2024/7/28 羅臼岳ハイク

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
羅臼岳ハイク計画書 第2版
作成者:油井
■日程 7/28(日) 日帰り 予備日7/26~30
■山域 知床
■目的 登頂
■在京責任者 清野
■在京本部設置要請日時 当日 20:00
■捜索要請日時     翌朝 08:00
■メンバー(確定・4人)
CL油井SL斉藤◯鈴木◯髙村

■集合
5:00 国設知床野営場

■交通
□行き
レンタカー 国設知床野営場→岩尾別登山口 13.4km 25分

□帰り
レンタカー 岩尾別登山口→国設知床野営場 13.4km 25分

■行程
岩尾別登山口-(1:10)-オホーツク展望-(2:30)-1ノ岩場-(0:32)-羅臼岳キャンプ指定地-(0:50)-羅臼岳-(0:50)-羅臼岳キャンプ指定地-(0:27)-1ノ岩場-(1:55)-オホーツク展望-(0:50)-岩尾別登山口
【9:14/12.7km/△1454m/▽1454m】

■エスケープルート
羅臼岳まで:引き返す
羅臼岳から:そのまま下山
※ヒグマの目撃情報を入手した際や気配を感じた時は安全確保を最優先に行動

■個人装備
【登山に使用するもの】
□ザック □ザックカバー □登山靴 □替え靴紐 □雨具 □防寒具 □帽子 □軍手/手袋 □タオル □水 □行動食 □非常食 □ゴミ袋 □ライター □ヘッドランプ □予備電池 □エマージェンシーシート □地図 □コンパス □筆記用具 □遭難対策マニュアル □計画書 □学生証 □保険証 □現金 □常備薬 □マスク □消毒用品 □日焼け止め □携帯トイレ □虫除け □熊鈴 □熊よけ笛 (□モバイルバッテリー □サングラス □トレッキングポール □サポーター/テーピングキット □コンタクト/眼鏡)
【車に置いていくもの】
□シュラフ □マット □カトラリー(フォーク、スプーン類)  □コッヘル(食器) □トイレットペーパー □着替え・温泉セット□歯ブラシ 

■地図
25000分の1:「知床五湖」「知床峠」
山と高原地図:「利尻・羅臼」

■共同装備 調整済み
【登山に使用するもの】
救急箱
・エーデルワイス:斉藤
熊撃退スプレー(BESTOM中富良野店で購入、帰る前に佐川で東京に発送)
・×4:一人1つ、ザックに横付け
【車に置いていくもの】
鍋
・月:髙村
・フライパン:油井
調理器具セット
・キャサリン:油井
ヘッド
・緑7:斉藤
・緑12:油井
カート(BESTOM中富良野店で購入、持ち帰れないので自腹)
・×2:鈴木


■電波状況
au:登山口周辺、極楽平周辺、山頂は利用可能
docomo:登山口と一部区間を除き利用可能

■遭難対策費
100円×4名=400円

■悪天時
前日18時までに判断

■施設情報
□山小屋
木下小屋:素泊まり1人3000円 0152-24-2824
□テント場
羅臼平キャンプ指定地:予約不要
□水場
・弥三吉水
・銀冷水
・岩清水
□トイレ
・木下小屋
・銀冷水の携帯トイレブース(ゴミは岩尾別登山口で回収してくれる)
□温泉
岩尾別温泉(野湯は無料で利用可能、ホテルの日帰り入浴は休止中)

■備考
□ヒグマ情報
知床情報玉手箱:1週間あたりの目撃件数を確認できる

〈ヒグマの食生活〉
5〜7月:ミズバショウを食べに水辺近くのミズバショウ群生地を利用。
6〜7月:生まれたばかりのシカを食べに、開けたササ地や草地など、シカが出産する場所に出没します。
8月:アリを食べに開けた草原、道路脇、登山道沿いのアリの巣が密集している場所に出没します。
8~9月:高山植物の実(ハイマツ、ガンコウラン、コケモモ、オオバスノキ、クロウスゴなど)を食べるため、標高の高い地域にもヒグマが現れます。登山道沿いにこれらの実がなっている場所は注意しましょう。
※知床連山登山道のアリの巣地帯
羅臼岳登山道(標高640m)と硫黄山登山道(標高400m)の岩峰付近には大量のアリの巣が発生します。クマの目撃も多い区間で、狭い登山道でクマとはち合わせする危険性があるため、注意が必要です。



□日の出日の入り(羅臼岳)
日の出 04:03 
日の入 18:48
□連絡先等
北見方面斜里警察署:0152-23-0110
ウトロ駐在所:0152-24-2010
知床自然センター:0152-24-2114
知床羅臼ビジターセンター:0153-87-2828
□過去の記録
2019年 記録

7/28 羅臼岳ハイク記録
作成者:油井
■日程 7/28(日) 日帰り 予備日7/26~30
■山域 知床
■天気 曇りのち晴れ
■メンバー
 CL油井(45) SL斉藤(45) ◯鈴木(45) ◯髙村(45)
■共同装備
【登山に使用するもの】
救急箱
・エーデルワイス:斉藤
熊撃退スプレー(BESTOM中富良野店で購入、帰る前に佐川で東京に発送)
・×2:先頭と最後尾(CLとSL)、ザックにカラビナで装着
【車に置いていくもの】
鍋
・月:髙村
・フライパン:油井
調理器具セット
・キャサリン:油井
ヘッド
・緑7:斉藤
・緑12:油井
カート(BESTOM中富良野店で購入、持ち帰れないので自腹)
・×2:鈴木


■総評
オホーツク海や知床半島、国後島の絶景を楽しめた。前を歩いていたパーティがヒグマに遭遇したようだが無事に下山できてホッとしている。知床は森も海もとにかく美しかった。
■タイムスタンプ
5:30 岩尾別登山口-8:40 羅臼岳キャンプ指定地-9:15 羅臼岳-10:40 羅臼岳キャンプ指定地-13:05 岩尾別登山口
【7:41/12.9km/△1449m/▽1445m】

■ルート概況
・7月も終わりだというのに木々は青々としていて新緑の趣があった
・弥三吉水手前で、50m先でヒグマと遭遇して停滞中のパーティーと合流し、後ろのパーティーと合わせて10人ほどで熊撃退スプレーを構え、様子を伺いながら少しずつ前進した
・最終的にヒグマの姿を見ることはなかった
・大沢に残雪はなく、快適に歩けた
・大沢を登り詰めるところにファンサの良いエゾシカが三頭いた
・羅臼平からが長かった
・山頂直下の岩場は安定してはいたが高度感があった
・山頂は風が強く、長居できなかった

■山行記(油井)
 北海道遠征5日目は朝4時前にスタートした。宿泊地の国設知床野営場のコテージはそれほど広くないものの、畳張りの2段ベッドは快眠を手伝ってくれた。顔を洗いに洗い場へ行くと排水溝にメスのクワガタがいた。ゴミの中に紛れていたので捕まえなかったが、この野営場は本当に自然の中にあると実感した。前日にはコテージの裏で数頭のエゾシカが平然と草を食んでいたのだからびっくりである。事前に買ってあった朝食を頬張り、出発の準備に取り掛かる。周りの迷惑にならないよう静かにしていようと思っていたが、ここに泊まる人は羅臼岳登山者が大半なのか4時台には多くの人が起きていたのでそこまで気を使う必要はなかった。
 旅の相棒のシエンタを走らせ、登山口である岩尾別温泉へと向かう。そういえば、知床連山縦走として計画した段階では岩尾別温泉のホテルに前泊し、夕食もつけて最後の晩餐にしようと提案して、冗談じゃないと一蹴されていた。ヒグマが世界で最も密集して生活している知床の山にこれから入るということで緊張が高まるとともに、正面に見える知床連山の美しさに期待も高まる。予報は外れ、天気は良さそうである。岩尾別登山口に着くとまだ5時なのに多くの車が停まっていて駐車場は満車。二日間誰にも会わなかった芦別岳とは大違いである。これが本来の登山口というものか。流石、日本百名山。前の車について行き、駐車場手前に路駐する。間隔を空けて停めていたが、周りの人にもうちょっと詰めた方が良いと指摘され、山側に寄せつつ間隔を詰める。笹藪に車を突っ込みながら微調整するのは難しく、かなり苦戦した。初心者マークをつけていたこともあり、みんなに見守られてなんとか駐車できた。その流れで周りの方とお話しし、どこから来たのか、前後に登る山について情報を共有する。隣の方は北海道の百名山を制覇しに遠征に来ているようで、芦別岳に登ってきましたとこちらが言っても反応は薄い。幌尻岳を除けば確実に他の北海道の百名山よりきついのに伝わっていないのは悔しい。みんなフレンドリーで多くの人と話したが、羅臼岳で出会った人たちは百名山至上主義が主流なようだった。百名山いくつ目?、と何度聞かれたことだろう。自分は百名山に選ばれなかった名山を開拓することを今年のテーマに掲げ、女峰山・芦別岳という知名度は低い名山を踏破してきただけに、山の魅力は百名山以外にもあるということを深田久弥信者には伝えたい。あまり人に歩かれていない奥山には、そこでしか得られない自然との調和の感覚があるのだ。羅臼岳で今年度8座目の百名山であるから側から見たら自分も信者なのかもしれないが、百名山が良い山なのはもはや自明である。選ばれなかった山から隠れた名山を探す楽しみがあるのである。とはいえそんなことばかり言っていると逆張り好きの山オタクだと思われるのでこの辺にしておく。
 支度を済ませ、5:30頃に入山する。登山者台帳があるので記入し、ヒグマ出没状況について掲示板で確認する。3日に1回程度のペースで複数人がヒグマを見かけるようだ。しかし、今日は日曜日。これだけ人がいればそれほど心配することはないように思えた。それに我々はあの芦別岳を踏破したのだから怖いものはない。芦別岳を登った後だと、羅臼岳の登山道は本当に歩きやすく感じ、足取りは軽い。気づけばペースは180%を超えていた。これはいけない。北海道の山ではヤマップの活動記録を取っていたので、ペースを気にしながら歩くことにする。知床の森は世界自然遺産なだけあって青々としていて美しい。もう8月になるというのにまだまだ新緑といった雰囲気である。北海道の夏の短さを実感した。歩いているとすぐに暑くなったので上着を脱ぐ。いくら高緯度とはいえ、夏は夏である。登りはそこまで不快な暑さではなかったが下山する昼頃にはかなり気温も上がっていた。30分ほどで稜線歩きが始まり、振り返ればオホーツク海が広がっている。どこまでも続く海の向こうにはシベリアがあると思うと感慨深い。随分と遠いところまで来たものである。
 弥三吉水という水場を素通りし、しばらく歩いていると前に二人の女性が立ち尽くしている。なんと50m先でヒグマに遭遇し、様子を伺うために後退してきたとのことだ。この先にヒグマがいる。一気に緊張が走る。芦別岳では低い唸り声を聞いたが、姿を見ることはなかった。しかし、今は状況が違う。ほんの数分前にヒグマに出くわした人と一緒にその現場を見つめているのである。後ろから来たパーティーにも事情を伝え、厳戒態勢に入る。幸いにも女性二人は1本ずつ撃退スプレーを持っており、こちらにも先頭と最後尾に1本ずつある。後ろのパーティーの人が持っていたかどうかは不確かだが、これだけあれば対応はできそうである。数分待ってもヒグマの気配がなかったので、スプレーを構えていつでも噴射できる体制をとり、総勢10名ほどで恐る恐る進軍する。どうせヒグマは人間が接近していることを把握しているのだから、こういう時は変に刺激しないように笛など大きな音は立てない方が良いだろうと思い、静かにしていたが、後ろのパーティーの男性は恐怖を紛らわすためなのか、生まれ持った明るさからなのか、何やら熊に呼びかけている。遭遇現場を無事通過し、そこから50mほどぞろぞろと進んだが、ヒグマの気配はない。こちらの気配に気づいて引っ込んでくれたのだろうか。お邪魔しました。知床においては我々が侵入者であるということを忘れてはならない。急遽結成された隊はこれにて解散し、またそれぞれのペースで羅臼岳を目指す。ここで前の女性二人がソロハイカー×2であることが判明する。北海道の山、ましてや知床に一人で入山するとは凄い度胸である。自分には怖くてできないだろう。
一難去ったとはいえ、ここはヒグマの密集地帯。ヒグマを警戒しながらなのでキョロキョロしながら進む。ヒグマ以上に注意しなければならないのは斜めに生えている木の枝である。ちょうど頭の高さにあり、頭上に注意しなければならないのはかなり厄介だった。雪の重みで真っ直ぐ成長することができないのだろうから仕方ない。芦別岳に比べればなんてことない、と言って我慢するが、みんな何度も頭をぶつけていた。大沢という谷まで出るとオホーツク海がよく見える。例年、7月いっぱいは雪渓となる場所であるが、今年は半ばには完全に溶けていたようでゴロゴロと岩が転がった谷間を登る。谷の奥まで進むと、そこには三頭のエゾシカがいた。草を喰み、こちらを警戒する素振りはない。登山道はエゾシカたちをぐるっと迂回するように通っているので三方向からじっくり観察することができた。上から見下ろすエゾシカは実に愛らしい。また、大沢には高山植物が多く、イワギキョウが可憐だった。
 エゾシカに別れを告げ急登を越えると、羅臼平に到着した。左手には三ツ峰、右手には羅臼岳が聳えている。羅臼岳の山頂直下は岩稜帯なのだが、羅臼平から見るとそれがよくわかる。緑の丘の上に岩の突起が付いているようで、いかにも溶岩ドームという見た目である。反対側の三ツ峰もかなり面白そうな山容で知床連山縦走への興味を掻き立てる。今回は断念したが、次に知床に来る時は硫黄山まで歩くことになるだろう。羅臼平で一息ついてから羅臼岳を目指す。ハイマツに囲まれ、視界は悪い。人もまばらなので笛を吹きまくる。無事にハイマツ帯を抜け、岩稜帯に突入する頃にはかなり疲れを感じていた。当たり前のように3時台に起き、一日中歩くか運転するかの生活を続けている訳だから疲労が溜まっているのは当然である。それでもオホーツク海から吹き上げる風を肌で感じ、可愛らしいチングルマを見ると、なんだか力が湧いてくる。気がつけば左手には国後島が見えている。デカい。それに富士山のようなシルエットの山があるではないか。雲の上に山頂付近だけ突き出しているのでよくわからないが、国後島最高峰の爺爺岳だろう。羅臼岳よりも高いらしい。各々ロシアに対する思いの丈を叫び、山頂への急登に取り付く。太平洋側から段々と雲が登ってきており、急ぎたいところだが、はやる気持ちを抑える。いわゆる岩場という岩場はなく、溶岩の上を渡っていく感じである。9時15分頃、登頂!山頂は風が強く、立っているのがやっとである。寒風に晒されているので手短に写真撮影を済ませた。山頂からは網走へと続くオホーツク海側の平野が一望でき、太平洋とオホーツク海に挟まれた知床半島の遥か先も見渡せる。まさに地の果てである。山と海が織りなす雄大な大自然を見渡す最高地点に自分自身はいた。優越感に浸るのも束の間、寒さに耐えかねて下山を開始する。登る途中に会話した人たちが続々と上がってくるので行き違いで何度も泊まる。だんだんと空が晴れてきたこともあり、その時間は写真撮影に使わせてもらった。知床半島が青い海と蒼い空に挟まれて一層際立つ。今回はピストン山行のため、来た道をひたすら戻る。下山後にどこへ行くか話し合いながら順調に下った。もはやヒグマのことなど気にも留めていなかったような、、、
 岩尾別温泉へと下山したのは13時過ぎ。行きには気づかなかったが木下小屋の前ではウサギが飼われており、こっちをじっと見つめている。駐車場ではおじさんに呼び止められ、大学名を聞かれる。東大だと答えるとおじさんの話が止まらない。疲れていたのもあって何の話だったかは全く覚えていない。ごめんなさい。下山後に岩尾別温泉の野湯に入りたかったが、他の3人はあまり興味なさそうだったので足だけ浸かってすぐに車へと戻った。その後は知床五湖で知床連山を遠望し、知床世界遺産センターで知床の自然について学習した。道の駅では高山植物のコケモモを使ったソフトクリームを食べ、夕食用に鮭のハラスを購入した。早く下山するとこういう観光ができて楽しい。札幌に住んでいたことがあり、知床は人生3回目だったが、光祐が感想に書いているように山に登って初めて知床に行ったと言えるだろう。そのうち硫黄山に行って初めて知床に行ったことになる、と言える日が来るのだろうか。その日が待ち遠しい。


■感想
CL油井
・ヒグマさん、お邪魔してすみません
・芦別岳の疲労が残っていたが、芦別岳のおかげで羅臼岳は余裕に感じられた
・オホーツク海や国後島などこの山域でしか見えないものが見えて満足
・いつか知床連山縦走やりたい
・岩尾別登山口にある野湯気持ち良かった
SL斉藤
・知床の雄大さを肌で感じることができた。山に登らずして「知床行ってきた」って言えますか? いや、言えないでしょう。
・藪がない登山道、人のいる登山道のありがたさを改めて実感。先人に日々感謝しながら登ります。
・下山後のセンターでの学習も興味深かった。環境と生物資源のレポートの題材とさせていただきました。
◯鈴木
・世界自然遺産、流石すぎる。
・エゾシカ近すぎてファンサかと思った。
・とにかく、めっちゃ綺麗だった。
・「振り返ればオホーツク海」って、なかなかない経験だと思う。
・地形性降雨と雨陰砂漠のように、羅臼側はずっと海霧に包まれ、ウトロ側はずっと晴れていた。脊梁山脈形の知床連山に対し、太平洋側から湿った風が吹いているためだ。地理を感じて脳汁。
◯髙村
・標高差1400mの山ではあるが、それが気にならないくらい道がしっかりしており登りやすくよかった。
・山頂は若干曇っていたもののオホーツク海や麓の街、おそらく爺爺岳(国後島最高峰)の頂上付近を拝むことができた。特に北方領土の存在を己の視覚を以て体感できたことは大きかった。
・羅臼平直前にいたエゾシカの集団はもちろんのこと、下山後に木下小屋で出会った飼いウサギもファンサ旺盛で非常にかわいかった。