2023/5/27 武甲山ハイク

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
武甲山ハイク計画書 第二版(2023/05/26現在)
作成者 : 加藤

■日程 2023/5/27(土)日帰り予備日なし
■山域 奥武蔵
■目的 雷鳥での登山に慣れる
■在京責任者・助言役 宰田優美
■在京本部設置要請日時  2023/5/27 19:00
■捜索要請日時 2023/5/28 9:00
■メンバー(5人) 
CL加藤 SL櫻田 鈴木 油井 齊藤
■集合、交通
集合:横瀬駅 8:10集合
□行き 秩父ハイヤー乗り場(横瀬駅から徒歩1分) 8:20→武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場
(タクシーで約20分)
タクシー料金 (普通車 2300円)
□帰り 武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場→秩父ハイヤー乗り場
タクシー料金 (普通車 2800円)
(参考) 秩父ハイヤー http://www.chichibuhire.com/taxistand/
	TEL:049-424-8180 (8:00~20:00)
※タクシー料金は1台あたりの値段のため、タクシー利用後に割り勘をする予定です。前日の営業時間までに連絡すれば、キャンセル料金は発生しません。


■行程(計6:04)
武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場-(0:30)-十五丁目登山口-(0:50)-大杉の広場-(0:60)-武甲山-(0:32)-シラジクボ-(0:48)-子持山-(0:40)-大持山-(0:55)-妻坂峠-(0:49)-武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場


■エスケープルート
一の鳥居~小持山:シラジクボ側に引き返し一の鳥居へ下山
小持山以降:妻坂峠から一の鳥居へ下山


■危険箇所
・熊
・(一の鳥居〜登山口)沢側崩落、迂回路アリ
・(登山口〜大杉の広場)南側の巻道 崩落により通行止め
・(山頂〜シラジクボ)トラバース、道迷い
・(子持山〜大持山) 岩場、巻き道アリ
・(妻坂峠〜一の鳥居)崩落箇所アリ


■個人装備
□ザック(30~40L) □ザックカバー □登山靴 □替え靴紐 □ヘッドランプ (電池は外しておく)□予備電池 □雨具(100均のモノやカッパは不可)□防寒具(ダウンやフリースなど) □水(1.5~2L 途中水場アリ) □行動食 □非常食 (行動食と同じもの)□ゴミ袋 □地図(印刷して各自持参) □コンパス □レスキューシート □筆記用具(ボールペン1本で可) □計画書(印刷して各自持参) □遭難対策マニュアル(緊急連絡カード含む) (携行版を持参)□学生証 □保険証(コピー可) □現金 □日焼け止め □マスク □タオル □消毒液orアルコール除菌シート□熊鈴(CL持参) ⇩必須の装備ではないが、あると便利
(□常備薬 □帽子□カメラ□サングラス □着替え □リップクリーム □温泉セット)


(カロリー計算) http://www7b.biglobe.ne.jp/~photography/calorie.html
(水) https://yamahack.com/3652


■共同装備
救急箱(苺):櫻田
■地図 2.5万分の1「茅ヶ岳」「若神子」/ 山と高原地図「22 奥秩父・秩父」
(参照) https://drive.google.com/drive/folders/1HJ8RHq5P-oQf5iCJlkd4og6JhtVkJbnX


■遭難対策費 メンバー5人×100円=500円


■各種連絡先
□東大
○教養学部学生支援課 ※開室9:00〜16:50(平日)
Tel: 03-5454-6074
○駒場正門守衛室 ※常時対応可
Tel: 03-5454-6666
□お茶大
○学生・キャリア支援課 ※開室9:00~17:00(平日)
Tel:03-5978-5147
○正門守衛室 ※常時対応可
Tel:03-5978-5128
□現地連絡先
○秩父警察署 TEL.0494-24-0110


■備考 
□日出・日没時刻(@武甲山)
 日の入り18:58  日の出 4:23
 (参照) https://alumicase.com/acdc/mountain.html
□雨天時中止:前日19:00までに判断
□登山届提出先
・コンパス:提出済
・大学(東大):提出済
・大学(お茶大):提出済
□温泉「秩父湯元 武甲温泉」(横瀬駅より徒歩10分、料金 900円)
(参照) http://www.buko-onsen.co.jp/


■コロナ対策 
・泊まり山行、特に行程中での食事や入浴が伴う山行では、全員がリスクを理解し合意したうえで実施する。
・山行前の体調管理はしっかりと行う。
・メンバー全員が当日朝検温してパーティー内で共有し、少しでも風邪の症状がある場合は参加を控える。
・マスクや消毒用品を必ず携帯し、山小屋や人の多い山頂など他の登山者と接触する場では着用、使用する。


□過去記録
2022/6/17
2014/10/12

5/27 武甲山ハイク記録
作成者: 加藤


■日程 2023/5/27 (土)
■山域 奥武蔵
■天気 晴れ
■メンバー(敬称略)
 CL加藤、SL櫻田、齋藤、鈴木、油井


■タイムスタンプ
 武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場 8:45
 一五丁目登山口 9:06/9:08
 武甲山御嶽神社 10:22
 武甲山山頂 10:22/10:38
 子持山 11:45/11:59
 大持山 12:31/12:50
 妻坂峠 13:38/13:41
 武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場 14:12
(計5:28)


■総評
 45期入会後、初めてのハイク。新入生はしっかりとした足取りでついて来てくれた。山行当日は天気が良く、奥秩父や奥多摩の山々を一望することができた。本山行を通して山そのものだけでなく、地元と密接に関わって形成された歴史や文化を垣間見ることができた。そして、今なお武甲山は霊峰として存在し、人々から大切にされていることを肌で感じられた。


■ルート概況
・武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場〜一五丁目登山口
 舗装された道。沢沿いを歩くため小川のせせらぎが心地良い。昨年起きた、大規模な土砂災害の跡が見受けられた。計画書に記載した崩落箇所について。ロープが張られており迂回路の標識も分かりやすいため、難なく通ることができる。
・一五丁目登山口〜大杉の広場
 途中、(新設されたと思われるが)渡るには不安定な橋が一ヶ所ある。筆者は隙間に足を取られる()。人工池の中をオタマジャクシがわさわさと泳いでいた。可愛い。ルート概況と言えど、これだけは書かせてください。
・大杉の広場〜武甲山山頂
 落葉広葉樹が減り、その名の通り立派な杉が林立する。途中、開けた場所があり中央には一際大きな杉が聳え立つ。先ほどの登山道とは様子が変わり、道の両脇は杉の根が露になっていた。また、足元には岩も散在し少々足場が悪い。神社の付近には開けた場所あり。様子は記録の通り。神社の裏から山頂(展望所という標識あり)へ進める。山頂付近は狭いため、人が多い時は長居出来ない。
・武甲山山頂〜シラジクボ
 何ヶ所かに標識が存在するため、道迷いは少ないだろう。急な斜面を慎重に下る。また、道幅が狭いためすれ違う登山客に対しても注意が必要。(比較的日当たりが良いためか)登りとは植生が異なり、低木や草花が見受けられた。至る所でアマドコロが群生している。トイレは閉鎖中で非常用しか無かった。察して頂きたい。
・シラジクボ〜子持山
 急登が始まる。相変わらず道幅は狭いが、踏み固められており足場はそう悪くない。低木の枝がせり出しているため、注意が必要。山頂の手前に岩場あり。右手に迂回路もあったが、道幅が狭くあまりお勧めしない。岩場を登るならグローブがあると良いが、素手でも登れる。山頂は狭く、やたらとハエが多い。虫除けスプレーでさようなら。
・子持山〜大持山
 急な斜面を下る。同期の誰かしらは位置エネルギーの無駄遣いと言いそうだ。狭い道幅が続き、更に背丈ほどの植物が生い茂る。時折、武甲山を望むことができる。再度岩場があるのだが、右側を降りた方が良い。左手を進んだ場合、一歩滑ると一貫の終わり。。山頂まであと少しの場所に、小高い場所がある。そこからの展望が本山行で一番だった。山頂は子持山と似ている。ハエも同様。
・大持山〜妻坂峠〜武甲山御嶽神社一の鳥居駐車場
 あとは下るだけ。植生は緩やかに変化していたが、基本は単調な道である。ある程度急なため、廉価なトレッキングシューズを履いていた筆者は足の爪先が痛かった。林道を横断した辺りでau回線が復活。auユーザーがいてくれて助かった。


■記録(山行記) (文責:鈴木)
 
朝の西武線で揺られること数時間。朝の日差しが差し込む車内には、飯能のあたりから登山客が目立ち始めた。吾野で降りる登山客が多いが、どこの山に向かうのだろうか。車窓に目をやると、山地と田舎町が交互に見え隠れする。


横瀬駅到着間近、進行方向左手に武甲山が姿を現す。独立峰と呼んでよいのかわからないが、周りの山々からは一回り高くてがっしりとしている。北側斜面が石灰岩採掘で削り取られた山容はなかなか独特で、異様な高揚感を覚える。横瀬駅で降りる他の登山客たちも、その山容に一目やるようだ。


目的の横瀬駅には時間通り到着(8:00頃)。駅の出口すぐに御手洗がある。御手洗を済ませて外に出ると、メンバーは全員揃っていた。今回のメンバーは1年生(45期)が3人と2年生(44期)が2人。比較的小規模な山行だが、その分、和やかに気兼ねなく登山できそうだ。日帰りなので全員ザックは小さめ。自分も1週間前の大菩薩の60Lザックから35Lザックに登山用品を詰め替えこの日を迎えた。やはり35Lザックは小さくて楽だ。無鉄砲にも、この小さなザックに無理やり三脚を括り付けて丹沢を登っていた、高校時代の自分が思い返される。


天候は、予報通りの晴天。風もなく山行にはちょうど良いだろう。うっすらと高層雲が広がっているせいか、青〜明るい白色といった空模様。横瀬駅から横断歩道をひとつ渡ったところの秩父ハイヤーのタクシー乗り場へ向かう。今回、横瀬駅〜登山口(一の鳥居)間をタクシーで往復する予定だ。CLの加藤さんがタクシーを手配してくださっている、とのことでしばらく待機。その間、前方座席に誰が座るかを決めるべくジャンケンが行われ、櫻田さんがその特権を得た。前方に櫻田さん1人が乗るが、後方座席には3人乗りのところに4人乗ってしまえ、という想定である。ちょうど決め終えた頃にタクシーが到着した。トランクケースにザックを入れて後方座席に(無理やり)4人乗り込む。
乗り込んだところで、運転手が口を開いた。


「あれぇ、皆さん5人ですかぁ。4人って聞いてたもんだからなぁ。これ4人乗りのタクシーでねえ。5人乗りにしないといけないから会社に問い合わせますわ。」


おっと。そんなことがあろうか。というか、別にこのまま乗れてしまうではないか。後方座席3人のところに4人いるが、全然行けそうだぞ。


……そう思いつつも、運転手の方が5人乗りのタクシーを手配し直すとおっしゃるので、詰め詰めで乗っていた後方座席から一旦解放されてザックもおろした。数分で5人乗りのタクシーが来るという。


タクシーの予約をしてくださった加藤さんが申し訳なさそうにしているが、どうやら話によると、タクシー会社に問い合わせた時には「5人までいけます」と言われたらしく、加藤さんが悪いようには思えない。まぁ、ロングコースの山行でもないので、多少遅れてもどうにかなるだろう。そもそもタクシーで移動するのも15分程度の道のりに過ぎない。


タクシー2台目がやってきた。トランクケースのあたりが一回り大きいが、一見座席が多いようには見えない。どうやら、後部座席のさらに後ろ、トランクケースの一部が1人用の座席になっているようである。1人用の座席が備え付けられているとはいえ、この席は狭い。なので、(2台目の)運転手いわく、この狭い1人席に座るくらいなら、後方座席(本来3人のところ)に4人座るんでどうか、と。な〜んだ、これでは1台目の座り方と同じではないか。結局、1台目のときと同様、後方座席に4人で座る。


無事タクシーが走り始め、一件落着かと思った頃、運転手が事情の説明を始めた。


「(タクシーの)会社の方で人数の手違いがあった。本当はお客さんの人数はこっちが聞かなきゃならないもんで、これは会社の手違いなんで、それで迷惑をおかけし、時間も遅れたから、この料金は頂くなと、会社の方から言われておって。そいうことなので、ご承知おきください。」


こんなことをたらたらと2回くらい聞かされた。始めは、その話し口調から軽いお説教か?とも思ったが、なんと「今回のタクシー代はタダでええで」、というお話だった。どちらの手違いだということも意識していなかったので、予想外の展開に驚かされた。とはいえ、この話を聞く時の加藤さんが「はいはい」「いえいえ(なんかごめんなさい)」という言葉を繰り返すし、タクシー運転手のほうは大きめの声で「このお金は頂くなと言われているのでぇ」と繰り返すので、なんだか加藤さんが説教を受けてるかのように写り滑稽である。私もついつい笑いが漏れる。後から聞いた話だと、この時の加藤さんは必死に笑いを堪えていたという。笑いを堪える話し方がさらに笑いを呼んでいたということだろうか。


そんな我々を乗せたタクシーは、道の両側にセメント工場を望みながら一の鳥居へ向かう。道が白っぽいのは石灰の粉由来だろう。ある工場のベルトコンベアーは山をトンネルで通り隣の日高市まで伸びているらしい。櫻田さんが運転手のトリビア語りに捕まった。登山口到着までの数分で、櫻田さん(と我々)は「武甲山」「妻坂峠」の名前の由来を学んだ。ジャンケンで櫻田さんが勝ち得た特等席は、運転手のお話に相槌を打つ役目を伴っていたのだ。コミカルな車中での展開に心が和む。


一の鳥居に到着した。代金を払わずタクシーを後にする。トリビアを授けてくださった運転手さんに感謝を告げ、一の鳥居よりいざ出発(8:45)。沢沿いの緩やかな傾斜を昇る。始めは舗装された道が続いたが、このタイプの坂はあまり楽しくない。
水場を越え、橋を渡ったところで、本格的な山らしくなった。山らしくなったといっても、だいぶ歩きやすい登山道だ。休憩を取りつつテンポよく山頂に近づいていく。あまり高度のある山ではないが、そのため初心者でも登りやすく登山客はそこそこ多い。私はお菓子と食料を大量に運んできたので休憩の度にいちいち他のメンバーに「これ食べますか?」と聞く。この前の大菩薩でお菓子を配ったら喜んで貰えたため、またたくさん買ってきたのだが今回はさすがに買いすぎだったかもしれない。いちいち「食べますかぁ?」と聞く自分が少し恥ずかしくもあったが、加藤さんがハリボーを喜んでくださったのでよかった。


特に苦戦する箇所もなく、無事に武甲山山頂へ到着した(10:30)。予定より早く、良いペースだ。神社の手前のスペースで休憩している登山客が多かったので、そのエリアで我々も腰を下ろし行動食を摂った。乾物のたんぱく質を、と思って買っておいた「鮭とば」はなかなか美味しかったが、取り出すと少し匂いが残るかもしれない。この日持ち込んた第2のタンパク源「スライスサラミ」との勝負に期待だ。




休憩もそこそこに、武甲山を離れ小持山に向かう。今回は武甲山~小持山~大持山と回る周回コースを辿るが、武甲山を離れてからは人影がまばらだった。多くの登山客は武甲山のピストンなのだろうか。
小持山までの道のりは、多少の岩場があるとのことで加藤さん(と実は私も)期待を膨らませていた。しばらく下ってから、急登のエリアに入った。自分の身長サイズの岩が眼前に立ちはだかる。さぁ、どう登るか。先頭を歩く楽しさは、登り方を自分でゼロから発想出来る点にある。この時私はたまたま先頭を行かせてもらっていたので、楽しく岩場を超えた。他の人たちも楽しそうだ。「大持・小持は岩山だから気をつけろ」、とタクシーの運転手(2台目)にも言われていたが、概して、大持・小持の岩場は気をつけて登れば問題なく越えられるものだった。そう恐れるものでもないが、慎重に行かねば怪我の危険もあるだろう。今回は一貫して怪我なく岩場を楽しむことが出来た。(櫻田さんは岩場を這うよりも足でトコトコ行きたいタイプだったらしいが。)




小持山山頂(山頂着=11:50)はハエが多かったため短めの休憩で離れた。しかし私はそのあいだに第2のタンパク源「スライスサラミ」を試食。これが美味。「鮭とば」よりも食べやすく、肉肉しさがあっていい。サラミの勝利である。今後の山行にはたんぱく源としてサラミを持参しようと思う。


大持山に至る途中に展望スポットがあり最後の集合写真を撮影(12:20)。その後はそう時間もかからず大持山の山頂に着いた(12:35)。展望のない山頂でハエも多かったため、少し降りた先の丸太に腰掛け休憩を取る。下山しても2時頃に一の鳥居まで戻れてしまうだろう順調なペースだ。


音楽やスポーツ(WBC,W杯,櫻田さんがファンだという西武ライオンズ…etc.)の話をしながら下山。単調で歩きやすい道だが、他の登山客は見られない。妻坂峠を経由してまもなく一の鳥居。au回線が繋がった。ここでタクシーの予約をとり下りきる。


無事に一の鳥居に帰還した(14:20)。ほかの登山客はマイカーやらで帰っていく。しばらく待って、やってきたタクシーに乗り込んだ。今回は、トランクケースの1人席に加藤さんが座った。前方は再び櫻田さんが座ったが、今回の運転手はお静かな方だったので、話に捕まらずに済んだようだ。


横瀬駅に向かう車中、背後の武甲山にカメラを向ける。近くで見るとかなりの迫力だ。セメント工場と武甲山の組み合わせは壮観である。秩父の産業がいかに発展してきたのかよくわかる景色だ。


横瀬駅に到着後、目の前に武甲温泉行きの無料送迎バスを発見した。送迎バスの存在は認知していなかったが、せっかくなので乗り込む。他の客もあとから加わって出発。15時前に駅を出た。


ものの数分で着いた武甲温泉。なかなか綺麗で山帰りの身にはありがたい。汗を洗い流しコーヒー牛乳を頂きながらくつろぐ。私のコーヒー牛乳は櫻田さんの奢りでした。とても美味しかったです。 ありがとうございます。




だいぶゆっくりとくつろいでいたら、時刻は午後5時前。そろそろ送迎バスが駅に向けて出発するのでは、と案じ、外に出ようとしたその時、出入口の先では「うぃ~ん」という音ともにバスの扉が閉まる。行ってしまった。あちゃ〜、の空気。


まぁ、どうせ歩くつもりでいたし、ということで、歩いて横瀬駅まで戻ることにした。と、温泉を後にすると、櫻田さんが温泉の駐車場にいたおばちゃん集団に「逆ナン」され立ち止まる。歩き始めた後も、おばちゃんは歩いている我々(というより櫻田さん)のもとを通りかかると車から手を振っていた。櫻田さんはこの1日、タクシーの運転手に捕まりおばちゃんにも「逆ナン」されて大モテだ。溢れ出る「好青年」感のおかげだろうか。途中、武甲山を写真に収めながら足を進めると横瀬駅に着いていた。


午後17:30過ぎ、横瀬駅ホームにて解散した。全員怪我なく無事に山行終了。天気にも恵まれ気持ちの良い山行となった。まだ気温がそこまで高くないからということもあるだろう。


実は、丹沢や奥多摩にばかり行っていた私にとっては、今回が初・秩父だったが、日帰りにはぴったりの良い山域だと感じられた。山行を立ててくださったCL加藤さん、ありがとうございます。


ちなみに、解散後、我々1年男子(2人)は西武秩父〜秩父駅付近を観光し味噌豚丼を食べてから帰った。












さて。せっかく秩父なので、話を締めるにあたり石灰岩のロマンと武甲山の山容について
私見を述べておきたい。


まず、今回の山行では足元を見ればしばしば石灰岩・石灰石が転がっていた。乗り越える岩場にも石灰岩があっただろう。これらの石灰は、もとは現在のハワイ周辺にあった火山島が沈降したときに張り付いたサンゴ礁である。そのサンゴ礁の死骸が蓄積して地層となり、海洋プレートから大陸プレートの方に押し付けられ、はがれおち、隆起・浸食するなどして地表に現れているという。なんということか。遠い太平洋のど真ん中のサンゴが今や埼玉県の山を作っているのである。思わず石灰石を手に取る。もろい。手や爪で触っているとぼろぼろと崩れていく。この接触は秩父石灰岩との対話。いや、こうして生物を地層として積み上げ海から山に押し上げてきた、地球史や自然的なダイナミクスとの対話なのかもしれない。そんなことに思いを馳せながら足元を見まわしたり石灰石を触ったりしていた。ロマンである。(ちなみに、一の鳥居の方まで下るとチャートも見られた。下界に近づくと、凝灰岩や砂岩・チャートといったいわゆる普通の石が多いようだ。)


続いて、武甲山の山容について。武甲山は今も北側斜面で石灰石の採掘がすすめられていて、内部にはまるでアリの巣のように坑道が張り巡らされている。山肌は崩れ白い石灰岩質の地層が露になっている。開発の犠牲は大きい。山頂も昔はもう少し高かったというし、かつてあった山岳信仰の霊場や山林はこうした開発のために失われてしまった。武甲山という名称はそもそもヤマトタケルが武具を納めたという伝承からきているらしい(2台目のタクシーの運転手の話による)。そんな「神の山」を人間の論理で壊してしまってよいのか、という批判があるし、そもそも見た目上「武甲山がかわいそう」と感じる人もいるようだ。私も、武甲山に訪れるまでそのような意見を「なるほどそうだな」、と思って見ていた。


しかし、どうだろうか。実際に足を運んで自分の目で見たら、そんな武甲山が私にはかえって「かっこよく」思われてしまったのである。たしかに武甲山の山容は開発によって変化してしまったし、「かわいそう」な丸裸の姿にされ今でも削られている。しかし、白い山肌に描かれた直線的な模様は、どこか山上の牙城というか、「かっこいい」遺跡のように見えてしまったのだ。武甲山は、ラピュタの城のように「かっこいい」のである。


これはただの個人的な印象に過ぎない。開発は犠牲を伴うし、地域住民の伝統的な思想や信仰を踏みにじる形で秩父の発展が進んだことにも納得できる。成長志向一辺倒のもたらす開発の問題性にだいぶ自覚的なのだが、とはいえ武甲山がかわいそうだとは(印象としては)なぜか思えないのだ。


なぜだったのだろう。明確な理由はわからないが、一つ思い当たるのは山頂から見下ろした山麓の景色だ。山麓一帯は、白かった。石灰・セメントの工場が集積しているからである。その様子を見ると、なんだか秩父のプライドのようなものを感じてしまったのかもしれない。石灰石は日本が自給できる貴重な鉱石であり、なおかつ製鉄・セメントに必要となるとても大切な資源だ。そんな石灰石も日本中どこでも出るわけではない。あるサイトによれば、「武甲山から採れる石灰岩は、現在も関東の需要の約50%、日本全体の需要の5%を担っている」という。だから、秩父は武甲山を必要不可欠な採掘場として「誇り」に持ってきた歴史がある。


それが良いこととは断言できない。成長や開発のための犠牲を「誇り」などというまやかしで覆っても問題は解決しないからだ。しかしそもそも、私たち人間はモノを0から生み出すことはできないのである。モノは、どこかから持ってこなければいけない。にもかかわらず、モノは必要な時に必要なところにあるわけではないし、遍在しているわけではない。すなわち、モノは地域的にも時代的にも偏在しているのである。その象徴がまさに武甲山なのだろう。石灰石はどこでも取れるわけではないし、いつでも取れるわけでもない。数百年前は海底だった地層が、地殻変動を経て、今この時代にたまたま地表にあるのである。モノは偏在している。だから、必要な時は、偏在しているところから「切り出す」必要があるのだ。


現代の生活に慣れてしまった私たちはそのことを忘れているのかもしれない。資源収奪は通時性と共時性の両面で進んでいる。資源収奪を防ぐことは難しいし、たとえば武甲山の開発を今すぐ止めろと言っても問題の解決には至らないだろう。では、一度変わってしまい今も変わり続けている武甲山の山容を、まだ、そしてこれからも、人は武甲山として愛せるだろうか。


人間が人間の論理で改変してしまった山容も、愛してよいのではないだろうか、と今は思う。人間が人間の論理を反省することはもちろん大切なのだが、人間が人間の論理で改変してしまった山容を嫌って武甲山のことを忘れてしまうような日が来たらそれこそディストピアではないかと思うのだ。言わば山のアイデンティティをどこに据えるかということになるかもしれないが、山岳信仰の霊場だった神の山を、かつてのように取り戻すことはできない。しかし、変わってしまった山を、通時的に理解し愛し続けることならできるのではないだろうか。


というのも、「かっこいい」武甲山を、「かわいそう」と扱うのは、なんだかそれこそ「かわいそう」ではないかと思うのだ。山岳信仰の霊場だった時代の武甲山は、秩父の人々を見守る名峰としてやはり「かっこいい」存在だったはずだ。その時と姿は変わってしまったが、今でも別の意味で「かっこいい」ではないか。「かっこいい」武甲山を愛してあげることが、モノの偏在と収奪の暴力性を乗り越えて、人が山とつながる契機かもしれない。そしてそれこそ、かつての成長や開発の発想とは違った秩父の人々の「誇り」になるだろう。


「かわいそう」という同情は、もしかすると、何も生まないかもしれない。今の在り方を受け入れて肯定してあげてから、その先を考えたい。
「かっこいい」「誇り」の山だからこそ未来を考え直せるということもあるのではないだろうか。




胸を張って言おう。
武甲山は、かっこいい。


■感想
〇加藤 
・久々に登りごたえのあるハイクができて楽しかったです。一方で、交通や電波など事前調べに関して反省点がありました。今後Lを行うなかで改善していきます。
・@45期 入会ありがとう。皆さん健脚なので今後に期待しています!これからも雷鳥での山行を楽しんでくれたら嬉しいです。
〇櫻田
・半年ぶりの登山楽しかったです。単調な下りはメンタルと膝にきますね。
・工場と山が合体してて面白い山でした。
・登山後の長風呂は気持ちいい。
〇齋藤
ほぼ初心者なので武甲山はかなりキツいかと思い、心配していましたが、皆さんの助けもあり無事に楽しく登頂できて良かったです。ありがとうございました!
今後の山行でも皆さんとご一緒できる機会があれば嬉しいです!
〇鈴木
(記録をご覧下さい)
〇油井
2年ぶりの登山で不安はありましたが、急登を乗り越えてちょっとした岩場もクリアし、久々に登山の楽しさを味わうことができました。これからもよろしくお願いします。