切ないものだから、簡単に地表近くまで踏み抜いてしまう。おまけにところどころ転がる大岩のせいで歩きづらい。仕方がないのでワカンを装着するよう指示したが、正直に言うとトレースの存在を信じていたため、ワカンの付け方をちっとも教えていなかった。そのうえ共装のワカンは紐があちこち外れていたり、そもそも装着方法がわからないものがあったり、とにかく時間を浪費してしまった。外れた紐はなんとか直せたものの、1つどうしてもつけ方がわからず(金属製はみな同じ着け方だと思っていた)、CLはワカンなしでのラッセルを余儀なくされた。ワカン装着に十数分格闘したのち、ひとまずコルに向けて凡そ膝上~太ももくらいのラッセルをしながら下っていく。
谷川の雪は重い、そう聞いていたが、今日の新雪はふかふかであまり重さを感じない。何より、誰も足を踏み入れていない雪面に飛び込んでいくのは気持ちがいい。しばらくラッセルを続けると、余程CLが楽しそうに見えたのか、中村君あたりが「俺もやりたい!!」と言い出したので、順番にラッセルを代わることにした。オーダーは杉山、豊永、中村、鈴木、岩瀨。軽い雪といえどラッセルが重労働であるのは間違いなく、実際先頭はみなボロボロになっていくし、パーティの歩みは遅々として進まない。天神平・天神峠分岐を越えたあたりから雪はいっそう深さを増し、時に腰より深く沈むこともあった。雪山の技術書にはよく「アックスで前の雪を落とし、膝で押し固めてステップを作る」とあるが、膝を入れても雪が柔らかすぎて全くステップが作れず、入れた膝がこれまた地表近くまで沈んでしまう。結局、訳も分からずもがくようにして進むことになった。自分の番を終えてラストに並びなおすたび、先頭とそれ以外でいかに疲労度の差があるか思い知る。トレースには本当に感謝しなければいけないな。
ふと後ろを振り返ると、後方にいつの間にかパーティが現れている。しかし動き出す気配はなく、腰ラッセルでもがく僕らをただ眺めているようだ。写真を撮りに来ただけなのか、或いはラッセルを代わりたくないから立ち止まっているのかわからないが、身内だけでこの山を楽しみたいCLにとっては、むしろ追いついてくれなくて助かった。
2周ほどラッセルを回したところでGPSを見ると、ラッセルを始めてから1時間半近く経過しているにも関わらず、なんとラッセル開始地点-熊穴沢避難小屋間の半分程度までしか来ていなかった。夏道なら30分足らずで終わる箇所であるから、いかに我々の歩みが遅かったかよくわかる。元々13時を撤退のリミットに決めていたし、あと30分頑張ったところで避難小屋までは到底たどり着けないので、早々に引き返して雪訓を行うことにした。自身で付けた道を戻ること数分、大きなザックを背負った単独行の方とすれ違い、僕らは撤退するのでもう少し先でトレースなくなりますよ、と告げると、「ここまでありがとうございます」と感謝されてしまった。こちらこそおいしいところを譲ってくれてありがとうございます。避難小屋で泊まるとのことだが、1人で幕営装備を抱えてあの道をラッセルするのは大変だろうな。
〇休憩~天神平
ろくな休憩もなく歩き続けていたので、少し平らなところで長めに休んだ。
CLは冬山に必ずコンデンスミルクを持っていく。低温でも凍らず、オーバーグローブでも簡単に開けられ、カロリーがあり、単体で食べても美味しいからだ(諸説あり)。今回はせっかく美味しそうな雪がたくさんあるので、手に抱えた雪に練乳をかけて食べた。豊永さんも岩瀨くんも食べたし、中村くんはマグカップを使っておしゃれに食べた。鈴木くんは雪面に直接練乳をかけて食べた。犬のようだった。人は雪と練乳があれば犬になれる。そのうち誰かが、海辺で砂山を作るように、雪を固めて山を作ると、これまた練乳をかけて食べた。「これは谷川岳」「この辺がトマの耳、こっちがオキの耳」「登れなかったけど食べて登頂」とか言っていた。狂気の沙汰である。
〇雪訓
行きに1時間半要した道のりは、帰りは30分もかからずに終わった。どれだけラッセルに時間をかけていたのかよくわかる。天神平までは転げ落ちるように各々好きなルートをたどった。あまり雪訓に適した場所が見つからず、結局リフト乗り場の前にある小斜面を適当に足で踏み固めた。あまり掘り進めると草の根が露出してしまうので苦労した。
といっても本格的な訓練の内容を考えていたわけではないので、アイゼン歩行と滑落停止、最後にビーコンの基本的な操作方法だけ確認して終了した。特に滑落停止は、以前Kuri
adventureの講習で伝授された「足首に巻いたスリングを思いっきり引っ張って強制的にコケさせる」という方式を使った。いい練習になるがコケさせる方も結構大変で、なぜかコケさせる側の岩瀬くんが吹っ飛んだのにコケる側の鈴木君は仁王立ちしていたり、中村くんが意外に(?)豊永さんをコケさせるのに遠慮していたりして、笑えた。
〇下山後
湯テルメ谷川へ向かった。値段の割に広く、特に雪のちらつく露天風呂は風情があってよい。車アプローチなら毎回ここでいいと思うくらいだ。一足先に上がって髪を乾かしていると、お腹の出たおじさんがずぶぬれのまま脱衣所へ来るなり、一切体を拭かないまま畳の敷かれた腰掛に仰向けにどうと倒れ、ぴくりとも動かない。どういうこと?もしかして何かの発作?焦って肩を叩こうか迷っていたが、脱衣所のドアが開く音がするなりおじさんはむくりと起き上がり、何事もなかったかのような顔をしていた。いや、畳びしょびしょなんですけど。何も知らない他のメンバーは笑いながら着替えていたが、CLはこのおじさんが本当に怖くてしばらく黙っていた。
■反省・雑感
〇杉山
・もっと体力をつけ、ラッセルのスピードを上げたい。早々に撤退したのは正しかったと思う。
・来年からはシーズンの頭ないし5月中に雪訓だけを目的とした山行をしたい。
〇鈴木
・雪が無いかと心配していたが前日にたくさん降ってよかった。
・一般の観光客がいる中で雪訓していたため白い目でみられていたのかもしれない。