2024/9/14 Oberrothorn
Oberrothorn計画書 第二版
作成者:油井45
■日程 9/14(土) 日帰り 予備日9/15-16
■山域 スイスアルプス
■目的 登頂、マッターホルン遥拝
■在京責任者 岩田
■在京本部設置要請日時 9/14 24:00(日本時間9/15 07:00)
■捜索要請日時 9/15 08:00(日本時間9/15 15:00)
■メンバー ( 1人)
CL 油井
■集合
8:00 Zermatt Bahnhof
■交通
https://www.matterhornparadise.ch/de
□行き
8:30/8:35 Zermatt-(Standseilbahn)-8:35/8:40 Sunnegga
往復CHF26.00(スイストラベルパスで半額になる)
□帰り
15:30/15:35 Sunnegga-(Standseilbahn)-15:35/15:40 Zermatt
※17:20が最終
■行程
https://www.alltrails.com/ar/trail/switzerland/valais/sunnegga-oberrothorn
Sunnegga-(1:00)-Blauherd-(0:20)-Stellisee-(1:30)-Furggji-(1:30)-Oberrothorn-(1:00)-Furggji-(0:45)-Blauherd-(0:40)-Sunnegga
【6:45/12.9km/↑↓1170m】
■エスケープルート
引き返す
Unterrothorn(Furggjiから30分)またはBlauherdまで/からロープウェイ利用
■個人装備
□ザック □ザックカバー □登山靴 □替え靴紐 □ヘッドランプ □予備電池 □雨具 □防寒具 □帽子 □軍手/手袋 □タオル □水 □行動食
□非常食 □ゴミ袋 □エマージェンシーシート □地図 □コンパス □筆記用具 □遭難対策マニュアル □計画書 □学生証 □保険証 □現金
□常備薬 □マスク □消毒用品 □日焼け止め □モバイルバッテリー□救急グッズ
■地図
25000分の1
■遭難対策費
100円×1名=100円
■悪天時
前日までに判断
スイス気象台
■施設情報
ロープウェイの駅(Sunnegga, Blauherd, Unterrothorn)周辺に店あり
■備考
□時差
日本の時刻-7時間(サマータイム中)
□日の出日の入り
日の出 07:07
日の入 19:41
□連絡先等
◎警察:電話117
◎救急車:電話144
◎消防署:電話118
◎在スイス日本国大使館(ベルン)
電話: (市外局番031) 300-22-22
国外からは(国番号41)31-300-22-22
◎在ジュネーブ領事事務所
電話: (市外局番022) 716-9900
国外からは(国番号41)22-716-9900
□参考
スイス国鉄
スイスハイキングについて
9/14 Oberrothornハイク記録
作成者:油井45
■日程 9/14(土) 日帰り 予備日9/15,16
■山域 スイスアルプス
■天気 晴れ
■メンバー
CL油井(45)
■総評
雷鳥とは無関係のヨーロッパ周遊に組み込んだ雷鳥スイス遠征の1日目にあたる。北岳をも上回る標高3414mの山に単独で登ることに不安はあったが、無事に山行を終えることができてホッとしている。山頂からは4000m峰の大パノラマを堪能でき、感無量である。かなり無理をしたので訪れる際は無雪期にケーブルカーを使うことを強く推奨したい。
■タイムスタンプ
6:40 Zermatt Bahnhof-(1:50)-8:30 Leisee-(1:20)-9:50
Stellisee-(1:20)-11:10 Fuggji-(1:30)-12:40 Oberrothorn-(0:35)-13:15
Fuggji-(0:25)-13:40 Blauherd-(0:20)-14:00 Sunnegga-(1:00)-15:00
Zermatt Bahnhof
【8:20/21.6km/↑↓1978m】
■ルート概況
・登山口からしばらくは樹林帯歩き
・道標が充実していてありがたいが、複数のルートがあるので要注意
・Sunnegga辺りは開けていて高原リゾート、ここから先はほぼ木がない
・マウンテンバイク用のサイクリングロードと何度か交わる
・巨大なヤギが放牧されていて怖い
・Stelliseeからの逆さマッターホルンは絶景
・所々に重機があって興醒め、未舗装の林道を歩く区間も
・Fuggjiが登山道の入口で本格的な登山道が始まる
・登山道はガレ場の中を進むがよく整備されていて歩きやすい
・標高3300m辺りからちらほら積雪あり
・山頂からは本家アルプスの絶景、どこを見ても4000m峰があるのは圧巻
・山頂付近は数cmの積雪
・麓までチャレンジコースという直登ルートを下ったが、岩場もあってやや危険だった
■山行記
朝5時、アラームの音で目を覚ます。日本だとこの時間には空が明るくなり始めるものだが、スイスの日の出は7時過ぎなのでまだまだ真っ暗である。9月までサマータイム制を導入している関係で9月半ばにもなると日本と日の長さは大して変わらないのに日の出日の入りが1時間ほど遅くなるので、時差とは関係なく時間感覚が狂う。カイロを貼り、ニット帽を被るなど最大限暖かい格好になるよう身支度を済ませ、無人の受付に鍵を置いてチェックアウトをするとVisp(フィスプ)駅に向かった。本当は登山口のあるZermatt(ツェルマット)で前泊したかったのだが、マッターホルンをどこからでも望めるこの街のホテルは随分と値が張り、少しでも安く済ませるためにZermatt行きの列車の始発駅があるVispという街に泊まっていたのだった。気温一桁の中、小走りでなんとか5:30発の始発列車に乗り込むと、物価の高いスイスに備えてオランダのスーパーで買い込んだレーズンパンを頬張る。ヨーロッパのレーズンはラム酒がよく効いており、酒に弱い人はこれだけで酔っ払いそうなものである。デザートにヨーグルトも持ってきていたのでそれを食べていると久々に検札の係員がやってきた。スイス含めドイツ語圏には改札という概念が存在せず、たまに車内で検札が行われる以外、信任乗車が基本である。今回の旅行ではユーレイルグローバルパスという都市交通と登山電車を除くヨーロッパ全域の鉄道が乗り放題の切符を使っているのでそれを見せると、検札の人は朝っぱらから随分と陽気で「Zermattに行くんだね、楽しんで」と英語で声をかけてくれた。スイス人はドイツ人よりも英語が堪能な気がする。アムステルダムからスイス入りするために使ったÖBB(オーストリア国鉄)運行のNight
Jet(夜行列車)では公用語がドイツ語だったので多少なりとも拙いドイツ語を使ったが、その他の場所ではほぼ英語しか使わなかった。
1時間ほどの乗車でZermattに到着した。太陽はまだ昇っていない。当初の計画ではこんなに朝早くZermattに行くつもりはなかったのだが、とある事情から急遽始発で行くことにしたのである。話を前夜に巻き戻そう。夕食を食べるため、Vispのスイス料理屋に入ったのだが、メイン料理はどれもCHF
30(約5000円)近くする。これに名産のワインも足したら1食6000円超えである。既にVispのスーパーで行動食などに2000円以上費やしていることもあり、痛い出費である。スイスでは3泊もするのだが、とてもじゃないがこれ以上外食はできそうにない。ならば奮発して一番のスイス料理を満喫しようと心に決めて、名物のチーズフォンデュを注文した。旅行において食にはケチらないのが自分のモットーであるが、今回ばかりはこの一食に全振りすることにせざるを得ない。そうしてチーズフォンデュを堪能したのだが、ホテルに帰り恐る恐る1日の支出を計算してみるとスイス1日目にしてユーロ圏とは比べ物にならないほど出費が嵩んでいた。翌日から倹約することに決めて、Zermatt-Sunnegga間の地下ケーブルカーの往復チケットをネットで購入してから寝ようとする。しかし、カード会社が不正利用を疑ったのか決済できない。別のカードでも試したが、e-simの設定をミスったのかワンタイムパスワードが書かれたメッセージが届かない(あとでわかったことだが、普段のsimをオンにしないと電話・メッセージは使えないらしい)。オンライン購入を諦め、現地で購入することにしようかと思った。しかしよくよく考えてみれば朝早く出ればケーブルカーを使わずとも登れるのではないか。地図でもアプリでもルートは確認済みである。場所が海外であり現地判断を最優先にすべきであることもあり、事前に在京に連絡すれば計画無視にも当たらないと判断し、少なくとも往路は徒歩でSunneggaまで登ることにした。登山口までのアクセスを変更した形なので大目に見ていただきたい。
話の舞台をZermattに戻す。駅前のモンベルを横目に、まずは日本人橋というZermattの中でも特にマッターホルンがよく見える場所を目指す。日本人観光客に感謝してこの名前が付けられたらしい。日の出前のZermattの街はアジア人だらけである。朝日を浴びるマッターホルンを眺めに皆日本人橋に向かっているようだった。スイスなのに関西弁が聞こえてくるなどベルギー・オランダで遭遇した日本人の数を一瞬にして上回ってしまった。日本人橋には人だかりができていたが、かろうじて隙間を見つけマッターホルンを眺めることができた。雲はほとんどかかっておらずこの先の予報は曇りではあるものの山頂からの展望に期待できると確信した。橋を渡って川の対岸を駅方面へ戻るように進むと登山道への入口を示す標識があった。この先も分岐の度に黄色い標識が立っており、スマホがなかったとしても目的地に辿り着けないことはなさそうだった。アルプスの樹林帯をしばらく登るとZermattの街とマッターホルンを望める展望スポットに着いた。幸いマッターホルンにはほとんど雲がかかっておらず、山頂からの景色に期待が膨らむ。この辺りから道は平坦になり、斜面を並行移動する。途中にチャレンジコースというほぼ直登コースへの分岐があったが、これは地図で見た時にケーブルカーのルートだと勘違いしていたものだった。技術的には特に難しいものではなさそうだが体力が持っていかれそうなのでスルーして緩い尾根に取り付く。ケーブルカーの始発がSunneggaに到着する前にSunnegga付近の予定していたルートに合流しようと先を急いだ。
Sunneggaが見える場所まで登り詰めると、視界が開け、辺りにはコテージが点々と広がっている。ハイキングコース沿いのものはレストランやカフェとして営業しているようである。まだ朝8時なので当然準備中であるが。それにしても今までの樹林帯から打って変わって開発された高原リゾートといった様相である。縦横無尽に砂利敷のハイキングコース、サイクリングコースが張り巡らされ、これから進む方向に木はほとんど生えていない。どこまでが開発による伐採でどこからが森林限界なのか見当もつかない。谷を挟んだ向こうにはZermattで一番有名な展望台があるGornergrat(ゴルナーグラート)が見えるが、市街地から山頂までの登山鉄道は19世紀には開業していたというからこの辺りの観光開発が如何に早くから進んでいたかがわかる。観光地化された山はどうも好きになれないが、おかげで手軽にスイスの山に登れているのだからここは堪える。Leiseeという池からはケーブルカーで登ってきた観光客の姿もちらほら見かけるようになった。水面にはマッターホルンが映って「逆さマッターホルン」が形成されており、晴れていれば絶景だっただろう。Leiseeからは緩やかな坂道が続き、少しずつ高度を上げていくと目の前にはヤギの群れ。日本でよく飼われているものより一回り大きく、角も長くて怖い。熊鈴を鳴らすと集まってくるかと警戒したが、おとなしい性格のようで道を開けてくれた。この辺りで放牧されているのだろう。しばらく歩くと今度は目の前に重機。道は工事中のようで封鎖されて通れない。想定外の事態である。引き返すことも検討したが、少し登ったところには別の道が見えていたので直登してそれに合流した。急登区間で休憩がてら振り返るとマッターホルンがこれまでで一番よく見える。誰もいなかったのでザックにスマホを固定してマッターホルンとのツーショット撮影を試みた。どんよりとした空でも世界に名を轟かす鋭峰は写真映えする。
つづら折りの急登を登りきってしばらく進むと2つ目の池、Stelliseeに到着。Leiseeと違ってマッターホルン方面が完全に開けているので逆さマッターホルンの名所である。水面には綺麗な三角錐が投影されていた。ここで撮ったワタスゲと2つのマッターホルンを写した写真がこの旅行のベストショットだったように思う。ここまでマウンテンバイク用のサイクリングロードが続いており、サイクリストと写真を撮りあった。既に標高は2500mを超えており、3時間ほどで標高差1000mを登っていたようである。その疲労のためか更に1000m登らなければならないのにここからは一気にペースを落としてしまった。長めの休みを挟みながら林道のような太さの急坂を何とか登りきる。11時過ぎ、Fuggjiという実質的な登山口にあたる場所(3000m超)に到着した。ケーブルカーとロープウェイ2本を乗り継げば標高3103mのUnterrothornに労せず辿り着けるのであるからこの登山口までは100m下るだけで行くことは物理的には可能であった。ただ雷鳥人としてそんな簡単に3000m峰に行くことは許されない。3103mといったら赤石岳よりは低いものの塩見岳より高い。苦労して登ったからこそ、山頂からの景色に感動するのである。
気を引き締めてOberrothornに向けて登山道に入る。引き続き植物は地衣類を除いてほとんど生えていないので殺風景ではあるが、ようやく観光客の入らない領域に到達したことで本来の登山を純粋に楽しむことができた。気がつくと標高3200mを超えており、自らの最高到達地点を1年振りに塗り替えた。ついに北岳より高い場所にきたのである。登山開始から5時間ほどしか経っていないので実感が湧かない。泊まり山行なら高所順応が必要なレベルだが、数時間後には下山するのだから問題はないだろう。そう言い聞かせて歩みを進める。3300mを超えると雪が出現。残雪ではなく前日に降った雪だろう。ロープウェイの運行会社が天気予報をHPに掲載していたので雪が降っていたことは把握済みではあった。9月半ばとはいえ、これほどの標高だと夏山シーズンは今週までだっただろう。軽アイゼンが必要なレベルの積雪があったら撤退を決めていたので、ここから積雪が増えないことを祈りながら慎重に進む。幸いにも雪は部分的にしか積もっておらず、問題なく通行できた。強風で雪が飛ばされたのだろうか。とはいえ疲労困憊で、YAMAPのペースでも100%を割り込む牛歩で山頂を目指す。下山中のスイス人に励まされたおかげもあり、12:35頃ついにOberrothornに登頂!山頂からは360°の大パノラマである。どこを見ても雪を被った4000m峰が見える。北には鹿島槍みたいなWeisshorn(ヴァイスホルン)4505m、東には純粋なスイス国内最高峰Dom(ドーム)4545m、南にはイタリアとの国境にあるスイス最高峰モンテ・ローザ4634m、西にはマッターホルン4478m。これほど贅沢な景色はない。山頂北側には雪がうっすら積もっており、写真を撮るために奥まで進んだのは危険だったかもしれない。ずっと見ていたい眺めだが、登りに6時間使ってしまっていたので15分ほどで山頂を後にする。
下山は順調に進み、登りと違って正面にマッターホルンが見えるので気分も揚がる。気づけば300%近くのペースで駆け降りていた。途中、休工中であったものの工事区間があり、規制線も何も張っていないボコボコどころではない大荒れの林道で冷や汗をかいたが、あっという間にBlauherdというロープウェイの乗り継ぎ地点まで到達したので帰りも文明に頼らず自分の足でZermattに向かうことにする。すぐに在京との連絡も取れたので一安心。Blauherdにはハート型のモニュメントがあり、その中にマッターホルンを収めて撮影することができた。完全に観光地化されており、パラグライダーが飛び立つのを横目に、猛スピードで下るソリのような乗り物のコースを下る。後ろから追突される恐れがあるが、道標では登山道扱いなので仕方ない。Sunneggaからは行きと違ってチャレンジコースを下ることにした。完全なる直登コースなので距離は短いが、かなりの急勾配である。小規模な岩場もあったが、ホールドとなる箇所が少なくてヨーロッパ人より手足の短い日本人にとってはかなり難しく感じられた。何とか突破するともうそこはZermattの街であった。登りに6時間かかった道のりを僅か2時間で降りることができた。標高差1800mであるから滑落したようなスピードである。とても褒められたものではないが、ひとまず無事に終えられて安堵した。時差を考えると日本は夜中だが、在京が寝る前に下山連絡を流せて良かった。
これだけ登り甲斐があるのに下界からの距離が近く、特別な装備が必要ないアルプスの山は自分が調べた限りここぐらいである。本家アルプスに登ってみたい、自分の足で登って4000m峰を眺めてみたいという方には是非ともお勧めしたい一座である。勿論、このようなハードな行程は推奨しない。行きはSunneggaまでケーブルカーを使い、帰りはBlauhardからロープウェイ、ケーブルカーを使うのが賢明な判断だろうか。ヨーロッパは金銭的になかなか気軽に行ける場所ではないが、費用を抑えようと頑張れば新幹線で函館-鹿児島を往復するのと同額で行ける。この記録を書き上げる前に韓国遠征が実現してしまったが、今後も海外遠征の系譜が続いていくことを期待したい。
最後に、今回の山行は自身初の雷鳥でのソロ山行であった。正直に言って寂しい。麓から登る人は皆無だし、登山よりサイクリングの方が人気があるのか、すれ違う人も少ない。数少ない登山客とは多少コミュニケーションをとった(現地の人は熊鈴に興味津々だった、観光地なのに鳴らしていたからだろうか?)が、普段の登山の楽しみが雷鳥メンバーあってこそだということを再認識できた。雷鳥のモットーにある「好きな人と」「好きなときに」「好きな山に」の3つは一つとして欠けてはならないのである。「好きな人」たち、今後ともよろしくお願いします。
■感想
CL油井
・自身の最高標高を更新してしまった
・みんな大好きマッターホルンは勿論、ヴァイスホルンもカッコイイ
・山は人と登るものですね
・山における観光開発の歴史・在り方について考えさせられた
・スイス物価高すぎ
・タイミングが良ければヨーロッパは往復10万円以内で行けます、みなさんも是非!