2022/9/25-26 裏岩手連峰縦走

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
裏岩手連峰縦走計画書 メンバー・在京用計画書
作成者: 桐原、宮島、森
■日程 2022/09/25-26(日-月)、予備日 なし
■山域 岩手山・八幡平
■目的 縦走
■在京責任者・助言役 中田
■在京本部設置要請日時 2022/09/26(月) 18:00
■捜索要請日時 2022/09/27(火) 9:00

■メンバー
桐原, 宮島, 森

■集合・交通
<集合>
盛岡駅 8:50
新幹線始発は8:44着(東京駅6時発はやぶさ・こまち1号)

<行き>
〇八幡平登山口
盛岡駅東口(9:10/9:42)-[八幡平自然散策バス/岩手県北バス]→八幡平頂上(11:05/12:20) 1,350円

<帰り>
〇松川温泉
最終 松川温泉16:20-18:09   1,180円

■行程(計10時間10分)
1日目(5時間00分):八幡平登山口-0:40-八幡平-0:30-八幡平登山口-0:15-裏岩手連峰登山口-0:30-畚岳-1:05-諸桧岳-0:40-前諸桧-0:40-嶮岨森-1:00-
2日目(5時間10分):大深山荘-0:35-大深岳-0:15-八瀬森分岐-1:00-小畚山-1:10-三ッ石山-0:30-三ッ石山荘-0:50-分岐-0:50-松川温泉

■エスケープルート
大深山荘まで→八幡平頂上へ引き返す
大深山荘から→松川温泉へ

■山小屋情報
陵雲荘 0195-74-2111 20人 
大深山荘 0195-74-2111 15人 水場あり
三ッ石山荘 0195-74-2111 15人 水場あり

■地図
二万五千分の一地形図:「八幡平」「茶臼岳」「松川温泉」「大更」「姥屋敷」
山と高原地図:「05 岩手山・八幡平」

■共同装備 (現地で振り分け)
救急箱(アゲハ):桐原
ヘッド(緑1):宮島
カート×3:
鍋(竹小竹):宮島
調理器具セット(キャサリン):宮島

■個人装備
□ザック □ザックカバー □シュラフ (□シュラフカバー)□マット □雨具 □防寒具 □登山靴 □替え靴紐 □帽子 □水 □行動食 □非常食 □ブキ(カトラリー) □コッヘル □ヘッドランプ □予備電池 □ゴミ袋 □トイレットペーパー  □ライター □新聞紙 □軍手 □地図 □コンパス □エマージェンシーシート □筆記用具 □計画書 □常備薬 □学生証 □健康保険証 □現金 □遭対マニュアル(緊急連絡カード含む)□日焼け止め  □マスク  □歯ブラシ □充電バッテリー □タオル □消毒液orアルコール除菌シート □虫よけ □熊鈴 (□ストック □サンダル □サングラス□着替え □リップクリーム)

■食当
1日目夜:桐原
2日目朝:宮島

■遭難対策費
ひとりあたり200円

■悪天候判断
23日夜に判断

■現地連絡先
盛岡県警岩手警察署 0195-62-0110
盛岡県警盛岡西警察署 019-645-0110
八幡平幹部交番 0195-76-2011
八幡平消防署 0195-76-2119
秋田県警仙北警察署 0187-53-2111

■備考
□日出・日没時刻
9/24 日の出 05:18
        日の入り 17:39
(参考:https://alumicase.com/acdc/mountain.html )
□過去の記録
2018年度記録
2006年度記録
□ラジオ
NHKラジオ第一 531kHz
NHKラジオ第二 1386kHz
□コロナ対策※[raicho_all:461] 5/26より一部改定
1. 遭難などの緊急時を除き、山小屋の使用を控える。
2. 長期休暇中は平日の活動を中心にする。
3. 山頂付近などの人が多いところでは長時間滞在しない。
4. 最大10人以内のパーティーとする。
5. 常に、パーティー内の連携を損ねない範囲で十分に距離を取る。
6. マスクを常用する。
7. 水や食料は事前に購入しておき、登山山域での買い物を控える。また、下山後の会食も控える。
8.テント内の人数は定員の半分程度とし、余裕をもって使用する。
9. メンバー全員が当日朝検温して担当者に提出。山行前の体調管理はしっかりと行い、少しでも風邪の症状がある場合は参加を控える。

9/25-26 裏岩手縦走記録

■日程 2022/09/25(日)~26(月)
■山域 岩手・八幡平
■山名 裏岩手縦走(八幡平-三ッ石山)
■天気 1日目 晴れ 2日目 曇りときどき晴れ
■メンバー(敬省略)
CL桐原(43) SL宮島(44) 森(42)

■総評(桐原)
天候不良により当初の予定からは大幅に短縮しての決行になったが、紅葉や東北らしい山歩きの魅力を満喫した。下山後に良質の松川温泉や盛岡市街の観光を楽しめる点も含め、是非おすすめしたいルートである。

■ルート概況(桐原)
危険箇所なし。降雨の状況によっては泥濘が続く可能性あり。避難小屋は混雑に注意。

■共同装備
救急箱(アゲハ):桐原
ヘッド(緑1):宮島
カート×3
鍋(竹小竹):宮島
調理器具セット(キャサリン):宮島

■タイムスタンプ
<1日目>
11:15 八幡平登山口
11:33-11:38 八幡平山頂
11:50-11:54 陵雲荘
12:16 見返峠
12:24-12:27 八幡平登山口
12:38-12:43 裏岩手登山口
13:03-13:20 畚岳
14:07-14:08 諸桧岳
14:49-14:49 前諸桧
15:25-15:30 嶮岨森
15:53 大深山荘
(到着後水場往復、約15分)

<2日目>
6:50 大深山荘
8:23-8:52 小畚山
9:49-10:27 三ッ石山
10:51-10:55 三ッ石山荘
12:22 松川温泉

■記録
<1日目>(文責:桐原)
 快晴の盛岡駅東口からバスに乗る。一日に1往復、「八幡平自然散策バス」の名称で運行されている直行便で、路線バスながら観光バス仕様の快適な車内である。三連休の日曜日であり混雑が心配されたが、満席にはならない程度で済んだ。やはり、八幡平は車で訪れるところなのだろう。
 バスは盛岡市街地を抜けて東北自動車道に乗り、左手に岩手山、右手に姫神山を望む雄大な景色の中をひた走る。これらの山には伝説というか、地元で知られているお話があって、岩手山と姫神山はもともと夫婦だったのだが、姫神山の容姿にご不満だった岩手山は早池峰山を側室に迎えたそうである。これに怒った姫神山は夫の不実を毎日詰り、これを嫌がった岩手山は妻をこの地から追い出すことに決め…と続くのだが、詳細は岩手町のホームページなどを参照されたい。家来まで巻き込んで随分とどろどろした物語で驚いた。
 途中さくら公園での休憩をはさみ、さらに山の奥へ。松川温泉を過ぎると裏岩手の山肌に取りついてぐんぐん高度をあげるようになり、植生もブナの森からアオモリトドマツの林立する亜寒帯の様相になる。噴気をあげる藤七温泉を過ぎるとまもなく八幡平登山口に到着した。売店やビジターセンターが並び、すでに多くの観光客で賑わっていた。
 今回は裏岩手縦走路に入る前に、八幡平に寄っていくことにした。登り口から山頂までの比高はわずか70m。お散歩という言葉が相応しいが、その短い道程は予想以上に変化に富んでいた。歩き始めるとすぐに岩手山の堂々とした山容が望まれる。分岐を左折して5分ほど歩くと、鏡沼という火口池が水をたたえている。風が弱いので、水面に青空や紅葉がよく映っていた。今年の紅葉は9月の高温の影響かあまり色付きが良くないが、そのために渋い色をしていて、これはこれで悪くない。いくつかの池をめぐってもう5分歩くと、八幡平の最高点、一応「山頂」として理解されている地点に着く。トドマツに囲まれた小さな広場には木造の展望台が設置されていて、これに上ると北側を中心に多少の視界が得られる。手前には広がる樹海が、遠くには幾重に連なる山々が見えた。この辺りの地理にまだ明るくないために、ひとつの山の名前も分からないことが残念だ。
 下りは東側に広がる八幡沼を経由して帰った。青空の下、草紅葉の湿原の中を真っ直ぐに続く道で、八幡平らしい魅力を楽しめる区間だった。途中の陵雲荘も薪ストーブまで備えつけられた綺麗な避難小屋で、いつかここに泊まって夕方・早朝の八幡平を満喫したいと思った。
 序章が長くなってしまったが、ここからが主目的である裏岩手の縦走である。八幡平登山口から少し車道を歩くと入口があり、まずは正面に聳える畚岳(もっこだけ)に登る。畚というのは、「縄や竹・蔓で作った土砂の運搬道具」のことで、山容がそれに見えるらしい。私にはよく分からなかったが、平らな山の多いこの辺りにあって音の通り「もっこ」と飛び出した印象的な形ではある。山頂直下の登りは急登という程ではなかったが、それでも今日の行程の中では一番の登りだった。山頂からの眺めは素晴らしい。まず目に留まるのは、南北に連なる山の緩やかなことだ。特に先ほど歩いてきた八幡平は、確かに「平」と呼ばれるに足るテーブルのような姿をしていた。次いで惹かれるのは、山頂から西一面へ広がる玉川源流の森林である。どこまでも町が見えない。アスピーテラインの車道こそ走っているが、本当に奥深い所まで来ていることを実感した。景色を眺めているとあっという間に時間が過ぎていくが、今日はまだまだ進まなければいけない。
 畚岳を越えてしまうと、いよいよ激しい起伏のまったくない稜線歩きになる。地形図を御覧いただければ分かるように、正面の諸桧岳(もろびだけ)は平皿を伏せたような山で、全体がアオモリトドマツの美林に包まれている。その先にも古い火山のたおやかな山並みがはるか岩手山まで続く。道はところどころぬかるんでいるが、おおむね歩きやすい。途中では刈払いをしてくださっている最中の地元の方にもお会いした。こうして不断の努力によって登山道が維持されていることに、頭が上がらない。
 こうした独特な奥深い雰囲気と、他方地元の人々に親しまれ生活に根ざしてきた人間くささとが、岳人を誘い込むのだろうか、アルプスを差し置いて東北の山が好きだという登山者は意外にも結構多いようである。この山行にも、(おそらく雷鳥現行メンバーでは指折りの)東北好きな方々が集まった。行きたい山の話なども盛り上がる。しかし話を聞いていると、お二人とも私より遥かに足繁く山に通っているようで、山へのモチベーションも比べ物にならない。森さんは直近2週連続で白馬へ登っているというし、宮島さんも少し前に栂海新道を踏破したばかりだ。(これは東北好きというよりむしろ白馬好きの集まりでは…)と思わなくもないが、ともかくも1ヵ月近く登山から離れていた私は、お二人の山の思い出を楽しく聞かせて頂いた。山が好きな人がする山の話はやはり面白い。自分が好きなものごとについて語るというのは、素晴らしいことである。
 どこが山頂なのか判然としない諸桧岳を過ぎ、鞍部の池塘を横目に前諸桧へ登り返す。歩き始めが遅かったため、稜線は西日の照る時間になってきた。本来登山では15時頃には行動を終えるのが原則とされているしそうするべきなのだが、個人的にはこの夕方の時間が山の一番好きな時間帯であったりする。斜めに差し込んだ光が陰影を生んで、木の1本1本までくっきり際立って見えるのが良い。
 前諸桧を越えると、本日最後のピーク、嶮岨森(けんそもり)が見えてくる。これもまた難しい字だ。諸桧岳とは対照的に、東側が切れ落ちた形をしている。八幡平あたりの紅葉は先述のとおり渋い色をしていたが、このあたりは比較的鮮やかな色をしている。西日も手伝って秋山らしい赤と黄の山肌が楽しめた。ただこの西日は暑さの原因にもなり、嶮岨森への登りではだいぶ汗をかかされた。山頂で休憩をとったのち、大深山荘へ最後の区間を進む。少しずつガスが昇ってきていたが、大きく視界を遮られることはなく、夕刻4時前に無事大深山荘へ到着した。
 大深山荘もまた綺麗な小屋だった。中は二階に分かれており、木のいい匂いがする。ただ、予想以上に混雑していた。先着の方がご厚意で場所を移ってくださったおかげで3人まとまった場所に入ることができたが、それで山荘はほぼ満員となった。日曜日の晩で泊まりに来る人はそういないだろうと高をくくっていたのだが、地元の方が多く来ているようだった。小屋内には岩手の言葉が飛び交う。そして、余所者の私達にも気さくに話しかけてくださる。小屋で一緒になった方々との交流は、この山行に他では代えがたい彩りを与えてくれた。ここでその仔細を綴るよりかは、ぜひ皆さんにも東北へ足を運び、この温かみを直接感じ取っていただくほうが良いだろう。
 水場まで歩いて清冽な湧き水を汲み、小屋前のベンチでみぞれ鍋を作って食べた。秋分も過ぎて短くなった日が落ちてしまうと、一気に冷たい空気が立ち込めてきた。季節の進みを思い出す。食事を終えるころには、北斗七星がはっきり追える暗さになっていた。翌日の好天を祈って、就寝する。

<2日目>(文責:宮島)
前夜に決めた起床時刻は5時。小屋の快適さと行程のゆとりのおかげで、良質な睡眠をとることができた。夕食と同様、小屋前のベンチで朝食を済ませる。空気は冷たく、時間をかけて沸かしたスープの熱は、ほとんどコッヘルにおすそ分けした。前夜に続き地元の皆さんと言葉を交わしつつゆっくり準備をととのえ、7時前に大深山荘を発った。
小畚山に至るジグザグ道の登りを除いて、「登り」という言葉から想起される思い出がないのは、直前に歩いていた栂海新道の急登降の記憶が新しかったからだろうか、それとも…。諸事情を抜きにさせていただくとしても、「天空の遊歩道」と呼ばれるにふさわしい稜線歩きが続く。雲は少なくなかったものの、小畚山の頂からは、秋田駒ヶ岳・乳頭温泉方面や岩木山らしき山体を望むことができ、あらためて北東北の森の深さを感じた。ゆたかに彩られた山肌の色は、赤や黄などと括る気にはとてもなれない。来た道を下り、ゆるやかなアップダウンのある稜線を進んでいくうち、正面に三ツ石山が現れる。青空と笹原を水面に映す三ツ沼を経て到着した山頂は、多くの人で賑わっていた。我々のような県外からの登山客も少なくないが、行き交う言葉から察するに、この山域をいつも身近に感じている人びとの方がはるかに多いのではないか。気合の入った登山というより、日常のお散歩感覚で訪れているようだ。余所者の私に「今年の紅葉は…」と語りかけてくださる笑顔には、地元の山への愛と誇りが滲む。
山頂から20分ほど下ると、三ツ石山荘に至る。遠目からもその見事なロケーションは認識していたが、避難小屋自体もこれまた立派なもので、人気の理由はいくらでも挙げられそうだ。紅葉シーズンを外してでも再訪したいと思った。ここからは松川温泉に向けてひたすら下る。ぬかるんでいて少し歩きづらかったが、よく整備されているので、不安なく進むことができた。最後は樹林帯に設けられた階段を下り、お昼過ぎには登山口に到着した。ブラシで靴の泥を落とし、日本で最初に運転を開始した地熱発電所として知られる松川地熱発電所(に併設された松川地熱館)に立ち寄ってから、温泉に向かう。久しぶりに峡雲荘の露天風呂に浸かることができて大満足。バスで盛岡駅に戻った後は、盛岡冷麺や秋刀魚の塩焼き、地物のキノコなどなどをいただき、東北の秋の恵みを満喫した。

■感想
〇桐原
・初めての山域でしたが簡単に虜になりました。また年・季節を改めて訪れたいと思います。
・避難小屋とは思えない綺麗な小屋で快適でした。
・山で食べる鍋は美味しい。
〇宮島
・大根おろしを凍らせて保冷剤にする知恵に感動しました。
・また東北の山に泊まりに行きたいです。
・記録作成が遅れ、大変申し訳ございませんでした。
〇森
・やはり東北の山は素敵ですね。
・今度は岩手山の方まで繋げて歩きたい。
・下山後の、硫黄の匂いが立ち込める松川温泉もよいところでした。