2024/9/26-27 奥穂高秋合宿
奥穂高秋合宿計画書 第3版
作成者:鈴木、佐藤、朱
■日程 9/26-27(木-金) 前泊 一泊二日予備日なし
■山域 北アルプス
■目的 登頂、紅葉
■在京責任者 斉藤
■在京本部設置要請日時 9/27 20:00
■捜索要請日時 9/28 10:00
■メンバー ( 6人)
CL 鈴木 SL 佐藤 ◯ 岩田 ◯ 朱 ◯ 吉田 ◯ 牧原
■集合
9/25 12:40 上高地
・推奨交通;
5:44 新宿 -[中央線快速]- 6:30 八王子 6:35 -[中央線]- 10:17 松本 10:45 -[松本電鉄上高地線]-
11:15 新島々 11:30 -[アルピコ交通(バス/予約不要)上高地行]- 12:35 上高地
■交通
□行き(9/25(水))
新宿→松本
・高速バス高速バスドットコム 3700-4000円 約3時間15分 予約1ヶ月前から
・特急 4070円学割適用可+2550円 約2時間30分 予約なしの当日買いでも乗車可能
・鈍行 4070円学割適用可 約5時間
松本→新島々 鉄道 710円 約30分
新島々→上高地 2550 約1時間15分
(目安・高速バス¥8000・特急¥10000・鈍行¥7000)
新宿→新島々→上高地
・高速バスさわやか信州号
パスタ新宿7:15→上高地バスターミナル12:02
14,000円、9/15時点で残り3席
★時刻表
・鈍行で新宿(5:44/6:08/6:25/8:12/8:20/5:58)→松本(10:17/11:16/12:14/12:54/13:51/15:19)
・松本(6:31/…/15:26)→(7:01/…/15:57)新島々(7:10/…/16:10)→上高地(8:15/…/17:15終)1時間に1,2本
・松本(7:15/…/14:46)→(7:49/…/15:17)新島々(8:00/…/15:30)→さわんどBTで乗り換え→上高地(9:30/…/16:50)
アルピコ交通時刻表
新島々駅始発上高地行きは予約不要
□帰り(9/27(金))
・高速バス
上高地→新宿
目安¥12,000/約5時間/予約1ヶ月前から
・鈍行+特急
上高地→新島々駅→松本駅→新宿
松本から新宿を特急あずさに課金
目安¥10,000/約4時間半/予約なしの当日買いでも乗車可能
・鈍行+鈍行
上高地→新島々駅→松本駅→新宿
¥5,000~7,000/約7時間
・鈍行+高速バス(松本から東京)
目安¥8,000/約5時間/高速バスは予約1ヶ月前から
★上高地→新島々駅は要予約(1ヶ月前~15分前) 通常運賃:1,700~3,260円
(a)「発車オーライネット」からクレジットカード支払い→電子チケット
(b)「上高地バスターミナル」乗車券販売窓口での予約・購入も可能
乗り遅れの場合、当日に限り上高地バスターミナル窓口で指定変更手続きが可能(変更手数料:100円)
★時刻表
・上高地(7:50/9:30/10:40/11:25/12:05/12:40/13:20/14:05/14:40/15:15/16:00/16:40/17:30)→新島々駅(9:22/10:53/12:07/12:48/13:27/14:06/14:45/15:25/16:04/16:43/17:22/18:00/18:41)
・新島々駅
(9:22/10:08/10:53/11:28/12:07/12:48/13:27/14:06/14:45/15:25/16:04/16:43/17:22/18:00/18:41/19:25/20:10/21:12/22:32)
→ 松本駅(9:52/10:37/11:22/11:57/12:36/13:17/13:56/14:36/15:15/15:55/16:34/17:13/17:52/18:30/19:11/19:54/20:39/21:41/23:01)
■行程案①(CT*1.1)
□1日目
<7:00上高地→13:15涸沢テント場>
上高地バス停 -0:03- 分岐 -0:02- 五千尺ホテル上高地 -0:06- 小梨平野営場 -0:06- 分岐 -0:39- 明神
-0:06- 分岐 -0:44- 分岐 -0:02- 分岐 -0:06- 徳澤園 -0:04- 分岐 -0:11- 新村橋 -0:55-
営林署避難小屋 -0:01- 横尾山荘 -0:01- 営林署避難小屋 -0:17- 標高1649m地点 -0:50- 本谷橋 -1:12-
標高2070m地点 -0:33- 分岐 -0:17- 涸沢テント場
【6:15/15.4km/1121m/318m】
□2日目
<4:00涸沢テント場→6:35穂高岳山荘→7:30奥穂高→涸沢→16:00上高地>
涸沢テント場 -0:06- 涸沢小屋 -0:39- 分岐 -0:33- 標高2671m地点 -1:17- 穂高岳山荘 -0:55-
奥穂高岳 -0:50- 穂高岳山荘 -1:06- 標高2671m地点 -0:28- 分岐 -0:33- 涸沢小屋 -0:06- 涸沢テント場
-0:11- 分岐 -0:22- 標高2070m地点 -0:55- 本谷橋 -0:44- 標高1649m地点 -0:17- 営林署避難小屋
-0:01- 横尾山荘 -0:01- 営林署避難小屋 -0:50- 新村橋 -0:11- 分岐 -0:04- 徳澤園 -0:06- 分岐
-0:02- 分岐 -0:44- 分岐 -0:06- 明神 -0:39- 分岐 -0:06- 小梨平野営場 -0:06- 五千尺ホテル上高地
-0:02- 分岐 -0:03- 上高地バス停
【12:03/19.5km/1214m/2017m】
参考ルート:
https://www.hotakadakesanso.com/climb/route-guide#advice
https://karasawa-hyutte.com/current/
https://yamap.com/model-courses/19496
https://yamatabitabi.com/archives/101843/
■行程案②(CT*1.1) 26日が晴天かつ27日が雨天の場合こちらを採用
□0日目(9/25)
<12:40上高地→15:45横尾キャンプ場>
上高地バス停 -0:03- 分岐 -0:02- 五千尺ホテル上高地 -0:06- 小梨平野営場 -0:06- 分岐 -0:39- 明神
-0:06- 分岐 -0:44- 分岐 -0:03- 徳沢ロッヂ -0:02- 分岐 -0:06- 徳澤園 -0:04- 分岐 -0:11-
新村橋 -0:55- 横尾キャンプ場
【3:07/10.0km/353m/242m】
□1日目(9/26)
<3:00横尾キャンプ場→6:10涸沢テント場→9:40奥穂高岳→12:40涸沢テント場>
横尾キャンプ場 (宿泊地) -0:17- 標高1649m地点 -0:50- 本谷橋 -1:12- 標高2070m地点 -0:33- 分岐
-0:17- 涸沢テント場 -0:06- 涸沢小屋 -0:39- 分岐 -0:33- 標高2671m地点 -1:17- 穂高岳山荘
-0:55- 奥穂高岳 -0:50- 穂高岳山荘 -1:06- 標高2671m地点 -0:28- 分岐 -0:33- 涸沢小屋 -0:06-
涸沢テント場
【9:42/9.5km/1663m/972m】
□2日目(9/27)
<3:00涸沢テント場→8:30上高地>
涸沢テント場 -0:11- 分岐 -0:22- 標高2070m地点 -0:55- 本谷橋 -0:44- 標高1649m地点 -0:17-
営林署避難小屋 -0:50- 新村橋 -0:11- 分岐 -0:04- 徳澤園 -0:06- 分岐 -0:02- 分岐 -0:44- 分岐
-0:06- 明神 -0:39- 分岐 -0:06- 小梨平野営場 -0:06- 五千尺ホテル上高地 -0:02- 分岐 -0:03-
上高地バス停
【5:28/15.3km/317m/1120m】
■行程備考
涸沢テント場〜標高2671m地点(=ザイテングラート取付)間は、北ルート(涸沢小屋経由)または南ルートを現場判断(記録2022によれば「カールを見ながら歩きたい場合は南ルートが良く、直射日光を避けて涼しく歩きたい場合は北ルートが良い」)
■エスケープルート
来た道を引き返す
雨・雷・強風時などに小屋で待機
■個人装備
□ザック □ザックカバー □シュラフ □マット □登山靴 □替え靴紐 □雨具 □防寒具 □帽子 □軍手/手袋 □タオル
□水(3Lくらい飲むものだと思いましょう) □行動食 □非常食 □ゴミ袋 □カトラリー(フォーク、スプーン類) □コッヘル(食器)
□ライター □トイレットペーパー □着替え・温泉セット □ヘッドランプ □予備電池 □エマージェンシーシート □地図 □コンパス □筆記用具
□遭難対策マニュアル □計画書 □学生証 □保険証 □現金(余裕をもって/100円玉も) □常備薬 □マスク □消毒用品 □日焼け止め
□トレッキングポール □サポーター/テーピングキット (□モバイルバッテリー □サングラス □歯ブラシ □熊鈴 □コンタクト/眼鏡
□ヘルメット)
■地図
25000分の1:「穂高岳」
山と高原地図:「38. 槍ヶ岳・穂高岳 上高地」
■注意事項
□岩場
ザイテングラート(2537m地点から穂高岳山荘間)
穂高岳山荘から奥穂高岳間:10mの鎖場→5mの梯子→10mの鎖場
https://thejapanalps.com/wp-content/uploads/2021/12/okuhotaka-dake.pdf
登山は基本的に上り優先、下りの時は登りの人との間隔を見て歩く
自分が原因で渋滞していても焦らず自分のペースで歩く
□雪
https://www.hotakadakesanso.com/climb/advice
9月末でも降雪の可能性があり、もしその場合は涸沢紅葉狩りにするなど柔軟に対応する.
□雷雨・強風
□低体温症
https://yamap.com/magazine/57282
□その他
熊: テントに食料を放置しないこと
■共同装備
□持ち出し
テント
>ステラ4 No.2;佐藤・鈴木→鈴木
>エアライズ3 No.1;岩田
なべ(竹小竹);吉田
調理用具(ディド);佐藤
救急箱(アゲハ);朱
カート2つ通年用;吉田
ヘッド
>緑1;佐藤
>緑4;吉田
ヘルメット
・CAMP(赤);牧原
・CAMP(白);朱->岩田
・Black diamond(青);佐藤
・mont-bell(ねずみ);佐藤→吉田
□引き継ぎ
ステラ4 No.2・竹小竹・ディド・アゲハ・緑1・緑4・CAMP(赤)・CAMP(白)→30日の木曽駒へ
Black diamond(青)・mont-bell(ねずみ)→1日の木曽駒へ
(救急箱・有紗:西沢渓谷・岩田→シダンゴ山・鈴木)
直接返却はエアライズ3 No.1のみ
■食当
9/25 夜:岩田 カレーライス
9/26 朝:佐藤 焼き鳥缶入り餅雑煮?
9/26 夜:牧原 ラーメン?
9/27 朝:各自 お湯は沸かす
アレルギー等:大量のきのこ
■遭難対策費
200円×6名=1200円
■悪天時
天候判断:9/24 18:00までに行う
奥穂高岳windy https://www.windy.com/36.289/137.648?35.782,137.648,8
涸沢小屋windy https://www.windy.com/36.296/137.661?35.787,137.659,8
奥穂高岳mwf https://www.mountain-forecast.com/peaks/Hotakadake/forecasts/3190
奥穂高岳scw https://supercweather.com/?lat=36.286349&lng=137.645061&model=msm&element=cp&zl=9
■施設情報
□泊地
・小梨平テント場
上高地BTから徒歩10分、受付6:00-18:00、予約不要1,500円/人
・涸沢ヒュッテ テント場 幕営予約不要2000円/人/泊、場所確保後に受付(14~17時)、素泊10,000円、飲用水無料、マット・コンパネ板をレンタル可能(先着順)、090-9002-2534
参考: https://www.chillpaine.com/entry/karasawa.tozan.route
https://karasawa-hyutte.com/root/
□小屋等
・徳沢キャンプ場 幕営予約不要1500円/人、水場ありトイレあり、0263-95-2508
・横尾山荘 テント150張 幕営予約不要2000円/人、水場ありトイレあり、素泊10,000円/人
0263-95-2421
・涸沢小屋 素泊11,500円
090-2204-1300
・穂高岳山荘 幕営2,000円/人、素泊10,000円、水200 円/1L
090-7869-0045
□温泉
上高地アルペンホテル(入浴料1,000円/バスタオルレンタル200円) 入浴時間:9:30~12:00(受付終了11:30)
上高地温泉ホテル(上高地から徒歩20分/入浴料1000円/バスタオルレンタル300円/タオル200円) 7:00~9:30, 12:30~15:30
■備考
□日の出日の入り(奥穂高岳, 9/26)
5:40 / 17:40
□電波状況
・docomo
横尾山荘〜涸沢ヒュッテは不可
涸沢ヒュッテ〜奥穂高岳は概ね繋がる
・au
横尾山荘〜涸沢、涸沢ヒュッテ〜奥穂高岳は概ね繋がる
その他区間は不可
・softbank
涸沢ヒュッテ〜奥穂高岳、上高地から徳沢園は概ね繋がる
その他区間は不可
□過去の記録
2022年 記録
2018年 計画のみ
9/26-27 奥穂高秋合宿記録
作成者:鈴木ほか
■日程 9/26-27(木-金) 前泊 一泊二日予備日なし
■山域 北アルプス
■天気 快晴
■メンバー CL鈴木(45) SL佐藤(46) ◯岩田(45) ◯朱(45) ◯吉田(45) ◯牧原(46)
■共同装備
□引き継ぎ
・ステラ4 No.2・CAMP(赤) 牧原
・竹小竹・ディド・アゲハ・緑1・緑4・CAMP(白) 朱
・Black diamond(青)・mont-bell(ねずみ) 佐藤
・救急箱(有紗) 鈴木
・エアライズ3 No.1 岩田 /→破損のため取扱検討
■総評
快晴の中、秋薫る北アルプスの絶景と憧れの涸沢テント泊を堪能することができ、充実した山行となった。特に、奥穂高岳山頂では登頂のタイミングで運よくガスが晴れ、これ以上ない大展望を目の当たりにした。秋の北アということで気温の低さや凍結の可能性も懸念していたが、結果的には全くの杞憂だった。岩稜帯も無事通過でき何よりだった。
※計画について
当初の行程案①では9/26上高地発→9/27奥穂高岳アタックを想定していたが、9/26の気象条件の方が好ましいと判断したため、9/25の前日アクセスで横尾まで移動し、9/26に奥穂高岳へアタックする行程案②に変更した。実質2泊3日という余裕ある行程となったうえ天気にも恵まれたので正しい判断だったと思う。
■タイムスタンプ
□0日目(9/25)
12:40 上高地BT - 15:40 横尾
□1日目(9/26)
3:00 横尾 - 5:40 涸沢テント場 6:25 - 8:55 穂高岳山荘 - 10:00 奥穂高岳山頂 10:40 - 11:25
穂高岳山荘 - 13:15 涸沢テント場
□2日目(9/27)
3:00 涸沢テント場 - 5:00 横尾 - 7:35 上高地BT
■ルート概況
上高地〜横尾;半分観光地で緩やか。
横尾〜涸沢;意外と急。
涸沢〜穂高岳山荘(ザイテングラート);すれ違いや落石には注意が必要。基本的な岩場・鎖場の通過能力と経験があればそこまでの難ルートではない。
穂高岳山荘〜奥穂高岳山頂;最初のはしご→鎖→はしごを超えてしまえばあとはガレ場を進むだけ。晴れていれば絶景で疲れも吹っ飛ぶが、気象条件が悪いと非常に危険だろう。
■山行記
□0日目(9/25) 岩田
中央本線で松本へ。電車の中でみんなが揃う。駅ではへいすてぃとさらごんが松本談義に花を咲かせている。自分も素敵な街だと思う。
アルピコ交通で今年二度目の上高地へ。ライブカメラに向かって手を振ったりしながら、のんびり歩き始める。土砂崩れの影響で左岸は通れなかったので、前回の表銀座のときと同じく右岸を回る。木道ですれ違う人に挨拶するが、返ってくるのは七割くらい。まだまだ下界という感じ。徳沢を過ぎてから横尾までは重機が何台も入って梓川の工事をしている。本来の流れを復元しつつ、道路を整備しているとか。八月下旬に来たときと道が変わっていたりして、工事の進捗を感じる。
到着が遅くなりすぎるのもいかがなものか、ということで途中で少しペースアップし、四時前に横尾山荘に到着した。夜はカレーライス。山で米を炊くのは初めてだったが、焦げ付くこともなく、我ながら上出来だったと思う。カレーは水を入れ過ぎてシャバシャバだったが、鍋の掃除がしやすかったということで許してもらおうと思う。
□1日目(9/26) 鈴木
アラームで目を覚ます。2:00、横尾。コンタクトが一発で入らず少々手こずるが、隣の二人に負けじとシュラフを畳みザックを外に放り出す。だいぶよく眠れたが、古びたテントにガタが来ているのを感じる。我々を除いた周りのテントは誰も起きてない模様。横尾の朝は遅いのぅ。静かにテントを畳み、食当さらごんによるプチッと鍋ベースの餅雑煮をいただく。今日の行程はここから一気に高山の世界に突入する1600mのアップ。月を見ながら横尾を後にした時刻は午前3時。
初めは僕が先頭を歩いていたが、経験を積んでもらおうということで牧原さんに交代。牧原さんのヘッドランプはとても強力な光で先頭は歩きやすそうだと勝手に推測する。自分はもうこれだけ山行に行っているので「雷鳥の山行って普通こんくらいのペースだよね」というのが感覚として根付いており、先頭を歩く時迷いはないのだが、まだ46期にはそのペースが分からないかもしれない。自分もそうだった。一年前の表銀座で健人さんからご指摘賜ったのを時々思い出す。
夜歩く怖いと感じるのには個人差があるだろうか。僕は少々怖い。かつてナイトハイクで鹿に5頭ほど遭遇したことがあり、その時に特段怖い経験をしたわけではないのだが、それ以来闇の先に何か動物でもいるのではないかと、その気配を過度に探ってしまうのだ。河原を過ぎると林に入った。牧原さんもここは怖いらしい。真っ直ぐに伸びた木々はヘッドライトの光を遮る数々の目隠しのようで、どこか不気味だ。
4時前に本谷橋に到着。ふと顔を上げると、オリオン座の下に屏風岩のシルエットが浮かび上がっていた。クライミングのメッカは夜闇の中でもその威厳を放つようだ。本谷橋以降は、ずっと一緒だった沢を離れ南西へ進路をとる。少しずつ地形や森の雰囲気が変わっている感じがする。
涸沢を目指し行進を続けていると森の向こうに強い黄色の光が見えた。あれが涸沢か.......!!。涸沢カールへの憧れから足取りも軽くなる。だんだんあたりが明るくなってきた時、ついに「涸沢」の看板が出た。周りの木々は三〜五分ほどの色づきであろうか、紅葉を迎え始めている。樹林帯を抜けるとゴロゴロとした岩場に出た。地形の変化が激しい。涸沢は伏流水が豊富だというから、このガレ場帯で伏流している水が横尾谷あたりで地上に姿を現し梓川の支流となっているのだろう。「涸沢」の名の通りだ。槍沢を上高地まで降ったことはあったが、上高地から涸沢を登ったのは初めてだ。水の行く道を自らの足跡で辿るのはなかなかに感慨深い。
涸沢のテント場に無事到着し一息つく。涸沢ヒュッテの展望台はモルゲンロートを見ようとする宿泊客でごった返している。そうこうしているうちに夜明けを迎えた。朝日に照らされる涸沢槍が美しい。この日は太陽の角度の問題で、「涸沢のモルゲンロートまさにそのもの」というような景色ではなかったが、それでも奥穂から涸沢岳の稜線が陽を浴びる様子はこれぞ涸沢の朝という風景だった。だんだん青みを増す空に心躍らせながらテントを張る。エアライズ3
No.1を組み立てていると、バキッという嫌な音がした。エアライズ3
No.1のポールが折れたようだ。ポールを通す本体の布も切れている。フライのチャックは元から壊れている。ついにこいつにガタがきたようだ。折れたポールをテーピングで応急処置するとまるで骨折患者の包帯のようになって滑稽だった。今夜はどうにかこいつで寝れそうだが、もう1泊したらいよいよヤバそうだ。
テントの設営まで時間がかかってしまった。6:25頃にテントを離れ涸沢小屋方面へ向かう。シュラフやマットなどはテントに置いてきたが、岩場では頑丈なハーネスがついている方が良いのでサブザック行動とはせず、デカザックのまま行くことにした。北ルートのガレ場に入る。思ったよりも人が少なくて安心する。本谷橋から涸沢の傾斜がそこそこあったためかこの時点での疲労度には個人差があったので、ゆっくり目のペースで進んだ。
話題はCLについて。さらごんは10月の乾徳山で初CLを控えているし、牧原さんもいつかCLをやるだろう。ここで45期でありながら唯一CL未経験の吉田に期待の視線が集まる。CLは慣れるまで大変かな。吉田は有名な山に行きたいだけだからみんなに着いてくという姿勢らしいが、白峰三山・表銀座・奥穂高岳となんだかんだ成長を重ねている気がする。いつか気が変わってCLでもやってくれればいいのに。
ザイテングラートに取り付く。ここまでは脚力が試されたが、岩場・鎖場では手が使えるのでむしろ取付点以降のほうが楽に高度を稼げる感じがする。上りの途中で涸沢岳にガスが沸き始めたのを感じる。横尾谷の方からも少しづつ霧のようなものが上がってくる。今頃奥穂高岳の山頂はガスだろうか。YAMAPを見ていた感じ、快晴の中登頂できる人はそこまで多くなさそうなので、まあ仕方ないのかもしれない。
そんなことを考えながらザイテングラートを進む。ザイテングラートとは穂高岳山荘まで続く奥穂の登山ルート上の尾根の名称。ドイツ語で「支尾根」(主要な尾根から派生している尾根)を指す。山岳用語にはドイツ語が多い。「ワンダーフォーゲル」とか「ツェルト」とか、涸沢関連だと「ヒュッテ」とか「モルゲンロート」とか「カール」とか、とりあえずドイツ語にすればなんでもかっこよく聞こえる。何も知らずに計画書に書いていた「シュラフ」、「コッヘル」、「アイゼン」あたりもドイツ語だそうだ。もはや、カタカナで響きが英語っぽくなかったら大抵ドイツ語の言葉なんだろうと思えてくる。
ザイテングラートは難所として紹介されることが多いが、整備が行き届いていて鎖やハシゴもしっかりしており、ルート自体が特別に難しいとか怖いということはない。ただ、上に穂高岳山荘があるためか下山してくる登山者がそこそこおり、すれ違いのタイミングや落石の危険には気を遣う。なお、ルート難易度としては、前回の南八ヶ岳縦走のキレットの方が今回のザイテンクラートより高いんじゃないのかという気がする(実際、後々調べたところ前者のグレーディングはD、後者はCだった)。
岩壁をトラバースすると穂高岳山荘が目に入った。立派だ。槍ヶ岳山荘と似た何かを感じる。山荘前の広場の感じだろうか。この山荘もさすが有名なだけあって登山者がたくさん出入りしているし、存在感がすごい。トイレも綺麗だった。やはり北アのトイレは綺麗なのだ(ついつい”あの”南アのトイレと比べてしまう)。
穂高岳山荘で休憩を終えると、いざ奥穂の山頂を目指す。ここからは山荘横のはしごと鎖の連続で一気に高度を上げ、その後緩やかに足で登る絶景の稜線。ここは先ほどまでガスがかかっていたはずの場所だが、、、なんと綺麗にガスが晴れている!!奇跡だ。山では時間が遅くなるほどガスって何も見えなくなるものだと思っていたが、前回の蝶ヶ岳に引き続き今回も10時を回ってから晴れ始めるという予想だにしていなかった晴れ方だ!これは蝶常念縦走と今回の奥穂高秋合宿のどちらにも参加している牧原さんのおかげに違いない。皆で晴れを祝い、牧原さんには「天気の子」の異名がついた。いつの間にか顔を出した槍の穂先も、雲ひとつかからず晴天を突いている。北アルプスの山々は後方に連なっているので、登りながらついつい何度も後ろを振り返ってしまう。圧巻の景色だ。槍ヶ岳を背に、笠ヶ岳と常念岳を横目に従えながら進む天空の登山道。自分の周り360度全てが北アからプレゼントされた大パノラマだ。ここは滑走路で、このまま自分は天に飛んでいくんじゃないかという気さえする。後ろを歩くメンバーたちを収めると最高の写真が撮れた。ぜひ来年の新歓やらホームページやらで使ってください。
ここで前方に生ジャン!生で見る岩壁ジャンダルムだ。うぉおおおおおおおこれはすごい。ピーク上に登山者のシルエットが浮かんでいる。あそこにジャンダルムの天使がいるんだろう。ジャンダルムに伸びる稜線は、ぶっちゃけ、聞いていたよりは危なくなさそうな気がした(もっと激ヤバな感じの、こりゃ死ぬぜ!みたいな場所だと思っていた)。ただ、この時はそんなふうに思ったけれど、帰ってきてちゃんとジャンダルムの登山道の写真を見ていたら激ヤバ!こりゃ死ぬぜ!と思い直しました。
10:00ごろ、ついに奥穂高岳の山頂に到着。快晴の山頂は興奮した登山客でごった返している。祠の岩場に登り集合写真をとってもらう。みんな嬉しそうにしている良い写真が撮れた。山頂はどのパーティーも写真撮影会だ。自分の他撮り撮影をお願いしまくるおじさんがいた(しかも注文が多い)。あんた自分のこと好きすぎだろ。ジャンダルムに登っていないのにジャンダルム行ってる風の他撮り写真を要求する登山者もいた。ジャンダルムはみんなの憧れだねえ。
あまりに天気が良く、景色を堪能するには絶好の機会なのでしばらくこのあたりに留まることにした。僕は山頂でよく青空をバックに足を上げて「天空のブランコ」に乗っているかのように見せる写真を撮るのが好きだ。もはやこれは僕の中では定番構図だが、元ネタというか、やっていることはネット民の「鬱クワ」と同じだ。なおこの撮影方法は撮影主を客観的に観察すると非常にバカらしくなることで有名である。僕を師匠と仰ぐさらごんに足の上げ方を教えたが完成度はまだまだなようだ。写真を見ると、ブランコというよりもむしろ岩にぶっ刺さった足に見える。いや、これはこれで面白いかもしれない。
そろそろ下山しようかという時間になり、みんなでもう一度集合写真を撮ることにした。眺望の良いガレ場の上に集まり自撮りのために思いっきり手を伸ばす。その時、岩の上に座ったさらごんが「おケツが割れそう!(元から)割れてるけどね」と呟き、牧原さんが咄嗟に「たしかに!」と返した。ここで一同爆笑。このタイミングでシャッターを切った数枚がこの山行で一番素敵な写真になった(フォトアルバムの表紙になっている写真)。やはり自然な笑顔は本当に楽しそうに見える。僕はカメラマンとして最高の瞬間にシャッターを押せた喜びを感じる。
奥穂山頂に別れを告げ、下山を開始する。先程まで山頂がガスの中だった笠ヶ岳も綺麗に見えている。なんだすっかり晴れて、登ってきた時より綺麗じゃないか。牧原さんの力は本物みたいだ。笠ヶ岳はきついという話も聞くが、ちょうど蝶ヶ岳から見るのとは逆の、「裏から」の槍穂高連峰を望むことができそうで興味が湧く。
11:20ごろ、難なく穂高岳山荘に降りてきた。僕は記念のTシャツを探しに売店へ。ネイビーの生地に「穂」と白で描かれたシャツがシンプルで、輝きを放っているように見えた。即決でこのデザインを買うことにした。
山荘でしばらく休憩した後、ザイテングラートをたどり、今度は涸沢小屋を経由しないパノラマルートの方で涸沢のテント場に降りてきた。途中、主に二つの話題で盛り上がった。曰く声が低いらしいさらごんと牧原さんは周りのキャピキャピした声の高い女子に慣れなかったり羨ましかったりするらしい。また、話す相手によって、つまり相手が身内なのかそうじゃないかで声の高さが変わるという人は意外と多いようだ。朱さんは妹と話すときにその差を感じるという。続いて、山行の事前打ち合わせの時の先輩が怖いという件について。46期にとっての先輩だからつまり私たち45期のことなのだが、真面目すぎるからだろうか、事前打ち合わせの我々は”怖い”らしい。今では先輩の人柄も分かるようになって落ち着いて参加できるが、新歓など最初のうちはだいぶ怖いみたいで、「質問ありますか〜?」と聞かれても「聞けるわけないじゃん」と思っていたという。また、事前打ち合わせの最後にやる自己紹介は特に緊張のクライマックスで、自分の名前、所属、体調、直近の山行経験をスムーズに述べられるよう事前に台本を作る46期もいたようだ。そこまでするほど緊張していたとは。でも、こと新歓に限ると我々の側も緊張しているところが大きいので、「いや、先輩も緊張してるんだって」と伝えたら少し分かってもらえた。初めてやる新歓なんて、初めて会う後輩を山に連れていくなんて、連れてく側も怖いですからね、新歓山行の事前打ち合わせは両者が緊張させあってしまっているのかもしれません。あ、ただここで思い出すのはやはり大山の新歓ハイクを担当した45期斉藤の打ち合わせは史上最高の完成度だったこと。真面目さと優しさを両立し頼り甲斐ある先輩感が溢れ出ていた。ああいう打ち合わせができるように頑張りたいですね。
そうこうしているうちにテントに到着。今日の行程中、みんなあまり行動食を食べていないような気がして少し心配になるが、テント設営を終えたさらごんは岩のうえに腰を下ろしてボリボリ行動食を始めた。ここで「ボリボリ食べやすい雰囲気」が重要であるという話になる。空気を読むひとたちはそういうことを気にするのだろう。自分は自分が食べたいときにボリボリ食べてしまうタイプなのだが、CLがボリボリ食べることはみんなが食べやすい環境を作る上で大切なのかもしれない。テント場に到着したのは13:30ごろ。ここからの予定は夕食と就寝のみなので、この何もしなくていい時間を贅沢に味わうことができる。
誰でも必ず苦手なタイプのひとっているよね、という話になった。今までの人生が恵まれすぎていて身近に苦手な人がいないという牧原さんは、せっかちで他人に厳しい東京人が怖いそうだ。これには吉田も共感。上京勢が嫌いな東京人像というものがありそうだ。改札で詰まってしまった時に舌打ちしてくるおじさんなどがそれに当たるらしい。LINEの返信が遅い人を許せないのはさらごんと僕。せっかちすぎてよくないかもですね。自分は2日3日とか返信返ってこなかったらなんなんだろうと思ってしまう(その人が山の中にいて返せなかったのなら許せるのだが)。キャピキャピ系女子が苦手だという朱さん。さっきの「声が高い女子無理」みたいな話と繋がってきそうだ。岩田と吉田はお揃いのウィンドブレーカーを着てこの話を聞いていた。
我々のテントから涸沢ヒュッテの水汲み場までは絶妙に遠く、さらごんが「水汲むの面倒臭いな」とぼやく。ここで腕相撲で負けたひとをパシる案が浮上し、そのまま全員参加の腕相撲大会に突入した。フォトアルバムには皆の全力の腕相撲対決の様子が克明に記録されている。全体勝者は岩田で、最後におまけ対決として岩田vs牧原さん・さらごん連合という1対2の決戦が持たれた(なおこれには流石の岩田も屈した)。みんなで大騒ぎしながら盛り上がる腕相撲大会なんて、何年振りだろうか。結局、水はみな自分で汲みに行っていた。
荷揚げヘリが行き来する中、時計の針は3:30を周り夕食を迎える。食当は牧原さん。棒ラーメンを作りながら、先生に怒られた経験談を話していた。さらごんは怒られるべくして怒られた経験があるようだが、牧原さんの怒られ話はなんとも不合理なものだった。鍋を囲む我々は「それは顧問の先生が悪いなあ」「牧原さんは悪くないでしょ」という声で溢れ、水泳部の顧問はその時たまたまイラついており、牧原さんを叱ったのはただの八つ当たりだった、という結論に至った。そうこうしているうちに棒ラーメンが完成し、話に夢中になって手が止まっている牧原さんから、鍋に集中していたさらごんがおたまを一瞬にして取り上げた。今回の棒ラーメンは崎陽軒の焼売いり。なんと贅沢な夕食だろうか。涸沢カールを横目に最後の夕食を楽しむ。前日から続いていた僕とさらごんの山岳しりとりは「わ」で停滞した。今晩は「わ」を考えながら寝ることとしよう。充実した1日にもお別れ。おやすみなさい。
□2日目(9/27) 佐藤
2:00起床。冷え込むと思っていたがダウンとシュラフで寒くなく、よく眠れた。地面も少々石はあるものの他のテン場とそこまで変わらない。朝は各自済ませる。今日のポケモンはジラーチでした〜(ポケモンパン)。アルファ米組はお湯を入れて5分過ぎで(本来15分)食べ始めていたが大丈夫なのだろうか…。あとで岩田さんに聞いたところによると少し固いが食べられるらしい。
3時過ぎに出発。起床から約1時間で出発できていいスタートであった。隊の後ろの方ではお米がなくても生活できるかどうかなどの話で盛り上がっているが、ゆるい下りで次第に眠くなってくる。自分は動かない頭で必死に「わ」から始まる山の地名を探していた。2日前から続く山岳しりとり(vsへいすてぃさん)の決着がまだついていないのである。鷲羽も和田峠も和名倉山も出たしな、、。これは負けるかもしれない。そんなことを考えていると先頭の吉田さんが登山道からはずれ、草むらに突っ込んだ。歩きながら眠りに落ちていたらしい。あっという間に横尾に着く。横尾からはほぼ平坦で眠気倍増だが、こなみさんが話しかけてくれたおかげで草むらに突っ込まなくて済んだ。
徳沢園に到着。早すぎてソフトクリームはやっていない。休憩し、岩田さんを先頭に進む。足長いなあ。自分は回転数をあげてついていく。松本行きバスの出発時刻が7:50、9:30だと分かる。時速4.5kmで歩けば余裕をもって7:50便に乗れるだろう。7:50を目指して猛スピードで歩き始めた。自分以外にも7:50に乗りたいメンバーはいたが、全員が全員同じモチベではないことを考慮せず突っ走ってしまった感は否めない。反省しています。へいすてぃさんからも若者の遭難は時間に縛られすぎていることが原因だと教えてもらった。書面では勉強しているのにいざ山に入ると実行できなかった。本能で突き進まないように気をつけます。
時計と距離を睨めっこしながら足を動かす。7:35にはバスターミナルに着いた。ふづきちゃんとこなみさん、吉田さんはバス待ち時間の数分でアイスクリームを食べていた。あの大きさで400円はお得だ。
温泉に寄るメンバー4人に別れを告げ、松本でステーキを食べるという岩田さんとバスに乗り込んだ。爆睡。新島々では半袖では寒くて、1ヶ月前との違いに驚いた。秋が近づいている。山の中ならレインウェアを羽織るところだが、下界に降りるとなんだか着にくいと思ってしまう。岩田さんと松本で解散し、この夏3回目の6時間鈍行列車旅へ出発。
双耳峰クイズに続き、山岳しりとりも自分の完敗。精進します。
■感想
◯CL鈴木
・この山行は発案から計画、実行までの時間が短かったですが、そんな中でメンバーの皆さんに計画書作成や諸々の準備など様々な場面でお世話になりました、ありがとうございました!
・涸沢は少しだけ紅葉していて秋を感じた。
・山頂に着いたら晴れた。強運かよ、、天気の子!!!!(映画見てないけど)
・上高地も涸沢もいいところだがやはり山屋にとったら通過点でしかないと思ってしまった
・ジャンダルムと槍穂高連峰、カッコ良すぎた
・山頂付近でいい写真をたくさん撮ることができ満足
・テントはガタがきていたが概ねよく眠れた。壊れた網戸が寝顔に落下してきた。
・山岳しりとり、僕が最後に思いついた「わ」は「若草山」でした。あんまり山屋らしくないなあ。
・足並みの揃ったスピード下山とデカザック、低い声での「こんにちは~!!」で強者感を演出し、上高地のゆる登山客・観光客のど肝を抜かすことに
・さらごん・岩田と別れた後、我々4人は沢渡のほぼ野湯みたいなところで日帰り入浴をしたあと松本の餃子の王将に行き、松本城を見学し、駅で偶然岩田と再会し、鈍行で帰りました。下山後も充実していて楽しかったです。なお、松本の餃子の王将は広くて綺麗で、ザックを置かせて貰えるので山の帰りにおすすめ。松本城の漆黒の渋さはやっぱりかっこいい。
◯SL佐藤
・突如姿を現した生ジャンダルムに興奮した。
・奥穂から槍がバッチリ見え、大先輩が今年行っていた槍穂縦走への憧れが高まる。
・記録と重複するが、最終日の下山については反省している。7:50発バスへの全員のモチベを確認せずに流れでスピード下山をしてしまった。慎重に意思決定をするべきだった。
◯岩田
・穂高に行けて大満足!
・お米が上手に炊けました。うれし
・無洗米じゃない米も、洗わなくてもどうにかなりますね
・あんまり悩まずに中辛のルーを選んでしまったが、メンバーがどれくらい辛いものが得意かよく確かめておくべきだった
・松本で行きたかったお店に行けたのでとてもよかった
・皆さんありがとうございました
◯朱
・荷物持ってくれたり、水をいただいたり、配慮ありがとうございました。登頂できて本当に良かったです。水は次はもっと余裕をもって持っていきます。全体的に終わりかけの風邪でちょっと不調気味だったと思います。
・登頂するとあとは大丈夫だろうと思えて安心すると楓月ちゃんに共感してもらえた。
・穂高岳では空が晴れ渡っていて、最高に恵まれている。
・横尾から上高地を2時間半で歩けると確かめられたのは1つの収穫だし、実は後であそこは喋らない、休憩しない、写真を撮らないと決めて2時間で歩いたという話を聞いた。でも次は喋りながら、写真撮りながらまったり歩きたいかも。
・まさかバスターミナルでお店が開いていると思わなくてソフトクリームを買ってしまったが、時間を考えるべきだった。
・素敵なメンバーたちで楽しかった。
◯吉田
・眺望を楽しみたいときにはちゃんと晴れた、心地の良い山行でした。
・北アルプスは3週間前の表銀座についで2回目でしたが、あそこがこの前行ったところだ!と繋がっていくのも面白かったです。
・ご飯が本当に美味しかったです。食当の方々に感謝。
・2泊目はあまり熟睡できず、3日目終始眠かった。どんな状況でも眠れるよう精進したい。
・3日間本当に楽しかったです。ありがとうございました。
◯牧原
・朝テントから出るまでの準備が自分は2日間とも1番遅かった。こなみさんとさらごんさんから「準備を早く無駄なくしたほうが結果的に楽」というお話を伺ったので自分も見習ってテキパキ動くようにしたい。
・食当だったのに手が止まってめちゃくちゃ任せてしまってすみません。沢山手伝って下さりありがとうございました!!
・バス発車前ギリギリでアイスを買うのはやめたほうがいいかもと感じた。
・山も温泉も餃子も松本城も…!1回の山行で色々味わえて充実した3日間だった。ずっと楽しかったです、ありがとうございました。
■おまけ〜CL談義〜(鈴木)
私が代表としてアルプスに行くのはこの山行が最後だった。代表としてCLを務めるのも最後だったかもしれない。そこで今回の記録ではおまけとして、いま感じていることを綴らせてほしい。
CLの仕事は慣れるまで大変だった。そもそも、山では考えることが多い。他の趣味やスポーツと違って、ただ単に登ればいい、やり切ればいいというだけでなく、パーティーの様子を見ながら何が安全で何が危険か正しく判断する必要があるし、リーダーとしての心遣いや未来予測も求められる。時に、度胸試しのような苦渋の決断も迫られる。
山に入る、CLを引き受ける、ということは、そこでの「どうしようもなさ」を受け入れるということでもある。本来、この世界には「どうしようもなさ」が溢れているが、日常の私たちはあまりに便利な人工物に囲まれて主体性を失ってしまっている。マルクスは生産現場での人間の疎外を論じたが、現代社会で起きているのは余暇の時間、消費現場での人間の疎外なのではないかという気さえする。そのような中で、主体性の回復と脱自の機会は山にこそある。山に入る人間は、日常から離れ自然に身を置くことにより、「どうしようもなさ」との再会を果たす。山で、私たちはどうしようもない状況を前に決断をし、自らの決断を正解にできるかとハラハラしながら、成長し、自己を塗り替えることができる。
強風、雨天、メンバーの怪我などによりエスケープを迫られた時、あなたは決断できるか。エスケープルートが実際の安全さを保証することなどないから難しい。本来のルートよりもエスケープルートの方が早く下山できるかもしれないが、そのぶん道は険しく傾斜は急だということもあるかもしれない。下調べを怠れば、エスケープルートがどんな様子かもわからない。「どうしようもない」状況は、急遽私たちに降りかかってくる。
メンバーの足取りが重い。理由は本人にもわからない。シャリバテか、高山病か、単なる足の疲労か......?足取りの重いメンバーは「自分を置いて山頂に行っておいで」と言っている。周りのメンバーは元気そうで、確かにこの1人を置いて山頂に行くことは外形的に可能ではある。しかし、本当にそんなことをして良いのか。一番遅い1人に合わせてみんなで山頂アタックは諦めるべきか。自分がその1人とともにその場に残り、看病すべきか。ただ、こうした状況での場当たり的な分隊がリスクを高めることは明らかだ。ここから下山するにしても先は長い。さあ、どうすべきか......。
「どうしようもない」状況を迎えると、もちろんCLはハラハラとする。決めたくないことを、最終的には自分が決めざるを得ない。辛いかもしれないが、それこそが本当の意味で山に入る醍醐味であると思うのだ。単に景色を楽しむとか、仲間との山での暮らしを楽しむとか、そういう表面的な体験を超えて、私たちの精神に刻まれる体験とは、チャレンジによって、特に「CLを務める」ことで可能になることが多いのではないだろうか。
CLを務めると、最終的には自分の責任で隊を担うことになる。俯瞰的な視点が必要だ。今この選択肢を選ぶとして、その場合のリスクは何か。もう一方の選択肢を選んだ場合のリスクと比べると、どちらの方が大きいか......。どうしようもなく、私たちは決断のステージに立たされる。選ばないとどうしようもない。心を決めて選択し、行動すると、何らかの結果が立ち現れてくる。これでよかったと安堵できたら何よりだが、反省を迫られることもあるかもしれない。でも、それで良いのだ。経験を繰り返していいCLになることができるし、メンバーだった場合には味わえなかった達成感が身にしみて感じられるだろう。
山中でのリスクを適切に測るには多様な「物差し」が必要だ。机上の勉強で知識を得て、山で実際の「どうしようもなさ」にぶつかる、この二つのステップを地道に踏んでいく必要がある。私もこのプロセスを繰り返して、やっとまともなCLになることができたと思う(もちろん、山屋としての実力はまだまだであるが)。例えば、「5mmの雨」「15km/hの風」などと聞いて、どのくらい詳細にイメージできるだろうか。イメージできたとして、エスケープや山行中止など、実際の判断はどうしようか。気象条件が好ましくない時、判断に当たっては、「危険な登山」と「快適でない登山」を区別することが大事だ。行程時間に雷予報が出ていたり強風が予想されたりするならそれはリスクの高い「危険な登山」だろう。一方、雷や風のない小雨なら、それは「快適でない登山」かもしれないが、少なくとも「危険な登山」には当たらない。こういう物差しを自分の中に獲得するのは、案外難しいものだ。
話を戻そう。山は他の趣味やスポーツとは大きく異なる。ただの運動ではなく、意思決定の連続であり、パーティーとしての協働であり、「どうしようもなさ」との再会である。CLを務めるは大変かもしれないが、それだけに他とは違う深さがある。46期には、ぜひ、果敢にリーダーになる経験をしてほしい。そして仲間とともに「理想的なCL像」を模索しながら、一人一人がより良いリーダーになり、雷鳥を多様なリーダーによって担われる「リーダーフル」な山岳会にしていってほしいと思う。来年、47期の後輩に雷鳥を引き継ぐ時には、きっとあなたたちも立派なリーダーになっているはずだ。