2025/1/4-5 笹尾根縦走

笹尾根縦走計画書 第二版
作成者:油井
■日程  1/4-5(土-日) 一泊二日 予備日なし
■山域 奥多摩
■目的 笹尾根踏破、高尾山登頂
■在京責任者 岩田
■在京本部設置要請日時 1/5 23:30
■捜索要請日時     1/6 08:00


■メンバー  ( 5人)
 CL 油井 SL 江川  ◯ 朝倉 ◯ 朱 ◯ 斉藤

■集合
10:00 奥多摩駅前


■交通
□行き
08:11 新宿
↓JR中央・青梅線
09:12/09:14 青梅
↓JR青梅線
09:59/10:05 奥多摩/奥多摩駅
↓西東京バス・奥12(留浦経由) 850円
10:50 余沢

□帰り
高尾山口
22:42:早い人はこれが終電?(佐藤)
22:57:高尾から中央線で東京まで到達可能
23:20:新宿への終電(高尾から中央線で中野まで到達可能)
23:54:高尾から中央線で武蔵小金井まで到達可能
00:13:京王八王子・高幡不動までの終電

■行程
1日目
余沢バス停-0:10-オマキ平ハイキングコース入口-3:01-神楽入ノ峰-0:46-三頭山(西峰)-0:04-三頭山(中央峰)-0:01-三頭山(東峰)-0:09-三頭山(西峰)-0:15-ムシカリ峠-0:02-三頭山避難小屋
【4:28/7.5km/↑1144m↓292m】
※初日はゆっくり、体力温存しよう

2日目
三頭山避難小屋-0:05-大沢山-0:15-ハチザス沢ノ頭-0:55-槙寄山-0:04-西原峠-0:20-田和峠-0:20-数馬峠-0:15-大羽根山方面分岐-0:25-笛吹峠-0:20-笛吹方面分岐-0:02-丸山-0:21-入沢山-0:05-小棡峠-0:30-土俵岳-0:20-日原峠-1:00-浅間峠-0:10-栗坂峠-0:07-栗坂の丸-0:30-坊主山-0:28-熊倉山-0:10-軍茶屋山-0:05-軍刀利山-0:15-三国山-0:05-生藤山-0:18-茅丸-0:20-連行峰-0:30-和田方面分岐-0:07-大蔵里山-0:10-大蔵里山(東峰)-0:21-醍醐丸-0:15-醍醐峠-0:25-和田峠-0:30-陣馬山-0:24-南郷山-0:05-富士小屋山-0:15-奈良子峠-0:10-明王峠-0:10-底沢峠-0:03-赤岩山-0:20-堂所山-1:14-景信山-0:34-小仏峠-0:25-小仏城山-0:54-もみじ台-0:08-高尾山-1:01-稲荷山-0:45-高尾山口駅
【16:31/33.7km/↑2066m↓3311m】

※最終ライン(和田峠以降でこれより遅れている場合はエスケープ) +はYAMAP*1.0比較の追加時間
03:00 避難小屋発 +0:00
04:30 槇寄山 +0:15
06:30 丸山 +0:30
07:30 土俵岳 +0:30
10:30 熊倉山 +1:00
11:30 生藤山 +1:25
14:30 和田峠(15:00までなら日没前に陣馬高原下バス停にエスケープ可能) +2:00
15:00 陣馬山(18:00までなら陣馬高原下バス停にエスケープ可能) +2:00
16:30 堂所山 +2:00
18:00 景信山(18:30までなら小仏バス停にエスケープ可能) +2:15
19:00 小仏城山 +2:40
20:30 高尾山 +2:45
22:30 高尾山口駅 +3:00

※分隊をする条件
・和田峠→陣馬高原下バス停は車道であるので15時までであれば単独・救急箱なしでの離脱を認める(15時以降は離脱者の状態次第)
・それ以外は複数・救急箱携帯が必要(過度な疲労・負傷による離脱である場合は健常者の帯同が必須)


■エスケープルート
・三頭山まで:引き返すかムロクボ尾根経由で深山橋へ下山
✳︎余沢 11:28/15:28→奥多摩駅まで47分 850円
三頭山(西峰)-0:33-鶴峠分岐-0:25-入小沢ノ峰-0:25-ヌカザス山-1:40-三頭橋登山口-0:10-深山橋バス停
【3:13/5.0km/↑112m↓1093m】
✳︎深山橋 15:53/16:12/18:08/18:50/07:25/08:15/09:52→奥多摩駅まで32分 690円

・三頭山〜田和峠:西原峠から数馬方面、仲の平バス停へ下山
西原峠-0:40-分岐右-0:35-仲の平バス停
【1:15/2.9km/↑44m↓546m】
✳︎仲の平 7:30/8:31/10:19/11:52/…/19:13→武蔵五日市駅まで1時間 1120円

・田和峠〜数馬峠:数馬峠から数馬方面、仲の平バス停へ下山
数馬峠-0:25-分岐左-0:25-分岐左-0:20-仲の平バス停
【1:10/2.0km/↑23m↓458m】

・数馬峠〜大羽根山方面分岐:大羽根山方面分岐から大羽根山方面、浅間尾根登山口バス停へ下山
大羽根山方面分岐-0:25-大羽根山-0:55-浅間尾根登山口バス停
【1:20/2.3km/↑19m↓516m】
✳︎浅間尾根登山口バス停 7:33/8:34/10:22/11:55/…/19:16→武蔵五日市駅まで1時間 1120円

・大羽根山方面分岐〜笛吹峠:笛吹峠から笛吹方面、笛吹入口バス停へ下山
笛吹峠-0:30-分岐左-1:14-笛吹入口バス停
【1:44/3.1km/↑53m↓546m】
✳︎笛吹入口バス停 7:38/8:39/10:27/12:00/…/19:21→武蔵五日市駅まで50分 990円

・笛吹峠〜丸山〜入沢山:丸山から笛吹方面、笛吹入口バス停へ下山
丸山-0:02-分岐-0:20-分岐(上記分岐と合流)-1:14-笛吹入口バス停
【1:36/2.8km/↑11m↓605m】

・入沢山〜小棡峠〜土俵岳:小棡峠から笛吹方面、笛吹入口バス停へ下山
小棡峠-1:15-分岐(上記と合流)-0:15-笛吹入口バス停
【1:30/2.7km/↑31m↓559m】

・土俵岳〜日原峠〜浅間岳:日原峠から北上し、下和田バス停へ下山
日原峠-0:20-分岐-1:10-分岐(車道に合流、左へ)-0:08-下和田バス停
【1:38/3.1km/↑88m↓519m】
✳︎下和田バス停 7:42/8:43/10:31/12:04/…/19:25 →武蔵五日市駅まで47分 930円

・日原峠〜浅間峠〜栗坂の丸:浅間峠から北上し、上川乗登山口・上川乗バス停へ下山
浅間峠-1:00-上川乗登山口-0:10-上川乗バス停
【1:10/2.1km/↑44m↓478m】
✳︎上川乗バス停 7:46/8:47/10:35/12:08/…/19:29 →武蔵五日市駅まで43分 840円

・栗坂の丸〜熊倉山:熊倉山手前の分岐で熊倉山登山口方面、井戸バス停へ下山
熊倉山-1:05-熊倉山登山口-0:07-分岐-0:15-井戸バス停
【1:30/2.2km/↑43m↓561m】
*井戸バス停9:10→上野原駅まで24分 470円 時刻表

・熊倉山〜茅丸:三国山から軍刀利神社を通り井戸バス停へ下山(神社近くにトイレ有)
三国山-0:15-分岐右-0:50-軍刀利神社-0:15-軍刀利神社鳥居-0:15-井戸バス停
【1:35/2.7km/↑46m↓563m】

・茅丸〜大蔵里山東峰:和田方面分岐から下り和田バス停へ
和田方面分岐-1:10-和田登山口-0:10-和田バス停
【1:20/2.3km/↑21m↓507m】
*和田バス停8:24/10:11/13:42/14:32/15:42/17:09/18:24→藤野駅まで14分 300円 時刻表

・大蔵里山東峰〜醍醐峠:醍醐峠から和田バス停へ
醍醐峠-0:35-醍醐峠登山口-0:15-和田尾根登山口-0:12-和田登山口-0:10-和田バス停
【1:12/2.5km/↑10m↓412m】

・醍醐峠〜陣馬山:和田峠から陣馬高原下バス停へ
和田峠-1:00-陣馬新道登山口-0:25-陣馬高原下バス停
【1:25/3.4km/↑135m↓495m】
※和田峠は今回のルートで唯一車道と交差する地点(救急箱不要)

・陣馬山〜富士小屋山:陣馬山から陣馬高原下バス停へ
陣馬山-0:58-陣馬新道登山口-0:25-陣馬高原下バス停
【1:23/3.0km/↑63m↓589m】

・富士小屋山〜赤岩山:底沢峠から陣馬高原下バス停へ
底沢峠-1:05-陣馬高原下バス停
【1:05/2.3km/↑8m↓392m】
*陣馬高原下.../15:32/16:32/17:32/18:32/19:30→高尾駅まで39分 640円 時刻表

・赤岩山~小仏峠:小仏バス停へ
景信山-0:45-景信山登山口-0:15-小仏バス停
【1:00/2.1km/↑7m↓438m】
*小仏バス停12:40/13-16時台は各00,20,40分/17:40/18:40/19:40→高尾駅まで23分 280円

・小仏峠~高尾山周辺:大垂水バス停へ
小仏城山-0:45-大垂水バス停
【0:45/2.0km/↑15m↓290m】
*大垂水バス停12:01/16:24→高尾山口駅・八王子駅まで15分 300円
あるいは大垂水バス停13:39/18:04→相模湖駅まで20分 320円

・高尾山周辺~高尾山口駅:そのまま進む
※ただし、暗さが心配な場合は一号路を選択
*リフト最終便は山上駅16:00発、ケーブルカー最終便は高尾山駅17:30発のため利用不可


■個人装備
□ザック □ザックカバー □シュラフ □マット □登山靴 □替え靴紐 □雨具 □防寒具 □ニット帽 □軍手/手袋 □タオル
□水(飲用として3Lあれば十分か) □行動食(2泊3日相当量) □非常食 □ゴミ袋 □カトラリー(フォーク、スプーン類)
□コッヘル(食器)  □ライター □トイレットペーパー □ヘッドランプ □予備電池(2回分) □エマージェンシーシート □地図 □コンパス
□筆記用具 □遭難対策マニュアル □計画書 □学生証 □保険証 □現金 □常備薬 □マスク □消毒用品 □日焼け止め
□靴下の替え(□モバイルバッテリー □サングラス □歯ブラシ □トレッキングポール □サポーター/テーピングキット □保温系インナー
□ネックウォーマー □ホッカイロ  □熊鈴 □コンタクト/眼鏡 □携帯トイレ)

□救急箱(油井私物)


■地図
25000分の1:「丹波」「猪丸」「与瀬」「八王子」
山と高原地図:「奥多摩」「高尾・陣馬」

■共同装備
なべ
・桜(山伏から引き継ぎ):朱
ヘッド
・緑7:油井(山伏から引き継ぎ)
カート
・極寒冷地用×2:油井(山伏から引き継ぎ)
調理器具セット
・キャサリン:朱(山伏から引き継ぎ)
救急箱
・有紗:江川(杓子山から引き継ぎ)
■食当
夜:朝倉(すき焼き)
朝:油井(おでん)
アレルギー等:ナッツ、豆乳、メロン、サクランボ、モモ、柿

■遭難対策費
200円×5名=1000円

■悪天時
前日までに判断

■施設情報
□避難小屋
三頭山避難小屋:定員20人、通年開放、トイレあり、原則として緊急用の小屋であることに留意
□水
三頭山避難小屋東側(枯れている可能性が高い)

□トイレ
オマキ平ハイキングコース入口、三頭山避難小屋
和田峠、陣馬山、明王峠、景信山、小仏城山、一丁平園地、もみじ台、高尾山、清滝駅
■備考
□日の出日の入り(生藤山)
日の出 6:54
日の入 16:44
□電波状況(カバー率が低いエリア)
docomo: 奥多摩湖〜槙寄山、笛吹峠、日原峠、和田峠〜陣馬山
au: 総じてdocomoと同じ、陣馬高尾でも繋がりにくい箇所あり
softbank: 総じてdocomoと同じ
参考:山の電波地図

□連絡先等
青梅警察署:0428-22-0110(奥多摩町内)
五日市警察署:042-595-0110(檜原村内)
高尾警察署:042-665-0110(八王子市内)
津久井警察署:042-780-0110
高鉄交通株式会社(タクシー):042-661-7211

1/4-5 笹尾根縦走記録
作成者:油井
■日程  1/4-5(土-日) 一泊二日 予備日なし
■山域 奥多摩
■天気
■メンバー
 CL油井(45) SL江川(46) ◯朝倉(44) ◯朱(45) ◯斉藤(45)
■共同装備
なべ
・桜(山伏から引き継ぎ):朱
ヘッド
・緑7:油井(山伏から引き継ぎ)
カート
・極寒冷地用×2:油井(山伏から引き継ぎ)
調理器具セット
・キャサリン:朱(山伏から引き継ぎ)
救急箱
・有紗:江川(杓子山から引き継ぎ)
■総評
天候に恵まれ、富士山や南アルプスを眺めながら笹尾根を踏破することができた。1日の歩行距離30km以上、高低差↑2000m↓3000mというロングトレイルで、最後に待ち構える高尾山が非常に険しい山に感じられた。笹尾根は長大な割に数時間単位で考えれば変化に富んだコースなのでそこまで飽きることはなかった。最初から最後までほぼ一定のハイペースで歩き通したメンバーの健脚さに驚かされた。
■タイムスタンプ
1日目
余沢バス停-0:05-オマキ平ハイキングコース入口-1:10-向山-1:20-神楽入ノ峰-0:30-三頭山-0:10-三頭山避難小屋
2日目
三頭山避難小屋-0:05-大沢山-0:05-蜂指沢ノ頭-0:45-槇寄山-0:15-田和峠-0:10-数馬峠-0:30-笛吹峠-0:10-丸山-0:10-小棡峠-0:20-土俵岳-0:10-日原峠-0:35-浅間峠-0:05-栗坂の丸-0:15-坊主山-0:15-熊倉山-0:10-軍荼利山-0:10-三国山-0:05-生藤山-0:10-茅丸-0:10-連行山-0:20-大蔵里山-0:15-醍醐丸-0:25-和田峠-0:15-陣馬山-0:25-奈良子峠-0:05-明王峠-0:20-堂所山-0:40-景信山-0:20-小仏峠-0:15-小仏城山-0:15-一丁平-0:20-もみじ台-0:05-高尾山-0:40-稲荷山-0:20-清滝駅
【18:38/42.0km/↑3061m↓3446m】

■ルート概況
〈余沢〜三頭山〉
・登山者の少ない静かなコースであるが、樹木に解説プレートが付いているなどよく整備されている
・傾斜の緩いつづら折りの道が続く
・斜面には落ち葉が大量に溜まっていてラッセル状態
・向山の展望台は朽ちていて登ることはできない
〈三頭山〜生藤山〉
・三頭山東峰にある展望台からは関東平野を一望できる
・三頭山避難小屋は外・中ともに非常に綺麗
・宿泊者は自分たちだけだったが昼夜問わずトレラン勢の休憩場所となっていた
・夏には入りきらないほど宿泊者がいるらしく引き続き積極的利用は控えた方が良いだろう
・室温は夜中でも-3℃程度
・大沢山からの下りはかなり急
・槇寄山からは富士山が綺麗に見える
・軍荼利山辺りから名実ともに「笹尾根」
・三国山からは南アルプス南部(悪沢・赤石・聖)が見える
・生藤山からの富士山は木が邪魔している
〈生藤山〜陣馬山〉
・茅丸からの富士山が素晴らしい
・和田峠のトイレはそこそこ綺麗
・和田峠から陣馬山への階段はきつい
・陣馬山にはたくさんの人
・北関東や南アルプス、関東平野の眺望が良い
〈陣馬山〜高尾山口〉
・雰囲気は「丘」だが笹尾根踏破に挑む者にとっては試練の15km
・景信山からの関東平野の眺望は素晴らしい
・小仏城山への登り返しがきつい
・高尾山は日没直前でもかなりの人出
・稲荷山コースの序盤はひたすら階段

■山行記
(1日目:斉藤)
 今回の山行の登山口となる余沢は、奥多摩湖から小菅川沿いに西へ向かったところにある、良き日本の里山といった雰囲気のところ。冷たくも澄んだ空気を吸い込み、明日の長い長い行程を思い浮かべては、妙な緊張感に包まれる。
 登山道は急峻だが全体的によく整備されており、行程の序盤には樹木の解説をするプレートも散見された。人が多い登山道でもないのに珍しい。なぜこんなに手が入っているのかと後日少しだけ調べてみたが、件のエリアは東京都水道局の管轄ではないらしく...この問題はまた別の機会に調べ直そう。
 ということで、歩きやすい登山道だったこともあり結構良いペースですいすい登ってしまい、14:30ごろには三頭山山頂に到着した。私にとって三頭山は二回目だったが、前回よりも天気が良かったからか、東峰の展望台からは前回は見えなかったはずの東京都心のビル群までもはっきり見ることが出来た。
 また少し歩いて、今回の宿泊地の三頭山避難小屋に到着。奥多摩の小屋は綺麗なことで有名らしいが、なるほど、外装も内装も綺麗な木目で清潔感があり、私がこれまで経験した避難小屋の中ではぶっちぎりで一番の整備具合だった。夕食は朝倉さんの作るすき焼きで、お肉も野菜も具だくさん、うどんや豆腐やしらたきまで、様々な具材を下ごしらえした状態で持ってきてくださった。想像してみて欲しい。寒々しい空気で満たされた小屋の中、小さな鍋から、熱された牛脂と割下の良い匂いが立ち上る。派手じゃなくても良い、幸せとはこういうことなのだと、改めて思い出される。出来立てのあったかいすき焼きを皆で囲みながら食べたときは、そのおいしさや嬉しさのあまり、もう今山行をここで終わらせても良いとさえ思った。明日は気ままに、行けるところまで行こう。
 片付けを終え18:30ごろにシュラフの中に入ったが、私は寒さのあまり中々寝付けなかった。正確には、「寒い」までいかなくとも、「あったかい」の状態でないと中々眠気が来ないのだ。小屋の室温でさえ氷点下、息を吐けば白いもやが立ち上り、ペットボトルの水も凍ってしまう世界だ。時刻は22:00ごろ、下界ではお風呂にでも浸かってあたたかい布団に包まっている頃だろうか。自分はなぜこんなところで眠ろうとしているのだろうと、なんだか色々考えてしまっているうちに、何とか眠りにつくことができた。シュラフの中にいるときばかりは「もう今山行で泊まりは最後にしよう」と思うことが多々あるのだが、結局翌日の行程が楽しいと忘れてしまうのが不思議であるなあ。

(2日目:江川)
山の朝は早いと言うが、雷鳥の朝はさらに群を抜いて早い。2:00に起床など、隣に他の登山客がいれば褒められたことではないのだろうが、今回は我々以外に滞在者がいなかったので問題ではないだろう。朝食は油井さんが作ってくださったおでん。すごく手早く調理してくださったので、僕が身支度している間にあっという間に完成していた。小屋の中は氷点下2度で冷えすぎというほどではなかったが、温かいおでんが身に染みて、出発への活力を得られた。

出発は3:15頃で、予定より15分ほど遅くなってしまった。しかし、計画にかなりの余裕を持たせてあるので、十分問題なく取り返せるだろうと予想していたし、実際歩き出してすぐに巻き返すことができた。未明の時間帯は景色も見えないし、空気も冷えているから、とにかく歩くことしかできないのだ。避難小屋から歩き出してピークを一つ越えると、緩やかなアップダウンが繰り返されるルートが始まる。まさに「尾根縦走」でしか味わえない山歩きだ。だからか自然にペースも早くなっていき、結果的に水平距離でいうと相当な量を短い間で進むことになった。そして、小ピークで休憩中に空を見上げると、そこに広がっていたのは満点の星空。アルプスから見た時ほどの鮮明さこそないが、東京の空も捨てたものではないなと思えた。

まだ冬至から2週間で夜がとにかく長かったからだろうか、東の空が少し赤みを帯び始めたことがいつもの山行以上に嬉しかった。笹尾根上は木がめったに途切れることなく林立しているから、何も遮るもののないパノラマとは縁がないが、木々の間から見える遠くの稜線は美しい。土俵岳をすぎて7:00頃、本来であれば日の出の時刻だ。今回のメンバーは大半が年越し山行で初日の出を拝んだということで、4日経った今回もまだ日の出待機・鑑賞モチベは十分高かったのだが、360度を山に囲まれる奥多摩では太陽は山の稜線の奥から出てくるから、日の出はもう少し遅い。さらに歩くこと15分、南東の方向から眩しい日光が差し込んできた。第5日の出くらいなら多少はありがたさが残っているように思うのは僕だけだろうか。

閑話休題。1日目の行動中、「笹尾根」なのに笹がないという話になった。曰く、シカの個体数の急増によって、笹は食い荒らされて減少してしまったそうだ。登山者としてはハゲ山の方が歩きやすいのは間違いないが、それでも歓迎できることではない。そう思っていたのだが、軍茶利山の周辺から登山道脇に笹が見られるようになった。はじめは背の低いものが、少し密度低めに生えていたが、さらに進むと我々くらいの背丈のものが高密度に生えているところも出てくる。まさに笹尾根の面目躍如といったところか。「笹尾根なのに笹ねーじゃん!」とはならなかったのには少しホッとした。

空もすっかり青くなった9~10時台は、ピークがいくつか続いたことや、今後も長いことを考えて、各山頂で連続して何回も小休止をとった。軍刀利山、三国山、生藤山、茅丸とそれぞれユニークなピークが続き、飽きることもなかった。特に茅丸は、景色がすぐれる(特に富士山)ことと、近くの有名な生藤山より標高が高いこともあり、中々印象的だった。今回の行動中に初めて他の登山客とすれ違ったのもここだった。そこを越えると、ペースができてきたこともあり、ピークを踏んでもせいぜい水分を補給する程度でガンガン進む雰囲気となった。和田峠までは中々に距離があったが、ハイペースを落とすことなく進めた。これも今回のような超長距離コースにわざわざ来るようなメンバーしかいなかったからできたことだろう。朱さんが絶えずお喋りを続けて下さったのもとてもありがたかった。

和田峠から陣馬山への急登が、当初想定していた今回の難関だ。CT1.0倍にして30分ほど、階段やそれに匹敵する斜度が連続する。流石にこの区間はペースを落として進んだが、誰一人バてることなく踏破できた。なんなら先輩にはお喋りする余裕もあったようで、自分ももっと体力をつけないとなと思った。陣馬山に辿り着くと、これまでとはうって変わって弛緩した空気が流れているように感じた。それもそのはず、ここに来る人の大半は登山靴など履いていないハイキング客だからだ。広い山頂は人で埋め尽くされ、売店も充実している。「奥多摩っぽい山」を抜けて「高尾っぽい山」までやってきたなと感慨深さもある。行動開始当初、この陣馬までが大変で、そこを超えてしまえば歩きやすいし大丈夫だろうという想定をしていたのもあるだろう。

しかし、その想定は全くの的外れだった。スニーカーでも登れるほどに整備されている道だからこそ、登山靴で快適に登るには路面が硬すぎるのだ。諸事情により新品の登山靴で臨んでいた僕は足の裏の痛みに苦しみ続けることとなる。朝の小屋で「陣馬を超えれば消化試合」などとおどけて言っていた自分をはっ倒したくなった。

高尾周辺の山は、標高が低いながらも山頂が広く、大都会東京を一望できる山が多い。景信山や小仏城山、高尾山などがそうだ。中々雷鳥の山行では縁がない山域だが、独自の魅力がある。特に笹尾根縦走の最大目標の一つにして最後の代表的ピークである高尾山は、今回改めて訪れてその魅力を実感することができた。

高尾山は陣馬以上に観光地化されている。陣馬でさえ登山靴を履いている人は少数派だったが、高尾山に至っては登山装備を身につけているのは我々のみ、ましてや運動着の人すら0だ。その点から「ヤマヤ」からは見下されがちのように感じるし、自分も高尾山を登山の対象と見なしていないきらいがあった。だが、実際に自分の足で登ってみると、登る価値があるというのが体感だ。登山道は歩きやすく整備されているが、自然豊かな点は他の登山道に劣らないし、整備された山頂は一息つくのにピッタリだ。そして、標高が低いからこそ東京の街並みをすぐ近くに望むことができるのは他の山にはない魅力だ。まさに「一周回って」高尾山の良さを再発見できたような気分だった。これも笹尾根はしっかり十余時間歩いたから至れた結論かもしれない。

そこから下山し、駅まで到着するのに1時間程度かかった。最後は暗くなってヘッドライトをつけながらの行動となったが、想定していたよりはかなり早く降りることができたので、達成感は大。高尾山口から一駅乗った先の高尾で食べたラーメンは、心にまで沁みる下界の味だった。


■感想
CL油井
・筋肉痛以外の後遺症なく歩き通せて良かった
・奥多摩と陣馬・高尾の境目とも言える軍荼利山〜茅丸の雰囲気が好き
・すき焼き美味しかったです
・山座同定で適当なこと言ってすみません、勉強不足を痛感
・八王子ラーメンの布教に成功
・次は石尾根かな
SL江川
・まずは、とにかく踏破できてよかった。これは今後への自信になる
・高尾山の魅力を再発見できたのが個人的な収穫
・奥多摩の山深い景色が割と好みだった
・3日前の山行で靴をぶっ壊し、買いたての靴で参加した。案の定靴擦れを起こしてしまったが、先輩方が色々と気をつかって下さったので、大きな問題は起きなかった
・最後の方、足の裏が痛くてきつかった。次回長距離を歩く時はこの痛みに対処できるようにしておきたい
・CLの油井さんが入念に準備して下さったのが印象的だった。理想的なCLだと思ったし、自分もこうありたいと感じた
◯朝倉
まずは、計画の構想から立案、そしてCLを担ってくれた油井君に感謝申し上げたいです。
丹沢主稜縦走との比較が気になる方もいるかと思いますが、底沢峠辺りで笹尾根を離脱し陣馬高原下に降りた場合と丹沢主稜縦走が大体同じ疲労度だと考えると良いかもしれません(個人の主観)。陣馬山以降は比較的景色が単調なのも相まって、残り少ない体力がジリジリと削られていくのを身に沁みて感じました。
今後もビル同定の技術を磨いていきたい。
◯朱
・何度も撤退を考えたものの、背中を押してくれたさらごんと油井くんに感謝です。印象に残る山行になりました。
・こんな比較的単調な道でも眺望や時間や道の移り変わりを見ることができ、山から山へと移動していくという縦走のロマンと楽しさを感じました。
・自分には難しいと本気で思っていた笹尾根を踏破できた達成感は忘れがたいです。自分の限界を自分で決めつけないで、試してみるものです。
・骨盤から歩く歩き方を意識したことで、息が上がりにくかったように思います。参考:https://youtu.be/6WgjHVdt0ik?si=NkbRmyNz289f7jPq
・すき焼きとおでん、どちらもとても美味しかったです。
・メンバーのみなさんのおかげで楽しく歩ききれました。
・電波には繋がないようにしていたのに、陣馬山でeduroamが飛んでいたのは不意打ちすぎました。
◯斉藤
・疲労や達成感もあるけど、個人的一番のハイライトは食当の料理でした。すき焼きもおでんも美味しかったなぁ。ありがとうございました。
・高尾山では荷物を置きっぱなしにしていると盗まれそう、という会話を聞きながら、そのイメージにおける区分こそ、山か丘かの区分にふさわしいのかもしれない、と思った。(ただしこの場合富士山も丘か)
・下山後、疲れ切った体に大盛のラーメンを注ぎ込むのが最高に快感だった。