2024/11/8-9 丹沢主稜縦走

山岳愛好会雷鳥(東京大学・お茶の水女子大学公認サークル)
丹沢縦走計画書 第一版
作成者:朝倉
■日程 11/8-9(金-土) 予備日 11/9-10(土-日)
■山域 丹沢山塊
■目的 丹沢履修、体力養成、紅葉
■在京責任者 山道
■在京本部設置要請日時 11/9 19:00
■捜索要請日時     11/10 9:00
■メンバー(確定4人)
CL朝倉
SL油井
◯高村
◯江川

■集合
渋沢駅17:58(14:48)のバスに間に合うように
※テン泊にした理由:
・睡眠時間の確保
・車回収の必要性が無くなり実質の終バスが遅くなる

■交通
□行き
(...17:26,17:58,...)渋沢駅発(...17:41,18:13…)大倉着:バス渋02
(土)(...14:18,14:48,...)渋沢駅発(...14:33,15:03,...)大倉着:バス渋02

□帰り
(...15:40,17:05,19:00)西丹沢ビジターセンター発(...16:49,18:14,20:09)新松田駅着:バス松62
(17:06,...18:27,...20:27,...)新松田駅発(18:23,...19:43,...21:44,...)新宿駅着:小田急線快速急行
参考
焼山登山口発(...16:36,...)三ツ木着(...16:54,...):バス三56

■行程(YAMAP*1.0)
【1日目】(1:14, 2.1km, △327m)
(18:30(15:20))大倉バス停-1:14-大倉高原テントサイト(20:00(17:00)就寝(目標))
【2日目】(12:49, 19.3km, △2293m▽2350m)
(3:30)大倉高原テントサイト-0:10-見晴茶屋-1:19-堀山の家-1:25-金冷シ-0:25-塔ノ岳-1:21-丹沢山-0:51-不動ノ峰-1:05-蛭ヶ岳-1:50-神ノ川乗越-1:30-檜洞丸-2:00-ゴーラ沢出合-0:53-西丹沢ビジターセンター
※体力とモチベーションに応じて丹沢山までのピストンに変更
※臼ヶ岳は体力と時間に相談
参考:蛭ヶ岳〜焼山登山口(5:23)
蛭ヶ岳-1:30-姫次-0:45-黍殻山避難小屋-1:09-焼山分岐-2:00-焼山登山口
【目標出発時刻(西丹沢17:05発にギリギリ乗れるペース)】
塔ノ岳7:00、丹沢山9:00、蛭ヶ岳10:20、檜洞丸13:40、西丹沢VC16:30
※丹沢山に11:00までに到達できない場合は終バスに間に合う確度が下がるのでエスケープ
■エスケープルート
丹沢山(不動ノ峰)まで:引き返す
(※丹沢山(不動ノ峰)〜蛭ヶ岳:焼山登山口に降りる)
丹沢山(不動ノ峰)〜西丹沢:そのまま進む
※雨によりゴーラ沢出合の増水が予想される場合

■注意
・蛭ヶ岳〜檜洞丸は道悪くアップダウン多い
・鬼ヶ岩ノ頭の鎖場
・エスケープルート(ほぼ)なし、一応蛭ヶ岳から焼山登山口に降りるルートがある
・昼が短い
・行動時間13時間、疲労、時間がどれだけ伸びるか
・ゴーラ沢の増水

■個人装備
□ザック □ザックカバー □シュラフ □マット □登山靴 □替え靴紐 □雨具 □防寒具 □帽子 □軍手/手袋 □タオル □水 □ライター □カトラリー(フォーク、スプーン類)□行動食 □非常食 □ゴミ袋 □ヘッドランプ □予備電池 □エマージェンシーシート □地図 □コンパス □筆記用具 □遭難対策マニュアル □計画書 □学生証 □保険証 □現金 □常備薬 □マスク □消毒用品 □日焼け止め (□モバイルバッテリー □サングラス □歯ブラシ □トレッキングポール □サポーター/テーピングキット □保温系インナー □ネックウォーマー □ホッカイロ □ニット帽 □熊鈴 □コンタクト/眼鏡◻︎ヘルメット  □コッヘル(食器)  □トイレットペーパー □着替え・温泉セット)

■食事
夜:道中各自で食べて来る
朝:各自で用意する(お湯沸かす:油井が持参)

■地図
25000分の1:「秦野」「大山」「中川」
山と高原地図:「31丹沢」

■共同装備 調整済み
テント(エアライズ4No.2):(佐藤→)朝倉
なべ*1(梅):江川
ヘッド*1(緑7):髙村
カート*1:髙村
救急箱(苺):油井→朝倉

■遭難対策費
200円×4名=800円

■悪天時
前日12:00までに判断

■施設情報
□山小屋
◯尊仏山荘070-2796-5270
 ・水場あり、弁当1000円、売店あり
◯みやま山荘090-2624-7229
 ・カレーライスあり、弁当1200円、売店あり
◯蛭ヶ岳山荘090-2252-3203
 ・ひるカレーは1000円で10:30~13:30に提供、売店あり
◯青ヶ岳山荘09054382574
 ・カレーライス1100円、弁当1000円、売店あり
□避難小屋
・不動ノ峰休憩舎
□水場
・大倉高原テントサイト(要煮沸)、尊仏山荘、不動ノ峰休憩所
□トイレ
・大倉高原テントサイト、花立山荘、尊仏山荘(小のみ)、みやま山荘、青ヶ岳山荘、西丹沢VCにあり
□温泉
ぶなの湯0465783090:10時~19時、2時間750円
信玄館0465783811:11時半~17時、1000円

■備考
□日の出日の入り(11/2)
日の出 5:59
日の入 16:55
□電波状況
au以外は繋がりそう
□連絡先等
◯秦野警察署
 ・(0463)83-0110
◯松田警察署
 ・(0465)82-0110
◯西丹沢ビジターセンター
 ・TEL: 0465-78-3940
 ・〒258-0201 神奈川県足柄上郡山北町中川867

丹沢主稜縦走記録
■日程
2024/11/8-9(金-土)
■山域
丹沢山塊
■天気
1日目 晴れ
2日目 晴れのち曇り
■メンバー
CL朝倉(44) SL油井(45) 高村(45) 江川(46)

■共同装備使用記録(持ち出し→持ち帰り)
救急箱(苺):油井→朝倉(三つ峠へ)
テント(エアライズ4 No.2):(金峯瑞牆から)朝倉→油井
鍋(梅・小梅):江川→江川
ヘッド(緑7):高村→高村
カート*1:高村→高村
熊撃退スプレー(イワウベツ):油井→髙村

■タイムスタンプ
1日目【2.2km △325m▽7m 計0:57】
18:16大倉バス停
18:31大倉登山口
19:13大倉高原テントサイト

2日目【20.1km △2222m▽2282m 計13:12】
3:18大倉高原テントサイト
5:57塔ノ岳(目標7:00)
7:24丹沢山(目標8:20)
9:27蛭ヶ岳(目標10:20)
13:07青ヶ岳山荘
13:25檜洞丸(目標13:40)
15:51ゴーラ沢出合
16:30西丹沢ビジターセンター(目標16:30)

■ルート概況(文責:朝倉)
◻︎総括
・総長20km、獲得標高2200m、行動時間13hrsという1日としては長い行程を含む本山行であるが、登山道自体にはあまり変化がなく2~3時間に一度長めの休憩を取って淡々と歩けばYAMAP*1ほどのペースに落ち着く内容だった
・ただし、十分な水分・エネルギー補給と定期的に山で7~8時間程度歩く体力が前提であり、何かしらの厳密な方法で時間管理を図るのはマストである
・比較的アップダウンの多い蛭〜檜を前半に回してバスが豊富な大倉に下りる方が良いという考えもあると思われるが、表丹沢から段々と山が深まっていく高揚感、丹沢でテントを張るという非日常を味わえるこのコースは丹沢への親しみが薄い人間には魅力的なものに映るかもしれない
◻︎大倉〜大倉高原テントサイト
・10分ほど車道を歩いた後登山道に入るがよく整備されており特に歩きにくい箇所はない、テントサイト方面との分岐も看板があり分かりやすい
・夜6時半ごろはまだ下山者がいるため前から来る光をよく見るべし
・ナイトハイクだったのでヘッデンを民家に向けないなどの配慮が必要
◻︎大倉高原テントサイト〜塔ノ岳
・いわゆる「バカ尾根」だがこちらも階段が整備されており技能が要求されるわけではなくペースさえ見誤らなければ難儀しない
・小屋や山荘が多いので2つおきに足を止めるなどして休憩のタイミングを取りやすい
・午前6時の山頂は日の出を見るための人でかなりの人口密度だった
◻︎塔ノ岳〜丹沢山
・人がグッと減り眺望も開けるので静かで綺麗な山歩きが始まる、前方には常に丹沢山が見える
・道は主に木道で大倉尾根と比較してもかなり整備されている
・早朝の木道は霜が降ったり凍結しており滑りやすい、特に風通しが良い木橋は転倒に注意が必要だった
◻︎丹沢山〜蛭ヶ岳
・丹沢主稜と丹沢主脈の重複部で、大倉から来る場合はこの辺りで引き返すことも多くさらに人が減りいよいよ縦走が始まるという空気感
・低木が減り常に不動ノ峰のあたりまで見通せるのでとにかく気持ちが良い、逆に言えば蛭ヶ岳は峰に隠れて見えないので少し辛い
・一部鎖もあるが専ら転落防止程度のもの、あまり意味はない
・不動ノ峰の休憩所は2023年竣工でかなり綺麗だが宿泊はできず、室内に登山ノートがある、読めるし書ける
◻︎蛭ヶ岳〜檜洞丸
・山頂から見えるあまりに深い峠を見て泣く
・またさらに人が減り、あからさまに踏み跡が薄い悪道が増えるが、新しい木道が整備されている部分も多い、丹沢〜蛭ヶ岳と比べると低木が多く眺望も少ない上アップダウンが激しいため精神に障る
・檜洞丸方面へ抜けた直後からは急激な下りで、場所により尻を先にして下りることもある、薮や倒木も相まって荷物が多いとかなりペースを落とされる、鎖・ハシゴはあるが杭が抜けていたり古いハシゴが放置されていたりしているので無論信頼しすぎてはいけない
・痩せ尾根が続きミカゲ沢ノ頭付近にいくつか崩落箇所があるが全て巻き道などが整備されているので危険は感じなかった
・臼ヶ岳は主稜との分岐点に道標があるが一般登山道は無く、山頂は植生保護のために封鎖されている、あまり奥へ入らないのが吉か
◻︎檜洞丸〜西丹沢
・傾斜はあまり無く登り返しもほぼ無いので下りやすい部類に入る
・ゴーラ沢出合は渡渉箇所が二つありあまり明瞭でないので道迷いに注意されたいが結構親切な看板があるのでよく読まれたい

■総評(文責:朝倉)
あまりトレーニング的な意味合いではなく、丹沢の名峰を一日でたくさん登ろうというコンセプトの下で遂行されたのだが、結果的にはタフな行程となり、それと同時に丹沢の持つ色々な顔を垣間見ることもできたので、ある意味で贅沢な山行となった。一方で食料・水分の量、疲労などの課題も多くあり(各自の感想参考)、各々が反省すべき点は反省をし、今後長時間山行を行う上で生かされる知見を得た山行でもあった。

■記録
◻1日目(文責:油井)
 週に1コマだけの駒場開講の授業に向けて家を出るが今日はいつもと違う。泊まり装備を背負い、靴も登山靴と、とてもじゃないが授業を受けに行く格好ではない。大学に登山装備で乗り込むのは初めてだ。山に入るのはまだまだ先だが、朝から気分が高揚していた。
 授業を終え、所用を済ませてから小田急線に乗り込む。同じく2限で終了していた江川とは電車内で合流する予定だったが、学生の帰宅ラッシュに被ったため、町田までバラバラになってしまった。あっという間に渋沢駅に到着すると、早めの晩飯の時間だ。渋沢駅付近には飲食店がそれほど多いわけではないので、中華料理屋と唐揚げ屋の二択となり、ガッツリ食べようということで後者を選んだ。鶏笑という店で全国チェーン店のようだが、初めてだった。次期東大代表に立候補している江川と今後の雷鳥について話しながら唐揚げ定食を食べ、満腹の状態で渋沢駅へと戻る。
 既に残り2人のメンバーも到着しており、歯磨きなど寝る準備を済ませてからバス停前で合流した。これから入山するということが信じがたい。金曜前泊の山行は何度か経験しているが、金曜それも18時台に登り始めることは完全に非日常である。ワクワクしながら大倉行きの神奈中バスに乗り込んだ。車内には自分たちを除いて数人しか乗っていない。この辺りは秦野・厚木だけでなく東京への通勤圏でもあるから帰宅ラッシュでバスが混むのはもう少し後のことなのだろう。20分ほどで大倉に到着し、運賃はたったの250円。良心的な価格だ。入山前の準備をしているとヘッデンをつけたソロ登山者が数名現れた。今から入山するのか、それとも今下山してきたところなのかはよくわからない。意外とこの時間でも山に出入りする人がいることに驚いた。
 CLを先頭に大倉高原テントサイトを目指す。この山行を通じて自分は終始最後尾を歩いたが、久々にゆっくり後ろから付いていくことができた気がする。車道歩きの区間はそれほど長くなく、すぐに真っ暗闇の山中へとわけ行っていく。かなりのハイペースで進んだが、1時間で寝床へと着くのだから疲労も気にならない。それにバカ尾根と呼ばれる大倉尾根も塔ノ岳へのメインルートであるから非常によく整備されていて大変歩きやすい。ここ最近行った山が裏越後三山・和名倉山であったから余計に人の手が入った登山道のありがたみを感じる。山中では突然目の前に光が現れたかと思うと何人ものトレラン勢とすれ違った。こんな時間にまで走っているということは地元民なのだろうか。日常的に塔ノ岳に登っていればどれだけ強靭な肉体が手に入ることだろう。
 短絡ルートと大倉高原周りのルートの分岐を過ぎてからは熊鈴を外し、会話も控えめにして先客の迷惑にならないように注意した。晩秋の19時台にテント場に着くのは普通にマナー違反であるが、平日の夜かつそれなりに広いテント場ということでギリ許される範囲であろうか。「丹沢の門」を通過して大観望へ至るとそこからは県央・県西地域の夜景を堪能できた。秦野・平塚・小田原辺りの都市を何となく把握することができたが、あまりに暗くてナイトモードでも鮮明な自撮り写真を撮ることはできなかったのは残念である。そこからテントサイトはすぐ近くで、どうやら先客は2張だけのようである。明かりも見えるのでまだ寝ていないらしく、助かった。朝早く出るということもあり、迷惑にならないよう他のテントからは距離を取り、ウッドデッキ脇を幕営地に定める。速やかにテントを設営し、19時半には就寝準備が整った。トイレはチップ100円が必要だが、テント場使用料が無料なのは随分と太っ腹である。翌朝は2時半起床、3時15分出発を目指すことに決め、丹沢で初めての一夜を過ごした。


◻2日目(文責:江川)
2時半にアラームの音が鳴る。予定では昨日の夜は20:00に就寝の予定だったが、19:30に床に就くことができたので、ちょっと得した気分だった。
今回の山行に参加した4人の中では、私が一番テント泊経験が浅い。とにかく早く出発したかったから、皆さんの足を引っ張らないようになるべく出発の準備を手早くしなければならない。ヘッデンを見つけるのに少し手間取ってしまったが、その分寝袋とマットを素早くたたんで、衣服を調整してテントの外に出る。ここまで大体6分くらい、自己記録更新かな。

低山とはいえさすがに11月だ。テントの外はなかなかに寒い。テントをみんなでたたんだ後、私はお湯が沸くまでの間に自分の用意を進めていたのだが、私が自分のことで精一杯にになっている間になんと油井さんが私のカップ麺にお湯を入れるところまでやってくださっていた。時間との戦いの中で他のメンバーのことまで気を回せる先輩を改めて尊敬しなおした。みんなでパッと朝食を摂って、テント場を後にする。起床から出発まで約45分でまさに計画通り。朝の支度がのんびりだった初夏の自分の成長を考えると感慨深いものがある。

今日の行程はおよそ13時間ということで、半日後の自分がどういう状況か全く想像もつかないわけだが、とにかく一歩一歩確実に前に進むしかない。周囲は真っ暗で、ヘッデンのライトだけが頼りだ。そして私のヘッデンは電池切れ寸前で時折点滅し出しており、シンプルに準備不足である(結局電池を交換せずになんとか耐えはしたが)。しかもコースの序盤である表丹沢の大倉尾根は「バカ尾根」という愛称で呼ばれる程バカきついとされているらしい。ただ、周りが暗くてまだ頭もぼんやりしているということもあって、なんだかんだかなりの早いペースで登りきれてしまった。特に、定期的に後ろを振り返った時に見える神奈川県を一望する夜景がとにかく美しく、この景色を眺めては活力としていた。塔ノ岳への到着は目標時刻より1時間早く、振り返ってみればここで作り出せた余裕のおかげでなんとか予定通りに山行をやり遂げることができたと言っても過言ではない。

塔ノ岳の山頂には尊仏山荘が立地していて、到着したのがちょうど日の出の直前だったからかたくさんの人で溢れていた。みんなで写真をとったり日の出を眺めたりと、なかなかに満喫できた。個人的には以前塔ノ岳に来た時には山頂が雲の中になってしまって一面真っ白だったため、絶景と言われる塔ノ岳からの景色をリベンジで見れただけで来た甲斐があったように感じた。

塔ノ岳を出発すると、次の主要ピークは丹沢山だ。塔ノ岳から丹沢山の間もかなり人の手で整備された稜線で、足場は綺麗に維持された板が並べられている区間も長い。塔ノ岳山頂で我々が写真をとってあげたヨーロッパ人の男性二人組は我々と同時に出発したはずなのにグングンと進んで後ろ姿が見えなくなってしまった。現在の雷鳥は全員が心地よく山に登れるペースを維持することを大事にしているが、一方でハイスピードで駆け抜ける山人に憧れる気持ちは私にもある。とはいえ、他の登山者と違って今日は合計13時間超えの長丁場だから無理は禁物。先頭を務める朝倉さんが維持する着実なペースで快適に歩みを進めるのが一番だ。

丹沢山の山頂では関西から来たというシニアの10人くらいの団体と一緒になった。尊仏山荘で一泊して丹沢山まで来たそうだ。丹沢は東京に住む私たちにとっては気軽に行ける山であり、実際おそらく今回が私がこれまで雷鳥で参加した中で一番出費が少ない山行だ。山にはいろんな人が集まるのだと実感する。ちなみに丹沢山山頂の看板にはここが日本百名山の一座だと書かれていたが、どうやら深田久弥が指定した「丹沢山」がどのピークのことなのかは判然としないらしい。私は最高峰の蛭ヶ岳なんじゃないかと思う。そんな感想はさておき、団体の皆さんとお互いに集合写真を撮影しあったのち、団体がここで折り返していったのを見届けて私たちは蛭ヶ岳方面に進んだ。

さて、今回の山行で私が一番気をつけたのはとにかくエネルギー不足、いわゆる「シャリバテ」に陥らないことである。これまで行動食を用意する際にエネルギーまであまり意識していなかったのだが、丹沢縦走にあたって改めて調べてみると、私の体重(約70kg)だと1時間歩く度におにぎり一つ分のエネルギーを摂取するのがちょうどいいらしい。丹沢山から蛭ヶ岳までもなかなかに距離があるので、空腹になる前に食事休憩をとっていただく形で進んでいった。今回計算通り用意した行動食は自分でも少し多すぎたかと感じていたのだが、結果として下山時に少し残るという理想的な量だった。これは今回の山行の一番の教訓になった。

話を丹沢主脈に戻そう。丹沢山を超えると平野部の広い景色は見えなくなり、自然の中を歩く感じになる(足元は依然としてかなり整備されているが)。それもそのはずで、この辺りがちょうど丹沢の中心部だからだ。途中からひたすら見通しの良い稜線を歩き続けるルートになったのだが、丘陵帯がはるか先まで続く景色はここが東京から数十kmの位置にあることを忘れさせる。途中に完成して一年だという不動ノ峰休憩所の日誌に書き置きを残しつつ、順調なペースで蛭ヶ岳まで歩ききることができた。

蛭ヶ岳はそのこんもりとした柔らかい山体が特徴だが、頂上からの景色も美しい。ここまでくると北や西の方向に北関東の山や南アルプスなども望むことができる。蛭ヶ岳では少し長めに休みをとることにしたので、油井さんに山座同定をしてもらいながら過ごした。私も試したが、実際に登った山はまだしも、残念ながらそれ以外はほとんどわからなかった。これからもいろんな山に登りたいとモチベを高める良い機会になったと思うこととしよう。

当初からの想定でも蛭ヶ岳までは序の口で、ここから登山道が少しずつ歩きにくくなって大変になってくるという。実際、蛭ヶ岳の山頂から檜洞丸に向かう方面には黄色く目立つ「注意! この先上級コース」の看板がいくつも立っていて、過去に何人もの登山者がやらかしたんだろうということが想像される。我々も「ここを登山口と思おう!」などと軽口を叩きながら気を引き締め直し、進み始めた。

確かに、大倉尾根〜蛭ヶ岳までの整備された登山道と比べると、蛭ヶ岳〜檜洞丸は歩きづらい道が続く。蛭ヶ岳出発後5分くらいすると茂みの中をかき分けるように進むゾーンに突入したが、とにかく登山道を埋め尽くす植物がチクチクと肌を刺してくるので痛い。私は耐えきれずに軍手を取り出して上着も来たが、真夏だったら暑さか痛みかの究極の二択を選びかねていたことだろう。また、1箇所油断できない鎖場もあった。3点支持さえすればなんてことはないが、慣れていないと面食らうだろう。

ただ、20~30分も歩き続けると、これといった難所はなくなり、秋めいた道をひたすら進み続ける形になった。この辺になってくると少しずつ身体への疲労の蓄積を感じはじめ、朝からしっかりと行動食を摂りながら進んできた自分に感謝するようになった。相変わらず尾根道を進むわけだが、まだ緑の葉をつける木、紅葉している木、すでに枯れた木が混在していて歩いていて面白かった。近所の裏山のようだと言っている人もいたが、素晴らしい裏山をお持ちだと思う。ぜひ大事に守っていただきたい。また、この区間の特徴は常に檜洞丸が先の方に見えていることだ。やはりゴールなりチェックポイントが見えているというのは気が楽になるもので、これも結構大事なことだと思う。

そういうわけで、先輩たち(主に油井さん)とお喋りしながら一定のペースで歩き続けていると、気づけば檜洞丸に到着していた。理想ペースよりは遅かったが、バカ尾根で作った時間の余裕はまだ使い切っていなかったし、何よりこれ以上早いと普通に自分もしんどかったので良いペースだったと思う。

檜洞丸は別名青ヶ岳というらしく、山頂の少し手前に青ヶ岳が位置した。一行はここでトイレに寄ったのだが、この山荘には「このベンチは利用者専用です。座る人は注文するか100円払ってください」と書かれたベンチがあった。私は「トイレには喜んで100円出すけど、誰がベンチに金を払うか」と反発して意地でもベンチに近づくまいと決めたが、少し疲れた様子の髙村さんはむしろ100円払った上でベンチに寝転がって対価を満喫していた。私もそれでほっこりして、山の上でしたたかに商売する山荘のことも許せてしまった。

檜洞丸にはあまり長く滞在せず、すぐに出発した。相変わらず尾根を歩く形だが、樹林帯の中を進む形になる。メインのピークはもう全て通過していて、あとは下りしかない。縦走ではない一つを山頂を目指す山行では、山頂をすぎて「下山」がはじまると消化試合みたいな気持ちになってしまってあまり楽しくないが、縦走だと登山口まで辿り着けるまで集中力が途切れないので私は好きだ。増水すると渡れなくなってしまう「ゴーラ沢出合」も問題なく通過し、そのまま大きな問題なくクリアできた。ちなみに登山口の少し手前にびっくりするくらいわかりづらい看板があって、むしろ看板が遭難リスクを高めているように感じた。ぜひ写真フォルダで見てみてほしい。

帰りは西丹沢ビジターセンターからバスに乗り、節約のため谷峨駅で御殿場線に乗り換えて新松田の駅まで向かう形をとった。夕食は新松田駅の付近でお店に入ったが、ここまできてやっと丹沢縦走の長い行程を歩き切ったんだと実感できた。あと、自分も早くハタチになりたいなと思った。

■感想
◯朝倉
・構想時は正直無茶だと思ってましたが意外と行けました、やってみるものです
・丹沢山より奥へ足を踏み入れずして丹沢は語れないと思いました
・丹沢基礎、単位認定?
・水を2Lしか持って来なかったので危うく枯渇しそうになった、削るのは水よりも衣類だったと後から猛省、江川くん偉すぎます
・目標とする下山時刻に合わせるにはどういった休憩配分を行うべきか、いかに歩行ペースを保つか、どのような遅延要因を想定するべきか等、十分に考えが及んでいたとは言えないことも多く、今後の精進に繋げていきたいと感じた
◯油井
・行動食を普段の2割増し程度しか持って行かず、非常食に手をつけてしまったので猛省、消費カロリーに応じた量の行動食を持っていくようにします
・蛭ヶ岳にて奥秩父の山座同定を試みたが激ムズ、来シーズンまでの宿題ですね
・上級者向けと書かれた蛭ヶ岳-檜洞丸は蛭ヶ岳直下以外特に大変なところはなかった
・臼ヶ岳辺りから振り返って見た蛭ヶ岳が好き
・久々の電車アクセス登山だったがその利点を最大限活かせたと思う(松田の若松食堂おすすめです、日曜休業らしいから西丹沢は土曜に行きましょう)
・西丹沢VC-新松田の移動は御殿場線(谷峨-松田)を挟むと片道300円節約できるというライフハックを習得した
◯高村
・主脈線、主稜線をほぼ1日で一気に歩き切るコースで、1日に獲得した累計標高の自己ベストを更新
・水、行動食の量は問題なかったが、よりによって蛭ヶ岳周辺で脚を痛め、メンバーには迷惑をかけてしまった 歩き方が良くなかった気がするので猛省 体力も心許なかったので、10月の山行に参加すべきだった
・蛭ヶ岳、名前の割に綺麗な山容で好きになった(おそらく山名は山容に由来してないのだろうが)
・神奈川、東京の街とところどころ色付いている木々を見ながら縦走できたので、不思議と飽きは来なかった
◯江川
・体力が不安だったが、ストックの活用と十分な量の食料・水の持参でなんとか乗り切れた
・景色が次々と変わっていくし、終始話しながら登山できたので、途中で飽きることはなかった
・ここまで来たらもっと厳しい日帰りハイクに挑戦してみたい
・丹沢主脈と丹沢主稜、結局どっちがどっちかまだ覚えられてない...