2025/9/6-7 甲斐駒ヶ岳〈黒戸・日向八丁尾根〉

甲斐駒ヶ岳〈黒戸・日向八丁尾根〉計画書 第三版
作成者:油井
■日程 9/6-7(土-日) 一泊二日 予備日なし
■山域 南アルプス
■目的 登頂
■在京責任者 桐原
■在京本部設置要請日時 9/7 20:00
■捜索要請日時     9/8 08:00

■メンバー ( 3人)
 CL油井(45) SL朝倉(44) ◯佐藤(46)

■集合
6:00 府中駅東交差点(新宿仲通り)

■交通(マイカー)
□行き
府中駅-国立府中IC-須玉IC-尾白川渓谷駐車場 ETC2330円
□帰り
行きと同様
温泉寄るかも

■行程(17:27/21.8km/↑↓2999m)
1日目:6:19/7.3km/↑1820m↓180m
尾白川渓谷駐車場-0:04-甲斐駒ヶ岳登山口-0:05-竹宇駒ヶ岳神社-2:20-笹ノ平分岐-1:55-刀利天狗-0:50-五合目-1:00-七丈小屋-0:05-七丈小屋テント場

2日目:11:10/14.4km/↑1173m↓2812m
七丈小屋テント場-0:45-八合目-1:07-甲斐駒ヶ岳-1:15-六合石室小屋-0:37-三ツ頭-0:20-烏帽子岳-2:00-大岩山-0:30-駒薙ノ頭-0:50-駒岩(-0:30-鞍掛山-0:05-展望台-0:05-鞍掛山-0:30-駒岩)-1:10-雁ヶ原-0:10-日向山-0:05-日向山三角点-1:20-矢立石-0:50-竹宇駒ヶ岳神社-0:05-甲斐駒ヶ岳登山口-0:04-尾白川渓谷駐車場
※()内はオプション、余裕があれば

■エスケープルート
・六合石室小屋まで:引き返す(場合によっては六合石室小屋・七丈小屋で停滞)
六合石室小屋から8時間、山頂から6時間半、七丈小屋から5時間

・六合石室小屋から:そのまま下山

※緊急性の高い場合は北沢峠へ下山(3:16/4.8km/↑122m↓1051m)
甲斐駒ヶ岳-0:42-六方石-0:30-駒津峰-1:00-仙水峠-0:25-仙水小屋-0:26-長衛小屋-0:04-登山口-0:07-北沢峠バス停
七丈小屋〜烏帽子岳であれば北沢峠の方が近い

※北沢峠からの帰宅方法(電車は9/7(日)のダイヤ)
南アルプスクイーンライン(北沢峠線)(毎日運行)
7:20/10:00/13:10/15:00/16:00 北沢峠-8:05/10:45/13:55/15:45/16:45 戸台パーク 1370円
南アルプスジオライナー(金土日運行)
12:00 戸台パーク-12:20/12:30 高遠駅-12:54 伊那バスターミナル 900円
17:00 戸台パーク-18:24 JR茅野駅 1800円

〈伊那から〉
13:25/14:25/… 伊那バスターミナル-高速バス新宿伊那線-16:45/17:45/… バスタ新宿 4500円
13:05/15:01/… 伊那市-鈍行-19:29/20:28/… 新宿 学割3250円
13:05/14:10/… 伊那市-岡谷からあずさ-16:28/18:04/… 新宿 乗車券+2550円
※乗り継ぎ時間が短く、学割切符を買う時間が確保できるか微妙、13:20-13:50は窓口閉鎖

〈茅野から〉
18:46 中央道茅野-21:35 バスタ新宿 3200円
19:32 茅野-鈍行-22:57 新宿 学割2720円
19:09 茅野-あずさ-21:17 新宿 乗車券+2240円

※車を回収する場合は小淵沢または日野春からタクシー

■個人装備
□ヘルメット□携帯トイレ□ザック □ザックカバー ◽︎サブザック □シュラフ □マット □登山靴 □替え靴紐 □雨具 □防寒具 □帽子
□軍手/手袋 □タオル □水 □行動食 □非常食 □ゴミ袋 □カトラリー(フォーク、スプーン類) □コッヘル(食器) □ライター
□トイレットペーパー □新聞紙 □着替え・温泉セット□ヘッドランプ □予備電池 □エマージェンシーシート □地図 □コンパス □筆記用具
□遭難対策マニュアル □計画書 □学生証 □保険証 □現金 □常備薬 □マスク □消毒用品 □日焼け止め (□モバイルバッテリー
□サングラス □歯ブラシ □トレッキングポール □サポーター/テーピングキット □熊鈴 □コンタクト/眼鏡)
※運転に適した靴も

■地図
25000分の1:「長坂上条」「甲斐駒ヶ岳」「仙丈ヶ岳」
山と高原地図:「北岳・甲斐駒」

■共同装備持ち出し→携行→持ち帰り
テント
・ステラ4 No.1:佐藤→ →9/10-甲斐駒仙丈へ引き継ぎ
なべ
・小竹:佐藤→ →9/10-甲斐駒仙丈へ引き継ぎ
ヘッド
・緑8:油井→ →9/10-甲斐駒仙丈へ引き継ぎ
カート
・パワープラス×2: 油井→→餓鬼岳へ
調理器具セット
・ガジャマダ:9/5斉藤から油井→ →9/10-甲斐駒仙丈へ引き継ぎ
救急箱
・有紗: 朝倉→ →9/11- 黒部源流(朝倉)へ引き継ぎ
ヘルメット
・montbell赤: 朝倉→朝倉→朝倉

■食当
夜:佐藤 :チャーハンもどき?
朝:油井 トマトラーメン
アレルギー等:大量のきのこ、モモ、豆乳、アーモンドを除くナッツ、メロン、サクランボ


■遭難対策費
200円×3名=600円

■悪天時
前日までに判断

■施設情報
□山小屋・避難小屋

テント場
素泊まり
水場
トイレ
電波
その他
七丈小屋
090-3226-2967
1000円/人,予約不要,30張
9000円,完全予約制,24名
小屋前の水道(料金込み),外来100円
小屋前,洋式×3,料金込み,外来200円
docomo◯,au/softbank×
食事はカップ麺のみ販売,小屋からテント場へは梯子を越えて5分
六合石室小屋
0265-98-3130
(伊那市商工観光部南アルプス課)
なし
板の間に10人程度
西側斜面に水場あり,往復30分程度
なし
docomo◯,au△,softbank×
無人,綺麗な避難小屋
(仙水小屋)
080-5076-5494
1000円/人,予約不要,11張
5000円,完全予約制,20名
小屋内及び小屋手前登山道沿い,無料
洋式
全部×か

(長衛小屋)
090-2227-0360
1000円/人,予約不要,200名
6800円,完全予約制,27名
小屋前,無料
小屋の左横
全部×,wifiあり
カップ麺、アルファ米、菓子販売
(北沢峠こもれび山荘)
050-1722-3710
なし
9000円,完全予約制,67名
水洗、小屋内とバス停
小屋内と小屋前
全部×,wifiあり
土曜日・当日予約・電話予約は+1000円

□水
・七丈小屋
・六合石室小屋西斜面
□トイレ
・尾白川渓谷駐車場
・七丈小屋前
〈エスケープ〉
・仙水小屋
・長衛小屋
・北沢峠
□温泉
・尾白の湯:830円,10:00-21:00,ドライヤー有料,PayPayまたは現金
〈エスケープ〉
・仙流荘:800円, 12:00-20:00(週末は11:00〜)
□駐車場
・尾白川渓谷駐車場:100台、無料
・横手駒ヶ岳神社駐車場:20台、無料
□電波
docomo:駐車場△?、黒戸尾根甲斐駒ヶ岳まではほぼ繋がる。甲斐駒〜駒岩は不明。鞍掛山以降は一部微弱だが概ね繋がる。日向山△?、
北沢峠へのエスケープ上は駒津峰以降×
softbank:(繋がらない場所)
・黒戸山→甲斐駒ヶ岳の鞍部
・大岩山直下
※駒ヶ岳から鞍掛山分岐までは道の付き方次第で電波安定しなさそう

■備考
□日の出日の入り(甲斐駒ヶ岳)
日の出 05:12
日の入 18:19
□連絡先等
山梨県警北杜警察署 0551-32-0110
台ヶ原駐在所 0551-35-2721
長野県警伊那警察署 0265-72-0110
長谷駐在所 0265-98-2201
南アルプス林道バス営業所 0265-98-2821
ジェイアールバス関東伊那支店 0265-73-7171
大泉タクシー(小淵沢駅・長坂駅)0120-382-312
小淵沢タクシー(小淵沢駅)0551-36-2525
北杜タクシー(長坂駅・日野春駅)0551-32-2055

甲斐駒ヶ岳〈黒戸・日向八丁尾根〉記録
作成者:油井
■日程 9/6-7(土-日) 一泊二日 予備日なし
■山域 南アルプス
■天気 晴れ
■メンバー
 CL油井(45) SL朝倉(44) ◯佐藤(46)

■総評
変化に富んだ良い周回路だった。下山中にメンバー1名が蜂に刺される事故があったが、周りがアブだと思い込んで対応が遅れてしまったことは猛省。

■タイムスタンプ
1日目
8:20 甲斐駒ヶ岳登山口
9:42 一合目(竹宇口山ノ神)
11:34 三合目(口ノ摩利支天)
11:59 四合目(刀利天)
13:13 六合目(不動岩)
13:30 七丈小屋
13:50 七丈小屋テント場
2日目
3:00 七丈小屋テント場
3:36 八合目(御来光場)
4:03 九合目(烏帽子岩)
4:29 駒ヶ岳神社本社
4:36-5:40 甲斐駒ヶ岳
6:46 六合石室小屋
7:29 三ツ頭分岐
7:39 鳥帽子岳
9:45 大岩山
10:55-11:30 駒岩(蜂対応)
12:41 日向山
13:50 矢立石登山口
14:35 甲斐駒ヶ岳登山口

■ルート概況
〈黒戸尾根〉
・美しい樹林帯で足元には笹原も広がる
・ただ五合目小屋跡を中心にゴミが多い
・急登は五合目から、傾斜のきつい階段とも梯子とも言えるような構造物を登る
・信仰の山だけに石像が立ち並ぶ
・テント場は小屋から5分ほど登った場所で2段構造、下の方が眺望良いが上は芝
・八合目付近の岩場は手強い
〈日向八丁尾根〉
・山頂からの出だしがわかりにくい、踏み跡が多数あり惑わされないように
・石を4つ程度積んだだけのケルンを辿れば道は明瞭
・下りの鎖場は先が見えなくて怖いが意外と大したことない
・樹林帯に入ってからはピンクテープを追う、こっちの方が難しい
・大岩山の登り返しは小石を落としやすいので注意
・日向山からは人が多い
・川遊びしてから帰るなら駒ヶ岳神社でトイレを済ませてその横から川に出るとよい

■山行記
1日目(油井)
 このところ記録じゃんけんに負け続けている。少人数山行が多くなっていることもあって夏山シーズンの終わりにはずっと記録を書くことになる。書くことは嫌いじゃないのでまあいいか。いくらアウトプットしても自分の語彙力、文才は磨かれない、それだけが悩みである。
 甲斐駒ヶ岳、それは最愛の山である。人生で初めて登ったアルプスがそれと対峙する仙丈ヶ岳。小学3年の頃だったと記憶している。その時に一目惚れし、愛を貫いて10数年、いまだに一番好きな山だ。今年の鳳凰三山でも甲斐駒に向かって愛を叫んだのだが、返答はなかった。中学2年の時に北沢峠から登頂し、その白亜の姿を目に焼き付けた。雷鳥に入ってからは今度は「黒」の甲斐駒を見たいとずっと思っていた。日の出が見えるか不確かなのに日向山で年越しハイクを企画し、先輩からのアドバイスで計画を取り下げた時は色々と未熟だったが、それ以来その漆黒の甲斐駒を見るなら夏場に黒戸尾根から日向八丁尾根の周回をやろうと心に決めていた。とはいえ、日向八丁尾根は一部破線ルートで高いルーファイ能力が求められる。1年半力をつけてから満を持しての山行立案を決心したのは白馬五竜縦走の前泊のためにあずさで小淵沢付近を通過している時だった。横目に見える黒い甲斐駒、そしてそれに続く2本の尾根。やはり山を見ると行きたくなってしまうのが雷鳥人の性なのだろう。温めていた計画を表に出し、まずは同期2人と日調したのだが結果的に両者とも行けなくなってしまった。最終的に「桐原チルドレン」を自称する44-46期の3人で黒戸尾根経験者の桐原さんに在京をお願いして挑戦することになったのである。
 前置きが少々長くなってしまった。桐原さんの時とは違い、人数が少ないので車アクセスとした。早朝の府中駅で2人を拾い、中央道を西進する。6時過ぎだというのに既に混雑していたが、それほど遅れることなく2時間ほどで尾白川渓谷駐車場に到着。駐車場に停まっている車の大半は川遊び目的だろう。帰りに入ることに決めて我々はまずは山に入る。
 麓の神社で山行の無事を祈願し、美しい樹林帯を進む。アルプスの樹林帯というと稜線に出るまでのウォーミングアップになりがちだが、今回はこれがメインである。所々に落ちているゴミが目につくが、日に当たった緑が映えている。黒戸尾根は信仰の道なのであちこちに石像がある。1合目から9合目まで標識があるはずなのだが、なかなか1合目に着かない。どうやら信仰の要所要所を◯合目に設定しているようで等間隔ではないらしい。まあ序盤に進捗がない方がその逆よりは精神的に楽かもしれない。意外にも朝倉さんは今年泊まり山行にあまり行けていないようだったが足取りは軽く、快調に進む。刃渡りという有名な岩場を通過すると背後には八ヶ岳が聳えていた。これだけ晴れてくれると気分も上がる。
 五合目には昔小屋があったようで地図にも記載がある。跡地らしき平場には大量のゴミが埋まっていた。先述したように登山道にもゴミが多く、清掃登山をしたいね、という話になる。どうすれば楽しく清掃できるかのアイデアを出し合いながら急登区間に差し掛かる。ここまでは三大急登とは思えないほど普通の傾斜の尾根だったが、ここからは木製梯子の連続である。角度は75度ぐらいあるだろうか。ほぼ垂直に登るので足腰がしんどい。翌日の体力を温存しなければならないのでゆっくり登ったつもりだが、それでも順調に進んでいたようだ。13時半には七丈小屋に着き、受付を済ませた。小屋前の水場の水が冷たくて気持ちいい。サントリーの南アルプスの天然水はこの麓の白州で取水しているのでその大元を飲んでいる形だ。自分はここで黒戸尾根ステッカーを購入。1週間前の剱岳でついに山小屋グッズ購入デビューを果たしてしまったので今後は行く先々で買ってしまうのだろうか。
 テント場は小屋から離れていて小屋との間には梯子まである。トイレ・水場は小屋前にしかないのでやや不便だが仕方ない。テント場は2段になっていて下段が鳳凰三山方面の眺望に優れた砂地、上段が眺望はあまりない芝生だった。睡眠の質を最優先して上段に幕営し、予定外のまったり時間を過ごす。黒戸尾根でコースタイムを大きく巻くことは想定していなかったので嬉しい誤算だ。夕食には佐藤による炒飯もどきを頂いた。一緒に山に行くたびに食当への熱量が高まっており、尊敬する。実験的だというが完成度が高く、翌朝の自分の食当が不安になる。お腹いっぱいになり気持ちよく寝られそうだ。不安よりも期待に支配された心を落ち着かせてそっと目を閉じた。

2日目(朝倉)
 特に意味は無いが、道中印象的な会話があったので最初に記しておきたい。皆さんは10年後も山に登り続けていると思うだろうか?ぜひ今度会う機会があれば皆さんとこの話をしてみたい。
 2:00起床。山の上で寒い寒いと言いながらテントから這いずり出るのは久しぶりだった。早朝の頭上にオリオン座が見えると、あぁ夏山だなと感じる。院試やイベントで長らく延期していた今年の個人的夏山シーズンがやっと始まった。朝ごはんは油井君が鯖トマトラーメンチーズのせをこしらえてくれた。いつの日か自分が作った鯖トマトパスタと比較するのも烏滸がましいぐらいの絶品であった。あの頃の自分には鯖の味噌煮ではなく水煮を使う謙虚さが足りていなかった。味噌の方が「旨味」?が出て美味しいんじゃないの?そう思ったが最後、出来上がったものは和洋折衷の一番良くないところを濃縮したような料理だった。恐らくそういったことも織り込み済みで水煮缶を使った油井くんには、やはりこういう面で私には足りない何かがあるように感じる。そういう朝だった。
 3:00出発。甲斐駒ヶ岳へはそのままテント場から伸びる黒戸尾根の残り区間を1時間半ほど歩けば着く。夏山シーズンが始まるということもあり、早朝の暗がりの中での岩場のルーファイ力を試してみたいと思い、先頭は私が志願して歩いた。が、何度か道を逸れてしまい大反省。先頭は本来視線を上に上げて歩くべきなのは百も承知なはずだが、気を抜くとすぐ下を向いてしまうのはどうにかならないのだろうか。同伴するメンバーにも危険が及ぶので以後気をつけたいと思う。最初の内は、昨日の黒戸尾根前半パートと大体似たような雰囲気の穏やかな登りが続き、ふと後ろを振り返れば黒々と聳える八ヶ岳と北杜市の町の灯りが幻想的な夜景を作り出していた。日の出は5時過ぎごろだが、眼下には既に雲が立ち始めており、日の出と雲海の共演が見れることに期待を膨らませる。出発から30分余りが経過したところで8合目の御来迎場に到着。ここには壊れた鳥居が放置されており、かねてから信仰色の強い山だったことを窺わせる。この辺りから森林限界を超え甲斐駒の山頂が正面に見えるようになり、またそれと同時に鎖場が出現するようになる。延々と鎖場が続くという感じではないが、一つ一つの鎖場がそれなりのテクニックを要するので、個人的には飽きが来なくて楽しかった。劔から帰ってきたばかりの油井君曰く、カニのタテ/ヨコバイよりも難儀する部分もあったという。LINEグループのアイコンにもなっている二本剣を通過し偽ピークに出たところにある猫耳のようなシルエットをした岩の陰で少し休憩を取った。再びズンズンと歩みを進めていき、駒ヶ岳神社の本社を通過する頃には段々と並歩する人も増えてきて、山頂が近いことを感じ始める。さらにそこから5分ほど歩き、ついに甲斐駒ヶ岳山頂に到着したのは4:35ごろだった。これをもって黒戸尾根は終了。お疲れさまでした。日本三大急登の一つを、幕営を挟むがコースタイムよりも1時間巻くという中々のハイペースで制覇した。
 山頂には既に御来光を待ち構える人々がいた。我々もここで日の出を見る予定だったので岩陰に荷物を置き、バーナーを稼働させ油井君が持って来てくれたココアを3人で堪能した。風はそれなりに強いが、気温はそこまで低くないのでフリースを追加で着れば十分なコンディションだった。甲府方面の地平線が段々と赤らんでくるのを見ると、その視界右側には一際目立つ鳳凰三山の山塊と仙丈ヶ岳から伸びる南アルプスの主稜線が塩見あたりまで見渡すことができた。北岳には2回登っているが、この距離と方向から見るのは初めてだったのでその存在感の大きさには驚かされた。この稜線の先に、聖岳や光岳といった深南部があるということを、昨年の白峰三山縦走の際には意識さえしなかったのに、今となっては来年行きたい山域の第一候補の一つになっているのには、自分でも驚かされる。その後は同い年ぐらいの青年二人と少しばかり会話をしたりして和やかに日の出を待った。
 本来は御来光の瞬間こそが山頂で過ごす時間のピークなのだが、日の出自体はどこで見ても日の出だし、この日は先が長かったので太陽が完全に出たことを確認するや否や、そそくさと山頂を後にして鋸岳方面へと向かった。この時ほぼ同じタイミングで山頂を出た男性(a)とは、六合目小屋の石室まで大体の行動を共にすることになる。明るくなってからの行動ではあったが、親切な目印や明瞭な踏み跡も無く、黒戸尾根と比べると一般登山道らしさの様なものは数段感じられなくなっていた。しかしそれでも要所要所にはケルンや鎖が配置されていて、枝葉にはしっかり剪定が入っており、バリエーションと言う程でもなかったので、いわゆる破線ルートの中でも簡単な部類に入るのだろうと思った。遮る物の無い岩石質な稜線を我々で独占するだけでも心が躍るものだが、笑ってしまうほどの快晴と体に打ち付ける程よい風が心地よく、あの区間を歩いている時の気分は過去の山行の中でもトップクラスで清々しかったのを覚えている。口角の高さは最高潮に達していた。そこから程なくして高度感のある鎖場をビクビクしながら下ると、六合目小屋の石室に到着した。石室が文字通り石室だったのには驚いた。構造上致し方なく隙間が空いていたが、中には10人ほどは寝泊まりができそうな居間があり、避難小屋としては十分機能しそうである。水場の安否は確認できなかった。この辺りでもルート取りに少し手こずってしまい、辛うじてケルンと識別できる登山道上の小さな”違和感”を探すのに立ち止まっては歩きの繰り返しで、結果的には尾根筋から外れて小屋に迷い込んだというような感覚だった。小屋で少し休憩を取り、先述した男性(a)と入れ替わるようにして出発をした。三ツ頭のピークを少し過ぎると三ツ頭の分岐がある。今回は鋸岳へは行かずに日向八丁尾根に入る。
 日向八丁尾根の最初のピークである烏帽子岳(山頂の標柱は”鳥”の表記だった)からは鋸岳の山頂から南側に伸びる凶悪な稜線がよく見えた。ぱっと見でどこを歩けば良いか全く分からない。釜無川ゲートから歩けばハーネス等は必要ないそうだが、このゲートは原則として一般人の通行が禁止されているため、正規の方法ではあそこに見えたほぼ垂直に切り立つな岩場・ガレ場たちを攻略しなければいけないとのことで、まだ私には早い山であるのは確かである。ただ、目の前で見てしまった山には登りたくなるというのが我々の性で、20代前半の内にはあの山頂に立っていそうな感じがする。ちなみに六合目小屋まで一緒だった男性(a)はそのまま鋸方面へと縦走をする予定だとおっしゃっていた。
 とはいっても日向八丁尾根も破線ルートではあるし、眼下に見える大岩山に取り付く急登はどう見ても斜度70°以上はある。これから歩く登山道を見て愕然とするのは初めてアルプスに登った北岳ぶりかもしれない。甲斐駒ヶ岳から烏帽子岳までは岩綾とハイマツに覆われた尾根をジリジリと下る感じだったが、烏帽子を少し過ぎたあたりからはドカンと標高を下げて黒戸尾根ぶりの樹林帯に入る。途中、下端が固定されていない自由度1のハシゴに驚愕しながらも、大岩山直下の「崖」への取り付きに到着した。しばらく呼吸を整えていよいよ出発。序盤中盤は停滞できる場所が少ないので、今張り付いている地形に加えて次の地形を見てその後の動きを決めると言う少々パズルチックな思考が要求された。中盤あたりからは高度感のあるハシゴが出てくるが、特段難しい印象はない。急登の終盤は少しザレているためセルフ落石には注意だが、今度は木の根が張っており足場持ち手には困らない。あっという間に高度を100mほど上げてしまい、気がつくと大岩山の標柱が目の前にあった。意外となんとかなるものである。本日の核心も無事乗り越え、我々は最後のピークである日向山へと向かって平和な樹林帯歩きを楽しむ予定だった。その予定は、最近再現性のない登山ばかりを繰り返している私が、蜂に刺されたことによって崩れた。
 ここで、ハチに刺されたことのない人も多いと思うので、少し細かくその経過を記しておく。けむくじゃら山からの下りで幾度か道を見誤って引き返したりしているうちに先頭を歩いていた私は、時々顔面に絡みつく蜘蛛の巣を取り払いながら快調に進んでいた。虫やら蜘蛛の巣やらが顔にまとわりついて顔周りに少し意識が向き出したころに、右側の首元が明らかにおかしな感覚に襲われた。直後にそれが痛みへと変わり、そこで初めてそれが虫だということに気づいた。振り払おうと手を伸ばすと、虫にしてはあまりにはっきりとした物体がそこにあるのが感じられた。1度振り払っても痛みは取れず、まだいるのかとまた振り払おうとするともういない。良くない虫に刺されたのは明らかだった。最初は微かだった痛みもすぐにズキンズキンというような鋭い痛みに変わり、地面に目をやると黒と黄色の縞模様で1-2cm大の虫がジタバタと動いていた。振り返るとこれらの状況を以てハチに刺されたと推定し、ポイズンリムーバーを使用する判断に至れなかったのはかなり反省すべきことだと感じる。特に症状の正確な状況を唯一知る傷病人がそれを適切に伝えられなかったのは、手当てをする他メンバーの判断を遅らせる不適切な対応であった。2〜30分ほど安静にしている間、研究室トップの院試成績を誇る佐藤さんが各種外用剤の成分からその効用を推測していた姿がものすごく印象的だった。卒論の錬成さえままならない私が専門知識で人様の役に立てるようになるのは一体何年後だろうか。以降の行動は患部に負荷を掛けないために、サブザックと水以外の全ての荷物は佐藤さんと油井君が運んでくれることになった。すごくありがたかった上、かなりの後ろめたさを感じつつも、山にいるのに肩が軽いのは中々不気味な感覚であった。
 ハチ騒動がひと段落し、しばらくズシズシと歩いていくと唐突に真っ白い砂の壁が目の前に現れた。それまで見てきた青々しい森林の景色と比較するとあまりに異様なものだったので、目に入った瞬間それが日向山だということが分かった。それまで引きずっていた「ハチに刺されてしまった、、、」という憂鬱な感情は吹き飛び、目の前の砂山を童心に帰って登ることができた。白い砂に青い空が映えて、見た目はさながらビーチ。3人で一生懸命ビーチ気分を維持しようとして、山のものを海のもので例えるボケ合戦が始まる。ただ、どうしても重いザックや右首の鈍痛の説明が付かないので、だんだん無理が出てきて終了した。
1歩進むと0.1歩ぐらい後ろに下がる、初めての感触の登山道に苦戦を強いられながらもたどり着いた山頂には、おびただしい数の人間がいて驚いた。いや、そもそも山道で6時間ほど誰とも会わないことの方が異常なのかもしれないが、そんな感覚はとうの昔にどこかの樹林帯に置いてきてしまった。山頂からは今まで歩いてきた甲斐駒からの尾根筋がよく見えた。甲斐駒が頭上遥か高くに見え、これを下りてきたのか〜と感心しながらも、この山行も終わりが近づいてきたことに少し寂しさを感じていた。あとはここを下れば川遊びが僕らを待っている、といってもあと1000m弱は下るのが、この山行の怖いところである。ちなみに山頂ではダブルザック状態となっていた油井氏ザックの試し持ち大会(参加者1名=佐藤、朝倉は参加許可降りず)が開催されていたが、佐藤さん曰くザックの背負いやすさが全然違うのだと言う。初心者の頃に訳もわからず買った製品で大学4年間をやり過ごす我々は気づきにくいが、雷鳥へのコミット率もひょっよしたら最初にフィットする製品を買えたかどうかに結構左右されているんではないか、そんな風に思った。
 日向山からは先は今まで歩いた日向八丁尾根メインパートとは似ても似つかぬ超平和ハイキングコースだ。山頂でお話をした団体のおじ様方からの応援を背に受けながらスルスル〜と斜面を半ば駆け降りていく。2時間も経たないうちに、昨日の出発地点だったはずなのに全く来た印象がなかった竹宇駒ヶ岳神社に到着。不思議である、日の当たり方の問題なのだろうか。鳥居のすぐ脇にあるトイレに立ち寄り、すぐさま川辺へ直行した。素足を川に突っ込んでみると、かなり冷たい。が、足が熱暴走を起こしかけていたので丁度良い。岩の上にうなだれるように座り込んだ。向こう側の岩では油井、佐藤両名が楽しそうに写真撮影に興じており、私はそれを遠目で眺めていて思った、石を積みたいと。石は脈絡なく積みたくなるものだ。川辺というフロンティアを獲得した私の石積みキャリア、今回は少し趣向を変えてみたいといういらない気持ちが芽生え、水流の直上にアーチ橋を渡すことを心に決めた。すぐに作業に取り掛かると、石同士の接点が中々決まらず存外難しい。見かねた油井&佐藤が応戦して程なくすると、ついにアーチが自立した。軸力が重力に打ち勝ったのである。3人の間でわっと声が上がり、喜びを分かち合った。今後も弛まぬキャリアアップに邁進して参りたいところだ。
 尾白川の駐車場に到着し、大満足な2日間の行程がついに終了した。ハチの一件ではメンバーに迷惑を掛けてしまったことはお詫び申し上げたい。少し遅くはなったが、晴天の下での高負荷な行程で、夏シーズンの本格的な幕開けに相応しい山歩きであった。

■感想
CL油井
・ずっとやりたかった周回だったので歩き通せて嬉しい
・蜂対応ミスについては猛省、もっと勉強しなきゃ
・黒戸尾根はゴミだらけなので清掃したい
・日向八丁尾根は予想以上に明瞭
・日向山は再訪したい
・川遊び楽しい!
SL朝倉
・ 他二人と比べて甲斐駒への愛が足りないのを登山前から感じたが、この山行で好きになったと思う
・周回はやっぱり帰ってきた時の安心感がよい
・石を見ると積んでしまう
・直感でハチだと感じたら大体ハチなんだなと思った。本人の初動が遅れて周りに猛省させてしまったことを猛省。お二人荷物ありがとうございました������
◯佐藤
・周回ルートの充実度、満足度は想像を遥かに超えてきた。笹原、刃渡り、大量の梯子と鎖、花崗岩の尾根歩き、大岩山のアスレチック、日向山の天空のビーチ…!
・虫対応は申し訳なかったです。
・日向山に着いた瞬間に救われた。
・低身長に厳しい…(技術不足もあるが)。
・よい負荷がかかった。体バキバキ。
・日向八丁尾根でズボンに穴が空いた。
・川遊び大好き!