2020/3/8 谷川岳
谷川岳山行計画書 ver.1.1
作成者:橋本
■日程 2020/3/8 前泊日帰り・予備日なし
■山域 谷川岳
■在京本部設置要請日時 2020/3/8 19:00
■捜索要請日時 2020/3/9 10:00
■メンバー(計4人)
CL橋本 SL猶木 鶴田 加藤
■交通
※学割を使うと都内から片道2500円程度。土合駅は無人駅なので,復路の切符も予め買っておくことを推奨。
□行き
3/6(橋本猶木加藤)
高崎駅19:33発 JR上越線水上行き先頭車両に集合
終電なので逃さないように注意!
高崎19:33ー20:39水上20:50ー20:59土合
土合より徒歩20分でロープウェイ駐車場
3/7(鶴田)
高崎18:21ー19:25水上19:43ー19:52土合
土合より徒歩20分でロープウェイ駐車場
□帰り
3/8(全員)
電車の場合
土合駅12:39/15:34/17:19/18:16〜12:52/15:46/17:31/18:28水上駅
水上駅13:14/14:20/15:53/16:47/17:44/18:44/19:33/20:16…〜高崎まで1時間強(以下省略)
バスの場合
10:25/11:20/12:00/14:05/15:10/16:15/17:03谷川岳ロープウェイ駅〜水上駅まで23分760円。水上温泉まで約30分890円。
■行程
0日目(3/7)
橋本猶木加藤:土合駅で前泊し,谷川岳ベースプラザにて雪崩事故防止研究会の雪崩講習に参加(8:30-17:00)。夕方,鶴田と合流し谷川岳登山指導センターで前泊。
※下界での講習のため在京は置かないが,ビーコンなどの共装を使用する。
1日目(3/8)
天神尾根ピストンで谷川岳を登る。
谷川岳ロープウェイ駐車場ー0:10ー天神平ー0:40ー天神尾根分岐ー1:00ー熊穴沢避難小屋ー2:15ートマの耳ー0:20ーオキの耳ー0:15ートマの耳ー1:20ー熊穴沢避難小屋ー0:30ー天神尾根分岐ー0:20ー天神平ー0:10ー谷川岳ロープウェイ駐車場
計6:40(+ロープウェイ20)
※ロープウェイは大人往復2000円(JAFカード割引を適用した場合)。3月の土日祝日の稼働時間は7:00~16:30。
※コースタイムは山と渓谷社『雪山登山ルート集』を参照した。ただし,積雪状況で所要時間大きく前後する。13:00の時点で引き返し始める。
■エスケープルート
そのまま進むか,引き返す
■共同装備
救急箱(私物)
ワカン*4
スコップ*3
ビーコン*3
ゾンデ*4
ピッケル*3
アイゼン*3
テント(フェザーライト)
ヘッド*1
厳冬期カート*2
鍋(雪)
お玉・菜箸(私物)
※幕営装備などはデポする。
■個人装備
□ザック □ヘッドランプ □予備電池 □ハードシェル(or雨具) □防寒具 □地図 □コンパス □水筒 □ゴミ袋 □タオル □筆記用具
□計画書 □非常食 □行動食 □常備薬 □身分証明書 □保険証の写し □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む) □レスキューシート □ロール
□ライター □ナイフ □新聞紙 □ピッケル □アイゼン □スパッツ □目出帽 □ゴーグル(orサングラス) □手袋・オーバー手袋
□重登山靴 □ビーコン □ゾンデ □スコップ □ワカン (□カメラ)
□着替え □温泉セット
□マット □シュラフ(前泊用) □コッヘル □ブキ
※幕営装備などはデポする。
■遭対費
100円/人
計400円
■備考
沼田警察署 0278-22-0110
日の入:17:45(3/8)
日の出:6:04(3/9)
関越交通:https://kan-etsu.net/publics/index/20/
ふれあい交流館(温泉):570円,10時〜21時,水上駅より徒歩12分,http://www.minakami-onsen.com/spa.php?itemid=273
谷川岳山行記録
作成者:メンバー全員
■日程 2019/3/8(日)
■山域 谷川
■天候 霧(上部で視界50m)&時々弱い雪 風は無し
■メンバー・オーダー(計4人,敬称略)
CL橋本(40期/B2) 鶴田(40/B2) 加藤(41/B1) SL猶木(40/B2)
■総評
視界以外の条件が良好だったため,視界が悪い状況下で行動する良い練習ができた。景色が楽しめなかったのが残念だが,八ヶ岳などにはない雪国らしさを感じとることができ,十分楽しかった。今後もいろんなルートでこの山域を登りたいと思う。
■タイムスタンプ
08:03 天神平発
08:57-09:03 熊穴沢避難小屋
09:36-09:43 天狗の溜まり場
10:19-10:25 肩ノ小屋
10:34-10:50 トマの耳
11:38-11:43 熊穴沢避難小屋
12:07 天神平着
■ルート&施設概況
□土合駅
・待合室は閉鎖されているが,かつて切符売り場だった場所など,4人用テントを余裕を持って4張張れるくらいの広いスペースがある。明かりが消えないので駅寝するならアイマスクを持っていくことを推奨。
・トイレは暖かい,新しい,綺麗と三拍子揃っている。
・飲用の水を汲めるところは無さそう。
□谷川岳ベースプラザ
・レストランは土日ともに休業していた。
・夜は建物全体が閉まってしまい,トイレが使えない。
・売店はあるが,行動食に使えそうな食べ物はあまり売っていなかった。
□谷川岳登山指導センター
・板の間は8人くらい寝られる。土間にもテントマットでも敷けばいくらでも寝られる。長椅子は長さが短く幅も狭いので寝づらいだろう。入り口付近の電灯は夜も消えないので,アイマスクを持参した方が良い。
・冬場は凍結防止のため,トイレは閉鎖されている。ベースプラザのトイレも使えないので,冬の夜間は,この辺りで使えるトイレはなさそう。
・20時まで指導員が詰めており,休憩所内の電灯を全てつけてもらえた。通常時は入り口付近の電灯しか付いていない。
・屋内で火器を使うのはやはりあまり良くないようだ。今回は特別に許してもらえたと思った方が良いだろう。
・入り口の前に冬でも使える水場がある。多分飲用可(煮沸して使った)。
□土樽駅(鶴田)
・地上駅。水上行きホーム側にお手洗い併設の待合室がある。待合室を経て外に出ると、駅舎の前に登山届提出口を見つけた。
・待合室内は広く、清潔感がある。長椅子や自動販売機が設置されていた。
・トイレは汲み取り式。
・お手洗い横の水道は冬季でも使用可能。飲料水としては利用しないよう、張り紙で案内があった。
・鶴田に加え、2人組のパーティーが待合室で駅寝。室内の照明が消えることはないので、こちらも(土合駅と同様に)アイマスク推奨。駅舎の外では一組のパーティーが車中泊していた。私以外の皆さんは荒沢山に行くそうです。
□天神平〜熊穴沢避難小屋
・ロープウェイは10分強かかる。雪マジ19(19歳対象のリフト券無料サービス)はスキーヤーとスノーボーダーのみが対象らしく,登山者は普通にロープウェイの切符を買う必要がある。
・スキー場の北端に赤い棒がずーっと立てられており,この外側を登山者は登ることになる。割と急登で,ラッセルになるときつそう。
・天神尾根にあがるところは,北西方向へまっすぐトラバースするトレースがつけられていた。
・天神尾根はところどころ細いところもあるが,注意して歩けば問題なく,余程の強風でなければそれほど危険でない。
・熊穴沢避難小屋は屋根まで露出していた。例年,この時期は煙突の先端しか出ないようなので,今年は例年より1m以上積雪が少ないことになる。
□熊穴沢避難小屋〜トマの耳
・天神ザンゲから先は尾根が広くなり,地形が読み取りにくくなる。沼田山岳会が設置した竹竿がところどころ目印になるが,視界がない場合は、基本的にベアリングを頼りに進むことになるだろう。
■行動記録
□-1日目(3/6)
高崎駅で橋本,猶木,加藤が合流。水上で電車を乗り継ぎ土合駅へ。土合駅上りホームから地上へ伸びる462段の階段は圧巻だった。このままホームで寝ようかとも考えたが,トイレがないので,地上まで上がることにする(ちなみに、このホームで寝ようとする若い2人組パーティもいた)。地上へ上がると,切符売り場の前にすでにテントが2張。我々もその横で寝ることにする。テントは立てたり片付けたりするのが面倒なので立てなかった。土合駅のトイレは,暖房が効いて綺麗な特上のトイレだった。
□0日目(3/7)
6時過ぎに起床。駅前の駐車場に車中泊をしていた人たちも待合室にやってきて,いくつものパーティが装備の受け渡しをしたり朝食を取ったりしていた。我々は先を急がないのでまったりと準備をして谷川岳ベースプラザへ移動。雪崩事故防止研究会主催の「雪崩サーチ&レスキューbasic」を受講した。午前中は座学で,午後は、項目毎の実技の後,実践的なシナリオトレーニングを受けた。段階を踏んで学ぶことで理解しやすく,非常に学ぶことが多かった。今回学んだことを今後雪訓などを通じて共有していきたいと思う。
17時に講習終了後,谷川岳登山指導センターへ移動。同センターの休憩所で今晩を過ごすことにする。センターに詰めていた指導員が,「火器を使うのは本当は良くないが、寒いから屋内で使っていいよ」と言ってくださったので,ありがたく休憩所内で晩ご飯を作る。メニューは,猶木によるグラタン。炭水化物が少しばかり少なかったが、とても美味しかった。食後,寝支度をしていたら,鶴田さんが土樽まで乗り過ごしてしまったとの連絡を受ける。幸い上りの始発は早いので、翌朝合流することにして,3人で20時半に就寝。
□0日目(3/7,鶴田)
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。…土合駅を乗り過ごし、思いがけず『雪国』の一節を追体験する展開となった。土樽駅へ向かう車内で為す術なし。
20時前、ひとりだけ土樽での駅寝が確定した鶴田は待合室のサッシ戸をあけた。心なしか暖かく感じる。煌々と室内を照らす灯りが心強い。
電話ごしに橋本くんらに醜態を詫び、翌朝の合流について打ち合わせを済ませた。早い時刻に始発があったのは幸運でした。
暇をもてあまし、隅に置かれたノートをめくる。鉄道ファンと山屋の書きこみが混在し、駅への親しみが窺えるものが多く並ぶ。私も書き連ねてみた。
待合室にて数人に遭遇した。山行を終え、これから車で帰るところらしい。21時過ぎに最終の電車が着くと、雪山の装備を身につけた男女がいらっしゃった。自ずと行き先の話になる。お二人は駅で寝て、翌朝荒沢山に向かうとのこと。自虐を交えつつ今夜の経緯を話す私を、「私も寝過ごしたりするわよ、宮内まで行ったこともあるし。」と女性が優しくフォローしてくださった。
じっとしていると冷えるし(あまつさえ持参していたのは夏用のシュラフ)、消えない照明が就寝の妨げになり得た。が、己の図太さによって充分に睡眠をとることができた。
□1日目朝(3/8,鶴田)
朝、起床し6:28発の始発を待つ。
冷たいおにぎりをかじっていたところ、前述の男性があたたかい赤飯をくださった…。深謝いたします。日の出に合わせて出発なさるお二人を静かに見送った。
まだ時間はあるので、辺りの様子を見るべく外に出る。山小屋のような外観の駅舎を見た。関越自動車道を通過する車の音が絶えず耳に届く。足もとには数cm程度の積雪。見上げれば、雪をかぶった急峻な山並みに囲まれている。そういえば昨夏に沢へのアプローチでこのあたりには来ているのでした。
私の他にスキー板を携えた男性が水上行きの始発車両に乗りこむ。一晩経て愛着が湧いていた土樽駅が遠ざかっていく。「とてもいい駅」、昨晩見たノートの書きこみが思い起こされた。
6:37、無事に土合駅で降りられました…。
□1日目(3/8,猶木)
○起床から出発まで
携帯のアラームで6時15分に起床。登山指導センターの中はダウンを着ていなくても寒さで震えるほどではない。詰所の部屋の電気が点いているので指導員は既に来ているようだ。そういえば朝方まだ寝ている時にも何人か登山届けを出していった登山客がいたのを物音で聞いた。
起き上がってゴソゴソしていると隣で「もしもし」とシュラフの中から橋本の声が聞こえる。橋本の携帯に鶴田さんから電話がかかってきたらしい。鶴田さんは土樽の駅で親切な方に赤飯を頂いたとのこと。前日に、ロープウェイは16時半まで動いているので鶴田さんが6時37分に土合駅に到着し合流してから朝食を食べて7時半ぐらいに出発すればいいだろうということになって、こんな時間まで寝ていたけれども、こうなればゆっくりしている暇はない。急いで朝食の準備に取り掛かる。
お湯を沸かしている間にも出発の支度を進める。シュラフをしまい、マットを畳み、服や手袋を取り出し、そうこうするうちにお湯が沸く。袋麺を急ぎ投入。朝食は加藤くんの味噌バターラーメンである。麺はすぐに茹で上がる。具は何かに使おうと思って持ってきた乾燥野菜。各自とりわけ最後にチューブのバターをのせれば完成。橋本のバターの量を見て、そんなにかけるの⁉と言いつつ自分も結構かけてしまうのを橋本に突っ込み返される。やっぱり荷物置いて行ける時は棒ラーメンより袋麺がいいよねと橋本。
食べ終え鍋を拭き再び各自準備。ほとんど準備できたところで鶴田さんが到着。デポする荷物は指導センターの前の看板の裏、濡れないよう軒下に加藤くんのテントマットを敷いた上に置く。
○ロープウェイ
谷川岳ベースプラザへ。真っ先にトイレを済ませ、橋本が私と鶴田さんの分のチケットを買いに行く。その後ビーコンのグループチェック。ところがここで昨日習った内容に齟齬があることが判明し一悶着。
ビーコンチェックを済ませ、いざ乗り場へ。結局雪マジ!19はスキー客のみが対象だったため加藤くんは2100円払ったと言う話を聞き、来週来るときはスキー板担いで券買ってから鈴木くんの車に板戻すか、とか言うアホな話をしている。ロープウェイに乗り込み下を見るとスキー場の下山コースが見える。天気が悪いためかコースは点検中でまだ滑っている人はいなかったが、明らかに細くて急で先日行ったスキー場のコースとは比べ物にならないほど難しそうだ。加藤くんがスパッツを履いた方がいいかと尋ねて橋本がどっちでもいいけど履くなら今やったらいいねと言う。結局加藤くんはスパッツを履いたが他は履かなかった。
ロープウェイの天神平駅に着く。外に出るとスキー場で人は多くないもののそこそこ滑ってる人がいる。出口の傍に椅子が置いてあるのでそこでアイゼンを履く。まだ小さな雪粒が、舞うように降っていた。
○天神平駅〜熊穴沢避難小屋
いざ出発。オーダーは橋本、加藤くん、鶴田さん、猶木の順。登山客はゲレンデの傍を歩けということらしい。コースと登山者用の道はロープで分けられていたけれど所々スキーやボードの滑走痕がある。すぐに直登になり心拍数が上がり息もアガる。15分ほど歩き小休止。天神平駅がすでに目線よりもかなり下に見える。3分ほど服を調節したり水を飲んだりして休憩ののちすぐまた進む。すぐに広めの稜線に出る。そのまま主稜線まで登ってしまうのがわかりやすそうではあったが、踏み跡がしっかりあったので北西方向に巻く。
尾根上を歩いていく。所々やや狭いようなところもあるが、概ね狭いところもなく、周りに木が生えしっかり踏まれた雪で歩きやすい。左手の下の方に半径の大きい円筒に小さい円筒がぶっ刺さったような山の中に似つかわしくない建造物が見える。関越道のトンネルの排気口だった。去年万太郎沢登った時に見たよね〜と橋本が鶴田さんに話している。途中ドーム状の雪洞、というよりかまくらが作られていて誰かが雪洞泊していたらしい。この辺りからやや雪が強くなってきたようだ。
さらにしばらく歩くと何か鉄の棒のようなものが雪から突き出ている、少し広い場所に出る。何かと思えば熊穴沢避難小屋の煙突だった。ここで休憩を取る。この場所でゾンデを使って雪訓をしているグループもいた。ここまであまり他のグループとすれ違わなかったが、前方のまだ見える範囲にかなりの人数が上って行っているのが見えた。リュックを下ろし座り込む。立ち止まっていると木の枝に付いた氷が風に吹かれてドサドサと落ちてくる。5分ほど休憩し急いでドーナツを口に入れ再
出発。
○熊穴沢避難小屋〜山頂
避難小屋を過ぎてから勾配がかなり急になり、徐々に木々がまばらになってくる。それと同時に徐々に上空の雲の中に入っていき、ガスが濃くなっていく。ところどころ風に吹かれて冷たく凍りついたオレンジ色のテープのついた竹竿が設置されていて、それを目印にして進む。何箇所か雪面が割れているようなところがあり、避けて進む。時折立ち止まり振り返りカメラを構える。他に誰もいない白い世界が下から上まで続いている。
30分ほど歩き、稜線の傾斜が緩くなり少し広くなっている場所まで来て再度休憩を取る。どうにかトマの耳までは行けそうだが、この先も視界がなさそうならベアリングが必要になりそうだということで、地図を確認しコンパスを合わせておく。
この辺りから下の方を見るとまだ視界があったが、登っていく頂上の方を見ると視界は100mほどしかなかった。
ずっと、行動食は持ってきたドーナツを食べていたが時に他のものも食べたくなるので橋本にブラックサンダーとの交換を持ちかける。はじめ渋られるも交渉成立。橋本は、「浮気してしまったー、ごめんよブラックサンダー……」と嘆いている。随分と一途、というかご執心なこった。まあ確かに一口食べれば稲妻のような衝撃が走り、思わず笑顔になるような甘さは人を惹きつけるのもわかるし私も好きなもんだが、と思いつつありがたく頬張る。
出発してから一層勾配が急になり、視界も悪くなる。いつのまにか低木もなくなり雪の下からクマザサがのぞいている。木々がなくなり風も強くなって体感温度がやや下がってくる。気がつけば雪はほとんど止んでいた。斜面が広くなり、踏み跡も広がり、進む方向が不明瞭になる。下りでは迷い込みに注意が必要そうだ。前方に見えていた山スキーの集団にこの辺りで追いつく。かなりの急斜面をスキーを履いて登るのは大変そうで、途中板を脱いでいる間に追い越す。かなり視界が効かないのでついにコンパスでベアリングして進む。そのうちに少し大きめの岩が見えてくる。ザンゲ岩だった。ここでは休憩せずに先に進む。まだつかないかという頃にふと周りを見ると斜め左前方に何か大きな岩のような黒いものがうっすらと見える。よく見れば人工物で肩の小屋であった。肩の小屋から70メートルほど東側に登ってきたのでほぼ夏道通りに登ってきていたことがわかった。肩の小屋まで進み風が防げる裏手にザックを下ろし休憩を取る。小屋には立派な氷のエビの尻尾がひっついている。もうトマの耳まであと少しだ。軽く水を飲み、冷えぬよう5分ほどで出発。ベアリング角度を修正して、踏み跡まで戻らず山頂までは直線で進む。踏み跡がない岩場の上は雪よりも氷という感じでザクザクともろく崩れていく。風がだいぶ強く耳元を通り過ぎていき、寒いので雨具のフードをかぶる。10分ほどで山頂についた。
○山頂〜ザンゲ岩
山頂には先程追い抜いたスキーのグループも含め6,7人がいて何人かはすぐにオキの耳の方へ歩いて行った。スキーの人達は板からシールを剥がしているところで、なるほどそうやって登っていたのかと思った。当然視界はなく360度真っ白の「絶景」である。時々ガスが薄くなり一瞬オキの耳に立つ人影が見える。だが、私のカメラではピントを合わせることができず、上手く撮れなかった。オキの耳の方へと進んでいく人もいたが、我々の誰もにとってはじめての登頂であり、この視界では特にどこが稜線なのか、どこが迫り出しているのかわからないから安全が保証できないということで、リーダーの橋本がオキの耳まで行くのは諦めここで引き返すことを決断する。ともかくここまでは登ってこれたので、山頂に登ってきた人に頼み全員で記念写真を撮る。その後それぞれ一人一人の写真を撮る。加藤くんが、橋本さん飛ばないんですか?と聞いたのでジャンプの写真を撮ることに。あとで在京の岩瀬から95点をつけられる写真が撮れた。
15分ほど山頂でゆっくりしたあと下山開始。小屋に寄ることなく踏み跡通り降りていく。小屋より東側の下降開始点のあたりに、行きには気がつかなかったが、オランダの風車やら風見鶏やらを思わせるようなあの可愛らしい道標が白く凍りついて何かの遺構のように立っていた。
ザンゲ岩まで降りてくるとだいぶ風は弱くなっていた。ザンゲ岩というのだから何かを懺悔しなくてはということで加藤くんが土下座のポーズをして写真を撮る。メンバー各自思い思いに懺悔す。
○ザンゲ岩〜天神平駅
雪山の下りは早い。雪をクッションにしてズンズン降りていく。まだまだ登りのグループがたくさん登ってきていて行きとは比べ物にならないほどの人数とすれ違う。ふと立ち止まり向かって右手前方、南の方角の雲が晴れ下界の街が綺麗に見えた。降りるにつれて徐々に天気が回復し随分先まで見えるようになっていた。山頂は見えるかと振り返ってみたが厚い雲の中であった。ここで12時39分の電車に間に合うように降りようということになりさらにスピードが上がる。あっという間に熊穴沢避難小屋に到着。朝には凍りついていた木々の枝も氷が溶けて何故か黒く生き生きしているような気がした。急いで出発し、ほとんど小走りになりながらロープウェイ乗り場を目指す。あんまり急ぎ過ぎてゲレンデ方面へ降りる道を見落としてそのまま稜線で下山する方向へ進みかけたが、加藤くんが気がつき無事スキー場の方へ。行きに随分息が上がった斜面をもう一度見直すとかなりの急登だったのだなと気がつく。そうして坂を下り切るとロープウェイ乗り場までは圧雪されたスロープ。無事到着。避難小屋から乗り場まで20分ほどだった。急いでアイゼンを脱ぎ、私はそれを手に持ったままロープウェイに乗り込む。あとはロープウェイで降りるだけだったが、悲しいかな、ロープウェイが思いの外長く、電車に間に合わぬことは確実であった。なぜか行きはかなり短く感じたのである。そういうわけでもう騒いでも急いでも仕方がない、次の水上駅行きの14時5分のバスまで谷川岳ベースプラザの食事処でゆっくり昼食でも取ろうということになる。ロープウェイが降り場に着く。おおよそ12時半。出発から4時間半程であっという間に戻ってきてしまったがそれでも楽しかった。
○下山後
さて昼食を食べようかということで見てみると、さらに残念なことにベースプラザの食堂はやっていなかった!あとで調べても日曜のみ営業だから普段ならやってるはずなのに営業していなかった。なんじゃそりゃ。売店にもろくに食べ物はなくアイスも在庫がない。しょうがないので自動販売機でコーラを買った。橋本はccレモンを。本当は三ツ矢サイダーがあればそれが良かったのだけれど。やはり炭酸ジュースは下界の味である。
せっかくバスの出発時刻までまで時間が余っていて、朝食のマルちゃん製麺が5人前で3人しか食べてないので、戻って残りの2袋を食べようということになった。指導センターに移動し荷物を回収する。入り口のわきの段差に腰を落ち着けてヘッドを出し火をつけお湯を沸かす。具は何もなしで再びの味噌バターラーメン。袋麺だったら何回食べてもいいよねと橋本。
○温泉
話しているといい具合の時間になり13時50分ごろに荷物を持って指導センターの指導員に挨拶し再びベースプラザ前に移動、バスを待つ。少し待ちバスに乗る。乗客はほかに5,6人。水上の温泉に向かう。バスはもっと近い場所まで行くが水上駅前で降り、15分ほど歩いてふれあい交流館へ。せっかくだからゆっくりしていこうということで16時47分発の電車に乗ることにして集合時間を決める。ふれあい交流館の温泉は広くはないが山岳部などの学生の団体さんもウェルカムという感じで登山客、スキー客が多い。結局1時間ほど浴室で温泉に浸かっていた。まだまだ電車の時間まで余裕があるので座敷で座って行動食の余りを頬張る。生憎、牛乳は売り切れであった。
座っていると温泉客のおじさんに君達山岳部?声をかけられた。沢はやってるか?と聞かれたので橋本が答える。何やらいろいろ登山家の話になり、大水上山の沢を勧められた。あとで調べたら木本哲さんというクライマーの方だった。
16:25分に温泉出発し再び15分ほどかけて駅へ。無事電車に間に合い帰途についた。
■メンバーコメント
□橋本(CL)
・雪崩講習は非常に有意義だった。学んだ技術を忘れず,いざという時に反射的に使えるように,雪訓の機会を設けて定期的に練習したい。
・総評でも述べたように,視界が悪い中での行動を練習できてよかった。景色を楽しめなかったのは少々残念だったが,景色が全くなくても雪山は楽しい。
・鈴木車での楽なアプローチに慣れてしまっており,公共交通アプローチはいささか面倒に感じてしまった…。
・ふれあい交流館の休憩室で木元さんというベテランクライマーにお会いし,利根川本流(5級)をオススメされた。行ってみたいが,如何せん難しい沢なのでいつになることやら…。
□猶木(SL)
・雪崩講習はビーコンの使い方やシャベリングなど実践的な内容を教わることができ非常によかった。今後も自分の意思薄弱さに負けず積極的にこう言った講習も受けた方が良いと認識しました。
・駅泊、登山指導センターともに快適だったので、今度はちゃんと雪山でテント泊・雪洞泊したい。
・谷川岳は天気が絶妙すぎて景色が見られず、オキの耳にいけなかったも悔しいので是非とももう一度行きたい。夏山としても登りたいものです。
□鶴田
・前日のアプローチで失敗し、メンバーに迷惑をかけた。申し訳ありませんでした。あまりにも粗忽。
・2度目の雪山。トレースが充分にあり、足もとの雪が踏み固められていたので、歩きにくさを感じなかった。視界不良の状態で歩く経験を通じて、ベアリングが活きる様相を確認できた。他のメンバーが実際の地形や雪の状況を雪崩と関連させている様子を見て、自分の勉強不足を痛感した。
・雪国らしい急峻な山容が好みなので、上越は季節問わず訪れたい山域です。沢や雪山の場合、自分で行くには力不足にも程があるのですが。
・ふれあい交流館に向かう際の町歩きも楽しかった。街灯やマンホール、橋の欄干にあしらわれていたコブシ(みなかみ町の旧町花だとか)のモチーフが目をひいた。
□加藤
・講習は、エアポートアプローチやシャベリング、シナリオトレーニングなど、もともと知識のなかった僕でも最低限のレスキュー技術は身に着けることができたのではと思える充実したものだった。学んだことを忘れず、さらに深められるように努めていきたい。
・夏山を含めて晴天時ばかり登ってきたので、視界が悪い中ベアリングでの行動を経験できてよかった。
・急な斜面が多かったが、雪質のおかげで歩きやすかった。
・初めての駅寝は意外にも熟睡出来たし、登山センターも快適過ぎた。