2021/8/30-31 鹿島槍ヶ岳
山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
鹿島槍ヶ岳山行計画書 第二版
■作成者 豊永、岩瀬、尾高、小西
■日程 2021/8/30-31(前夜発1泊2日) 予備日なし
■在京責任者 岩瀬
■在京本部設置要請日時 2021/8/31 18:00
■捜索活動要請日時 2021/9/1 9:00
■山域 北アルプス
■メンバー (5名)
CL豊永 SL水野 尾高 小西 横山
■集合
8/29 新宿西口臨時便26番のりば 23:00
■交通
□行き 計6600円
アルピコ交通高速バス 新宿〜白馬 5571 便
新宿23:15 - 扇沢5:32
□帰り
大谷原からJR信濃大町までタクシーで約30分、約5500円
アルピコ交通高速バス(当日予約)
信濃大町(14:57-19:28/15:57-20:28/17:12-21:43/17:57-22:28)新宿
■行程
1日目
扇沢バス停-0:15-柏原新道入口-3:50-種池山荘-1:00-爺ヶ岳 -1:00-冷乗越 -0:10-冷池山荘
[計6:15]
2日目
冷池山荘 -1:20-布引山-0:50-鹿島槍ヶ岳 -0:40- 布引山 -0:50- 冷池山荘 -0:10- 冷乗越 -3:00-西俣出合 -1:00-大谷原
[計7:50]
■エスケープルート
・爺ヶ岳まで:引き返して扇沢へ
※扇沢駅-信濃大町駅(一般路線バス扇沢線、35分、1360円)
(7:05/7:55/8:55/9:30/9:55/11:30/12:30/13:30/14:10/14:35/15:10/15:35/16:10/16:35/17:05/17:55)
https://www.alpico.co.jp/traffic/datas/files/2021/04/01/8336a0663397bd1232f656315dac72d5b80a6d2a.pdf
・爺ヶ岳から:冷乗越を経て大谷原へ
※大谷原からJR信濃大町までタクシーで約30分、約5500円
■地図
山と高原地図「36.鹿島槍・五竜岳」
2.5万分の1: 「神城」「十字峡」「黒部湖」
■共同装備
VS50(フライ+本体):横山
VS50(ポール+ペグ):水野
ステラリッジ4(フライ+本体):小西
ステラリッジ4(ポール+ペグ):尾高
鍋(雪月):豊永
ヘッド(緑1):横山
ヘッド(緑9):小西
カート*2:水野
カート*2:尾高
調理用具セット(キャサリン):小西
救急箱(エーデルワイス):豊永
■食当
朝 / 夜
1日目 /横山
2日目 各自/
※予備食は各自
■個人装備
□ザック □ザックカバー □サブザック □シュラフ □マット □雨具 □防寒具 □登山靴 □替え靴紐 □帽子 □水 □行動食 □朝食 □非常食
□ブキ □コッヘル □ヘッドランプ □予備電池 □ゴミ袋 □トイレットペーパー □ライター □新聞紙 □軍手 □地図 □コンパス
□エマージェンシーシート □筆記用具 □計画書 □常備薬 □学生証 □健康保険証 □現金 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む) □日焼け止め
□マスク □歯ブラシ □充電バッテリー □タオル (□サンダル □消毒液 □着替え)
■遭難対策費 5人×200円=1000円
■備考
日の入: 18:29(8/31,鹿島槍ヶ岳)
日の出: 5:10(9/1,鹿島槍ヶ岳)
悪天時: 前日18時までに判断
※ [raicho_all:75]記載のコロナ感染症対策を遵守する。
1. 遭難などの緊急時を除き、山小屋の使用を控える。
2. 長期休暇中は平日の活動を中心にする。
3. 山頂付近などの人が多いところでは長時間滞在しない。
4. 最大5人程度のパーティーとする。
5. 常に、パーティー内の連携を損ねない範囲で十分に距離を取る。
6. 三密を回避できない状況ではマスクを着用する。(電車内、混雑した登山道、頂上周辺等)
7. 水や食料は事前に購入しておき、登山山域での買い物を控える。また、下山後の会食も控える。
8.テント内の人数は定員の半分程度とし、余裕をもって使用する。
9. メンバー全員が2週間前から当日朝まで毎日検温して担当者に提出。少しでも風邪の症状がある場合は参加を控える。
10.メンバー全員が 2週間前から行動記録をとって担当者に提出。
(9.10については担当者が管理し、必要があれば提出できるようにしておく)
□登山届提出先
・東大教養学部学生支援課(未提出)
・コンパス(提出済) https://www.mt-compass.com/
□東大連絡先
○教養学部学生支援課 ※開室9:00~16:50(平日)
Tel: 03-5454-6074 Mail: shien-team.c(at)gs.mail.u-tokyo.ac.jp
○駒場正門守衛室 ※常時対応可
Tel: 03-5454-6666
○諸連絡先
・冷池山荘テント場 080-1379-4041
1000円/人+1000円/張 約45張
・種池山荘テント場 080-1379-4042
1000円/ 人+1000円/張 約30張
・アルピコタクシー株式会社 大町営業所 0261-23-2323
アルプス第一交通株式会社 0261-22-2121
・長野県警大町警察署 0261-22-0110
□過去記録
2019年
2014年
鹿島槍ヶ岳山行記録
■作成者:水野(42)・小西(43)・他メンバー
■日程:2021/8/30-31
■山域:北アルプス
■天気
1日目:曇り時々雨
2日目:晴れ
■メンバー/隊列 (敬称略)
CL豊永(41期/B3) SL水野(42期/B2) 横山(43期/B1) 尾高(43期/B1) 小西(43期/B1)
歩行順は豊永・小西・尾高・水野・横山の順(下りでは横山と水野が位置を入れ替えた)
■タイムスタンプ
□1日目(8/30)
06:03 扇沢出発
06:18 柏原新道入口
06:45 休憩
06:50 出発
08:00 休憩(1870m)
08:07 出発
08:47 休憩(2100m)
08:55 出発
10:00 種池山荘直前 大雨に付き雨具着用
10:21 種池山荘着
10:39 出発
11:41 爺ヶ岳南峰
11:59 爺ヶ岳中峰
12:40 爺ヶ岳北峰付近
13:07 冷乗越
13:44 冷池山荘着
13:03 冷池山荘テント場着
□2日目(8/31)
05:30 冷池山荘 テント場出発
05:55 休憩(勾配が変わるあたり)
05:59 出発
06:27 布引山着
06:40 出発
07:24 鹿島槍ヶ岳着
07:52 出発
09:01 冷池山荘 テント場着
09:45 出発
09:51 冷池山荘
10:12 出発
10:25 分岐着
10:31 出発
11:01 休憩
11:05 出発
11:20 立ち休憩
11:26 出発
11:41 高千穂平
11:51 出発
12:36 休憩
12:48 出発
13:27 休憩
13:37 出発
14:05 西俣着
14:23 20分地点(電波)
14:32 出発
15:00 大谷原着
■ルート概況(豊永)
□扇沢〜種池山荘
・行程外だが、高速バスではカーテンの隙間から漏れる光が気になったためアイマスクがあると良かった。
・扇沢には自動販売機があるが割高。トイレは広く綺麗で外から自由に使える。
・柏原新道入口には登山届の提出ポストがあるのみ。
・柏原新道は初めが比較的急登。また地図には載っていないが道に名前がつけられている。柏原新道登山口~(八ッ見ベンチ/ケルン/駅見岬/一枚岩/石畳/水平道/包優岬/石ベンチ/アザミ沢/黄金岬/ガラ場/富士見坂/鉄砲坂)~種池山荘の順。山荘のHPに非常に詳しいルート説明がある。( https://www.kasimayari.jp/sinndou.htm )
・ガラ場はかなりガレた斜面。すれ違いはできないので先をよく見て、落石と滑落に注意して通る。
□種池山荘〜冷池山荘
・近年爺ヶ岳,鹿島槍ヶ岳付近で熊の目撃が相次いでいるようで2021年作成と明記されている注意喚起の看板が至る所に設置されていた。今回我々は持っていなかったが、今後は熊鈴を持って行くことを推奨する。
・爺ヶ岳南峰は山頂へ至る道と巻道がある。
・爺ヶ岳中峰はトラバースできる道の途中から山頂へ至る往復ルートが伸びていた。
・爺ヶ岳北峰には登れない。高山植物保護のため立ち入り禁止、という看板があった。
・種池山荘,冷池山荘共通してトイレには消毒用アルコールが設置されていた。冷池山荘の外トイレ(小屋内のトイレはテン泊者/通過者は使用禁止)は和式/洋式の計2つ。また冷池山荘には手洗い用の洗面台があり水が使えた。協力金は今年度は200円以上。
□冷池山荘
・小屋内には代表者1名のみ入り受付を済ませることが推奨されている。混雑予想日以外はテン泊は事前予約不要だが、利用者名簿をHPから印刷し下界で記入しておいて持参する。
・ソフトバンクでも電波がしっかり入る(LINEで画像が送れる)。また、現在はマスク無しで小屋内に入ることは出来ないので予備も含めすぐに取り出せる場所に持っておくといい。
・山荘からテン場までは10分程度登らなくてはならない。道幅はそれなりにあるが途中に崖もあるので夜は特に注意。トイレに行くたびここを往復する必要があり、面倒。日が落ちてから歩くのはできれば避けたい。
・今年度テント泊の客には小屋食を提供していない。軽食は買えるが、飲食が可能なのは屋外でのみ。水は500mlのペットボトルが350円。水1Lサービスに関してはこちらから触れなかったからか頂くことはなかった。
・いつどんな変更があるかはわからないので、計画時に山荘のHPの説明を見るのが一番と思われる。
□冷池山荘〜鹿島槍ヶ岳(南峰)
・テン場に荷物を置き、サブザックで登れるためCTはだらだら登っても巻ける。
・歩き始めがなだらかなので丁度よく体が温まり疲労を感じにくい。山荘から500m程標高を上げるが、絶景を眺め足を止め、写真撮影などを楽しみながら歩いていたらいつの間にか終わっていた。
・爺ヶ岳付近から高山植物が多く見られたが、この辺りは特に花々により道端の色彩が豊かだったような気がする。
□冷池山荘〜大谷原
・降り始めはかなりザレた急斜面。鎖もあるがあまり信頼できそうにない。2-30分程度過ぎれば登山道の脇の植物により高度感はあまり感じなくなる。しかしそれ以降も急な下りが続く。鉄製/木製問わず階段が多く、中にはやたら長いものや人一人の体重でたわみ揺れるものもあったので1,2人ずつ降りた。
・大谷原に呼べるタクシーは冷池山荘で1,000円前払いして予約できる。特に安くなるわけではないがしておいた方が安心かもしれない。西俣出合から20分ほど歩いたあたりに携帯の電波がよく通じるポイントがあり、予約時間が早すぎたり遅すぎたりしたらそこで運行会社に連絡し調整してもらえる。
■記録
8/30 文責:水野(42)
夜行バスは昼間の時間を使わず、そして安価に移動できるので山へのアクセスとしては最高なものだとは思うのだが、バスの中で寝付けない者にとっては翌日の行動中の体調を悪化させる要因となってしまう。私はバス内で寝るためのさまざまな策を試みた。まずイヤホンを耳に突き刺して音楽を聞いた。まず聞きなれた「尾崎豊」や「スピッツ」を流してみる。曲自体は好きなのでバスの劣悪な環境を忘れることはできたが、眠りにつくことはできない。次にradikoでNHKラヂオを聞く。四十路の独身女性がスーパーでの勤務を終えたのちに自宅で見合いの話を妹夫婦に持ちかけられ少し期待するも、なかったことにされてしまうという話だった。これを流し始めるとなんとか眠ることができ、結局3時間ほどの睡眠時間を稼げたと思う。
ところで、横山君は出発して10分で寝られたらしい。格の違いを見せつけられた気分だ。尾高君と小西君もよく寝ていた気がするが、豊永さんも私と同様に寝付けなかったらしい。これから深夜バスを多用していくには、どうにかして「寝る力」を高める必要がありそうだ。
5時半にバスは扇沢に到着した。バスから荷物を出し、身支度を整える。周囲はガスっていて景色が何もない。山頂まで同じ景色でなければいいが、と軽く心配になった。横山君は久しぶりにハイドレーションを引っ張り出してきたらしく、家で洗わずに水を入れた結果、黒い物が浮かんだ水が出てきたという。私も見たのだが、2月の屋外プールの水を底から掬ったような水だった。
扇沢を出発したのは6時18分である。まずは柏原新道の入口まで、車道を歩いていく。登山の序盤はゆっくり歩いて体を慣らしていくのがいいと運動生理学の本で読んだのだと友人が言っていたのを思い出しながら、新道の序盤はかなりゆっくり登った。しかし少し登って振り返ると扇沢の駐車場がだいぶ遠くに感じられて、人間の身体能力の高さを思い知った。スタート地点では景色が全くなかったのだが、高度を上げるにつれてちらほら周りの山が見え始め、虹を見ることもあった。しかし10:00になると雨が強くなり、仕方なくザックカバーとレインウェアを着用することにした。するとすぐに草原が見えて、山荘が現れた。山荘に着くということは同時に稜線上に出るということでもあって、急に寒さを感じるようになった。1年も高山に行っていないと、下界がいくら暑くても山は寒いのだということを忘れる。私はTシャツ1枚と長袖1枚とレインウェアが最大の防寒であったので、2日間震えて過ごすことになるかもしれない、という恐怖が頭をよぎった。「ま、いけるだろ」こう言い聞かせるしかなかった。
爺ヶ岳南峰へ登っていく。基本的にガスガスではあったが、たまに山が顔を覗かせることがあり、眺望への淡い期待を抱きながら軽やかに登っていく。道中では雷鳥に出会い、写真撮影タイムに入ることもあった。11:40に南峰に到着したが、残念なことに眺望は得られずに終わった。続いての中峰はトラバース道があるので、その分岐でザックをデポして空荷でピークを踏みに行った。ここでも到着時点では景色が無かったが、少しすると雲が晴れ、周りの山や歩いてきた道が見えた。写真を満足するまで撮ってからザックを回収し、北峰の方へ。北峰にも登れると思っていたのだが、どうやらピークまでの道は用意されていないらしく、そのまま巻くしかなさそうだった。そしてそのまま冷乗越まで到着。下山ルートである赤岩尾根も見ることができた。冷乗越から冷池山荘までは、さらに下ってまた登る必要があった。
冷池山荘に着くととりあえず全員ザックをおろし、豊永さんが受付をしてくださって検温をしてから、ザックを担いでさらに遠くにあるテント場に向かった。山荘からテント場までの道のりはかなり長く感じられ、横山君はこれを「非人道的」と評価した。雨が降らないうちにテントを建ててしまおうということで急いでテントを建て、ひと段落したところで山荘に休憩しに行こうということになった。横山・尾高・小西の3人は1000円のラーメンを食べ、私はおなかを下していたので、おなかに優しそうなぜんざいとホットミルク(計900円)を頂いた。稜線の東側の景色はよかったので、それを見ながら美味を堪能した。夕食は横山君考案のすき焼き風ごはんで、豆腐・しらたき・肉・ねぎを煮て味付けした物だった。ごはんは高校時代に米炊きをやっていたという小西君が主導でやってくれた。どちらも上手くいき、ふつうは上手くいかない(と私は認識している)山での食事とは思えないクオリティのごはんであった。
片づけ終わったころには8時前になっており、完全に真っ暗になってしまっていたが、寝ている間はなかなか遠い場所にあるトイレにいけないので、2人ずつで4人がトイレに行くことにした。道を下っている時にふと気になってヘッドライトを消してみたところ、完全な暗闇となってしまい、1歩も動けなくなった。改めてヘッドライトの重要性を実感した次第である。無事トイレを済ませ、就寝した。
ところで、バスで寝られなかった私だが、テントでも寝られなかった。おそらく暑いのと雨がテントに中る音がうるさいのと傾斜の関係で頭に血が上っている感覚になったのと足が十分に伸ばせないのが原因だと思う。今回のような1泊なら平気だが、連泊の時にこのような事態になるのは避けたい。これから対策を考えていこうと思う。
8/31 文責:小西(43)
4時前に寒さで目覚める。風も強い。防寒対策に関する己の見通しの甘さを猛省する。前夜は頭痛が酷く夕飯も食べずに深い眠りについた。起きると痛みは軽くなっており山頂まで歩けそうだと安堵する。朝食は各自の持参となっていた。豊永氏はカレー、水野・横山両氏はカップヌードル、尾高氏はアルファ米(山菜ご飯)を食す。稿者はアルファ米と参鶏湯を食べる。冷え切った心と体が少し温まり幸せだった。当初は5時を目安に出発する予定だったが、お湯を沸かすのに時間がかかった、トイレがキャンプ場から10分弱離れており遠かった、などの事情で結局5時半までずれ込んでしまった。また、横山氏が前日に足を痛めてしまいテント場に待機することになり、残念この上なかった。
5時半ごろにサブザックで鹿島槍ヶ岳登頂を目指して出発。風は強いが、前日に比べて雲は格段に少なく澄み渡った景色を横目に進んでいく。初めの方はなだらかなので話が弾む。25分ほど歩いたところ、小さな登り下りが連続する箇所にさしかかかり5分程度の軽い休息を取る。
休憩後30分ほど歩くと布引山(2683m)に登頂できる。道中の景色は素晴らしいの一言で水野・尾高両氏は西側に望む剱岳・立山の威容に感嘆していた。遠くには槍ヶ岳をはじめとする北アルプスの山々のほか木曽山脈・赤石山脈まで見ることができ、気が早くも来年はどこに登ろうか、などと未来に思いを馳せる。布引山山頂には10分ほど滞在し、写真撮影に興じた。果てしなく続いていそうな雲海が印象的だった。
いよいよ鹿島槍ヶ岳(2889m)に向かう。登山者と何度かすれ違うが、キレット小屋からだろうか。途中撮影も兼ねてゆっくり歩いていると45分ほどで山頂にたどり着いた。冷池山荘から2.6キロほど。山頂には30分弱とどまり達成感に浸りつつ思い出作りに精を出す。ある者は山頂から見える山々の特定にいそしみ、ある者は残念ながら今回参加できなかった岩瀬氏(40期)に敬意を表し、岩瀬ジャンプなるものを真似て写真を撮る。北側には手前から吊り尾根、北峰、五竜岳が見える。筆舌に尽くし難い景色であった。
鹿島槍ヶ岳に関して稿者の知りうる知識は決して多くないが、「鹿島槍」という名がついたのは明治以後で、それ以前は南峰と北峰があることから「背比べ」、あるいは「後立山(ごりゅうさん)」などと呼ばれていたらしい。ちなみに「鹿島」は山麓の鹿島部落から取ったものだそうである。鹿島部落は平家の落人伝説が残っているそうだが、当然現実にはほぼ不可能だろう。
少し話が逸れたが、その後は冷池山荘へ70分ほどで休憩を挟まずに戻った。到着後はテント撤収、パッキングを済ませ45分ほどで出発。山荘で100名山バッジを買ったりトイレ休憩を済ませたりしている間に、豊永氏が大谷原-信濃大町間のタクシーの予約を取ってくれた。
下りだが、赤岩尾根は終始急下降続きなうえ、所々ヤセ尾根があり全く気が抜けなかった。3時間で1100m以上も下るのだから大変である。怪我をしては元も子もないので、安全第一でこまめに休憩を取りつつ、ゆっくりと歩いていった。豊永氏は泊まりでのCLを務めるのが初めてとは思えないほど巧みなペース配分と落ち着きで、後続の疲労を軽減してくれた。雷鳥に入ってからというもの、偉大な先輩方について山に登らせていただき幸福を感じる。
赤岩尾根からは、三好達治の歌(昼の雲 舟のさまして動かざる 鹿島槍てふ 藍の山かな)にあるような鹿島槍ヶ岳が望める。東から見た時の、キッとせり上がった双耳峰とそれを結ぶ吊り尾根の引き緊まった美しさは、南北に見た時以上のものがあると感じる。深田久弥は、端正でも雄大でも峻烈でもない非通俗的な美しさに惹かれたと書いているが、この形容し難い美しさは見た人にしかわからないのかもしれない。
話は変わるが、下山の途中、事故の話を聞いた。楽しい山行の中にも危険が潜んでいることを再認識し、事故の予防はもちろん大切だが、起きてしまった後に咄嗟にどう行動するか、自分には何ができるか、何をすべきか、それをもっと考えていかなければならないと感じた。また、良くも悪くも顧問がおらず自由闊達な本サークルにおいて持つべきものは、一人一人が自覚を持ち、時には互いに指摘し合ってより良い山行を目指していく姿勢なのではないか、と思い至った。
そうこうしている内に西俣出合に到着し、そこからは隊列を崩して大谷原まで向かった。3分の1ほど行ったところに携帯スポットがあり、そこでタクシーの予約時刻を10分遅くした。大谷原に着いた時にはすでにタクシーが来ており、30分ほどで信濃大町に行ったあと、高速バスでバスタ新宿に向かった。20:40すぎに新宿に着くと、41期の山口氏と43期の榛沢氏が装備受け渡しのために来てくれていた。
大学生の夏は長い。豊永氏と水野氏は9/17に日光白根へ行くようである。尾高氏と稿者は9/8から裏銀座へ行く。今後の再会を誓い、各々の一路平安を願いつつ、我々は大雨の新宿駅を後にした。
■メンバー感想
□豊永(CL)
・同じルートでの2度目の山行となったが全く飽きることがない。1年生の頃に連れて行ってもらって初めて晴れた山の稜線や山頂からの眺望を知り全てに衝撃を受け、また登りたいとずっと思っていたので実現できて良かった。そして今度はCLとして後輩(山に関しては皆私より先輩なのだが)と登れたのも感慨深かった。
・雷鳥に入ったからには雷鳥は見ておきたかったので、初めてしっかり目視できて嬉しかった。
・いつか北峰にも登りたい。
・多くの点で本当にメンバーの皆に助けられました、ありがとうございました。ご飯が夢みたいにおいしかったです。
□水野(SL)
・山頂アタック中に見えた北アルプスの山々に圧倒された。後立山連峰に足を踏み入れたのは今回が初めてで、また山に詳しくなった気がする。
・今回の山行は雷鳥での初めての新歓以外の登山で、しかも初めての雷鳥での泊まりであった。雷鳥の装備管理システムや計画立案の流れはまだ分かっていないことが多いので、何度か経験して自分で立案できるようになりたい。
・雷鳥の会員をほとんど知らないのでまたいろんな人と山に行きたい。
□小西
・北アルプスに行くのは2年ぶり3度目でした。慢性的な運動不足で体力面が心配でしたが、CLの豊永さんのペース配分の巧みさや、山の景色の雄大さに見惚れたことも相まって精神的にも体力的にも余裕のある歩行となり良かったです。
・豊永さん、水野さん、横山さんと山に行くのは初めてでした。お3方とも気さくに話しかけていただいた上、豊富な登山の経験談を聞けてとても楽しかったです。
・反省点としては、寒さ対策・高山病(ただの頭痛かも)対策が挙げられるでしょうか。高いところに泊まりに行くのは久しぶりだったので、色々と忘れていた部分も多かったです。
・今回の山行で山の素晴らしさを改めて認識しました。これからもより良い山行を目指して精進したいです。
□尾高
・初の北アルプスということに加え、これまで雷鳥での山行が立て続けに潰れていた事もあり、とても楽しみにしていた山行であった。2日目は天気に恵まれ、鹿島槍山頂から眺めた劔、八峰キレットが印象に残っている。来年訪れたい。
・先輩方と小西くんのおかげでとても美味しいご飯が食べられてよかった。僕も炊事能力を高めなくてはと思う。
・大きなトラブル無く山行を終えられてよかった。今後も様々な山に行きたい。
□横山
・計画が潰れたこともあり丸二年ぶりの山行、まずは行けたこと、そして無事に帰ってこれたことが何よりよかった。
・一日目の登りで脚がやられてしまい、アタック出来なかったことには悔いが残る。とはいえ、テン場に残る判断をきちんと下せたことはこの山行における一つの成果であろう。
・豊永さん、尾高君、小西君といったこれまで山に一緒に行ったことのなかったすてきな面々と山に行けてよかった。これからもまた会うことがあると思うので、今から再会が楽しみです。
・食当はどうにかやれましたが、体力的な面での至らなさを痛感した山行でした。トレーニングを一からしなおしてまた山に行けたらと思います。