2022/8/13-14 白馬岳夏合宿(猿倉〜栂池高原)

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
白馬岳夏合宿(猿倉〜栂池高原)計画書第3版
作成者:河野、小島、加藤ゆ
■日程 2022/8/13,14(土日)1泊2日・予備日なし
■山域 白馬岳(北アルプス)
■目的 夏合宿、登頂
■在京責任者・助言役 山口
■在京本部設置要請日時 2022/8/14 19:00
■捜索要請日時 2022/8/15 9:00
■メンバー(変更、5人)
CL河野, SL近, 加藤け, 加藤ゆ, 岸田

■集合 
夜:新宿西口都庁 22:30 23:00出発
6:30 猿倉

■交通
□行き
加藤け、加藤ゆ、岸田、近…7/12 23:05-(毎日あるぺん号)-7/13 5:50頃猿倉(予約済)
河野…白馬駅周辺で前泊→5:55-猿倉線-6:22 1,000円
□帰り
栂池高原(10:41/11:40/12:55/13:00/13:15/14:19/14:21)-アルピコ交通バス(11:05/12:04/12:55/13:24/13:37/14:43/14:55)白馬八方 570円
白馬八方15:15-(高速バス)-20:28バスタ新宿南口 予約済

■行程
□1日目(5時間30分/5.7km/+約1,550m)
猿倉-1:00-白馬尻小屋-2:30-岩室跡-2:00-白馬頂上宿舎

□2日目(5時間45分/9.6km/+約150m,-1,800m)
白馬頂上宿舎-0:20-白馬山荘-0:15-白馬岳-0:30-三国境-0:40-小蓮華山-1:30-白馬大池-0:35-乗鞍岳0:55-天狗原-1:00-栂池自然園

■注意点
大雪渓での落石、濃霧
 大雪渓での午後からの天候悪化

■エスケープルート
~白馬頂上宿舎…引き返す
白馬頂上宿舎~白馬大池…近い方のテント場に戻って幕営、翌日そのまま進む(三国境と小蓮華山の間が分かれ目)

白馬大池以降…そのまま進む

■共同装備..
テント(ステラ4,加藤私物):加藤け
テント(エアライズ3No.2):岸田
救急箱(アゲハ):河野
鍋(竹小竹):河野
カート*2:近
調理器具セット(キャサリン):加藤ゆ
軽アイゼン:
河野私物:河野
エーデルリッド:加藤ゆ
SNOW SPIKE6 QUICKFIT(赤):岸田
SNOW SPIKE6 QUICKFITNo.5:加藤け
スノースパイク6 No.4:近
※猿倉壮でレンタルアリ、1200円、白馬山荘か栂池ヒュッテ返却で300円返金
ヘルメット:
ゾーディアク(赤):加藤け
EDELRID(青):岸田
Black Diamond(ねずみ):加藤ゆ
河野私物:河野
近私物:近


■個人装備
□ザック □ザックカバー □シュラフ (□シュラフカバー)□マット □雨具 □防寒具 □登山靴 □替え靴紐 □軽アイゼンorチェーンスパイク!□帽子 □水 □行動食 □非常食 □ブキ □コッヘル □ヘッドランプ □予備電池 □ゴミ袋 □トイレットペーパー □ライター □新聞紙 □軍手 □地図 □コンパス □エマージェンシーシート □筆記用具 □計画書 □常備薬 □学生証 □健康保険証 □現金 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む)□日焼け止め □マスク □歯ブラシ □充電バッテリー □タオル □消毒液orアルコール除菌シート (□温泉セット□ストック □サンダル □サングラス□着替え □リップクリーム □モバイルバッテリー)
 
■食当
1日目夜:加藤ゆ
2日目朝:岸田

■地図
2.5万分の1:「白馬岳」「白馬町」
山と高原地図:「35 白馬岳」

■遭難対策費
200円/人*5名=1,000円

□白馬岳頂上宿舎…予約済
キャパ120張、一人2000円、一張りにつき1000円(5人2張で12,000円)、食事提供可
水、トイレ使用可、問い合わせ:0261753788(9時~17時)
http://yamagoya.hakubakousha.com/facility/
https://yamagoya.hakubakousha.com/facility/price/

□白馬山荘
テン場ナシ

□白馬大池山荘…要予約
キャパ50張、一人2000円、一張りにつき1000円、食事提供なし
水、トイレ使用可、問い合わせ:0261722002(対応時間記載なし)
https://www.hakuba-sanso.co.jp/yamagoya/hakubaooikesanso.html
□白馬尻小屋
営業していない。トイレは設置

■電波情報
□白馬尻小屋、乗鞍岳頂上周辺は利用不可。(docomo)
https://www.docomo.ne.jp/area/mountains/individual/?id=shiroumadake
https://www.docomo.ne.jp/area/mountains/individual/?id=norikuradake
□大雪渓、大池山荘、乗鞍岳頂上周辺は利用不可。(au)
https://www.au.com/mobile/area/4glte/800mhz/mountain/trail/?trail=shiromadake
□乗鞍岳頂上周辺は利用不可。(ソフトバンク)
https://www.softbank.jp/mobile/network/area/mountains/#/norikuradake/3/
※ソフトバンクについては白馬岳周辺の通信状況が不明瞭です。調べたサイトそれぞれで情報が異なっていました。

■悪天時
前日15時までに判断

■日の出(@白馬)
8/13 日没 18:53
8/14 日の出 4:55
 
■各種連絡先
□大町警察署(白馬村) 0261-22-0110 
□黒部警察署(黒部市) 0765-54-0110
□入善警察署(入善町) 0765-72-0110 
□糸魚川警察署(糸魚川市) 025-552-0110

■参考
□過去記録
2018年度記録

■コロナ対策
1. 遭難などの緊急時を除き、山小屋の使用を控える。
2. 長期休暇中は平日の活動を中心にする。
3. 山頂付近などの人が多いところでは長時間滞在しない。
4. 最大10人以内のパーティーとする。
5. 常に、パーティー内の連携を損ねない範囲で十分に距離を取る。
6. マスクを常用する。
7. 水や食料は事前に購入しておき、登山山域での買い物を控える。また、下山後の会食も控える。
8.テント内の人数は定員の半分程度とし、余裕をもって使用する。
9. メンバー全員が当日朝検温して担当者に提出。山行前の体調管理はしっかりと行い、少しでも風邪の症状がある場合は参加を控える。

白馬夏合宿山行記録
■日程 2022/8/13-14(土日)
■山域 後立山
■天候 1日目 曇り時々晴れのち雨(夜から強風) 2日目曇り(強風)

■メンバー(5名)
CL河野, SL近, 加藤け, 岸田, 加藤ゆ

■タイムスタンプ
□1日目
6:10 猿倉荘発
7:10-7:15 白馬尻小屋
8:10-8:18 一本
9:20-9:30 一本
9:55-10:00 一本
9:30-9:45 一本、軽アイゼン脱ぐ
10:08-10:20 岩室跡
11:11 2,462m地点
11:18-11:30 一本
12:15 頂上宿舎
計6時間05分
□2日目
5:30 白馬頂上宿舎発
5:35-5:40 稜線上
6:45-6:50 岩室跡
7:00-7:15 大雪渓手前 軽アイゼン付ける
8:25-35 大雪渓終わり 軽アイゼン脱ぐ
9:00-9:10 白馬尻小屋
10:00 猿倉荘
計5時間30分

■総評
台風一過の判断しづらい天気予報の中で決行判断をし、結果山頂を踏まずにエスケープをすることになったが、無事下山出来て良かった。核心箇所だけでなく広く計画全体を見通す力、局所的な歩きの技術など課題が多く見られる山行となった。山中ではお花畑や白馬鎗方面の雄々しい岩稜帯に心惹かれた。

■反省
1.大雪渓通過後から岩室までの広い谷で、以下のような細かいヒヤリハットが発生した。
(1)谷部分での柔らかい砂地の地面でスリップ、浮石を踏んでバランスを大きく崩す、相当量の浮石を谷側に落とす
(2)小休止中無意識に崖側に寄りすぎて浮石を踏み転落未遂
(3)幅の狭い土の地面(泥っぽい)のトラバースで谷側にスリップし1m近く下にずり落ちる
(4)藪の下が斜面になっていることに気づかず足を踏み外して転倒
対策:
個人の知識獲得および歩行技術の向上と、上級者の注意喚起、指示。
(1)通過する場所のリスク認知。フリクションが利きにくいので踏み出した足の真上に向かってゆっくりと体重移動。後の足を動かすときも体重をかけて踏み込むのではなくゆっくり足を地面から離す。
(2)休む前に十分なスペースの確保、リスク認知。装備も落とさないよう注意。
(3)通過する場所のリスク認知、慎重に足を置く。
(4)通過する場所のリスク認知。道の両側が藪の場合は山側に寄る。

2.強風時の対応を1日目時点よく考えていなかった。
夕食時などの時点でかなりの強風状態であったため、夕食など全員が集まるタイミングで明日の行程について、エスケープの可能性を含めて検討すべきであった。また、それ以前の日没までに夜から翌日にかけて強風になることを予想していれば、風が強くなる前にピークハントやテントの再固定などより良い対応をできたであろう。
対策:
稜線近くでのテント泊のリスクを理解しておく。
行程中の天候がどう変化していくのかを早いうちからこまめにチェックする。特筆事項があればそれについてパーティ内で早めに共有し、今後の行動予定について再検討する。

■ルート概況、天候について
□天候判断
12日台風8号の発生に伴い、実施判断の参考にするために、頂上宿舎に相談し、以下を確認。
・予約状況は満席から3分の2に減少
・てんくらの予報悪くない。14日はむしろ良い(windyや他天気予報でも14日はおおむね良い天気なのは確認済み)
・13日の午前は10m近いがその7m,6m,4mと下がってくる。大雪渓上は稜線上でないので風は強くないだろう
・通常台風が太平洋側を通過する際の白馬への影響は少ないが、南から湿った空気が入ってくるため雨は多少降りそう
14日の天気は問題なしと判断。13日に通過する大雪渓での雨後の落石と霧の発生を懸念し、12日の天気予報(13日より条件は悪め)とTwitterでの現地の様子を見て、栂池高原から小蓮華山をピストンする転進時の計画を立てつつ猿倉で現地判断をすることとした。
13日当日明朝は曇り。猿倉に行くと、登山者も多く見られた。万全のコンディションではないが撤退するほどのリスクでもないと判断し当初の計画での決行を決定。なお、猿倉荘には登山相談所があるが、雪渓についての情報は提供してくれるものの、当日の天候に関する情報提供や登山の決行可否に対するアドバイスはあまり対応していない。
□大雪渓まで
特に難所なし。至って普通の樹林帯。渡渉が数ヶ所、木道の道。
□大雪渓
(1)ルート概況
入渓場所は白馬尻小屋(2022年度は営業していない)から少し登った1,640m地点と、左の登山道に巻いてもう少し登った1,720m地点の2箇所ある。下部の比較的斜面がゆるやかな箇所はベンガラが消えているが、登山者の踏み跡や靴びついていた土でおおむね通るべきコースがわかる。人も多いので蟻の行列のようになって歩いた。休憩は石が溜まっていて平坦になっている箇所に乗り込んで休んだ(休憩場所として適切かどうかは不明)。上部になってくるとベンガラが目立つ。
上部で雨が振り始め霧が立ち込める時間が長くなる。
通過時には落石やクレバスは視認できなかった。目が辛そうなメンバーが居たのでサングラス着用推奨。
(2)登山者の様子
体感的に軽アイゼン装着者8割、ヘルメット装着者6割。
人気ルートゆえか登山者の力量や装備所有状況もまちまちといった印象。これだけ居れば落石に早く気づけそうだと思う一方で、人間の滑落や人が過失で石を落とすリスクも高そうだと思った。
□大雪渓通過後〜岩室付近
小雪渓は消滅しており、大雪渓終了後に軽アイゼンを脱いだ。着脱のエリアは混みがち。終始沢沿いを歩くので、沢登りのツメのような砂と小石の混じった柔らかい斜面を登る箇所がある。歩行に苦労するメンバーが何人かいた(「■反省」参照)。
岩は磨かれている&濡れているのでスリップ注意。
□岩室〜白馬頂上宿舎
ツメっぽい地面から草原へ変化。お花畑が楽しい。
□頂上宿舎
テン場で電波は入らないが小屋周辺や稜線上で電波が入る。トイレは多少におうが許容範囲内。
□停滞中の様子、エスケープの判断
16時頃から小雨が断続的に降り始める。19時頃から徐々に風が強くなる。
午前2時半の起床時点でも風が弱まることはなかった。天気は曇り。windy,SCW,ヤマテンで風は徐々に強くなり、午後には最大瞬間風速15m以上になることを確認。また、10時頃から雨予報となっていたことを確認。近くにいた登山者に日の出後は地熱の関係でさらに風が強まると予想されると教えていただいた。41期加藤・河野で相談し、4:55の日の出を待って稜線を出ない猿倉荘方面へエスケープすることを決定。出発が遅くなったのは強風でテントの撤収にてこずったため。
□下山
稜線を出ていないので全体を通して風を強く感じることはなかった。
アイゼン装着箇所で一眼レフカメラを何度も落としている登山客がいて、時折メンバーにあたりそうになる。大雪渓から岩室までは基本斜面なので落石に限らず上から落ちてくるものに注意。
登ってくる人多数。14日は9時半頃になって白馬尻小屋までの道ですれ違う人もかなり多かった。
□その他
白馬八方から猿倉荘まではタクシー乗車で1台3,500円程度。4人以上ならバス乗車よりもお得。1台に5人まで乗車可能。
テント設営後5人中3人が頭痛など高山病らしき症状あり。睡眠後症状は緩和。
帰りのバスがUターンラッシュに巻き込まれたので、お盆の時期の山行はそれも考慮して計画を立てるべき。

■行動記録
□1日目(加藤ゆ)
 夜行バスで出発。バスの良い点としては1.消灯してくれる。2.椅子の座り心地が良い。3.足を伸ばせる。これらが挙げられる。そのため、思ったより快適な環境下で寝ることができた。私は休憩時間の点灯や走行中の振動でしばしば起きることがあった。加えて、ネックピローをつけると寝づらい。そして、かさばるので持ってこない方がいい良いかもしれない。(この段階では、ネックピローが大活躍するとは思いもよらなかった。) 
 猿倉荘に到着し、1時間ほどで河野さんと合流。林道を歩く。日陰が続き、斜面が緩やかなため歩きやすい。道沿いにある湧水が冷たくて心地良かった。
 歩き始めてから40分ほどで山道に入る。足場が悪く、細い道が続く。早朝降った雨のせいか滑りやすかった。木々が生い茂っているため、葉や枝が目に直撃したり、装備に引っかかりたりしやすい。しかし、鮮やかな緑の木々を見ると心が和む。少し歩くと、木製の橋を渡る。橋の下を流れる川のせせらぎが涼しげだった。
 「お疲れさん!ようこそ大雪渓へ」(大きな岩に書かれた有難いメッセージ)ここから先がお疲れさんでした。(泣)初めは大雪渓の上方も下方もガスがかかっていた。色々な意味で先が見えず、少し不安であった。しかし、アイゼンを着け終わる頃にはガスが消えていた。モチベが上がりました。
 1.落石に早く気づくためにも、斜面の上方を頻繁に確認すること。2.軽アイゼンを履いているときは小股で歩くこと。3. 装備が転がると危険なため、休憩中であってもザックをなるべく下ろさないこと。以上の三つは、雪渓を歩くときに先輩方が教えて下さった。
 実際に登ってみて、アイゼンが雪に深く刺さり、足を上げるのに少し苦労をすると気づいた。また、列が出来ていたため足場が分かりやすく、歩きやすかった。そして、冷気が入り込んでくるため直射日光が当たっていても涼しかった。雪渓にある岩の大きさは様々で、数多くある。中には岩の熱により雪が溶かされ、周りにくぼみができていた。岩が音もなく転がり落ちることを想像すると怖い。
 また、雪渓上はサングラスを掛けて良かった。空と稜線の境界線がハッキリとし、サングラス越しでも美しい景色が見られた。近さんが、私のサングラスを格好良いと言って下さった。(嬉しいです…)近さんのサングラスはもっと格好良くて、レンズの色が素敵だった。
 休憩中に写真撮影。河野さん曰く、ダブルピースをする人は渡邉派らしい。前回の山行写真を見て以来、脱ダブルピースを考えていた。ちなみに今回の山行ではポーズが迷走している。写真を見返すと、結局ダブルピースに落ち着いていた。
 大雪渓の傾斜が厳しくなってきた辺りで、再び霧が発生し雨が降った。寒い。大雪渓上で雨具を着るのは一苦労した。なぜなら雪渓上で休憩できる場所は足場が悪く、また軽アイゼンを装着していたからだ。置いていたストックが雪により冷えた。萎える。その後の岩登りを考えると、グローブをつけていた方が良かったと思う。
 大雪渓終了後、とある休憩中の登山客が滑り落ちそうになるのを目撃。更に、大きな石が転がっていった。幸い数メートル下で止まったため、ケガ人はいなかった。休憩を終えて再出発。木製の細い橋を渡る。橋の下は急流であり、かつ急斜面の岩場である。(何で橋の下を見てしまったのだろう。個人的な感想だが、山道に入った直後の橋とのリスクの差が比較にならない。)また、私が靴擦れをして皆さんにご迷惑をおかけした。今後の山行では靴擦れ防止テープが必須。
 私は、晴れた時しか撮影していなかった。そのため岸田さんが霧の中撮影した、景色の写真が気になる。(8の限界を嘆いていらっしゃったけど…)岩室の道は浮石や細かい石が多く、踏み外すと危険である。手を支えとして登る場所もあるため、大活躍していたストックが煩わしかった。雪渓が終わり、アイゼンをしまうタイミングで片付けた方が良い。
1.安定した岩の上を登ること。2.踏み出した足の真上にゆっくりと重心を移動させて前に進むこと。以上のことを教えて頂いた。「自身が滑る危険だけでなく、落石によって他の登山客に影響が出る。」と河野さんがおっしゃっていた。
 避難小屋につくころにはガスも消えて晴れた。そして、杓子岳が見えた。白馬三山の一つらしい。鋭利で格好良く、その存在感に圧倒された。杓子岳の見える場所は開けていて展望がいい。河野さんから、他の先輩のお父さんが下さったという、オシャンなお菓子を頂いた。カシスのジャムが入った焼き菓子…。(やっぱり味もオシャ_)とても美味しかったです。ありがとうございました。
 お花畑の中を登ったのは、今回が初めてであった。肉眼で見る景色は、教科書に載っていた写真とはやはり異なる。多種多様な草花が一面に広がり、------生物学科なのに名前が全く分からない。知っていれば高山の植生をより楽しめただろうに。細い道があり、岩が多く足場が悪い。時々、背丈ほどの植物が生い茂っている。前述したが、葉や枝が目に直撃したり、装備に引っかかりたりしやすい。更に長い間上りが続くため、(コース全体が基本上りだが、)疲労が溜まる。宿舎が見えると、もうひと頑張りできた。
 再びガスってきた。宿舎に着く頃には雨が降り始めていた。木製の階段は段差が高いため、疲労の溜まった身体には負担が大きい。しかし、足場が安定しているという点では安心する。
 頂上宿舎に到着するころには、小雨と強い風で体が冷えていた。宿舎の食事処で休憩。宿舎内に漂うカレーの匂いがとても気になったが、おでんを頂いた。温かさが身に染みる。いつメン(具材)の味は高所でも変わらない美味しさである。(出汁がしみしみの大根等々)宿舎でご飯を食べられることが有り難かった。
 テントを張った後、何人かで(電波をもとめて)稜線を歩いた。稜線の中でも高くなったところへ着くとDocomoは圏外から3GBへと変わった。電波の有り難みをひしひしと感じた。KさんのSoftBankの方が優勢という現象が起きていたような気がする。また、整備された細かい石の道のためサンダルで登れる。登山靴で登るときと比べると足への負担は大きかった。ガスが消え、見渡す限り絶景が広がる。旭岳や清水岳を見ることが出来た。日本海側の山々は霧や雲に覆われていた。(それはそれで個人的に好きだが、)空気が澄んでいたら日本海が見えたかもしれない。そして、白馬岳の山頂と白馬山荘も見えた。白馬山荘は日本で1番大きい山荘らしい。休◯村のホテルみたい…というよく分からない感想しか思い浮かばなかった。多分、疲労のせいだ。
 加藤さんにジャンプした写真撮って頂いた。(一大派閥に入りました!ありがとうございます。)ジャンプをすると、人物と後ろにそびえる山々との遠近感がより明確になると思った。また、河野さんが旭岳を見て満面の笑顔。研究対象の画家が、旭岳をモデルとした作品を描いたとのこと。「画家の追体験をしている‼︎」と、とても嬉しそうでした。視界が開けて本当に良かった。
 初めて食当をした。今回は野菜パスタを作った。主に、河野さんや近さんが調理をしてくださった。先輩方のおかげでバリカタのようなパスタが、丁度良い硬さのパスタになった。先輩方曰く、レシピより多めに水を入れたことが良かったそうだ。本当にありがとうございました。
 何人かが頭痛や眠気を感じたらしく、高山病が懸念された。確かに、私自身も強い眠気を長時間感じていた。テント設営後、就寝した方多数(私は、散策後に秒で寝た)。あのネックピローのことだが、活躍するのは就寝時である。程よい高さと頭を包み込む感覚は安心する。おかげで質の良い睡眠が取れた。結局、アイマスクとイヤホンは必須。更に、ネックピローは個人的に神アイテムとなった。

□2日目(近)
 3:30に起床。女子テントの3人ともすんなり起きる。河野さんがすぐにメンバーの体調確認をしてくださる。私は雨と風の音で眠れなかったが、お二人は比較的眠れたらしい。眠るべき時はしっかり眠って必要な睡眠を確保できるよう、訓練が必要だと感じた。
 テントが空になると強風で飛ぶ恐れがあるため、一つのテントにみな集まることはせず、女子がまとめて調理して男子テントに運んだ。朝食はうどん。山の朝食では初めておうどんを食べたが、まだ眠いお腹に優しく、またこしもあってとてもおいしかった。
 河野さんが電波のあるところに行って天気予報を見てくださり、これからの方針について男子テントの方々と相談してくださった。日が出るとさらに風が強まること、予定通りの行程だと稜線を歩く時間が非常に長いこと、雨の降り始めが前日の予報では午後からだったのが当日の予報では10:00に早まったことを考慮して、登頂せずに引き返すという判断をした。
 日も昇ってきたため撤収を始める。風が強く、テントを半分に折り畳むのも一苦労。テントの中にザックを置いたり、四隅に石を置いたりなど、工夫を凝らして飛ばないように細心の注意を払いつつ畳む。
 撤収後、準備をして出発した。41期の加藤さんの提案で、稜線に出るところまで登ることにする。「今山行最後の登りだー」という河野さんのお言葉が少し寂しいような、名残惜しいような感じで心に沁みる。白馬岳山頂を背に集合写真を撮る。撮った写真からは、その表情や服、髪の様子から風の強さがひしひしと伝わってくる。
 その後、下山を開始する。ひたすら下り。天気は良く、また風も強いため、1日目はガスっていて見えなかった遠くの方まで見渡せる。道は岩や石がゴロゴロした道。1日目に同じ道を登った時は、特に段差が大きい時、むやみに手を付くのではなく、岩や石を動かさないよう、安定した石に足を置いてそこに全体重を乗せて登ることなどに気をつけるように、と河野さんに教えていただいた。一方同じ道を下る時は、1日目は特に意識せず足を置いたような坂道でも、下る時は傾斜が急に感じられ、安定した石を見極めて足を置く必要があった。同じ道を登り降りしたのにも関わらず、気をつけるポイントや登山道の印象が違って勉強になった。
 下りの最初は、滑ることよりは足元のグラつきに注意していたが、雪渓に近づくにつれて、スリップしやすくなる。雨は降っていなかったので初日よりは少なかったが、岩の間を水が流れているところがあり、滑りやすいので注意が必要。また階段の端が木になっているところも一見濡れていないように見えて滑りやすい。途中、路肩の石が無い(崩落した?)ところ(約80cmくらいだろうか)があり、そこを踏み外したメンバーがいた。メンバーも、そして的確に指示なさる河野さんも冷静に対処していた。山側を歩く大切さを改めて感じる。
 下ってきて大雪渓に着く。休憩しつつ、軽アイゼンとヘルメットを装着。天候の悪化が予想されてはいたが、雪渓を登りきった登山客がひっきりなしに通り過ぎていく。一歩一歩歯を地面にしっかり刺して進みましょうという41期の加藤さんのアドバイスのもと、雪渓を下り始める。踏み跡があるところは歯が刺さりやすかったが、登ってくる登山客に道を譲るために踏み跡の薄いところを歩く場面では、より意識して歯を刺さないと前に滑ってしまって難しかった。前日の雨のせいもあるのか、前日よりも雪が茶色く汚れているように感じた。
 雪渓の中盤くらいからポツポツ雨が降ってくる。雨具を着るほどではないのでそのまま進む。雪渓の終わりが見えた頃から傾斜が徐々にキツくなるため、一度止まってかかとから食い込ませる歩き方(キックステップ)を確認する。そして注意深く下っていく。私は終盤で一度転んでしまった。前と後ろから「ゆっくり立ち上がって」などの言葉をかけてくれたメンバーに感謝したいとともに、最後まで疲れずに足を動かせるよう、体力と筋力をつける必要を改めて感じた。
 雪渓が終わって稜線の方向を眺めると黒い雲が広がっている。撤退という判断の重要性を感じる。軽アイゼンとヘルメットを外し、出発する。出発して間もない頃、私が草の下が崖であることに気づかず路肩を踏み外す。ここでも手を差し伸べてくれた河野さんはじめ励ましてくださったメンバーに感謝したいと共に、山側を歩くことの大切さを再度感じる。常に意識したい。
 途中から先頭を歩いていた44期の加藤さんは、ペースなどとても安定していて、とても頼もしい。道は高度を下げるに従って歩きやすい道になる。
 白馬尻小屋で取った休憩で、44期の加藤さんがゆずのこんにゃくゼリーを振舞ってくださった。難所もあって冷や汗も混じった汗だくの体に沁みた。とても美味しかったです。ありがとう!!
 休憩後出発。ここから猿倉までの道はアスファルトの道もあって歩きやすく、あっという間である。
 猿倉まで無事下山してくると、一休みする暇もなくタクシーの運転手さんに乗車を強く勧められる。41期の方々を中心に、大急ぎで温泉の所在地と、バスとタクシーの価格の比較をして、タクシーを選択する。価格の調査・比較がとても迅速で、このようなちょっとした場面でも先輩方が登山経験を豊富に積んでいらっしゃることを感じた。
 タクシーは荷物を置いて座れるのが良い。私は助手席と運転席の間に座り、ちょうど教習所を卒業したばかりだったため、運転手さんのハンドルさばきをみて復習していた…笑
 八方の湯に着く。河野さんはモンベルにTシャツを買いにいらっしゃり、他のメンバーは温泉にさっそく入る。「ゆっくり入ってきていいよー」という41期の加藤さんの呼びかけにメンバーは歓声をあげる。44期の加藤さん曰く肌がツルツルになるという強アルカリの温泉だった。とても気持ちよかった。
 お風呂を出た後、少し休み、林檎舎というお蕎麦屋さんに行く。ダブル加藤さん、岸田くんが「おしぼりそば」を、河野さんと私が「くるみそば」を食べた。くるみそばは甘辛くておいしかった。また大雪渓という日本酒を20歳以上のメンバーで飲んだ。20歳になって2週間足らずの岸田くん(おめでとう!!)と1ヶ月の私は初日本酒。甘くておいしい〜どんどんいける〜、とおっしゃっていた41期のお二人がかっこよかった。
 お土産などを買って帰りのバスに乗り込む。渋滞に巻き込まれて予定より2時間半ほど長くかかった。日曜日の午後のバスでの帰宅は渋滞覚悟であることを改めて感じた。

■メンバーコメント
□河野
・撤退判断を余儀なくされたのは非常に残念だが、無事下山できて良かった。
・核心と見込んでいた大雪渓ではなく、それ以外の細かいところでの転倒などが目立ち、もっと注意喚起すべきだったと反省している。経験が浅いメンバーがパーティにいるときは、自分が登山を始めたばかりのことを思い出して、メンバーが慣れるまでは十分すぎるほど注意を払うよう心がける。
・上部から大声が聞こえるので落石かと思いとっさに声のする方向を向いたら、何度も尻もちをつきながら大雪渓を降りていくアイゼン未装着の子どもたちと父親らしき男性の文句と叱咤の声だった。本山行で一番記憶に残っている。パーティの力量に逸脱しすぎない計画や装備の妥当性の検討、現場での事故防止のための立ち回りはLの責任だ。反省の多い今回の山行の内容と親子のパーティによってそのことをひしひしと痛感した。登山者として、パーティの構成員として今後一層責任を持って登山をしたい。
・加藤さんの食当は保存が効く、軽量化、片付けが楽、おいしいの4拍子で素晴らしかった。
・丸山晩霞が《白馬岳の神苑》を描きたくなる気持ちが良く分かった。
・ついにシュラフを新調しました。あったかいシュラフは正義。相談に乗ってくださった皆さまありがとうございました

□近
・景色の雄大さだけでなく、天候の変わりやすさや、森林限界を超えた、ゴロゴロした登山道など、「アルプス」を体験できてとても良かった。
・登りの体力不足や下りの疲れやすさを痛感した。技術面でも精神面でも支えてくださったメンバーの方々全員に心から感謝したい。また泊まりのザックを背負った時のパフォーマンスを向上させていきたい。
・SLとして、テント場に着いてから翌日出発するまでのスケジュールを組む経験をさせていただいた。今後に生かしていきたい。

□加藤
・当初の予報より悪化したとはいえ、雪渓の通過に気をとられており、パーティーとしても個人としても2日目の強風で稜線を歩けなくなる可能性を、ほとんど考慮できていなかったのが反省点。2日目のエスケープを予想できていれば1日目のうちにピークを踏むことも出来ていたと思う。アルプス稜線上のテント泊における風の怖さを実感した。
・テントはペグが突き刺しにくく、石での固定をした。十分に飛ばされないように留意して固定したつもりだったが、翌朝には強風で片面の紐が外れていた。テントの入り口を風下にする、妥協せずにさらに重い石を各所に使う等した方が良かったと思う。
・登り始めから岩稜の稜線を見ることが出来るなど、北アルプスらしい景観を終始楽しむことが出来る道だった。

□岸田
・約1年ぶりの北アルプスの景色だった。今回山頂に行けなかったということも含めて、また来たいと思える場所だった。
・強風や雨、滑りやすい道など気をつけるべき点が多く、いい経験になった。これからも安全に登山ができるよう、経験を積んでいきたい。

□加藤ゆ
・下山の際、足を踏み外し1m程下へ落下。危険な箇所に対する注意が不十分であった。山行2連続で降雨。何も言えない。
・ご一緒したことのある先輩方と登れて嬉しかったです。他のことは、山行記に書きました。